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妻の卒業式 (NHK総合月曜21:15〜21:58)
月曜ドラマシリーズ
制作・著作/NHK
共同制作/NHKエンタープライズ21
技術協力/NHKテクニカルサービス
美術協力/NHKアート
制作統括/加賀田透、大加章雅
作/田渕久美子
演出/遠藤理史(1、2)、中島由貴(3、5)、田中正(4)
音楽/佐藤允彦
主題歌/『また逢う日まで』尾崎紀世彦
出演/神崎恭子…岡江久美子、神崎里香子…高野志穂、榊原洋介…山田純大、松山俊明…小倉一郎、松山冴子…石井苗子、飯島茂…ウガンダ・トラ、飯島佳枝…渡辺真知子、パク・テホ…パク・トンハ、橘部長…中村新将、長倉弁護士…岩橋道子、山岸直正…半海一晃、坂下…片平光、キム・ジヨン…金泰希、勝田…松澤仁晶、デザイナー…花井京乃助、吉山潔…モト冬樹、大西貴子…伊佐山ひろ子、榊原俊典…原田大二郎、榊原悦子…沢田亜矢子、山下時子…淡路恵子、神崎隆之…三宅裕司
ほか

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最終回「また逢う日まで」(7/26放送)
☆☆☆
 離婚を切り出した方=隆之(三宅裕司)が切り出された方=恭子(岡江久美子)に、最後の最後で離婚を考え直してほしいと頼んでしまう成り行きが意表をついていて面白い。夫として、父親として、人事部長としての役割を下ろして一人の人間になりたかった隆之の思いを恭子は理解するも、だからといって雨降りの運動会のように、雨降って地固まる調子で離婚を延期するわけにもいかず、結局里香子(高野志穂)の結婚式の帰りに役所に離婚届を出しに行くことになる。このときの2人が新婦の両親としての正装のままという変化球ぶりにもクスッとくる。
 最初は随分としみったれた夫婦だと思ったけれど、それこそがミソだった岡江久美子と三宅裕司がいずれも好演。人生をすくわれたスープ作りを職業にすることを決意する恭子が、離婚届を出した直後にケーキを食べながら一人涙する場面はあまりに切実。
 恐ろしいほどにテレビ的じゃなかった佐藤允彦の音楽は、心のひだにねっとりとひっかかってきて秀逸。恭子の母親・時子を演じた淡路恵子のクールビューティぶりは素敵だったが、ご本人の実生活とは若干のギャップあり。1年後に孫の顔を見るべく再会した元夫婦がお茶を誘い合うラストが、意表をついて清々しく締めくくったあたりの裏切りもお見事でした。
 よく考えたら、前回放送分はNHK的祝日シフトの21:00スタートじゃありませんでしたね。これは大いなる進歩でしょ。(麻生結一)


第4回「離婚は罪なの?」(7/19放送)
☆☆☆
 どんよりとした音楽の雰囲気のままに独特の暗さにますます磨きがかかってきて、ドラマはいよいよ佳境に。何せ、離婚を言い出した方が弱気=隆之(三宅裕司)で、離婚を言い渡された方が強気=恭子(岡江久美子)の構図が面白いので、二人の心理戦だけで見せられても、退屈させられるようなことがない。
 スムーズに開かない引き出しがこういう横糸だったとは。悪戦苦闘の末に箪笥の修理し終えた隆之が、骨董家具の修復する職人になることを宣言するとともに妻に詫びる展開はNHK以外の局では許されないオチなのでは。このあたりをやらせると、田渕さんだってお上手なんですね。(麻生結一)


第3回「仕事を下さい!」(7/12放送)
☆☆★
 夫・隆之(三宅裕司)から離婚を切り出された恭子(岡江久美子)は、最初その事実を受け入れることが出来ずにじたばたするも、ついに離婚を決意。ところが会社ではリストラする側だった隆之が自ら会社を辞めることを宣言したものだから、いっそう自体は混沌としてきて。その話を聞いていた里香子(高野志穂)は家を出て祖母・時子(淡路恵子)のところに身を寄せるが、しまいには里香子までもが洋介(山田純大)と別れると言い出す。あらまぁ。会社を辞めた隆之は、恭子から家事仕事を剥奪?! 恭子は里香子が生まれる前まで勤めていた大西(伊佐山ひろ子)が経営するウィンドウディスプレイの会社に再就職するべく、日雇いで仕事をさせてもらうも、仕事をやめてから25年のブランクを容易にうめることは出来なかった。
 個々のプロット自体に新味はないが、テンポよくトコトン暗くなり続けていく成り行きはなかなか興味深い。ここまで明るいエピソードが一つもない、前向きな話も一つもない家族のドラマも久々の印象。田渕久美子脚本作がたぐいまれにうまくいくケースって、こういう苦々しさ100パーセントぶりが持続された場合に尽きるのでは。
 昔とった杵柄でウィンドウディスプレイの仕事に復帰した恭子だったが、まったく仕事についていけず。ついには、里香子の出産を理由に仕事を断念したような言い方は、才能のない自分へのいいわけだったことをカミングアウトするラストにしんみりとなる。『アットホーム・ダッド』みたいに簡単に復職なんて出来はずもないもんね。しみったれた感じの隆之を演じる三宅裕司も雰囲気満点。(麻生結一)


第1回「別れてくれないか?」(6/28放送)
☆☆★
 一人娘の里香子(高野志穂)から恋人の洋介(山田純大)と結婚したいと告げられたその夜、専業主婦の恭子(岡江久美子)は夫の隆之(三宅裕司)から別れてほしいときりだされる。
 なかなか面白かったのは、会社の人事部長でリストラする側である隆之が、社員の首を切ったその反動で自らの人生もリセットしたいという思いにいたるところ。母・時子(淡路恵子)が恭子をさとす言葉、

時子「あんた、自分の亭主に対してのさばりすぎてるわよ」

とは何とも生々しい。(麻生結一)




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