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新・いのちの現場から (TBS系月〜金曜13:30〜14:00)
製作著作/毎日放送
制作協力/MBS企画
制作統括/薮内広之
プロデューサー/池田仁美、岡田浩祥
脚本/清水有生(江川晴『痴呆病棟』『いのちの現場から』『小児病棟』より)
演出/皆元洋之助、芝野昌之、青井邦臣
音楽/渡辺博也
主題歌/『ever love』FANATIC CRISIS
出演/杉原園絵…中村玉緒、高間由希子…大島さと子、坂本杏子…中島ひろ子、吉住篤子…川俣しのぶ、桜沢俊介…萩野崇、久保田磨希、小林佐恵…松本麻希、安原美佳…出口結美子、川越剛…山田かつろう、今西由里…大蔵淳子、セインカミュ、井田國彦、芝本正、冨士光子、平澤洋爾、宮崎宗一、茂中瑛子、西本全信、岸由紀子、菊山愛里、足立悠美加、奈波真生、枝廣智也、家邊隆雄、小松健悦、雪代敬子、森田直幸、倉井陽祐、中村愛、田中弘史、森下じんせい、ひろみどり、小倉功、千田訓子、楳崎静香、山内明日、稲森誠、青木雅大、門田裕、吉和靖弘、稲健二、足立悠美加、枝廣智也、小野田将大、脇坂悠生、山口翔悟、芳賀優里亜、池浪三太郎、高濱正朋、長沼じゅん平、原田孝司、高島将、南優、絵沢萠子、山本弘、小倉功、あたかすずえ、一木美貴子、白木順子、森畑結美子、安井まな美、猪谷洋子、日野陽仁、関秀人、大鹿馬人、南保歩、佐田修典、木村みえ子、尾上寛之、田村良雄、雪代敬子、稲森誠、西田政彦、山本美奈、山口翔悟、森田直幸、青木雅大、あじゃ、木村理恵、鴈龍太郎、麻丘めぐみ、柏木由紀子、うじきつよし、高間良介…石田太郎
ほか

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第9週(5/24〜5/28放送)
☆☆
 復活した『いのちの現場から』の新シリーズ最終週では、愛の劇場、ドラマ30、そして東海テレビのドロドロワールドと昼ドラの三角地帯を縦横無尽に行きかい続けている隠れ昼ドラ女王、木村理恵が名演を披露。ぐれた麗花(芳賀優里亜)をかえで(山内明日)が更生させた第6週ですでに登場済みの木村理恵演じる松井が若年性アルツハイマーになってしまう話自体は悪くないし。最後の授業の場面などは感動的なのだが、仙台の病院にヘッドハンティングされた杉原(中村玉緒)の引止め工作という横糸を、総集編的な要素でまぶしたまとめ方はあまりにも平凡で古めかしい。こういう生真面目さには、もっともうんざりしてしまうところ。
 松井の実家が神戸の大きな貸し問屋で、寄付したお金で施設が出来ちゃうほどのお金持ちだったりするオチもとってつけたようだし、第8週で死期の近い夫と生きる道を選択したばかりの吉住(川俣しのぶ)が、その夫が亡くなったからって即復帰するじゃ、余韻も何もあったもんじゃない。薄幸を演じてこそ輝く中島ひろ子演じる坂本が、妊娠してキャラ変わりしていたのにも違和感。新人ナースの黛うららには笑ったけど。(麻生結一)


第8週(5/17〜5/21放送)
☆☆★
 誠実にして切実さがこみ上げてくる『いのちの現場から』シリーズのいい部分と、フラットにきれい事ですませようとするこのシリーズの悪い部分とが交互に出た第8週。
 非常勤の吉住(川俣しのぶ)の夫で仕事人間の孝夫(日野陽仁)が倒れ、精密検査の結果ガンであることがわかる。本人には伏せたままに放射線治療を試みようとするも、今西(大蔵淳子)の不注意から院長(石田太郎)が書いた京浜大病院への紹介状を孝夫が目にしてしまい、自分ががんだと知る。
 吉住のナースとしての、そして患者の家族としての難しい立ち位置が丁寧に描かれていた箇所は見ごたえがあった。逆に、吉住が投薬ミスをおかし、地域医療の取材でその場に居合わせた「医療新時代」の記者・新田(関秀人)によってそのことをスクープされてしまったことによって、いったんは吉住が病院をやめる決心をするも、医師、ナース、患者ともで吉住を引き止めるくだりは、思わずこそばゆくなってしまった。確かに、こういう丸い解決もないと話がつらすぎるのだけれど。
 京浜大病院の放射線科の医者にあまりにもひどい対応をされることで再び吉住夫婦の絶望を描いて、最終的に夫との残された時間のために吉住が病院をやめてしまう結末は好感が持てた。(麻生結一)


第7週(5/10〜5/14放送)
☆☆
 寝たきりの姑・義江(絵沢萌子)と時間通りに生活しようとするがゆえにかえって手間がかかる舅・正夫(山本弘)の世話を背負わされている嫁の幸子(美栞了)が携帯の出会い系サイトにハマりそうになるも、福子(久保田磨希)の人の携帯に出るというプライバシー侵害行為のおかげで回避。幸子が介護の限界に達していると感じた杉原(中村玉緒)は幸子を入院させ、高間病院の男衆総出で正夫の恐怖のきちっと人間改造計画に乗り出したおかげで、この家族は新たなる生活の一歩を踏み出せましたとさ、めでたしめでたし。
 定番ネタをいい話に収めてしまおうという意図があり過ぎる点には大いに不満が残る。このシリーズのよさといったら、もっと痛切なところにあるような気がするのだが。第3週までのような。確実に週を追うごとにボルテージが下がっている。(麻生結一)


第6週(5/3〜5/7放送)
☆☆
 かえで(山内明日)が中学時代の親友で、1年前に覚せい剤で逮捕されて高校を退学になった麗花(芳賀優里亜)を家に連れてきたと思ったのもつかの間、そんな友達を思いやってクラブに入りびたって、いかにも悪そうなグループのリーダー・正史(山口翔悟)と知り合う。麗花が貧血で入院してる最中に正史たちは強盗計画を実行するも、ちょうどクラブに来ていた剛(山田かつろう)の小活躍によって未遂に。逆恨み的に高間病院に乗り込んできた正史たちは院長の高間(石田太郎)に500万円を要求するも、国境なき医師団のメンバーとしての勤めを終え、アフガニスタンから帰ってきた光石(鴈龍太郎)が執刀した緊急オペの壮絶さを見せつけられるにいきなりシュンとしちゃって、即座に改心して自首するところまで、随分と乱暴な話だこと。
 最大の見どころは、何といっても大復活を遂げた光石の相変わらずな任侠度の高さ。

三石「お前たち!これが胃に開いた穴だ。よく見ろ!逃げるな!ちゃんと見てろ!」

という社会見学中でのヤンキーへの恫喝も、あまりにもハマっている。篭城中の不幸の自慢トーク合戦になったときには、剛のあまりの不幸な境遇にヤンキーたちさえもひいてしまう。やはりこの病院はツワモノどもの巣窟である。彼らのボキャブラリーに「お題目」はないと思うんだけど。元担任の松井(木村理恵)が麗花の身元引受人になる話も、ユートピア的に過ぎるか。

杉原(中村玉緒)「三石先生、ケンカが強いでしょ。あの人、高校時代すごい不良で、やくざとも付き合ってたんですって」

との物騒な台詞を楽しそうに語る中村玉緒に息子愛がみなぎる。(麻生結一)


第5週(4/26〜4/30放送)
☆☆★
 検査入院してくる吉野(柏木由紀子)が、末期がんだった息子を殺したと当時担当だった主任の坂本(中島ひろ子)を逆恨みするシリアスなパートと、事故で入院したみゆき(足立悠美加)の3人の弟たちの面倒を見たことがきっかけで、干ししいたけの営業で日本各地を飛び回っている父親の岩本(うじきつよし)が坂本に好意を持つコミカルなパートとをくっつけて見せてくれた第5週。いつも以上にお腹いっぱいにはなったが、だったら面白さも2倍になったかといったらそうはならないところがドラマの難しいところ。
 気になるのは、この病院はナースステーションであまりにも重要なことを話しすぎる点。患者に聞こえて困ることだってあるだろうし、とりわけ坂本の独白などは控え室で見せるべきものでは。ドラマ的には、ナースステーションですべてを完結させなきゃいけない制約もわかるけれど。
 おみや入り女優の代表格、中島ひろ子がここでも薄幸の境遇を抜群のリアリティで見せてくれる。それにしても、坂本の急激なモテモテぶりといったら。息子を溺愛していたがあまりに復讐の鬼と化す吉野役の柏木由紀子が意外なほどの凄みを発揮。ドラマとはまったく関係ないが、第1回チキチキナース人気投票 in 高間病院が笑える。まだコーラスサークルが存続しているところを見せたのは、由希子(大島さと子)の娘・かえで(山内明日)を登場させる次週のためかな。(麻生結一)


第4週(4/19〜4/23放送)
☆☆★
 高間病院の食堂につぶれた定食屋のおじちゃんおばちゃん・石渡夫妻(田中弘史&ひろみどり)をむかえて、園絵(中村玉緒)はさらなる大改革を敢行。3日間の休みをとり、日本中を駆け回って産地直送の無農薬野菜のルートを開拓してくるは、陶芸教室で知り合った人のつてで、規格外の食器をまとめて安く入手するは、さらには発案したはよかったけれどいまいち使用頻度の低かったサロンを患者も利用できる食堂に改造するはの大車輪の大活躍ぶりは、ちょっとやりすぎにも映るんだけど。
 メインストーリーは、更年期障害で入院中の美代子(麻丘めぐみ)の孤独な境遇と、娘のかえで(山内明日)が医学部を受験しないと言い出して悩む由希子(大島さと子)がそんな美代子に自らを重ねる話だが、一人一人の患者のことを考えたおいしい病院食同様、少しきれいにまとまりすぎた印象。その中では、「ナースは医者よりも下か?」というかえでの問いかけが効いていたと思う。(麻生結一)


第3週(4/12〜4/16放送)
☆☆☆
 口からものが食べられない少女と食べたものを排泄できない少年が心を通わせていく過程は、これまでの2週以上にいっそう心にしみた。子供たちのエピソードをやると、このドラマはいつも以上に力を発揮する。
 小児科に入院している哲也(森田直幸)は誤診による投薬の副作用で難聴になり、結腸狭窄も完治することなく、毎日痛くて苦しい腸洗浄を強いられている。哲也の担当に回されたことを夜のお仕事を続けていることでの懲罰人事だと思い、杉原(中村玉緒)にいったんは退職届を出した安原(出口結美子)が、哲也の過酷な境遇をおもんぱかって、次第に変化を遂げていく様が丁寧に描かれている。
 ここでの出口結美子が実にいい。力づくで哲也を押さえつけようとする最初から、腸の洗浄の苦しみを与えるだけの人間としてのナースの有り様に悩み、哲也の思いを汲み取ることで自らもナースとして成長していくまでを、過多に作りこむことなくクールなキャラクターのままに人間らしく見せるあたりがとても巧みだった。知らないところに、いい俳優さんはいるものですね。この方は確か、『てるてる家族』に米原の妻役で出演されていたはず。
 確かに、誰もが精神的に成長していくまとめ上手ぶりはきれいごとのようにも映るけれど、そのことによってドラマの誠実が損なわれることはない。ここにポジティブな成長がなかったならば、あまりにもつらすぎるだろうし。これまた誤診によって口からものが食べられなくなったかおる(中村愛)に、食べる行為を味あわせてあげようと哲也がガムをプレゼントするエピソードには、予想の範囲内ながらすがすがしい感動がある。
 くたびれて、夕食を作る気になれなかった杉原が、偶然入ったその日が閉店の食堂で、大沢福子(久保田磨希)に偶然再会。すぐさまナースに復活したかと思ったら、いつの間にかタイトルバックにも入っちゃってました。(麻生結一)


第2週(4/5〜4/9放送)
☆☆☆
 ビックリ仰天の仕掛けに唖然とさせられっぱなし。これは誠実なのか、それとも不謹慎なのか、釈然としないうちにその狭間で見せきられて、最後の最後には異色の面白さに思わず大爆笑してしまった。
 若い外科医・桜沢(萩野崇)を夫・和彦だと思い込んだのを皮切りに、脳梗塞の発作で入院していた篠崎タケ(雪代敬子)の痴呆の症状が日に日にひどくなり、終いには高間病院のナースたちがそれぞれにタケの人生を取り巻く人々の役付きになって大騒動。
 杉原(中村玉緒)がお母さんで、剛(山田かつろう)は意地悪な広子おばさん。名演ぶりを発揮する吉住(川俣しのぶ)は、かつて劇団四季を目指してた?! 芝居に乗り気じゃなかった主任の坂本(中島ひろ子)も弘前の郷土料理けの汁を作ってくれたおばさん役をらしく演じてみたり、こういう趣向はどうなんだろうと懐疑の念で見進めるうちに、その予想外の展開にすっかりひきこまれてしまった。
 ケッサクなのは、役がついていなかったクール系の安原(出口結美子)が、タケに追い出された和彦の元前妻・義江役にキャスティングされてしまうところ。狙いはシリアスなんだろうけど、演劇クラブノリが妙に微笑ましくて。ホワイトボードに張り出された配役表を気にして、それぞれがそれぞれの配役を引きずるあたりもおかしい。
 極めつけは、タケとイノシシ野郎(『牡丹と薔薇』)改め?!、義母であるタケのことを色ボケ呼ばわりする息子の聡(井田國彦)との関係を修復するためにとりおこなわれる擬似出産の場面。ふくれたお腹は想像妊娠などではなく、肝臓がんが原因の腹水だったとわかるも、そんな深刻を突きつけられようとも、決してドラマが暗く沈まないのが不思議。これはまさに、出産を成功させようとする一同の勢いみたいなものか。
 そしてついにあまりにもショッキングな出産シーンを目のあたりにする。生まれてきた子供は、な・な・なんとキューピーだった! さすがは提供がキューピーのドラマ。安原が産声のマネをする唐突なサプライズがダメのダメを押す格好に。杉原はこの試みを

「ある意味賭け」

といっていたけれど、ドラマ的にもこれは賭け以外の何ものでもなかったでしょ。いのちの現場とは、つまりは手段を選ばない何でもござれの場所だったんだと実感する中で、

「人生の終わりに来たときに、人として愛され、尊ばれて生きていくのは本当に難しい」

という言葉が妙にすごんで聞こえてくる。(麻生結一)


第1週(3/29〜4/2放送)
☆☆☆
 パート1からパート7までずっと脚本を書かれていた鴨井達比古さんがお亡くなりになったので、もはやこのシリーズの続編はありえまいと思っていたが、新たに清水有生を脚本に迎えて大復活。あわせて、リタイヤしていた伝説のナース・杉原園絵(中村玉緒)も、野菜作りをしていた農園のお隣さんだった高間(石田太郎)が個人病院の院長だったというきっかけで看護部長を要請させるというアクロバティックな展開でこれまた大復活。
 杉原を病院に引き戻すまでの展開はちょっと強引にも思えたが、主任の坂本(中島ひろ子)、非常勤の吉住(川俣しのぶ)、やる気のない安原(出口結美子)、オカマ(?!)の男性看護師・川越(山田かつろう)、主任のコバンザメ・小林(松本麻希)、新人ナースの今西(大蔵淳子)とナースのメンバーが出揃うと、ドラマはすぐさまこれまでのシリーズと何ら変わりのない、真摯さと誠実さを取り戻した。
 今西がピアノをやめた理由はちょっとヘヴィーすぎるとも思ったが、白血病の少女・美咲(岸由紀子)とのピアノを通して交流する週末回には、やはり泣かされる。大病院で看護部長だった杉原が、草野球チームに元大リーガーと例えられるのを聞いて、そんなものなんだと妙に納得してしまった次第。(麻生結一)




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