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虹のかなた (TBS系月〜金曜13:30〜14:00)
ドラマ30
製作著作/毎日放送
制作協力/テレパック
制作/山田尚、薮内広之
プロデューサー/登坂琢磨、黒沢淳
企画/登坂恵里香
脚本/登坂恵里香、楠本ひろみ
演出/竹園元(1〜10、31〜35、41〜45話)、池澤辰也(11〜20話)、大久保智己(21〜30話)、村上牧人(36〜40話)
音楽/渡辺俊幸
主題歌/『赤い糸』Les.R
出演/小川ちひろ…榎本加奈子、小川ちひろ(子役)…尾崎千瑛、唐沢佳和…涼平、水沢晶…伊藤かずえ、中野勇…小木茂光、遠藤美由紀…岩崎良美、桜庭…岡本信人、吉川光子…松金よね子、名越達昭…小林すすむ、秋庭寿則…赤塚真人、川嶋五郎…鶴田忍、油谷平作…中上雅巳、熊沢部長…大高洋夫、柴田…山本龍二、節子…宮地雅子、遠藤奈緒子…岡元夕紀子、メグミ…松本まりか、遠藤隆…甲本雅裕、広川真紀…本多彩子、田代茜…浅井江理名、印刷会社社長…モロ師岡、ミツル…山本康平、中根監督…久保酎吉、司会者…小林美江、真紀の母…村岡希美、北山…小手伸也、中野健一…塩顕治、遠藤奈緒子…水黒遙日、田代茜…小川真奈、広川真紀…北村美渚、フロントの女性…別府あゆみ、鳥羽刑事…丸岡奨詞、山元刑事…ノッチ(デンジャラス)、安曇陽子…松永玲子、商店主…俵木藤汰、事務長…宇納侑玖、スリの女…江口のりこ、谷本一、片岡富枝、網野あきら、大須賀裕子、九里美保、中野健一…松田悟志、長瀬満喜夫…石丸謙二郎、松村栄子…角替和枝、唐沢ゆき子…あき竹城、柴田啓三…品川徹、滝山里江…伊佐山ひろ子、小川直之…冨家規政、立野繁造(しげ爺)…藤村俊二、小川久美子…斉藤慶子
ほか

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第9週(9/27〜10/1放送)
☆☆
 中野(小木茂光)が美由紀(岩崎良美)と栄子(角替和枝)をテレビのワイドショーに引っ張り出して、母・久美子(斉藤慶子)こそが殺人犯との証言をさせているところにちひろ(榎本加奈子)が乗り込んでいってついに直接対決となるも、ちひろが中野に張り手一発をお見舞いしてその場の攻防はあっさりと終了。
 どうやら世論の評価が逆転した模様で、そんな中でどうしたことか健一(松田悟志)は先頭に立ってちひろの汚名挽回に貢献していくうち、いつの間にかちひろと健一は両思いになっちゃった。だったら、子供時代にもう少しそのあたりに触れておいてもよかったのでは。どうにも唐突な印象をぬぐえず。
 ちひろは中野を自らの手で殺すことを決意するも、一足先に到着した柴田(山本龍二)によって中野の半殺しが代行される。柴田に殴り続られる中野が、

中野「何なんだ、お前は?」

と吐き捨てる場面にはさすがに気の毒になる?! その場の傍観者であり続けたちひろは自らの罪の意識にさいなまれることになるも、運命を呪う気持ちを幸せな家族に向けていたと吐露する中野の自殺を食い止めてすべてを払拭。中野に引き続いて、名越、柴田もこぞってお縄となり、健一は地方の小さな会社で、ちひろは小さな劇団に新しい道を見出したとさ。壮大にはじまったわりには、随分と小さくまとめちゃった感じでちょっと不完全燃焼ぎみ。(麻生結一)


第8週(9/20〜9/24放送)
☆☆
 波乱万丈のエスカレートぶりも段々慣れっこになってきちゃうと何が起きてもそれほど驚かなくなってくるが、車に飛び込んだ奈緒子(岡元夕紀子)が幼児に退行したのにはさすがに驚いた。

佳和(涼平)「今は奈緒子より大変な人(=ちひろ)がいるんです」

って、傍目には幼児言葉の奈緒子ほど大変な人もいませんでしたけど。ところがちひろ(榎本加奈子)の存在にだけは我慢がならなかったらしく、

奈緒子「帰って!帰ってよ、この泥棒猫!」

とついに完全復活したかと思ったら、いきなりにちひろに平手打ちにされちゃって。

奈緒子「いつもあんたと比べられて、いつも負けてばっかりよ」

と激白するも、奈緒子こそがうらやましいとちひろに逆激白されて思わず号泣。ここにこれまでの幼児退行のすべてがすべて芝居だったことが明らかになる。

奈緒子「私、ちひろにもゴメンって言えばよかった!」

と目の前にある幸せを初めて噛み締める奈緒子には喜怒哀楽のすべてが。
 そんな奈緒子の大爆発ぶりと比べると、妄想&幻想諸々があまりにもダイレクトに連打されるちひろの復讐話にはさすがに食傷気味となる。ちひろのテレビドラマの悪女演技に不満タラタラで、

水沢(伊藤かずえ)「演出が甘いのよ」

との一言には胸のつかえがとれる思い。まぁ、この点に関しては先週から感想は変わっていないので繰り返さないけれど。
 自分の子供がひどい目に合わされてたら、その相手を絶対に許さない。でも、自分がひどい目に合わされて、その相手を自分の子供がつけまわしてるんだったら、頼むからやめてくれとの真紀(本多彩子)の言葉には大いに説得力あり。
 佳和と健一(松田悟志)が殴り合いのケンカの末に大同団結して、ちひろ更生プログラム=施設をまわって子供たちに芝居を見せる企画に一肌脱ぐとの大なたが振われて、善悪キャラの大胆な配置換えが敢行される。それでも、ちひろがナカノに『キルビル』的に潜入した際にいったんは壊れたと思われるも、しぶとく復活を遂げた(これも芝居だった?!)中野(小木茂光)がワイドショーで徹底抗戦に出た際に、その隠し玉として待ってましたとばかりに登場する美由紀(岩崎良美)は普遍の悪だったのがうれしかった?!(麻生結一)


第7週(9/13〜9/17放送)
☆☆★
 いったんは姿を消すのかと思われたちひろ(榎本加奈子)が間髪入れずに芸能界に復帰。そこで初めて、ゴシップ記者、ベビーシッター、ギャバクラ嬢、小劇団の主演女優のそれぞれがすべてちひろだったとみんなが気づくって、そのケレン味ぶりは衰えを知らず。それにしても、ちひろを芸能界に戻させたのが、まさか殺し屋・柴田(山本龍二)の一言だったとは。
 その復活劇の華々しさにビタースウィーツがそれなりに人気があったことを初めて知る?! 真紀(本多彩子)、茜(浅井江理名)の芸能界的な凋落ぶりを見るに、ビタースウィーツはちひろ人気で持っていたと推測されますかね。
 そしてワイドショーに出演したちひろは公共の電波を利用して、母・久美子(斉藤慶子)が

ちひろ「無実の罪をきせられて殺されたんです(「たんです」は×10ほどのエコー)」

との宣戦布告をする。先週まではワーグナーが愛聴盤だった中野(小木茂光)はマーラーやショパンを経て、追い詰められた挙句に「悲愴」を聴き始めるあたりがベタでいい。
 と、相変わらず展開はドラマティックに推移するも、ちひろを演じる榎本加奈子が肝心な場面で凄みに欠けているのが残念。爆発する場面とじっとりする場面でメリハリをつけてほしいんだけど、全般的に抑制が効きすぎていて、だからといってそれは内面演技というほどのものもない。はじけてたちょっと前をイメチェンしようとしているのはわかるし、普通の役だったらこれでもいいのかもしれないけれど、「不世出の女優」byしげ爺(藤村俊二)とまで言われてしまうとちょっと厳しいか。もちろん、「不世出の女優」の日常ではあるのだけれど。
 舞い込んだドラマのオファー2本のうち、健気で一所懸命な役どろこが昔のちひろそのものの、ハンディキャップを抱えながらも盲導犬の訓練士にある夢をかなえる話の『盲導犬ピノ〜ピノと過ごした225日』の主役を蹴って、恋人をたぶらかす嫌な女の役の『悪女マリア』を出演作に選ぶあたりは、期待通りの濃厚さ。(麻生結一)


第6週(9/6〜9/10放送)
☆☆☆
 その世界観にハマったが最後、次回がついつい見たくなる典型的なかっぱえびせん系ドラマの様相に。コミックとの連動は最近の流行なのかもしれないけど、昼ドラの公式ガイドブックっていうのはあんまり聞いたことがないなぁ。
 タイトルバックの

「お前だけは許さない!」

の声がちひろの子役、尾崎千瑛の声から榎本加奈子にチェンジ。最初大いに違和感を感じるも、じきに慣れるでしょうね。
 なるほど、ちひろ(榎本加奈子)が一回限定で女優業に復活するきっかけは、秋庭(赤塚真人)殺しの実行犯である柴田(山本龍二)に階段から突き飛ばされて大ケガをおったばかりか、ショックで声まで出なくなっちゃった佳和(涼平)をフォローするためか。そんな柴田(山本龍二)と中野(小木茂光)への復讐という一点において、ちひろが手を結ぶあたりの仰天の結託ぶりには思わず頬が緩む。
 ケレン味の極致は、『オズを夢見て』の本番にちひろの正体を知らずして主要登場人物の90パーセントほどが集結する展開。唯一知ってたのはしげ爺(藤村俊二)、途中で気がついたのは水沢(伊藤かずえ)だけって、ちひろの変装ぶりはほとんど無策ゆえに(ビックリしたのは、7年前の回想シーンの女子高生姿ぐらい)、何にもまして周辺の人々の気づかなさぶりがスゴいということになる。
 ちひろの4つの顔を持つ女ぶりを暴いた水沢は、ショービズの世界への復活を乞うも、ちひろは再び姿を消すことに。ちひろが初志貫徹するなりゆき自体は定まっているが、それまでの過程に大いに期待感あり。
 いい人、悪い人のそれぞれのキャラがわかりやすくハマり過ぎているだけに、そのあたりの安心感は抜群だが、中でも善から悪までのキャラクターを幅広く取り揃えている「けむりや」の方々の災難ぶりは第6週の大きなみどころに。中野の陰謀により、店に火をつけられ、終いには複数人にバットで袋叩きにされる隆(甲本雅裕)に負けないほど悲惨だったのが、

奈緒子(岡元夕紀子)「おはようございます」

との明るさとけだるさと中間ノリで普通に会社に行ってみたら、あまりにも唐突に解雇辞令が張り出されていた奈緒子その人。書類に角印を押している中野がニタリとする前置きがあったにせよ、まさか解雇とは。直接的な無傷は美由紀(岩崎良美)だけって、やはり彼女に手を出すのは厄介と踏んでのことでしょうか。(麻生結一)


第5週(8/30〜9/3放送)
☆☆★
 今が2002年の設定ということは、あの事件が起こった14年前は1988年か。1985年前後の予想も大ハズレじゃなかったかな。ドラマは装いも新たに、本格的な復讐劇に衣替え。あるときは調査員、あるときはベビーシッター、そしてあるときはキャバクラ嬢、またあるときは雑誌記者としてナカノのスキャンダル記事をスッパ抜き、盗聴だってお手の物って、ちひろ(榎本加奈子)はいつのまにこれほどまでの『ハングマン』的なスキルを身につけた?! とりあえずは、夢も約束も忘れるしかなかった、というかなしい境遇がそうさせたというで収めておきましょう。
 指きりのお兄さん・佳和(涼平)は、ちひろの天敵・遠藤奈緒子(岡元夕紀子)とつき合っちゃってて、その運命のいたずらに大チョック。健一(松田悟志)は昔ちひろが好きだからいじめてたって、こちらはかなり唐突な言いがかり?!
 久美子(斉藤慶子)に直接手を下した男・柴田(山本龍二)の元愛人・滝山里江(伊佐山ひろ子が友情出演)につきまとううち(寝たきりの柴田の父・啓三役は、『白い巨塔』の大河内教授こと品川徹)、疲労で倒れたちひろと時を同じくして、劇団員にチケット代を持ち逃げされた佳和も疲労で倒れるとの、この2人が運命の糸で結ばれている暗示も、『東京湾景』よりは素直に受け入れられる?!

美由紀(岩崎良美)「うちの中で倒れないでよ。縁起悪いから」

って、ドラマのトーンは大幅に変われども、美由紀のワルぶりは普遍で一安心。
 困窮する劇団の公演のチケット100枚に150枚分のお金を払った買った相手として、佳和がすぐにちひろを思い当たるとはちょっと察しが良すぎる気がしているうちに、そのチケットを買ったのは自分だと奈緒子が言い出して、ここからは奈緒子の悪女ぶりが全開に。
 チケットの件で頭が上がらなくなった佳和の前で、初主演の野村恵(松本まりか)に全否定的なダメ出ししたり、そのせいで失踪してしまった恵の変わりに、スポンサー特権とばかりに自らがヒロインを演じだすにいたり、もはや手がつけられない状態に。これがまた箸にも棒にもかからない大根ぶりときているから手の施しようがない。岡元夕紀子のここでの下手クソ演技ぶりが抜群にうまい!さらには、ちひろが目前にいるところで佳和との濃厚なキスを演じてみせたりと、やりたい放題この上なし。キスをしながらちひろを流し目風ににらみつけるあたりは、日本のドラマでは絶滅寸前であるこれぞ悪女といった感じでゾクッとさせる。岡元夕紀子という女優さんの最近はよく知らないんですけど、なかなかやるなぁという印象。
 お金がなくなっても、主役がいなくなっても、常に前向きな佳和の楽観主義ぶりもある意味怖いんだけど。彼女である奈緒子の大根ぶりに見切りをつけたら、今度は実は本当のチケット買占め犯であるちひろに公演の主役を依頼するあたりの、手身近で一大事を乗り切ろうとするあたりの無策ぶりにも呆れるのみ。
 随分乱暴な話だとは感じるけれど、無駄なキャラクターを混入させずに少数精鋭で展開を打開していこうとするあり方は昼ドラの王道だと思うし、それおかげで物語の勢いこんだ感じが出ているとも言える。ダークサイドのパートを一手に引き受ける中野(小木茂光)が、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を聴いて、一人でチェスをするとろこも、こういうステレオタイプを堂々と使い切ってるあたりがこのドラマのテイストにピッタリとマッチしている。(麻生結一)


第4週(8/23〜8/27放送)
☆☆☆
 ちひろ(尾崎千瑛)の子供時代の最後、そして大人に成長して、ようやく主演の榎本加奈子が登場した。あとから振り返ってみたら、ここが一番面白かったと思い出してしまうかも。そう思わせるような、俗っぽくも壮大な復讐劇にワクワクさせられる。随所にやりすぎと感じるも、こういうケレン味は何だか懐かしくてちょっとうれしい。
 全国縦断アイドルタレントオーディションでグランプリを受賞した茜(小川真奈)と審査員特別賞のちひろ(尾崎千瑛)は当確として、なぜだか元気印の真紀(北村美渚)も加わってビタースウィーツが結成され、デビューに向けてレッスンの日々。ぶりぶりぶりっ子=茜v.s.男勝り=真紀、とののしりあう2人も、ちひろを潤滑油に次第に結束を固めていき、といったバックステージものらしいよさが満載。
 いじめられっ子からちひろはマドンナのサインがほしいとねだられる、ということは、1985年ぐらいの設定でしょうか。ついに「歌のヒットテン」に出演し、レコードもそれなりにヒットすると、美由紀(岩崎良美)は手のひらを返したかのようにちひろに擦り寄り、女工哀史を引き合いに出して無理やりに連れ去ろうとするも未遂に。そのことを逆恨みして、美由紀はちひろの境遇を雑誌に暴露するも、川嶋(鶴田忍)は出版社に手を回し、涙の記者会見にもさくらのレポーターを仕込んで、ちひろを薄幸の少女に仕立て上げることに成功。期待通りに、川嶋(鶴田忍)はやっぱり悪い人でした。さすがは鶴田忍!記者会見でCMに入ると、実際のドラマもCMに入る、といったお遊びも久々に見たような。
 その記者会見をテレビで見ていた久美子(斉藤慶子)の内職仲間だった栄子(角替和枝)からことの真相を聞かされて、中野(小木茂光)こそが母をおとしいれたとのからくりをちひろが見破り、いよいよ復讐劇のはじまりはじまり。
 と思いきや、夢は消え、虹のかなたには何も見えなくなり、ちひろは失踪。そして14年後の設定に。真紀(本多彩子)はベビーシッターの会社を営むしがないシングルマザー、茜(浅井江理名)は銀座の雇われママになるも、2人に近づいたフミコと名乗るちひろ(榎本加奈子)にかつてのちひろを見つつ、誰も気がつかない。
 美由紀の娘にして、ちひろのかつてのライバル、奈緒子(岡元夕紀子)は学生芝居に毛がはえた程度の劇団の演出家になった佳和(涼平)と恋人同士になっちゃいましたか。ちひろが復讐の鬼になる展開は予想通りも、女優の夢をあきらめてしまったとはちょっとがっかり。バックステージもののプラスアルファこそが、このドラマの生命線だと思ってたのに。巡り巡って、夢よ再びという展開もありそうな気がするけど。じゃなきゃ、劇場の座席でちひろが回想するシーンにつながって行かないだろうから。何はともあれドロシーのオルゴール、ほしいですね。(麻生結一)


第3週(8/16〜8/20放送)
☆☆★
 元ミス巨峰の経歴が判明した美由紀(岩崎良美)に追い出されたのを皮切りに、引き取られた中野(小木茂光)の家では健一(塩顕治)にいじめられるは泥棒扱いされるは、はたまたオーディションに落とされたことで逆恨みする菜穂子(水黒遙日)には土手から突き落とされるは、といった不幸の雨あられぶりと、しげ爺(藤村俊二)の助力によって川嶋プロ主催の全国縦断アイドルタレントオーディションで審査員特別賞を受賞するその輝かしさとの落差のほどに、ちひろ(尾崎千瑛)の流転ぶりにスピードが増してきて、ドラマの面白さもいよいよ本格的になってきた感じ。
 アイドルタレントオーディションの募集広告には、大沢逸美が実名で載ってる!雑誌の表紙には比企理恵、仁藤優子の名前も。ってことは、このアイドルタレントオーディションのモデルはホリプロ・タレントスカウトキャラバンなのでしょうね。設定も昭和60年前後あたりと推察。グランプリよりも審査員特別賞の受賞者こそが大物になる法則もふまえてあって思わずニッコリ。
 オーディションに備えるべく、メイクして、衣装をチェンジして、宣材撮って、歌を録音してといった一連をミュージカル風に見せるあたりは今後の定番になるのかな。しげ爺がちひろにオーディションの合格を知らせるためのアイテムが、黄色いリボンだったりするあたりもメルヘンチックならしさがある。
 抜群だったのが、指きりのお兄さんこと佳和(涼平)に導かれて、ちひろが舞台袖から『オズの魔法使い』を見るシーン。カーテンコールで転ぶくだりも演出であることを知るところの細かさにはうれしくなる。
 オーディションで聞かれた「好きな言葉は?」との質問に、

ちひろ「負けないもん。負けるもんか。負けてまたるか〜っ」

と絶叫してハングリー精神の塊ぶりを発揮するあたりが今週のピーク。驚いたのは、これだけ悪い人ばかりが登場するドラマの中にあって、悪い人を演じさせたら一流である川嶋プロの社長役の鶴田忍が悪い人じゃなさそうだったところ(『ウォーターボーイズ2』第7回参照)。プロダクションのマネージャーの水沢晶役で伊藤かずえが登場し、現大河ドラマ級の豪華キャストもこれで出揃った。物語物語している感じは旧型のフォーマットなれど、期待を裏切らずに予想を裏切るドラマの進め方にはやはりそそられる。(麻生結一)


第2週(8/9〜8/13放送)
☆☆★
 ガンが再発した久美子(斉藤慶子)は、中野(小木茂光)にちひろ(尾崎千瑛)の劇団の費用を貸してほしいと懇願。これ幸いと部下の名越(小林すすむ)に命じて罠にかけ、前もって殺しておいた酔っ払いのエロ工場長・秋葉(赤塚真人)が、あたかも内職の納品に行った久美子が秋葉に襲われた末の正当防衛で殺したように見せかける。余命いくばくもない久美子は、中野の魂胆を察しつつ、黙秘を貫いて獄中で死んでしまう。
 と、筋だけをかいつまむとあまりにも殺伐とした話だが、実際には学校では中野の息子・健一(塩顕治)にいじめられ、家に帰れば清らかな心を持ってる天使(=久美子)をいじめる鬼婆・美由紀(岩崎良美)にいびられ、出前に行かされたりと、ますますいいこと一つもなし。
 唯一の救いは、豪華キャストの先陣を切って登場した藤村俊二演じるしげ爺の存在。劇団に通わなくても演技の勉強は出来るとの持論がなかなか面白い。意地悪されたらその人物をよく観察し、鏡の前でその表情を再現してみるとはなるほど。両手に重たい荷物を持っている人を想像してみれば、意地悪な役を演じられるとのメソッドにもフムフムとなる。その方法を発見できた間接的恩人こそが美由紀とは、なかなか皮肉が効いてる。
 久美子の最期を看取った拘置所の看護婦(?!)・ゆき子(あき竹城)とその息子で舞台制作をやっている佳和(涼平)が亡くなった久美子とちひろを結ぶ架け橋になる模様。(麻生結一)


第1週(8/2〜8/6放送)
☆☆★
 これでもかとういうほどに主人公・ちひろ(尾崎千瑛)にふりかかってくる不幸の雨あられに、読み物的なストーリーの面白みを予感させる新しい昼ドラは正統的な復讐劇になる模様。ミュージカル『オズの魔法使い』に大感激して、舞台女優を志すちひろの表情に一点の曇りもないオープニングが希望に満ち溢れていただけに、その後の転落との落差が効いてくる構成には、懐かしいワクワク感があった。
 ちひろの父・直之(冨家規政)は先代を引き継いで家電メーカーの社長になったものの、随所にボンボンぶりを発揮して社員に裏切られるはめに。存分なるやさしさを施していたはずだった元運転手の中野(小木茂光)に主力商品である開発途中の空気清浄機のアイディアを盗まれたことで窮地に追い込まれ、失意のうちに自殺してしまう。
 病み上がりの母・久美子(斉藤慶子)とちひろは久美子の弟である隆(甲本雅裕)が営むうどん店に住み込みで働くことになるも、隆の妻・美由紀(岩崎良美)の意地悪ぶりにさらされることに。

美由紀「どぶネズミ親子が」

なんてののしりにベタな不条理感が満載。1カ月分の給料として、1万円をひらひらとなびかせながら渡される様も妙に楽しげ。学校では母親の死をちひろのせいと逆恨みしている中野の息子・健一(塩顕治)のいじめが激化と、まさにろくなことなし。
 トメの斉藤慶子に特別出演の肩書きは奇妙に思えたが、余命に限りがありそうな久美子だけにそういう扱いなのかな。タイトルバックを見る限りでも、キャストは相当に強力そう。(麻生結一)




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