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ラストクリスマス (フジテレビ系月曜21:00〜21:54)
制作著作/フジテレビ
制作協力/共同テレビ
企画・プロデュース/大多亮
プロデューサー/現王園佳正、岩田祐二
脚本/坂元裕二
演出/西谷弘(1、2、5、8、10、11)、村上正典(3、6、9)、永山耕三(4)、河野圭太(4)、成田岳(7)
音楽/菅野祐悟『ラストクリスマス〜ザ・コンプリート・コレクション』
主題歌/『ウェイク・ミー・アップ・ゴー!ゴー!』織田裕二withブッチ・ウォーカー
オープニングタイトル曲/『ラストクリスマス』織田裕二withブッチ・ウォーカー
出演/春木健次…織田裕二、青井由季…矢田亜希子、日垣直哉…玉木宏、葉山達平…森山未來、藤沢律子…片瀬那奈、高瀬彩香…MEGUMI、須藤恭子…田丸麻紀、本山美樹…坂下千里子、塚本信輔…坂本雄吾、柴田幸子…りょう、白河仁美…桜井幸子、杉村行彦…勝村政信、西条雅人…津田寛治、白河正平…金田明夫、白河桃枝…田島令子、伍郎のパパ…勝部演之、松田志穂…山口紗弥加、青井和夫…尾藤イサオ、飯倉康恵…奥貫薫、菅原恵美…網浜直子、新谷伍郎…伊原剛志、春木貴子…加賀まりこ、澤口孝太郎…児玉清
ほか

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第11回「幸せのオーロラ」(12/20放送)
☆☆
 “アンチせかちゅう”を標榜していただけに、その通りになったかとの驚きのない感想も、時間の飛ばし方で見せようとする意図は尊重したいところ。それにしても、ホニャララだったか、ヘニャララだったかの病気の権威に望みを託してシアトルの病院に行ってしまった青井由季(矢田亜希子)を再登場させるまでには、随分とじらせてくれました。こういう無駄なケレン味自体は嫌いじゃないけど。
 青井由季の主治医・澤口孝太郎(児玉清)に託された自分で受け取る遺言ビデオとは何とも痛切なのだけれど、手術がうまくいっても5年の間に50パーセントの確立で再発する可能性がある病気とはいったい何だったんだろうか? 今カメラの前にいるあなたが誰かは知らないという切なげな設定までもあやふやに収めて、すべてをトータルにあやふや化してしまうやり方で、肝心なあやふやがそれほどあやふやであるようには感じさせないあたりに、このドラマのそれなりのひねり方を味わってみたり(そこまで考えてない?!)。
 何はともあれ、もっとも暗かった藤沢律子(片瀬那奈)までもが満面の笑みになったのだから、他のみなさんが幸せにならなかったはずがありません。春木健次(織田裕二)と青井由季の掛け合い漫才の他にはさほど興味が向かなかったというのが正直なところだが。
 雪降りしきる最中の病院をピンクのスーツケースを引いて一人行く青井由季はかわいいんだけど、病み上がりの設定としては正しいのかとの疑問も沸くが、矢田さんのドラマ的選択肢に関してはまったく正しかったと言うほかない。平均視聴率10パーセントそこそこのドラマに出るよりも(『ホットマン2』)、この秋クールにおいて20パーセント越えした唯一のドラマに出たほうがいいに決まってるし。
 クリスマスツリーを見るためにタクシーを降りた2人をいつまでも待ってくれていたタクシー運転手さんは、映ってなかったけどきっといい人だったはず。冒頭のイエローナイフと遺言ビデオがつながって、目標のイエローナイフ行きはシアトル経由だったというオチこそがやりたかったんだろうかなぁ、としみじみと思う。(麻生結一)


第10回「約束の海」(12/13放送)
☆☆
 春木健次(織田裕二)と青井由季(矢田亜希子)の掛け合い漫才をふんだんに盛り込む幸せ一杯感と、病気が再発した青井由季が病院するエピソードのギャップで見せるやり方は正統的なんだけれど、随所にラフな部分も多くて、そのあたりを意図的にやっているのだとすれば、なかなかの確信犯ということになる。
 病室で向かいのベッドとなる主婦らしき飯倉康恵(奥貫薫)にしても、一緒に折っていた折鶴のエピソードを後日談的に扱うのも随分奇妙な話だが、時間をオフにする箇所が頻発するので、元来そのテイストなのかという印象も残る。単にカットしまくってるだけかもしれないけれど。そのあたりの癖を把握しきれているわけではないので、見ながらに不安になってしまうこともしばしば。
 何はともあれ、織田裕二と矢田亜希子のコンビは上々だし、繰り返しになるがここ最近の月9の中では圧倒的にバランスのよさが際立つ。他の枠と比較するならば、改めて書き加えるほどのこともないのだけれど。(麻生結一)


第9回「天使の雪」(12/6放送)
☆☆
 ついにというべきか、唐突にというべきか、青井由季(矢田亜希子)の病気が再発する。

日垣直哉(玉木宏)「青井って体でも悪いんですか?」

って、少しは青井由季のことを気にしていたはずだった日垣直哉のこの無関心ぶりは、献身の塊である春木健次(織田裕二)とはあまりに対照的。まぁ、それぐらいに何の前触れもないところへの立ちくらみだったりもしたわけだが。お互いに送りあった手袋をけなすのも使うのも一緒の仲良しカップルぶりの継続でだって、ドラマは成り立ったと思うのだけれど、大前提がそういうドラマですから、致し方ないところか。
 新谷伍郎(伊原剛志)がお袋ギャグで暴走する通販番組のオープニングは『夫婦。』のパロディか。やりかねんでしょう。(麻生結一)


第8回「心の握手」(11/29放送)
☆☆
 春木健次(織田裕二)と青井由季(矢田亜希子)の別れ話が即解決するあたりはいかにもライト級な感じでこのドラマらしいところだけれど、新谷伍郎(伊原剛志)と葉山達平(森山未來)が高瀬彩香(MEGUMI)をかけてボーリング対決とまでいってしまうと(結局は葉山達平の代役として春木健次が登場)、そのスーパーライト級ぶりに、っていうか90年代的なおざなりさにはなかなかついていけなくなる。ケニー・ロギンス=「フットルース」っていう発想にも断固反対だけれども。ただ、青井由季が応援に駆けつけるや 形勢不利だった春木健次が巻き返して勝利するって流れは、プロの脚本家ではちょっと書けないような、ある意味スゴイと思いますよ。
 元レディースの仲間である松田志穂(山口紗弥加)の保証人になったことで由季が借金を背負うはめになるエピソードでは、先回りして松田志穂と会っていた手厚さで、春木健次がまたまたいい人度をアップさせる。このエピソード自体が必要だったか否かは微妙だけれど。山口紗弥加はCXのドラマでは、いつしか暗い役専門になった?!(麻生結一)


第7回「別れよう」(11/22放送)
☆☆
 いやはや、このドラマのキャラクターたちはよく働き、よく遊び、過去に思いをはせつつ、今を楽しくやってますね。そんな90年代は確かに懐かしいけれど……。
 いい人ぶりが普遍となっていた春木健次(織田裕二)は実はパパだった?! その疑惑は深まるばかりで、青井由季(矢田亜希子)と子連れでスーパーに行くと、その場を本山美樹(坂下千里子)に目撃され、フォロー役の澤口孝太郎(児玉清)のフォローもむしろ逆効果で、という前置きもそれなりに盛り上がるのだけれど、結局はそんな説明ぶりも大して意味がなかったのかと思ってしまうほどに、スキー部のメンバーの同窓会風に関係者以外も混入して、飲むは食うは、はたまた昔のビデオの鑑賞会でしんみりするは。
 釈然としないエピソードの裁き方に駄目押しを押すのが、唐突に現れる白河仁美(桜井幸子)の離婚直前の夫にしてカメラマンの西条雅人(津田寛治)。代理のカメラマンとしてやってくる西条のステレオタイプな悪ぶりは、青井由季にまたまたちょっかいを出している、もはや意味不明キャラと化した日垣直哉(玉木宏)と双璧か。こんな男の動向を気にしている藤沢律子(片瀬那奈)がやはり心配です。
 そんなごった煮的なテイストを瞬間的にすっきり味に変えてくれたのが、西条に殴られたあとに軽やかに立ち上がる春木のカッコよさ。ここに殴られても殴り返さない男の美学が、高倉健から織田裕二に継承された格好?! かつて春木健次が白河仁美にプレゼントした「困ったことがあったらいつでも助けに行きます!」の裏書つき有効期限なしの健次券は、この瞬間に期限切れとなる。
 まぁ、いろいろとゴタゴタしましたが、それでも少なくとも、

青井由季「あの日私があの隣の部屋に引っ越してこなかったら……」

ってな雰囲気のドラマじゃなかったのは確かです。(麻生結一)


第6回「もう一度」(11/15放送)
☆☆
 今度のクリスマスに1泊3日の弾丸ツアーでイエローナイフにオーロラを見に行く約束にプラスアルファ、手をかじゃしちゃうほどのまぶしい明日を一緒に生きることが今自分にできる唯一のことだとこそばゆいほどのやさしさを発揮する春木健次(織田裕二)はますますいい人度をアップさせる。以前からもくろんでいた中古のワゴン購入もキャンセルして、日本旅行でオーロラツアーチケット2枚分を即購入するその有限実効ぶりを彩るBGMはスターシップの「愛は止まらない」。ここは単品で懐かしい。
 逆に、その言動がいっそう釈然としてこなくなったのが日垣直哉(玉木宏)の方。せっかくちょっぴり明るくなった藤沢律子(片瀬那奈)が受け取った今は亡き恩師・武藤晃次からの手紙を盗み見てしまっただけでも重罪だというに、どうして律子がプロポーズの返事をくれないのかを邪推して逆ギレ。これでまたまた藤沢律子が暗くなるぞ。心配です。
 そんな日垣直哉は何を血迷ったか、ちょっと前まで片思いされていた青井由季(矢田亜希子)になびく始末。春木健次の前には元婚約者・白河仁美(桜井幸子)が出現し、とりあえずは最終回までのエピソードには事欠かないぐらいの人物配置は整ったということで。
 春木貴子(加賀まりこ)の同窓会話を詐欺と決めつけたのは、澤口孝太郎(児玉清)とくっつけたかったからなんだろうけれど、ちょっと苦しいか。(麻生結一)


第5回「輝くキス」(11/8放送)
☆☆★
 一つ断言して言えることは、2004年の月9中ではこれが最高作品であるということ。『プライド』『愛し君へ』『東京湾景』、いやはやひどかった。やはりこれが図抜けてるでしょ。図抜けててアベレージ☆☆というあたりが痛々しくもあるが。
 クリスマスキャンペーンの下見と称し、スキー場と温泉場に少なくともドラマ的には会社総出で乗り込むあたりの遊びと仕事の境界線が微妙なところがいかにもノスタルジック月9の面目躍如たるところ。ランチミーティングもご馳走三昧でうらやましい限りです。
 中傷ビラで窮地に立たされた青井由季(矢田亜希子)の、大きな会社のOLだったら、自分がいなくなっても迷惑をかけなくてすむとの発想は何たるけなげ。それを受けて、代わりになれる人間はどこにもいないということを教えてやりたいと青井由季の名誉を回復するために辞表まで書いちゃう春木健次(織田裕二)は何たるいい人。
 おしゃべり系(?!)のFMってほとんど聴かないのでよくわからないが、幸子(りょう)の番組私物化のおかげで青井由季に更なる勢いが加わり、春木健次の出張先まで押しかけて告白。携帯の番号さえ知らなかったあまりにも近すぎた二人という気恥ずかしい関係性に追い討ちをかけるように、クリスマスツリーのイリュミネーションが突然ついてしまえば、マイナス×マイナスはプラスとばかりに後はこっちのもの。オーロラ行きのチケットを2名様同時ゲットでめでたしめでたしも、そこに春木健次の元婚約者・白河仁美(桜井幸子)が絡んでくるのが次週以降の展開みたい。
 日垣直哉(玉木宏)からプロポーズされ、ダークネス・藤沢律子(片瀬那奈)がついにちょっぴり明るくなったのもつかの間、死んだはずの先生からエア・メールが届き、またまた暗くなる。心配です。
 春木健次と青井由季がリフトに乗ってるときにかかってたのはネーナ!おなつかしや。(麻生結一)


第4回「幸せの絆」(11/1放送)
☆☆
 青井由季(矢田亜希子)が日垣直哉(玉木宏)と藤沢律子(片瀬那奈)の恋のキューピット役に徹した前回に引き続きまして、この第5話では春木健次(織田裕二)に好意を持っていたはずの柴田幸子(りょう)が夫である杉村(勝村政信)と復縁するにいたる過程を春木健次と青井由季がサポートするまでのお話。このドラマってそういうお話だったの?それにしても杉村家の愛犬・ポチ、でかいな。話にはまったく関係なかったけれど。
 これまでよりも随分とスムーズに見られたのは、新谷伍郎(伊原剛志)のお袋ギャグのみトークにつきあわずにすんだから?! ハッピーエンディングの末に御役御免となったはずの藤沢律子が以前にも増して暗かったのが大いに心配なところ。
 それにしても、青井由季に再発の兆候が見られなかったとの検査結果を知って涙ぐむ春木健次はいい人ですね。(麻生結一)


第3回「涙の抱擁」(10/25放送)
☆☆
 もはやお袋ギャクでしか会話しない新谷吾郎(伊原剛志)のスーパーハイテンションも最初は悲しすぎる存在でしかなかったけれど、ここまでしつこくやられると突き抜けた哀れみさえかもし出してくるから面白いもの。どんなにあざとい描写だって、連続してやってればそれなりに様になるとの法則をきちっと踏んでくるあたりはさすがにあざとい。
 そんな吾郎とは対照的に、まったく元気がなくて大いに心配していたのが藤沢律子(片瀬那奈)。そんな藤沢律子(もしくはドラマではお久しぶりの片瀬那奈ご本人)のよどんだ空気を察してか、自らが片思いの日垣直哉(玉木宏)をけしかけて律子との仲を取り持つ青井由季(矢田亜希子)のけなげさ全開の恋のキューピットぶりが共感のすべてを支配するまで。
 ってことは、ここでほとんどの役割を終えた感のある藤沢律子と日垣直哉は今後いかにしてドラマ中で生存し続ける?鶴の恩返しならぬ、青井由季の逆キューピット役だったり?玉木宏は『愛し君へ』で似たような不遇を託っているだけに、ちょっと心配です。新しい役へチャレンジしている矢田亜紀子は、前月9の仲間由紀恵よりは断然好印象だけれど(仲間さんが『ごくせん』復帰は正しいでしょうね)。(麻生結一)


第2回「奇跡の夜」(10/18放送)
☆☆
 これまで最大公約数のドラマを目指してきたはずの月9が、その行き着いた先として最小公倍数的なドラマをこしらえているというアイロニーが何とも興味深いところ。
 春木健次(織田裕二)と青井由季(矢田亜希子)はお隣さんを超えたルームシェアのバリエーションだったり、その2人と何の係わり合いもない新谷伍郎(伊原剛志)と柴田幸子(りょう)をたすきがけにしたダブルデートの提唱、はたまた幸子がラジオのナビゲーターだかパーソナリティだか、いわゆるDJだったりする設定といい、隅々までのイデオムが実に古い。
 ちょっと前の過去は結構小っ恥ずかしかったりするタブーなどお構いなしに、ひたすらノスタルジーをつついてくるような作り方でもって視聴率が稼げるのであれば、それはそれで大成功と言えるのかもしれないけれど。(麻生結一)


第1回「秘密の二人」(10/11放送)
☆☆
 春木健次(織田裕二)がゲレンデで出会った雪の妖精=青井由季(矢田亜希子)は元レディースだったとのオープニングからノスタルジーさえも漂わせるザ・月9の趣。大学時代の友人にして、健次が勤める「ハートスポーツ」の上司でもある新谷(伊原剛志)の秘書としての清楚系の顔と、もともと一つの部屋だったために薄い壁一枚でしか仕切られていないお隣に引っ越してきたご近所さんとしてのガテン系ぶりとのギャップに加えて、『僕の生きる道』的ビデオ遺書を残すほどの病も臭わせて、さらにはクリエイティブ・ディレクター・日垣(玉木宏)とはセフレらしく、ここまで盛りだくさんに詰め込んで由季のキャラクターづけは大丈夫?!
 音楽はワム!+?で80年代テイスト100パーセント。グロリア・エステファンにベリンダ・カーライル、ビースティボーイズ(これは新曲か)とズラリと揃えるも、ドラマのテイストはベタに90年代的と、次第に今が何世紀なのかわからなくなってくる。それにしても、「ウェイク・ミー・アップ・ゴー!ゴー!」なるタイトルのつけ方はいかなるものでしょう。原題の意味を微妙にいじるぐらいなら、「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」のままでいっそうノスタルジーをかきたててくれた方がよかったか。
 織田裕二は最近の苦虫かみつぶした風よりも、こういうちょっと軽みのある役の方が好印象。桜井幸子は元恋人(=今作)とか、亡くなった恋人の身代わり的恋人未満とか(=『世界の中心で愛をさけぶ)とか、ある意味ポジションが一定してきてる?!
 何はともあれ、お話にならなかったここ最近の月9、もしくは坂元裕二脚本作の中では幸先のいいスタートといえるのでは。もはや遺憾ともしがたい感覚の古さを何をもって克服するかにちょっとだけ興味がある。(麻生結一)




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