TV DRAMA REVIEW HOME

天花 (NHK総合月〜土曜8:15〜8:30)
連続テレビ小説
制作・著作/NHK
制作統括/佐野元彦
作・題字/竹山洋
演出/長沖渉(1、2、5、6、11、16、19、26)、加藤拓(3、4、8、9、14、15、20、24)、勝田夏子(7、12、18、21)、菓子浩(10)、大杉太郎(13)、大原拓(17、23)、土屋勝裕(22、25)
音楽/村松崇継
主題歌/『名前のない空を見上げて』MISIA
語り/山根基世アナウンサー
出演/佐藤天花…藤澤恵麻、佐藤秀子…片平なぎさ、佐藤信夫…香川照之、鈴木竜之介…平山広行、川島薫…市川実日子、蔭山佐知子…木村佳乃、加瀬(真田)珠江…中嶋朋子、加瀬豪…辰巳琢郎、佐伯陽子…涼風真世、佐伯静…星野真里、鈴木亜希子…石野真子、畑山精吉…柳沢慎吾、高杉新一…毒蝮三太夫、田中サチ…内海桂子、木下藤夫…黒田アーサー、正岡弘子…杜けあき、森田聡子…国生さゆり、森田ノリ…左時枝、吉野彩子…井上晴美、宮澤賢…吹越満、正岡利夫…ダンカン、藤堂怜子…奥貫薫、斉藤登一…小倉久寛、正岡建郎…小林勝也、正岡妙子…岩本多代、篠田(佐藤)由加…サエコ、篠田純一郎…片山怜雄、柾純一…大島宇三郎、畑山順子…宮地雅子、小田…佐藤正宏、高橋早苗…松井涼子、木下厚子…孕石きよ、滝沢サラ…河本千明、茂木大介…山本康平、河村健太…尾美としのり、河村直子…水沢螢、田村…サンプラザ中野、山本拓真…嵐広也、栗山貴子…藤井悠、角田篤志…真柴幸平、ティム…マーク・チネリ、川島立子…山下容莉枝、田中光司…俊藤光利、宅配業者…松本元、篠田しのぶ…山村美智、笹木康介…布川敏和、笹木順子…黒沢あすか、落合由香里…伊藤裕子、三浦哲子…渡辺真起子、篠田一郎…草川祐馬、岡崎誠…西川忠志、高森祥子…鶴水瑠衣、三浦花梨…中澤花恋、正木恵子…木内友三、早川栄子…大塚良重、加藤よしこ…榛葉梨奈、河野圭一…西脇礼門、沢村直美…三輪明日美、大町量子…西條三恵、吉本美貴…上原歩、藤堂顕治…谷川俊、沢村翔太郎…永岡佑、笹木順…佐々木泰喜、張本洋子…河野麻子、山田安男…高山広、原田進一…出光秀一郎、原田幸子…猫田直、医師…真山章志、冬木正照…朝倉伸二、カメラマン…ホンマタカシ、能田弘之…板尾創路、マスター…いしかわじゅん、吉野隆…古田大虎、和田…野添義弘、若尾のりこ…大友町子、星野課長…藤田宗久、山口…佐藤貴之、川島伸好…関貴昭、郵便配達員…長谷野勇希、平井勝子…加賀まりこ、鈴木大樹…竹中直人、佐藤信一郎…財津一郎、鈴木美子…富司純子、鈴木昭三…中村梅之助
ほか

>>公式サイト


最終週「果たされた約束」(9/20〜9/25放送)

 天花(藤澤恵麻)と竜之介(平山広行)の結婚報告時に髭剃り出来なかった大樹(竹中直人)に若干の悪意を感じてしまうあたりが、このドラマのこのドラマたるところ。高杉(毒蝮三太夫)がウェディングドレスのことを檀家に話しそびれるとは、これは完全なる悪意だけれど。
 どうしたことか、天花のウエディングドレス姿がやつれ気味に見える。藤澤さんは『スタジオパーク』で見た感じは素敵だっただけに、このとき疲れもピークだったということか。仰天は加瀬(辰巳琢郎)のプレスリー!これは明らかに★一つ減でしょう?!
 最後は野菜を送ってもらって、みんなで天花大絶賛!最後まで共感を拒絶する語り口は首尾一貫していたといえば一貫していたと言える?! 何はともあれ、6ヵ月後にはじまるAKの朝ドラ、橋部敦子脚本、本仮屋ユイカ主演の『ファイト』がいい作品になることを祈るしかない。視聴者って、あまりにも無力ですね。(麻生結一)


第25週「走りはじめる二人」(9/13〜9/18放送)
☆★
 信夫(香川照之)が秀子(片平なぎさ)の家出作戦の誘導に引っかかり、イグネに帰って信一郎(財津一郎)とともに農業をやるお話と、いったんは別れた天花(藤澤恵麻)と竜之介(平山広行)が、保育園関連では珠江(中嶋朋子)の、相徳寺住職関連では大樹(竹中直人)の半ば強引な突き放しを受けて、ついに2人が結ばれるお話の2本立て。

竜之介「やっとわかったよ。君を好きだ」

って、遅いよ。朝ドラヒロインの恋愛成就にここまで頭にきたとこはかつて記憶がない。
 ちょっぴり面白かったのは、木下(黒田アーサー)の趣味が全国鍾乳洞巡りだったこと。ひとよし庵を秀子から受け継いだ亜希子(石野真子)が木下と結ばれたことに関しては、少なくとも天花&竜之介カップルよりは祝福する気持ちになる。(麻生結一)


第24週「幸せのかたち」(9/6〜9/11放送)
☆★
 ここ最近、最終盤の『天花』が盛り返してるという話をチラホラ耳にするが、果たして本当にそうだろうか。確かに、自然の中で保育園をやるという天花の指針がはっきりしてきている分、以前に比べればいくぶんか見やすくはなっている。しかし、味の薄いキャラクターが消えてはまた現れ、結局は消えていくといった中途半端な仕掛けぶりは相変わらずだし、この期に及んで天花(藤澤恵麻)と竜之介(平山広行)が別れる別れないなどと言われても、もはや勝手にしなさいとしか思いようがない。
 天花役の藤澤恵麻が成長著しいとも聞かされたけれど、もともと彼女はそれほど悪くなかった。それは単に役が悪かっただけのことで、その役に若干なりともかわいげが出てくれば、当然もともと悪くなかった彼女がよく見えるのも当たり前。演技の下手云々に関して言い切れないなと思ったのは、『澪つくし』の沢口靖子がイメージほどにひどくなかったことを確認したゆえに。イントネーションへのこだわりが薄いおかげで、今の彼女よりも演技が流れている印象を受ける。
 というわけで、『天花』が盛り返してきているのか否かに関しては、すでに手の施しようのない状態にまでいってしまったものが、いまさら盛り返せるはずもないでしょうにと断言するも、『東京湾景』というさらなる低みを見せられたことで、ここしばらく最低のレッテルから逃れているのも事実。やはりこの第24週も『東京湾景』の最終回に比べれば、数段面白かったもん。(麻生結一)


第23週「自然の中の保育園を」(8/30〜9/4放送)
☆☆
 自然の中での保育を実践に移す足がかりとして、仙台に帰ってきた天花(藤澤恵麻)が信一郎(財津一郎)に頼み込んでイグネを拠点にはじめた託児所での悲喜交々。こういうシンプルな展開に早々シフトしてれば、あれほどまでのドラマ的困窮にはいたらなかっただろうに、という批判の意味も込めて、★一つプラスということで。プラス要因でさえも批判によるものとは、ちょっぴりかわいそうにもなってくるけれど。
 天花の熱意に託児所の認可を出した役所の職員・河村(尾美としのり)とその妻・直子(水沢螢)の子供がイグネの託児所第一号に。ところが、その子がケガをして一大事となるも、結局天花の誠意が通じて丸く収まる、という展開はこれで2回目となる焼き直し。一人での保育に疑念を持つ山本(嵐広也)は天花をけなしたり、やっぱり子供を預けたり、またまた天花をののしったり、最後にはまた預けたり、とコロコロと心変わりするって、また忙しいことで。もはや珍しくもないキャラクターの一貫性のなさは、いかにもこのドラマらしい行き届いてない感じ。このあたりを細かく査定すると、やっぱり☆★になっちゃうんですけどね。
 アリの巣のそばに置いた角砂糖、何にもしなくても子供たちが集まってくる、という天花が天性の教育者であるとの論に対して、

亜希子(石野眞子)「そういえば、角砂糖って見なくなったわね」

とのまったくドラマの流れに関係ない、そのズレっぷりがちょっぴり面白い。角砂糖ほどにドラマから離れてはいないが、イグネの託児所を必死に切り盛りする天花を励ますべく、竜之介(平山広行)が唐突に

竜之介「フレーフレー」

とやりだしたときには、竜之介の精神状態が大いに心配になったけれど。せっかく住職になったんだし、もう少しは魅力的なキャラクターに描いてあげないと、ちょっと気の毒だなぁ。(麻生結一)


第22週「私たちの未来」(8/23〜8/28放送)
☆★
 法律の改正により、保母、保父が保育士と呼ばれるようになった1999年。ってことは、これまでのお話は1999年以前だったってことか。いまさらながら、そんな初歩的なことを知る。
 昨日は竜之介(平山広行)が修行から戻ってきたかと思ったら、今日は薫(市川実日子)がパリから帰ってきて、ドラマの顔ぶれだけは最初期に戻る。結局、相徳寺保育園は閉園されることになり、第18週でほのめかされた自然の中での保育の話が進展。そのことはまたまた竜之介との関係の後退を意味するわけだけれど。ここで同じようなシーソーをやっても仕方がないと思うんだけどなぁ。(麻生結一)


第21週「先生を忘れない」(8/16〜8/21放送)
☆★
 秀子(片平なぎさ)と信夫(香川照之)が箱根に一泊旅行とはあまりにも唐突だなぁと思うも(先週末にそういうフリがあったような、なかったような)、由加(サエコ)と篠田(片山怜雄)の結婚話に反対して大阪から篠田の父・一郎(草川祐馬)と母・しのぶ(山村美智)が乗り込んでくるに、慌てて帰ってくるくだりがやりたかったんだろうか?だとするとまったく効果はあがっていない。
 結局、父親同士の応援団つながりですっかり打ち解けるオチ自体は、このドラマにしては悪くない方だとは思うけれど、由加を中学生呼ばわりしていたしのぶの急激な軟化ぶりにはちょっとビックリ。とんとん拍子に婚約がまとまった後、才色兼備の噂でもちきりだった篠田の元カノ・祥子(鶴水瑠衣)が由加にいちゃもんつけに登場するも、まさかあのワンシーンだけでおしまい?! 隣のスタジオで別のドラマを撮ってて、空き時間が長かったから軽く出てみましたといった趣に、ただただ首をひねるのみ。
 お米と野菜が嫌いな花梨(中澤花恋)に給食を食べさせようとする天花(藤澤恵麻)のパートも、それほどの奮闘もなく解決。花梨の母親(渡辺真起子Iが保育園での野菜作りを通して改心するあたりは朝ドラらしい落ち着かせ方だとは思うけれど、週代わりの父母ゲストとの絡みで何とかしのいでいこうとするやり方は継続性にこそ本領がある朝ドラ的なよさからは程遠い。傑作『ひまわり』の場合は2週間毎のゲストが徹底されていて面白かったが、こちらにはあれほどの人間同士のぶつかり合いがあるわけもないので。
 天花はお久しぶりの大樹(竹中直人)に人生の意味づけまでも示唆するほどにお偉くなられたようで。直後に病に冒されていたとの予告通りに美子(富司純子)が逝ってしまうとするならば、天花と大樹を絡ませている場合でもなかったようにも思えるが。
 美子が一針一針に心を込めて縫った作務衣や浴衣の贈呈式に、

珠江(中嶋朋子)「美子先生のものある」(美子自身のものも繕われていたという意)

という台詞が、どうしても「美子先生のオマル」にしか聞こえないとは、せっかくのしんみりさえもドラマの神様は拒絶させてしまうのか。朗報としては(?!)、中村梅之助と平山広行、そして市川実日子(予告編にて確認)もドラマを降板していなかった模様です。(麻生結一)


第20週「握手をしよう」(8/9〜8/14放送)
☆★
 美子(富司純子)のコラムで取り上げた「待つ保育」を実践に移す天花(藤澤恵麻)の静かなる奮闘記。藤澤恵麻は最初期のおかし味がちょっぴり戻ってきているようにも感じられたり。久しぶりにいいことを書いたような。もちろん、できうる限りいいところも見つけるようにはしてるんですけどなかなかね。
 唐突に登場した珠江(中嶋朋子)の見合い相手、岡崎(西川忠志)は会うなりサーフィンに誘うも、

天花「展開が急すぎます」

って、これまた天花こそが正しい。制作者にも自覚があるのか。
 ドラマの救世主、佐知子(木村佳乃)は九州に転勤に。「さよなら佐知子先生」のテロップが出るってことは、本格的にお役ごめんの模様。先週の指摘の効果のはずはないものの、佐知子が龍之介(平山広行)を話題に出してくれてたことにはホッとする。佐知子は最後まで正しい人でした。ということは、まだ平山広行さんも降板していなかったってこと?!
 キャリア40年の美子が臨時保母として現場復帰。いったんダメだといっておいて、ほんの数10秒後に復帰のOK出すって、それも変な話だなぁ。
 謝りやすい環境を整えるとの天花の説得に大いに待たされるおもちゃを壊した海斗(水落海斗)の母親役で伊藤裕子が登場。『農家のヨメになりたい』からの連投に、NHK女優化の予感が。
 由加(サエコ)から永久就職を宣言されたり、珠江がお見合いしたりするたびに絶叫する亜希子(石野真子)が、ドラマとは独立した形で結構笑える。(麻生結一)


第19週「新米パパ、応援します!」(8/2〜8/7放送)

 随分昔に見た記憶も、「先週の『天花』はどうしたんでしょうか?」とうながされて書き忘れに気がつく始末でして。まだ1ヶ月半以上残しているというのに、この体たらく。果たしてこちらの体たらくか、それともあちらの体たらくか?!
 前にも書いた気がするが、精吉(柳沢慎吾)はいつの間におしゃべりにキャラに?最初は酒が入ると饒舌になる程度だったけれど、今では野放図状態でしょ。そのあたりがひっかかったままなので、順子(宮地雅子)が高齢妊娠したことの感慨もゼロに等しい。大体、順子がフィーチャーされたことだってなかったでしょ。
 朝ドラのよさとは、長い人生行路劇を小さな積み重ねによって見せていくところのはずなのに、『天花』にはその特性が完全に欠如している。作品のコンセプトと全体像に関する指針のない制作サイドのド素人ぶりにはただただあきれるのみ。オリンピックの2週間、とりあえずは放送を中止してみて、みなさんで勉強し直していただきたい気分も、もはや録り終わっているものはどうすることも出来ないか。
 そこまで言うのなら見なきゃいいじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、生活習慣とは恐ろしいもので、朝ドラのない1日はやはり考えづらい。見る側がその昭和的日本人体質を克服するか(つまりは見なくなる)、残り少ないながらも最後の意地を見せていただくか、視聴者が救われる道はこの二つに一つかな。あとは時間が解決してくれるでしょう。『てるてる家族』の勢いに乗って、BKの次の朝ドラが素晴らしい出来ばえになることを祈らずにはいられない。朝ドラって、いつから祈りの対象になった?!
 それでは再び、もしかしたら猛暑のせいでものすごく面白いところなんかを見逃してしまっているのかもしれない現在放送中の朝ドラの話に。BABUで奮闘する信夫(香川照之)の知恵袋として、由加(サエコ)がアイディアウーマンぶりを発揮。この妹にスポットが当たったのって、これで2、3回目?! 先週回を救った佐知子(木村佳乃)も今週は出番少な目のために無力。そんな佐知子の新聞に掲載されている美子の「子育て悩み相談」には、これまでの経緯を考えると相談したくない。アメリカで心理療法として広まったらしい赤ちゃん抱っこの効用みたいな話も、もっと頻繁に出せばいいのに。もちろん、とてもよく出来ている『すくすく子育て』を見れば、事足りますけどね。
 ところで、あれほどまでに注目の的だった龍之介(平山広行)を話題にする人も今やなしか。薫(市川実日子)は?陽子(涼風真世)は?静(星野真里)は?昭三(中村梅之助)?実はこのドラマに耐えられなくなって、みなさん降板なさってるとか?!(麻生結一)


第18週「笑顔のママでいるために」(7/26〜7/31放送)
☆★
 相徳寺保育園を取材するために、天花(藤澤恵麻)の高校時代の担任だった蔭山佐知子(木村佳乃)が新聞記者として再登場したからか、ドラマのバランスが若干よくなる。ここまで空席であり続けた無軌道な天花をサポートする役割を過不足なく穴埋めした格好。こうなれば今後も欠かせない存在に思えてくるのだが。政治家を目指して教師を辞めた佐知子がいったん新聞記者になり、再び政治家に回帰する流れは、まるで一人『新しい風』状態!
 保育園が有料システムであることをことごとく無視する18歳の専業主婦・直美(三輪明日美)は、よくぞ天花をテンテンと命名してくれました。育児を完璧にこなそうとするゆえに壁に突き当たって、電話相談で母親をやめたいと吐露する怜子(奥貫薫)との両極的母親コンビの存在には、このドラマが長いこと忘れていた物語の展開というものが随所に含まれる。
 もちろん、3日前に七夕の劇を企画したりするあり得ない行き当たりぶりも依然として健在。保護者の皆さんに大好評の連絡帳には元美術部としての腕がいきていた天花の心には、田んぼに森羅万象があるイグネで保育園を開くイメージが広がっていくよ。この新たなる目標によって、ドラマの結び方がようやく定まったかな。(麻生結一)


第17週「働くお母さん、応援します!」(7/19〜7/24放送)

 ここ最近は四捨五入につき切り上げの☆も、今回は切り下げの☆。つまり、先週よりはマシだった印象も、それとて☆は譲れない。ただ、もはや壊滅状態のレギュラー脇役陣に比べれば、息子のヒロキを新生・相徳寺保育園にあずけている仕事が忙しい聡子(国生さゆり)と、女は子育てに専念すべきと聡子をたしなめる姑・ノリ(左時枝)の激突に若干の目新しさがあったかな。
 少なくとも、美子(富司純子)が抜けたことにより、相徳寺保育園はいい保育園に生まれ変わりつつある模様。ドラマはもはや生まれ変われないんだけど。
 腰を痛めた信一郎(財津一郎)絡みで、いまだに信夫(香川照之)との因縁にこだわる亜希子(石野真子)に対して、

美子「あなたまだそんなこと言ってるの。しつこいわね」

との一言には、胸のすく思いがする。もちろん、この台詞さえも胸のすかないドラマを書いている脚本家の筆によるものかと思うと、やはり不機嫌になってしまうのだけれど。
 名前を列挙するまでもないかもしれないが(ほぼ全員だけに)、片平なぎさ、香川照之、石野真子、柳沢慎吾、吹越満、加賀まりこ、竹中直人、財津一郎、富司純子、中村梅之助といった方々のこれだけふるわない様を見るのはつらすぎる。(麻生結一)


第16週「園長交代」(7/12〜7/17放送)

 園長就任案から一転、いったんは首になった珠江(中嶋朋子)が相徳寺保育園に戻る戻らないの押し問答に費やされた時間90分。相徳寺に新住職として派遣された柾純一(大島宇三郎)は利潤追求というわかりやすいスローガンのもとで、給料の高い古株の保育士、珠江(中嶋朋子)と宮澤賢(吹越満)が解雇されることに。唐突に珠江派を襲名した天花(藤澤恵麻)は労働争議を魂胆するも、実際には珠江のことを思っているというよりも、自分一人で保育するのが不安だっただけ?!
 力を失った美子(富司純子)は、仕事が終わってからコンビニで働いてもかまわないと言い放つ天花に、

天花「先生はちょっと間違ってます」

と罵倒されるも、誰の目にも完全に間違ってるのが天花であることは明々白々。もちろん、もっと間違ってるのはこの脚本家先生の方なんだけど。結局、美子が保母としてのスキルを問うたことで、青二才の天花先生は口をつぐむことに。何という後味の悪さかな。
 新キャラとして、新しいデンタルクリニックの先生、木下藤夫(黒田アーサー)が登場。と思ったら、次の瞬間一目ぼれで天花に結婚を申し込む。逆に宮沢賢はアウト。このキャラって、何しに出てきたの?(麻生結一)


第15週「相徳寺保育園は負けない!」(7/5〜7/10放送)

 今さらながらに“美子(富司純子)のために出来ることミーティング”が催されて、相徳寺保育園の閉園が決定。と思いきや、やっぱり続けられることに?! もはやどっちでもいいのだが、聞き入れられるはずもないむなしい要望としては、もはや結末はいらないのでこのエピソード自体を即刻やめていただけないものか。
 そのドサクサに、天花(藤澤恵麻)は美子の白髪を発見!このヒロイン、いつもながらに目のつけどころが違いますね。あの年だったら白髪ぐらい普通にあるだろうに。
 仕事も恋も同時に失った天花に責任を感じる美子に対して、

天花「美子先生って、やっぱり凄いよ」

って、相変わらずのお人よしぶりももはやいっさい同情できず。思い出したように薫(市川実日子)に手紙を出す天花。2人は音信不通ってワケじゃなかったんですね。想像するに、制作スタッフ全員がそのことについて忘れていたのでは。
 第15週にして、ついに妹・由加(サエコ)が夜遊びデート話でフィーチャーされる!さらには、

由加「私、時々お姉ちゃんがわからなくなる。凄くイライラする」

と煮え切らない天花を叱咤し、このドラマ唯一の正しさを体現。ところで、精吉(柳沢慎吾)の無口キャラは何だったんだろう?もはや随分しゃべってますよ。お酒が入ってるといういいわけされるかもしれないけど。(麻生結一)


第14週「今日から明日へ」(6/28〜7/3放送)

 前半戦は保育園閉園云々について。後半戦は陽子(涼風真世)にもう一度生きてほしいとの願いについて。何という展開力の欠如。はっきりと言ってしまえば、もはやこのドラマは見るに値しません。仮に値するような状況になりましたら、この場でご報告いたしますので(と宣言してみたのは、自らの脱落防止策だったりする)。
 霊園建設失敗の責任を取って、昭三(中村梅之助)が今さら修行のために山篭りって、何じゃそりゃ。美子(富司純子)の今さら懺悔も妙に癇に障る。資金難の保育園を救うためのお布施を押し付けあって、この人たちは何する人ぞ。天花(藤澤恵麻)はなぜ美子を心配してるのかと思いきや、涙もろくなってるからって、何じゃそりゃ。

「人の痛みというものをよく勉強しなさいよ」

誰が言ったかもはや知らないが、この台詞はそっくりこのドラマの制作者にお返ししたいです。これほどまでの苦痛な朝ドラは記憶にない。まったく痛すぎます。よく勉強し直していただきたい。
 竜之介(平山広行)と天花の結婚話の復唱を今週担当したのは亜希子(石野真子)。そんな彼女の言葉に、

竜之介「何バカなこと言ってるんですか」

って、自覚はあったか。と思いきや、舌の根も乾かぬうちに何十年も修行したいから別れてほしいって、この男の優柔不断には信夫(香川照之)ならずとも怒りますよ。信夫は怒りすぎだけど。
  病の陽子にもう一度生きる気力をって、これも手を変え品を変え変奏させ続けております。担当の先生に再検査の直談判といっても、天花にそんな権利が?! 『ホームドラマ!』的にはウザい典型なれど、その後もあのドラマのキャラクターのように反省がないからいっこうに直らない。キャラクターの共感度からいけば、『こころ』よりはましかと思っていたけれども、似たりよったりというか、そんなボトム同士を比較したくもなくなってくる。(麻生結一)


第13週「正直なひと」(6/21〜6/26放送)

 最近、このドラマのレビューが段々短くなっている?! 確かにそんなような気もしてみたり。反省も含めてきっちり見ていこうと意気込むが、そんなせっかくのやる気も週変わりのエピソードの継ぎ目が相変わらずさっぱりわからなくなっていて、いきなり気概をそがれる形に。
 それにしても、陽子(涼風真世)が天花(藤澤恵麻)に渡した指輪を手切れ金だと読み解く秀子(片平なぎさ)も相当に意地が悪い。

「目がわびているよう」

というNRでしかそれとわからないし、

「私と竜之介の思い出」

という講釈を聞いてもいっこうに釈然としないんだけど。
 昭三(中村梅之助)と信一郎(財津一郎)が絶交を解消。これも一体、何だったんでしょうね。絶交してようがしてまいが、まったく変化がないんだけど。
 一番怖かったのは、このドラマの常なるトピック、竜之介(平山広行)が天花にささやく言葉。

竜之介「僕たちは永遠だと誓わないか?」

その台詞が一瞬、

「このドラマは永遠に終わらないと誓わないか?」

に聞こえて身震いする。
 信夫(香川照之)は副社長を打診される。BABUでどうして信夫(香川照之)がそれほどに重宝されるかの説明はいつものごとくいっさいなし。原田(出光秀一郎)、ついにリストラされる。この話も何の進展もなく随分引っ張ったなぁ。妻・幸子(猫田直)にチラッと見せ場あり。
 天花が初給料で両親に万年筆を買うエピソードなんか、いい話のはずなのに、ここでまで竜之介を絡めたがるから興が乗ってこない。

信一郎「竜之介君は、随分よくなったね」

何を根拠にそんな歯の浮いたようなことを言うんでしょう。
 さて、本題に入りましょうか。『天花』と『こころ』と『さくら』、果たしてどれが一番ひどいのか?この話は長くなるので、いずれ余力があるときでよろしいでしょうか。静(星野真里)との対決にスポットライトを当てちゃう効果って……。ドラマ作りって、センスを問われますよね。(麻生結一)


第12週「女友達の約束」(6/14〜6/19放送)
☆★
 天花(藤澤恵麻)、またまた怒る!園児の順(佐々木泰喜)をめぐって、順の父・康介(布川敏和)と格闘。

珠江(中嶋朋子)「太いよね、あの子」

それって性根?それとも、康介に突き飛ばされ、足を治療した際の率直な感想?
 天花、お人よしぶりを遺憾なく発揮する!陽子(涼風真世)が仙台の信一郎(財津一郎)の家で療養することになったために、陽子の養女・静(星野真里)は陽子に付き添っている竜之介(平山広行)に勝手に会わない宣言。静の気持ちが天花にしみて、友情にも似た温かな気持ちに満たされる天花だったが、井の頭公園のボートの誘った次の日には早速裏切られて、それでもなお静の擁護をする天花がいかにも愚か。
 トピック的にはその2つほどでしょうか。(麻生結一)


第11週「園児大募集!」(6/7〜6/12放送)

 これまでの先入観のいっさいを捨てて、まっさらな心持で見てみようと心がけたのだが、数分に一回首を捻るペースはいっさい変わらず。っていうか、いつまで天花(藤澤恵麻)と竜之介(平山広行)の結婚に賛成反対という話をやってるわけ?要は、竜之介がはっきりすればすむだけの話でしょ。
 昭三(中村梅之助)、万感迫って泣く。視聴者もまた、ドラマの質の悪さに泣くしかない。このドラマの登場人たちは何かというと感動したり、涙を流したりするが、それを傍観するしかないという現実はあまりにも不幸。

天花「お父さんって、やっぱりすごく心のやさしい人ね」

川の流れをはさみ、縁と縁で向かい合って親子絶賛合戦を試みる天花と信夫(香川照之)。こういう奇妙さをすくって、何とか面白がろうとこちらも試みてはいるのですが……。(麻生結一)


第10週「相徳寺の秘密」(5/31〜6/5放送)

 印象的なシーンがあまりにも少ないからか(ある意味、多すぎるんだけど)、断片的な見せ方のせいでこちらの記憶の整理が追いつかないからか、週と週との連結があまりにも曖昧になってしまっているために、前の週に語られたことなのか、今から語られることなのか、見分けがつかなくなることしばしば。こういう見づらさの追求には、いかなるメリットがあるというんだろうか。
 これまでにぎやかし以上の存在ではなかった大樹(竹中直人)に、元の妻である陽子(涼風真世)との絡みシーンで初めての見せ場が。竜之介(平山広行)が修行に専心を妨げまいと、自分たちが竜之介の親じゃないと言い切る場面は、天花史上もっとも充実した場面だったのでは。
 聖なる酔っ払い、天花(藤澤恵麻)の暴走はこの週もとどまるところを知らず。余命いくばくもない陽子(涼風真世)を励ますにしても、枯れた櫻の木に例えるとはあまりにも微妙。(麻生結一)


第9週「出会いの時、再会の季節」(5/24〜5/29放送)

 先週分で保母見習いという設定自体に疑問を抱いたことに対してメールをいただきまして、とても細かく教えていただきましたのでまずそのことから。保育所のオーナーであるお寺に嫁いだ方で、保育士免許取得を目指して勉強しながら保育士を手伝って子供の面倒をみている方が実際にいらっしゃるそうです。許婚とすでに嫁いでいるかの違いこそあれ、『天花』ととても近いシチュエーションですから、ドラマのリサーチ自体はまんざらでもなかったということが判明したわけです。
 ただ、この見習い制度自体はベビーブームのころならばまだしも、免許を取得している即戦力の保育士さんたちがたくさんいらっしゃる現在では、上記のような場合のみの特殊なケースだということ。また、待機児童が多い東京で、新入園児が3人のみなどということもありえないらしいです。民放のドラマならまだしも、NHKのドラマがこの調子では困ってしまいます。何はともあれ、今回正しい情報をいただいたおかげで、いったん仕切りなおして『天花』を見ることが出来ます。
 ドラマの方もそれにあわせるかのごとく、竜之介(平山広行)が修行に旅立ってから3年、という思い切った仕切りなおしぶり。天花(藤澤恵麻)は短大の保育科に通い、ついに保母の資格取得して手取り10万ちょっとで雇われることになりました。いやはやよかった。正しい仕切りなおしはここまでで、ほとんど別のドラマになっちゃったほどにキャラクターが大量投入されいたのにはただただ唖然とするのみ。
 利夫(ダンカン)の妻・弘子役で杜けやきが登場したのを皮切りに、怒涛の初登場攻勢が開始される。辰巳琢郎が演じるいかさまを絵に描いたような握手魔・加瀬豪は、保育園の最初の保育園児らしい。ペットクリニックを経営する資産家である竜之介の実母・陽子(涼風真世)は、余命1年というタイムリミットつきキャラクター。そんな陽子の養女・静(星野真里)は海外生活経験豊富なお嬢様。新しく相徳寺保育園で働くことになったジャグラー風の宮澤賢を演じる吹越満は佳作『菊亭八百善の人びと』からの移籍組も、せっかくだったらメンバーだけは充実しているこちらのドラマではなく、手薄の大河の方に行っていただきたかったというのが正直な気持ち。
 陽子が久々に対面した猫アレルギーの宿敵・美子(富司純子)に猫攻撃とは、いきなりナイスでした。その昔はピアノ攻撃してたみたいでしたけど。彼女は本当に余命半年?薫(市川実日子)よりも恋のライバルとしてはるかに強力な静の告白攻撃に対して、天花はあえなく気絶。当の天花は

天花「第一ラウンドダウン!」

なるノンキ発言。そんな相変わらずの虚弱ぶりとは真逆に、真っ赤なドレスに身を包んだ珠江(中嶋朋子)に対して

天花「目が慣れてきた」

とは、その失礼ぶりはパワーアップしている模様。
 天花v.s.静のはじめての直接対決で、陽子の調子が悪いのにワインを飲んでたりする静のキャラが早々に心配になる。そんな静が持ってきたお土産であるノーブルなプリンに

天花「負けないぞ〜」

って、このヒロインは誰と闘ってるんだ?! プリンのあまりのおいしさに再びダウン。そういえば、夫(香川照之)と大樹(竹中直人)によるしょっきりには何の意味が?!おざなりな伏線があったとはいえ、秀子(片平なぎさ)は手打ちうどんの店を始める!
 竜之介の托鉢の時に陽子が呼び止められて、というシーンを短い回想のインサートだけで済まそうなどとするあたりこそが、このドラマをいっそうわかりづらいものにしている。どこを仕切りなおしても、『永遠の君へ』みたいに脚本家を仕切りなおさないことには何も変わりませんかね。托鉢のエピソードでは良心作『ピュアラブ』を思い出した。(麻生結一)


第8週「旅立ちは今」(5/17〜5/22放送)

 一時的に失明した天花(藤澤恵麻)はわがままいって退院したり、運命のレコードを聴いたりしてるうちに視力回復。薫(市川実日子)はいったん失踪し、また失踪し、あげくにパリへ。ドラマの混迷を象徴するように、竜之介(平山広行)にいたっては、ごたごたしてるだけで何がなんだかさっぱりわからず。ただ、唐突に竜之介と天花に婚約を進める美子(富司純子)に、

竜之介「勝手だなぁ、随分」

との一言だけには大いに共感する。遊び半分で保母やってないんだったら、天花を学校に行かせるなり、免許取らせるなりしなさいよ。大体、保母見習いって何だ?冷静に考えると、この話自体が成り立たないものに思えてくる。大手デパート倒産の噂で、BABU揺れる?! そんな話、どうでもいいのでは。
 とりあえずは、急に泣いたり怒ったり、出演されているみなさんは大変でしょうね。豪華キャストも飽和状態につき、キャストの薄い大河に若干名をレンタル移籍させては?! 竹中さんなんて、あの使い方はもったいなすぎるでしょうに。
 この出来ばえでは『まんてん』『ほんまもん』以下と言わざるを得ない。『こころ』『さくら』に追いつけ追い越せ?! 気がつけば、そのすべてがAK制作だったりする。ここまで地に落ちたんなら全部ご破算にして、CKが朝ドラの制作をやってくれるってわけにはいかないんでしょうかね。(麻生結一)


第7週「光をください」(5/10〜5/15放送)

 今回の朝ドラもまた2ヶ月持たなかったか。まぁ、実際には1週も持ってなかったのかもしれないけど。筋立や台詞といった脚本にも大いに疑問だが、制作姿勢そのものにも首を捻らざるを得ないところ多々。毎話毎話の冒頭にそれまでの説明を入れてくるあたりがいかにもわずらわしい。視聴者が毎回見ていないことを前提に作っているとすれば、それはそれで悲しことだけれど。
 昭三(中村梅之助)に口答えした竜之介(平山広行)に対して、

美子(富司純子)「あなた、すごく悩んでるのね。いいことだわ」

とは真っ当な発言なはずなのに、いっさい真っ当に聞こえないのはこれまでの前科が深い証拠。園児の母親がバイクの事故でケガしたと聞いて、

美子「そうだったの。それ聞いて安心した」

ともらすあたりは、いかにもらしい不条理さだったけれど。
 結局、ここ数週にわたって描かれていたこととは?誰と誰がケンカしてるんだか段々わけがわからなくなってくるし、わからそうともしていないように思える。竜之介の絶望も、どこから導き出されているのやら。酒豪比べは秀子(片平なぎさ)>立子(山下容莉枝)>精吉(柳沢慎吾)の決着も、実際には登場しない、しかもどうでもいいシーンの話を長々とするあたりもまったくの謎。
 番組がはじまる前に香川照之さんが、「久々にヒロインの魅力で押せる朝ドラ」といった内容のことをおっしゃってましたけど、それってヒロイン以外の見どころはないって意味だったのか!というわけで、ヒロインの天花(藤澤恵麻)が番宣通りに失明。もちろん、すでに何もかも見せられているわけだから、何の驚きもないのだけれど。少なくとも、

信夫(香川照之)「失明したのかしないのか、どっち?」

などといったがっかりするような台詞は勘弁願いたい。(麻生結一)


第6週「最高の初恋」(5/3〜5/8放送)
☆★
 プレマップだか何だか知らないけれど、再来週あたり(?!)の予告編を半ば強制的に見せられビックリ仰天してしまったために、もはやちょっとやそっとのことでは驚かない心積もりだったのだが、天花(藤澤恵麻)が猿ぐつわされて保育園児たちに監禁されるというショッキングな夢(妄想?!)のシーンが週明けの一発目にきていたのにはさすがに驚いた。というか、あきれた。自由裁量というか、やりたい放題というか、もはや竹山先生を誰も止められないってことでしょうか。
 隆(古田大虎)をケガさせて、薫(市川実日子)と竜之介(平山広行)がキスをして、天花は二重のショックで気が遠くなるというメインストーリーは似たようなエピソードが繰り返されるばかりで、週末にはあきあきしてくる。もはやこのドラマの名物と化してきた美子(富司純子)の不条理ぶりも、とどまるところを知らず。信夫(香川照之)から天花に贈られた手紙を

「読んでもいい?」

って迫られちゃ、ちょっと断れないでしょうよ。背任、横領、セクハラ、贈収賄の事実を突きつけて、専務の中尾を退社に追い込むって、BABUってどんな会社なんでしょう。細かい人間関係はすべてオミットされているので、実態ははっきりしないんだけど、従業員は結構いるみたい。どうにもよくわからないお話だけに、演じてらっしゃる方々もなかなか大変なのでは。(麻生結一)


第5週「おはよう、天花先生」(4/26〜5/1放送)
☆☆★
 まったく変わったドラマだ。新幹線から敬礼する天花(藤澤恵麻)の上京の模様を回想でインサートする意図は?普通に家族から見送られてという流れで見せないと、いわゆる朝ドラ的な感情移入はしにくい。その意図した企み自体、視聴者には伝わりづらいと思うのだが。なぜいまだに役名のテロップが?! これが大河ドラマ風?! 確かに、これがついてないとわからないほどに、それぞれのキャラクターのアピール度も低いんだけど。とにかくこの朝ドラは、普通ですむことをすませないところが売りのようで。
 天職を見つけるためとはいえ、何のために東京に出てきたのかが今一歩判然としない天花の脇のあまさを、不条理の化身・美子(富司純子)が見逃すはずがない。挨拶に来るなり雑巾がけって、どう考えても常識的じゃないでしょうよ。天花が保母見習いを断ってるのに、

美子「それはダメ」

って何だそりゃ。

天花「大体園長先生って、何かこう、すごく自分勝手で厳しい。イヤだわたし〜っ」

天花のコメントがここまで正しいことも珍しいのでは。ミルクのにおいがするみたいな天花ちゃん先生のドラフト1位選手扱いぶりには、美子の後釜を狙っている保育士の珠江(中嶋朋子)も手厳しい。
 ところで、いつの間に佐藤家は一家全員で東京に住むことにしたんだっけ?! 存在感の薄さで異彩を放っている天花の妹・由加(サエコ)もちゃっかり上京してきてるし。
 朝の7時に保育園に天花が来るかどうかのサスペンスに、佐藤家が一家総出で現われるオチ(?!)には笑った。

美子「必ず立派な保母さんに育てますから」

って、誰一人として保母さんになるって言ってないのに。「天花先生」と呼ばれたことに感動して、保育士見習いの継続を決意する第5週のピークがつけたしのようにも感じられる。無口な大工・畑山役で柳沢慎吾が登場。『彼女が死んじゃった。』組では3人目です。(麻生結一)


第4週「じいちゃんの涙」(4/19〜4/24放送)
☆☆★
 不良に絡まれた一件で短大への推薦を取り消されようとも、それほどのダメージを感じさせないあたりは、打たれ強い天花(藤澤恵麻)の真骨頂?!薫(市川実日子)のマネージャーから、禅寺修行から帰ってくる竜之介(平山広行)に代理で寿司をおごってほしいと頼まれてプンプン。竜之介に駅前の立ち食いそばをおごってもらっていきなりにニコニコ。電話に出た薫には、

天花「わがままの自意識過剰の利己主義者!」

といきなりに絶叫するなど、その気性の激しさにはまったく油断も隙もありゃしない。
 落ち込む薫に食事をすすめといて、そう言われたら断るべきと説教する美子(富司純子)は、相変わらずの不条理ぶりを発揮。この人、絶対に悪い人のはず。
 竜之介と仲良くする娘・天花をしかりつけるのに、雪女みたいな顔とあまりにも突飛な例えを持ってきた信夫(香川照之)が扮する、小正月の団子木を解説する団子のおじさんぶりを見ていたら、『彼女が死んじゃった。』のとんち体操を思い出してしまった。だったら、バイクを颯爽と乗りこなす蔭山(木村佳乃)は、サイクリングサークル・三浦半島ヤッホー倶楽部風かな。
 天花の暴走機関車ぶりは、百姓を小バカにしたような発言をする薫に全力でお尻ペンペンする場面でピークに。天花と薫の張り手の応酬も、明らかに天花のほうが数倍強め。
 大学受験のくだりは丸ごと、薫がテレビのアシスタントの仕事を嫌がって仙台に戻ってくるエピソードも肝心なところをオミットしてくる語り口はいかなる意図なのか、竹山先生にうかがってみたいところ。
 そんなこんなで面白いのか否か釈然としないうちに、信一郎(財津一郎)の天職論を聞いて、何とか1週間がまとまった感じ。種籾をお守りにわたす場面などはなかなかいいんだけど。それにしても、天花の妹・由加(サエコ)の存在が希薄だ。(麻生結一)


第3週「やがて実のなる天の花」(4/12〜4/17放送)
☆☆★
 単に慣れたせいか、それともじわじわと居心地がよくなってきたか、天花の浮遊感を確認する作業がちょっぴりだけ楽しみになりつつある。ウィンドディスプレイの仕事を取ったと嘘をつく単身東京でがんばる父・信夫(香川照之)をやさしく癒し、イグネの農家で新たな生活をはじめた初日に朝からカレーを作ってあげて、祖父・信一郎(財津一郎)をウキウキとさせる。さらにはナチュラルなしたたかぶりで、竜之介(平山広行)と一緒に「秋桜」を歌うまで、天花の静かなる暴走ぶりはとどまるところを知らず。唐突な癇癪(信一郎に対してのみ)と発言の思わせぶり(ほぼ全員に対して)が相当にワル。
 竜之介は毎週昭和の名曲を歌う趣向なのかな。今「秋桜」だったら、『まんてん』宮路真緒となるんでしょうけど。ただ、信一郎(財津一郎)がラジオにリクエストした思い出の曲にしては、ちょっと新しすぎません?
 薫(市川実日子)は制服指定のオーディションを原宿に受けにいくも、それはアダルトビデオの撮影で格闘の末に目を負傷。世の中そう簡単じゃないと思わせたのもつかの間、即チョコレートのポスターに起用される、時には世の中簡単であることが証明される?! ついにモデルへの第一歩を踏み出した薫へのジェラシーを清めるかのように降り注ぐ雪を見ながら、

天花「大地ってすごい」

の飛躍ぶりも、このキャラクターだったら言いかねないと思う。
 東京に単身赴任するも、秀子(片平なぎさ)の影におびえる信夫(香川照之)がおかしい。芸能活動を禁止する高校で薫を卒業される代わりに教職の座を退いた蔭山佐知子(木村佳乃)は、実は政治家志望だった。それにしても、東京と仙台って近いんですね。新幹線で2時間、鈍行でも5時間だもん。(麻生結一)


第2週「ロミオの住む街、東京へ」(4/5〜4/10放送)
☆☆
 恋ではなく愛について考える天花(藤澤恵麻)の一週間。時間軸がはっきりしないので、どれぐらいの期間なのかははっきりしないがとりあえず。一人テンションが違う天花がちょっぴり面白い。まぁ、何かしら面白みを見つけていかないと、あと5ヶ月間つらいですからね。
 薫(市川実日子)を連れ戻すために東京に行った天花(藤澤恵麻)は、竜之介(平山広行)にいつの間にやら恋心。はぐれてしまった相徳寺保育園の園児・隆(古田大虎)を探すうちに天花が迷子になっちゃって、高熱を出して電話で仙台の信一郎(財津一郎)に助けを求めるお子ちゃまぶり。
 電話ボックスで倒れた場合は、大体次のシーンでいつの間にやら床についてたりたりするものだけれど、このドラマはまた定番をそのままに踏襲してきたね。天花は熱が39度あったらしいが、次の日の朝には美子(富司純子)に朝ごはんを運ばされてるって。第1週も不条理な発言が気になったが、今度は病み上がりの天花をいびる美子。週に1回はこの不条理キャラが出てくるのが定番なの?!
 信一郎役の財津一郎はさすがにうまいが、友人の葬儀での弔辞が説教臭かったのはいただけない。それこそがこのドラマのテーマなのかもしれないが。家族総出で稲刈りをするシーンは、このドラマ初の名場面だったのに、その直後に大樹(竹中直人)と信夫(香川照之)が応援団OB対決する騒々しさに苦笑させられる。
 ジャージ姿でモデルウォークする薫がパリコレのモデルに見える場面を見て、なるほどと思う。先週の秀子(片平なぎさ)v.s.亜希子(石野真子)の模様も天花にだけ見えていたってことか。薫役の市川実日子はいつもの面白キャラかと思いきや、竜之介に思いをぶつける情熱的なキャラクターの模様。(麻生結一)


第1週「杜の都のジュリエット」(3/29〜4/3放送)
☆☆
 竹山洋脚本作と聞いて、おそらくは変わった人たちの話なんだろうなと覚悟はしていたが(?!)、話のいびつさは予想以上だった。エピソードの最初だけを描いて中身を飛ばしながら見せる語り口に、話をつなげて考えるのになかなか苦労する。
 天花(藤澤恵麻)がどんなヒロインなのかぜんぜんわからないうちから、天花の許婚と称する竜之介(平山広行)から手紙が届いて、仙台が舞台の朝ドラらしく七夕の日に会うことになり、いきなりに恋に落ちてという話の流れに、天花ならずともあっけにとられるばかり。大体、祖父同士が約束した許婚って、時代はいつなんでしょうね。東大は東大でも東京学智大学の学生である竜之介に天花がときめくまでの過程をはじめてとして、登場人物の思いがことごとくオミットされているのは意図的にやっているのだろうけれど、お話が切れ切れに思えるわりには、15分の放送時間が永遠のようにも感じられてしまって。
 竜之介が天花をからかうべく、詩集を万引きする話には??? 悪いことを見てみぬふりをしたと天花に本を返すように言う竜之介の祖母・美子(富司純子)は何をどうしたかったんだろう?

「私は絶対に悪くない」by天花

普通に考えれば、まったく悪くないはずだけれど、このドラマの世界観ではそうもいかないんでしょうね。すべては、天花の心を試すための万引きだったらしいけれど。天花の祖母が雷に打たれて死んじゃってるという設定もやけにヘヴィー。
 唯一面白かったのは、竹山洋的『秀吉』対決、天花の父・信夫(『利家とまつ』で秀吉役だった香川照之)と竜之介の父・大樹(『秀吉』のタイトルロール、竹中直人)に重なる天花の母・秀子(片平なぎさ)と竜之介の叔母・亜希子(石野眞子)の代理戦争の場面。竹中直人の坊主役は同じく竹山脚本の『坊さんが行く』から引き続き。天花の親友・薫役で市川実日子、天花と薫の担任教師・蔭山佐知子役で木村佳乃。モデルになるために東京に行ってしまった薫について、

「腹が立つ、あの子。背が高くてちょっと顔がかわいいからって、どうして自分の未来をバラ色だとあんな強く信じられんのかな」by佐知子

って、それは先生ご自身についてのようにも思えたけれど。
 一ついえることは、少なくともキャストは大河よりも大物揃いということで、これで物語も盛り上がってくれれば言うことなしなんだけど。(麻生結一)




Copyright© 2004 TV DRAMA REVIEW. All Rights Reserved.