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87% (日本テレビ系水曜22:00〜22:54)
製作著作/日本テレビ
プロデューサー/伊藤響、大塚泰之、渡邉浩仁
脚本/秦建日子
演出/長沼誠(1、2、3、6、9、10)、梅沢利之(4、7)、佐久間紀佳(5、8)
音楽/ROGER WILCO
主題歌/『キミがいる』CHEMISTRY
出演/小谷晶子…夏川結衣、黒木陽平…本木雅弘、宇月薫…酒井若菜、柏原収史、相川七瀬、北川弘美、杏さゆり、氏家恵、小谷蒼太…川口翔平、押田恵、今井雅之、高橋かおり、杉山紘一郎…古田新太、剣崎護…渡辺いっけい、栗田よう子、長井英和、市川勇、岩佐真悠子、田中要次、寺田弓子…杉田かおる、細川俊之、大谷直子、宇月寅蔵…橋爪功
ほか

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第10回(3/16放送)
☆★
 テーマの誠実さとは裏腹な語り口のあざとさが随所に気になったこのドラマだったが、最後は随分と丸く収まった印象。散々ぴっぱってきた妻・百合(押田恵)の医療ミスに対する陽平の回答も、手術には義父・正十郎(細川俊之)の製薬会社で開発中だった新しい麻酔薬が使用されたおかげさまで更なる改良が施されて、現在広く使用されるに至っているとの美談つきとは、ちょっと反応に困ってしまう。大体、江梨子(相川七瀬)のリークは何だったんだろう?
 このエピソード自体はむしろいい話なのだから、妙なサスペンスまがいは捨てて、その話で黒木家の話をもう一段深めた方がよほどよかったのでは。晶子(夏川結衣)を主役に据える大前提との両立は非常に難しいのだが……。(麻生結一)


第9回(3/9放送)
☆☆
 術後の放射線治療がドラマでここまで克明に描かれるのは珍しいはず。ただ、そうなってくると、これがドラマである必要性があるのかとも思えてきたりして。比べても仕方がないけれど、『BS世界のドキュメンタリー』あたりの痛切さはドラマの比ではないので。
 4年前に黒木(本木雅弘)が執刀した妻・百合(押田恵)の手術における医療ミスは、さすらいの麻酔医・江梨子(相川七瀬)のリークによって公に?現状ではこの江梨子が何者か、もしくは何者でもないのかがよくわからないので、この重要な過去については最終回を待つとしよう。
 それ以前にわかりづらいのが、晶子(夏川結衣)と黒木の関係性で、これまでの成り行きだけでこの2人が医者と患者を超えた何かに至っていると考えるのは非常に難しい。アミューズメント施設に遊びに行くことを幸福感と置き換える前に(ジョイポリスは好きですけど)、そのあたりをもっとわからせてほしいかったのだが、もはや時間がないか。
 現状の黒木は、単に唐突に物事を思いつくキャラクターにしか映らなくて困る。ドラマそのものとは関係ないかもしれないが、レストランで携帯をマナーモードにしていない人間というのも思慮深い人間には思えない。「弓子さん(杉田かおる)が男だったら」、との質問のあとに泣き崩れる晶子に身につまされるだけに、どうしてここを全面に描いてくれないのかと不思議でならない。(麻生結一)


第8回(3/2放送)
☆☆★
 欠勤が多いことを理由に解雇された晶子(夏川結衣)に、その解雇を言い渡した剣崎護(渡辺いっけい)が1ヶ月後にプロポーズとは、まったくのノーマークだっただけに大いに驚いた。再就職もままならないという流れの末のこれだったので、このエピソードがありえない話ではないという実態を伴って響くことになる。
 蒼太(川口翔平)のことを孫だと思っている友恵(大谷直子)に、晶子が家政婦扱いされてしまうコミカルと、2回目の抗がん剤投与の副作用で髪の毛が抜けてしまったためにかつらを買いにいくシリアスとのバランスもさりげなくて好感が持てるところ。ひとみ(岩佐真悠子)の死の一報にもやはりしんみりさせられたが、百合(押田恵)の死の秘密にかかわってきそうな雑誌記者(田中要次)の存在がいかにも不穏。物語的にではなく、ドラマの誠実にかかわる問題として。(麻生結一)


第7回(2/23放送)
☆☆
 とても心を打つところと極端にいただけないところが混在していて、どうすればいいのか困ってしまうも、加点したり減点したりしてたら結局いつもと同じような点数になった。ひとみ(岩佐真悠子)が飛び降りたというデマ電話は、CMをはさむぐらいのはずし方であればまだ納得できるけれど、回をまたがれちゃうのはいくらなんでもちょっと。
 晶子(夏川結衣)への抗ガン剤投与中に、蒼太(川口翔平)のことを孫だと思い込んでいる友恵(大谷直子)のことを黒木(本木雅弘)が切り出すあたりの語り口はいかにもこのドラマらしい一緒くたな扱い。授業参観は役者の掛け合いのうまさで何とか乗り切るも、友恵を多少の矛盾は見なかったり聞かなかったことにしてるキャラクターだと言い切ってしまうのは、ちょっと便利すぎるのでは。実際そうではあるのだが。
 ひとみのために晶子が全摘出手術をした患者用のブラを買いに行く場面には、このドラマの誠実な側面が出ていた。そのひとみの最初で最後のデートが何ともせつなくていい。このドラマがこういう部分で勝負してくれたら、どんなにすばらしいことになるだろう。普通の人生こそを欲していたひとみの言葉がしみる。ガンになるのが普通のことだと言われてしまうと沈黙するしかないが。
 ひとみがいつの間にか静岡の病院に転院してしまっていることを晶子が黒木から聞かされる場面がラストだったら、いっそうその余韻に胸を打たれただろうけれど、そうはいかないあたりに連ドラっていやだなぁとつくづく思う。(麻生結一)


第6回(2/16放送)
☆☆
 晶子(夏川結衣)の手術、胸にメスが入った途端、黒木(本木雅弘)の目から大粒の涙が。描写は省略されていたが、手術中には泣いたり泣きやんだりして、手術も3時間で終わる予定が4時間かかったと言う。黒木のトラウマは置いておいて、そんな手術って怖すぎますね。
 院長の宇月(橋爪功)は黒木には医者の資格がないと首を言い渡す。宇月にも何かしらの考えがあったということで、ここまでは別に違和感はない。ビックリなのは、最初の定期健診に訪れた晶子に対して、執刀医である黒木の過去をベラベラしゃべったり、まだそれはいいとしてもその手術を医者にとっての弔い合戦呼ばわりしたりするあたり。これはちょっとどうかしてるとしか言いようがない(どうかしてるのは宇月ではなく、脚本の方)。黒木が晶子に対して告白するシーンが、完全に薄まってしまった感じ。(麻生結一)


第5回(2/9放送)
☆☆
 晶子(夏川結衣)の手術に執刀した陽平(本木雅弘)が、乳房全摘を決断する手術シーンが夢オチであるところから、いきなりはぐらかされた感じ。手術しそうでしないここまでの展開の理由に、これも入っていたのだろうか。保険診療と自由診療の細かい説明は、このドラマが時折見せる『からだ元気科』的な一面で、なかなか勉強になります。
 生きるためには、蒼太(川口翔平)を育て上げるためには、かっこ悪かろうがどうであろうが生き延びねばならないと決意した晶子は、以前に手切れ金の200万円をつき返した相手である、蒼太の父親・史郎(長井秀和)の現妻・冬美(栗田よう子)と再び対面することに。この回の最重要シーンがここになるのだが、用件も知らずに現われた冬美がどうして200万円もの大金を持ち歩いていたのかという点がどうにも引っかかって困った。だったら、家を訪ねる程度でもよかったはずだが、恥を忍んでお金を数える場面を公衆の面前でやらされてこそ、かっこ悪いことこそがかっこいいとなる意図だろうか。啖呵をきって晶子を援護射撃する弓子(杉田かおる)には、杉田さんの幸せすぎる現状を思うとリアリティが薄れるが、それにも増して弓子たちがあそこで食事をしてたっていうのはいくらなんでもね。
 ドラマ的嘘を許容しないではいかなるドラマも見ていられなくなるし、それを言いはじめると『救命病棟24時』なんてもってのほかということにもなるだろうけれど、このドラマにはそういったきれいごととは違った切実さをお願いしたかったので、いっそうにいろいろと残念な気持ちになってしまうのだが。
 その200万円をすでにガンの手術を終えて7%の5年生存率を手にした勇介(今井雅之)と山分けするラストは、いかにもこのドラマらしいひねり方。せっかくひねるのであれば、ここは晶子の罪が差し引きゼロになった風に締めくくるよりも、もっと違ったニュアンスをこめてほしかった。もちろん、そこまでつっこんでやってしまうと“Tears Wednesday”ではなくなるわけだが、すでにもう違いましたか。
 圧巻は病院にやってくるなり、「カルテ!」と言い放つ江梨子(相川七瀬)のさすらいの麻酔医風。こういうシーンを見せられると、いかなる真実味のあるシーンも吹き飛んでしまう。陽平の妻の死が明らかにされることで、このさすらい風に真実味が帯びてくるともとうてい思えないのだが……。(麻生結一)


第4回(2/2放送)
☆☆
 保険加入から3ヶ月以内にガンが発見された場合には保険金支払いの対象とはならない未保障期間の説明を、千絵(高橋かおり)にするのを忘れていた晶子(夏川結衣)。上司である剣崎(渡辺いっけい)は本当のことを告白しても誰も得をしないと、ちゃんと説明をしたという嘘の覚書を書くよう晶子に迫る。
 こういうミスを犯した晶子には同情の余地はないが、いざ覚書へのサインを求められる場面ではさすがにいたたまれなくなる。剣崎は自らが悪役になることですべてを収拾しようとするも、だからといって宇月病院の院長・寅蔵(橋爪功)にその剣崎を擁護をされても、それはちょっと違うんじゃないのという気分にしかなれないんだけど。部外者であれば、何だって言えるでしょうに。
 黒木(本木雅弘)が元麻酔科医の江梨子(相川七瀬)に手術を手伝ってほしいと競艇場まで追いかけていくエピソードは、ちょっとした危ない世界か戦時下ぐらいの特殊状況でしかありえない闇医者もののテイストでしょ。晶子がこの事実を知ったら、もっとちゃんとした麻酔科医をお願いしますと言うに決まってる。昨日まで定食屋さんの従業員だった人に、乳ガン手術を託すのはあまりにも無謀というもの。
 うまいと思わせるのが、そういった破天荒の展開を緩和するように(ごまかしとも言う?!)、親の事情で離れ離れになる琴音(薄井千織)と蒼太(川口翔平)のしんみりエピソードで締めくくるあたり。こういう誠実を絵に描いたようなお話をこしらえさせると、どうしたことか日テレのドラマはなかなかにハマる。東京駅での晶子と川上(今井雅之)の和解中に、千絵が一切の言葉を発しないのがリアリティとういう部分での救いといえば救い。
 晶子の手術は延期延期となるあたりが語り口としての狙いの模様も、そんなことで病状は大丈夫なのでしょうか。蒼太からいかず後家とののしられる弓子演じる杉田かおるさんは、この撮影の時には結婚はまだ周知のことではなかったのだろうか、なんてドラマとはあまり関係ないところを楽しんでみたり。(麻生結一)


第3回(1/26放送)
☆☆
 聖和医大にあるものと同じ全身麻酔に必要な最新装置一式と新型の麻酔薬の導入が決まり、宇月医院で手術が受けられることになった晶子(夏川結衣)。それにしても、看護婦にして院長(橋爪功)の娘である薫(酒井若菜)は、病院の裏事情まで絡めて患者の前で最新装置導入についての弁舌を打つだろうか。
 ちょっと辛口になっているのも、その題材を生かしてほしいと思えばこそ。晶子役の夏川結衣と黒木役の本木雅弘の好演が、この後の展開に期待を持たせるし、この第3回は物語の流れ自体はとてもスムーズだった。第2回からの引張りである、晶子が保険の契約にこぎつけた千絵(高橋かおり)の夫・勇介(今井雅之)がガンと宣告されるも、支払いが有効になるのは契約より3ヶ月以上経ってからという説明を晶子が怠っていたことが判明し、入院直前に一波乱というのが次回のメインストーリーになりそう。(麻生結一)


第2回(1/19放送)
☆☆
  弓子(杉田かおる)が誘う合コンに参加した晶子(夏川結衣)は、母親の介護をしているという河合(菊池均也)に目をつける。ところが実際の河合は体が目当ての最低男だったため、迫ってきた河合に対して晶子は自らが乳ガンだと言い放って追い返す。第1回の感想に書いた一事が万事のテイストそのものがこれ。こういうありきたりのエピソードは、やはりドラマの切実さを弱めてしまう。最初から再婚を考えていた恋人がいて、という大前提ではじめた方が、そことの関係性も描けるわけだし、よりドラマが密になったと思うのだけれど。(麻生結一)


第1回(1/12放送)
☆☆★
 晶子(夏川結衣)が受けることになる乳がん検診の詳細から告知、セカンドオピニオン、サードオピニオンと求めていくうちに、4段階あるステージのファースト・ステージである乳がんの患者の生存率が87%であるというあまりにも微妙な数値に行き着くまでの過程は、よどみなく淡々としているだけに、むしろ切実さもこみ上げてくる格好。ただ、がん保険のセールスをやっている晶子当人がその保険に入っていなかったとまで作ってしまうと、あまりにも出来すぎていて空々しくも思える。
 話の作りこみを考えるならば、その手厚さは正解なのだろうけれど、このテーマからするならば、そういった小細工はむしろ切実さを弱めてしまわないだろうか。初期ガンという切り口自体がそれだけでも十二分に興味深いだけに、あまり作りすぎずにいてくれたらと願ってしまうのだが、こういうテイストは一事が万事となる可能性が高いだけに、この第1話云々ということではなく、この先でちょっと心配になる。(麻生結一)




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