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逃亡者 (TBS系日曜21:00〜21:54)
製作著作/TBS
制作/TBSエンタテインメント
プロデューサー/伊與田英徳
脚本/飯野陽子(1、6、11)、渡邉睦月(2、3、4、5、7、8、9、10、11)
演出/平野俊一(1、4、7、11)、山室大輔(2、5、10)、三城真一(3、6、9)、吉田秋生(8)
音楽/長谷部徹
主題歌/『時の舟』松たか子
出演/永井徹生…江口洋介、峰島隆司…阿部寛、尾崎カオル…水野美紀、国枝真澄…加藤浩次、鬼塚咲…長澤まさみ、藤堂ナツミ…黒川智花、内藤陽子、若葉由奈、六角慎司、阪本浩之、鈴木宗太郎、櫻庭博道、伊藤隆大、田中要次、矢島健一、尾美としのり、遠藤憲一、近藤芳正、菅井きん、小野寺千秋…片平なぎさ、永井淳子…戸田菜穂、郡司直巳…別所哲也、伊川貴子…原田美枝子、来栖慶介…原田芳雄
ほか

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第11回(9/26放送)
☆☆
 ドラマ開始10分たらずで一押しだった(?!)郡司(別所哲也)が連行され、国枝(加藤浩次)の最後の悪あがきぶりも何だかよく聞き取れなかった15分までで事件のからくりが大方解決してしまえば、やはり残り時間はさらなる大物の悪事が明らかになるだろうとは大方想像がつく。
 不自然な二枚舌ぶりに、少なくとも善人ではないことは察せられた来栖(原田芳雄)だったが、手は下さないまでも実の娘の殺人を補助していた事実が明らかになるラスト。この後味の悪さこそがこのドラマ唯一の意表をつくところだったとも言えるが、この結末にいきつくためにここまで見続けていたかと思うと虚しくもなる。見せ方の工夫は手をかけた分だけの効果がなかったとは思わないが、リアリティのない展開までは乗り越えられなかったか。
 結局、咲(長澤まさみ)とナツミ(黒川智花)は本当のお友達になっちゃいましたね。大人には苦々しいも、若者にだけは甘いんだ。(麻生結一)


第10回(9/19放送)
☆☆
 白昼堂々縦横無尽、東京の街を我がもの顔で歩き回る永井(江口洋介)に違和感を超えたあり様をにじませるさばきは、凄いといえば凄いし、デタラメといえばデタラメ。永井の指示にいつの間にやら従ってる尾崎(水野美紀)も凄いといえば凄いし、デタラメといえばデタラメ。一つ言えることは、整合性云々をブッ飛ばして、勢いだけで見せるやり方に徹しきっているということ。決して褒められた話ではないけれども、それなりにハマってきていることも事実。永井と尾崎の出会い頭数に至っては、もはやギネス級か。
 ひまわりを7万円で売る(→実際は“ウリ”をやっていた)ナツミ(黒川智花)の性根からの悪ぶりは、盲腸→堕胎手術→生体肝移植と入院理由がわずか3分の間にめまぐるしく変化していくさまだけをとってもありあり。もともと片平なぎさがキャスティングされている割には極端に出番が少なかった小野寺がここでクローズアップされることには大して驚かなかったが、看護師の長を“師長”と呼ぶ今様にはビックリ。もしかしたらこれまでも呼ばれていたのかもしれないけれど、気にするほどのこともなさないキャラだっただけに。目つきの悪さがあまりにもわかりやすすぎた第1回からの一押し、郡司(別所哲也)はナツミの主治医として浮上。もちろん、これまでの中でももっともわかりやすい目つきの悪さの大安売りとなる。
 警視総監の息のかかった国枝(加藤浩次)が真っ黒に染まった警察組織の象徴として巨大化していく過程には、この人もまた最初から怪しかっただけに、あっと驚く真犯人的趣向への受け入れ態勢は準備万端だったわけだが(今後も万端です!)、本当に一番驚いたのは、このところ最初元気→途中意識不明役を手中にした感のある原田芳雄の演技的省エネぶりを突きつけられたときだったりして(ちょっと前には『ヤンキー!母校に帰る』がありました)。

「鬼ごっこはもう終わりだ」

の一言に、すべてがちょっと規模の大きい鬼ごっこだったという自覚はあったのかと、その確信犯ぶりにはある意味感心した次第。(麻生結一)


第9回(9/12放送)
☆☆
 陸(鈴木宗太郎)の命を救うためには、田所(田中要次)から命じられるがままに峰島(阿部寛)を殺すしかないという永井(江口洋介)のジレンマを音と映像で煽り続けた第9回。峰島と永井がご対面となる経緯は毎度のごとくディテールにはこだわらず勢いだけで見せる感じ。そういうドラマだとわりきってみれば、もはや気にもならないか。
 田所に言い放つ永井の言葉、

永井「淳子(戸田菜穂)殺して陸までもか」

が妙に語呂がよかったり、ドラマとはあまり関係ないお楽しみも。最後に田所は雇い主であろう黒幕に殺されたのだろうけれど、だったらついでに永井も一緒に殺すわけにはいかなかったの?もちろん、そこでドラマは終わってしまいますが。
 『逃亡者』名物である尾崎(水野美紀)の無駄走りは今話でも健在だったが、外国人に話しかけられた際にはイオンで鍛えた英語力は発揮できずに残念?! 咲(長澤まさみ)とナツミ(黒川智花)の怪しげな美少女コンビは、それぞれ『さくら』と『こころ』というあまりにも怪しげだった朝ドラを経てきているのか。そりゃ、怪しいはずだ。(麻生結一)


第8回(9/5放送)
☆☆
 一応サスペンスのフォーマットではあるけれど、今回はディテールを問うなかれ。このしつこい男たちが一同に集う様のおかし味に免じて。ディテールを忘れておかし味をとるって、サスペンスのとらえ方としては完全に間違えてるんだけど。
 永井(江口洋介)ばかりか峰島(阿部寛)もまた、田所(田中要次)の罠に引っかかってたということで、すんなりと長身タッグチームが結成されるくだりはかつてなくスムーズ(これもスムーズいいのかどうかは微妙だけれど)。閉じ込められた倉庫のドアを爆破すべく細工をする永井に、タバコに火をつけて渡すときの峰島の中腰がちょっと素敵だったのでは?!
 爆発の後に永井が峰島をおぶってくるなんていうツーショットが目にとまった日にゃ、

尾崎「何があったの?」

って、何事においてもムダをさせたらトップクラスのかの尾崎だって、さすがにムダなことなどは一切言わずにダイレクトに聞きたくなるでしょうね。峰島の生死を確認する前に、状況説明してる永井がなかなか愉快。田所を誘導する真の犯人は女?出来れば、かつらで女に変装してる郡司(別所哲也)であってほしいのだが……。(麻生結一)


第7回(8/29放送)
☆★
 いいアクションシーンとは、すべてが鮮明に見える、つまりはごまかしのない演出がほどこされているものだと思う。そうなってくると、これなどは愚そのもの。とにかく、何をやってるのやら、さっぱりわからない。陸(鈴木宗太郎)が意識を取り戻したしんみりとする場面にスプリットスクリーンの多様って、何がしたいんでしょうね。
 それ以上に興味を引かないのがお話の方なんだけど。津留(遠藤憲一)に引き続いて登場したもう一人の義手の男、田所豊(田中要次)もまた、峰島と同様に永井(江口洋介)に恨みを持ってたらしいんですけど、元警察官の指名手配は警察のメンツに関わる問題なので無理らしいです。この犯人がたらい回しされる展開がいかにも陳腐。伊川(原田美枝子)は永井に協力しないといっておいて、大いに協力するあたりもイマイチピンとこない。着ぐるみスタイルの来栖(原田芳雄)は睡眠不足で倒れる?! もうちょっと何か思いついてよ。
 見せかけだけのダメドラマの代名詞『世界で一番熱い夏』を思い出してたら、同じ脚本家なのか。もはや名物と化してきた尾崎(水野美紀)の無駄○○ぶり。今回は無駄に殴られてましたね。(麻生結一)


第6回(8/22放送)
☆★
 無駄走り女王、尾崎(水野美紀)は資料室で峰島(阿部寛)がかつて狙撃班だったことを突き止め、真実は警察になしと判断して永井(江口洋介)方に寝返る。普通に考えると、かなり奇妙なお話。
 久しぶりに悪事のお鉢が回ってきた郡司(別所哲也)が仕込んだ淳子(戸田菜穂)の偽装病院葬には、このドラマの全キャラクターが集結。そんな彼らが茂みの中でサバイバルゲーム風に鬼ごっこぶりを繰り広げるまではいいとしても、バイクを奪って逃走しようとした永井が、ちょっとした暇を見つけて順子の遺影に呼びかけてるのを見て唖然。危機一髪だったにも関わらず、律儀にもきちっとメットだってかぶってたし。
 もともとの永井と峰島の対立軸も崩壊してしまって、なかなかに困ったドラマになってまいりましたね。陸人形の登場を目のあたりにした直後だったからか、とりあえずは『逃亡者』がコミックになったと聞かされてもそれほど驚かず。偽装病院葬程度しか思いつかないとなると、期待度大だった郡司も単なる小者みたい。小野寺(片平なぎさ)がちょっとなまってる風に聞こえたのは、『天花』からの悪い流れを引きずってるせい?!(麻生結一)


第5回(8/15放送)
☆★
 凝ったスプリットスクリーンに細かい時間のテロップ、そして短いながら空撮も復活して、ここ3回ほどの予算的辛抱が若干ながらも報われた形に?! 峰島(阿部寛)と尾崎(水野美紀)の単独行動コンビは、新宿あたりで簡単に偽造出来るらしいまだ質の悪い東南アジアのパスポートをいとも簡単に入手した永井(江口洋介)の、外国経由北海道行きという企てをいとも簡単に見破るも、いとも簡単に逃げられる。ここでままたまた尾崎の全力疾走が堪能できるわけだが、これが報われたことは1回たりともありませんよね。捜査的にもドラマの展開的にも。段々おばかさんにしかこのキャラクターが見なくなってくるあたりは、ちょっとまずいのでは。
 貨物車やら長距離トラックやらを乗り継いで苫小牧までたどり着いたと推測するしかない永井は、いとも簡単にターゲットである津留(遠藤憲一)が義手の修理に訪れたはずの工場を見つけ、いとも簡単に社員証だかIDカードだがをゲットするも、いとも簡単に警報機がなりはじめちゃって、小気味よすぎるテンポのままに津留と対決することに。
 これまでの怪しげな登場人物たちは何だったのかと思えるほどに、いとも簡単に津留(遠藤憲一)が真犯人であることが確定するも、無駄走り女王の尾崎がやられたと思ったら、津留までもやられちゃって。どうやら津留を遠方からライフルで撃ったのは峰島ということで、何だかよくわからない映像の暗さに困惑しつつ、ドラマは次週へ持ち越しとなる。
 「いとも簡単」だった場面以外を探すのは、簡単の真逆のなかなかに困難。かつて15歳の少年によって息子を殺されていたらしい峰島。その15歳の少年の保護監察官こそが永井だったというオチだけはそれほど簡単ではなく、これで永井と峰島の因縁が鮮明になった形。
 それにしても、警察には有能な人間は一人もいないのか。有能だったはずの峰島もバナナ味だかメロン味だかのガムの包み紙をその場に落とすようじゃ、それほど優秀でもなさそうだし。この程度の事件だったら、10月より三度スタートする『相棒』の頼もしいお2人にお任せすれば、1話で完結してしまうのでは。永井にとっての唯一の幸運は、敵が無能だったことという意図ならば、それはそれで納得できるんだけど。(麻生結一)


第4回(8/8放送)
☆★
 8000人の警察官に追われているとは思えないほどにフットワークの軽い永井(江口洋介)は、追われる側から追う側へと立ち位置の変更を宣言。花火大会というシチュエーションを巧みに使って、インターネットの書き込みでの誘導作戦もまんまとあたって、咲(長澤まさみ)が隠れ家である倉庫じみた暗がりに逃げ込み、義手についての書籍を読み漁って調査を開始する。
 花火大会の大群衆の中を追いつ追われつの展開であれば、かなりの出費を免れなかったと思うが、暗がりの倉庫を根城に使ったことで、この回もかなり予算的な配慮が行き届いた構成になっていた。果たして次の大爆発、ペリコプターによる追跡はいつなのか?再来週あたりでしょうか(興味の対象が完全にズレはじめてる?!)。
 それにしても、永井は変装などといったコシャクな手は使いませんね。ハリソン・フォードだって、髭ぐらい剃って雰囲気出してたと思うんだけど。
 それにしても、ここに出てくる捜査本部は暗いなぁ。後々の大盤振る舞いのために、電気代も節約してるとか?! 永井の伝言に峰島(阿部寛)は慌てて窓の外を見ると、そこには永井の姿が。にらみ合う2人。こりゃ、西部劇だね。まぁ、アメリカ版もそんな感じだったけど。
 聞き取りにくさでは定評のある阿部寛だけかと思っていたら、江口洋介を筆頭にほぼ皆さんの台詞が聞き取りにくく思えてきた。その印象からか、永井が咲(長澤まさみ)と空港で待ち合わせた場面に映る線が、一瞬マイクの見切れに見えたもん。こうなったらどんなに見切れちゃってもいいから、もっとちゃんと台詞を拾ってください。
 それにしても、いくら豪雨中だからって、あの水色で塗りつぶされた天気図はどうしたこと。あそこは笑うところなんでしょうか?(麻生結一)


第3回(8/1放送)
☆★
 空撮はもはや無理でも、クレーン撮影分だったらまだ予算は残っていた模様?! 峰島(阿部寛)に撃たれて、川に落ちた永井(江口洋介)が負傷して寝たきりになった分でかなり節約できたとは思うので、次週あたりではまた空撮とかやってくれそうな気もするけど。
 峰島=阿部寛の台詞の聞き取りにくさには苦情が殺到したのか、若干マイクの感度が上がったような上がってないような。リアリティ云々を言うのはもはや野暮なような気もするけど、ダムの水に飲まれても元気はつらつだったハリソン・フォード(映画版)よりはリアリティあるかな。永井を救って売って襲われて助けられての大車輪の活躍をみせる老女役で菅井きん。永井に救いの手をさしのべておいて、賞金をかける来栖(原田芳雄)の二枚舌ぶりが明らかに怪しいですね。(麻生結一)


第2回(7/25放送)
☆☆
 やはり第1回の制作費がかさみ過ぎたか、この第2回は空撮にしろスプリットスクリーンにしろすべてにおいて大いに控えめに。クライマックスの永井(江口洋介)が峰島(阿部寛)と尾崎(水野美紀)に挟み撃ちにされるシーンも、暗闇につきどれほどの高さ、大きさなのか判然としない橋の上からダイブするという、ダムから飛び込んだ映画版から単純にスケールダウンした程度にとどまる。それほどの仕掛けは無理だとするならば、だったら似たような趣向は捨てて、お金ではなく頭を使った見せ方を考えてほしかったもの。
 お話の方も随分乱暴で、あれだけの厳戒態勢の中、娘・淳子(戸田菜穂)の日記を読んで情緒的な理由だけで永井を信じ込んでしまった義父である来栖(原田芳雄)の手引きがあったとはいえ、永井が容易に淳子の遺体とご対面してしまうところなど、首をくねらざるを得ない。あれだけの警官が総動員されているにも関わらず、永井を挟み撃ちにするのが峰島と尾崎だったりするあたりからしても、あまり難しいことを言わずにスター共演ドラマとしてのんびり眺めていればいいのかもしれないけど。永井の友人である弁護士の東(尾美としのり)が殺されてしまったのは、あの怪しげな存在感が効いていただけにちょっと残念。(麻生結一)


第1回(7/18放送)
☆☆★
 第1回のスペシャルらしく、情報量満載。実際のストーリーは保護観察官の永井徹生(江口洋介)が妻の淳子(戸田菜穂)を殺され、息子の陸(鈴木宗太郎)に重症を負わされるも、その犯行の罪をきせられて逃亡する羽目になるというシンプルなもののはずなのだが、スプリットスクリーンを頻発させたりする映像効果や、空撮にCGと合成したトンネル爆発などの盛大な見せ場の連打で、随分込み入った話のように錯覚させられた。
 いかにも怪しそうな脇役が続々と登場するあたりのケレン味にも意気込みが感じられる。医師の郡司(別所哲也)から匂いたつ悪そうな感じには、ちょっと笑ってしまったけれど。これがカモフラージュであることを祈らずにはいられない。尾崎カオル役の水野美紀もハードに決めてくれるんだけど、『アットホーム・ダッド』が最高だった峰島役の阿部寛の台詞が聞き取りにくいのには困ってしまった。(麻生結一)




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