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新選組! (NHK総合日曜20:00〜20:45)
大河ドラマ
制作・著作/NHK
制作統括/吉川幸司
脚本/三谷幸喜
演出/清水一彦(1〜5、11、12、15、16、21、24、25、28、37、40、42、45〜47、49)、伊勢田雅也(6〜10、13、14、17、18、22、23、26、27、31〜33、36、39、43)、吉田浩樹(19、20)、山本敏彦(29、30、34、35、38)、小林大児(41)、土井祥平(44)、吉川邦夫(48)
音楽/服部隆之
語り/小寺康雄アナウンサー
出演/近藤勇(島崎勝太・大久保大和)…香取慎吾、沖田総司(惣次郎)…藤原竜也、土方歳三(内藤隼人)…山本耕史、お幸(深雪太夫)&お孝(二役)…優香、斎藤(山口)一…オダギリジョー、藤堂平助…中村勘太郎、原田左之助…山本太郎、山南敬助…堺雅人、永倉新八…山口智充、井上源三郎…小林隆、武田観柳斎…八嶋智人、島田魁…照英、滝本捨助…中村獅童、近藤(松井)つね…田畑智子、八木ひで…吹石一恵、佐藤のぶ…浅田美代子、佐藤彦五郎…小日向文世、お琴…田丸麻紀、宮川音五郎…阿南健治、小島鹿之助…小野武彦、おその(小常)…小西美帆、八木雅…松金よね子、久…正司歌江、清河八郎…白井晃、山岡鉄舟(鉄太郎)…羽場裕一、殿内義雄…生瀬勝久、新見錦…相島一之、根岸友山…奥村公延、なつ…岩崎加根子、孝庵…笹野高史、まさ…はしのえみ、松原忠司…甲本雅裕、河合耆三郎…大倉孝二、山崎烝…桂吉弥、尾関雅次郎…熊面鯉、尾形俊太郎…飯田基祐、谷周平(谷昌武)…浅利陽介、大石鍬次郎…根本慎太郎、芳賀宣道(市川宇八郎)…八十田勇一、大村達尾…江畑浩規、おゆみ…井上裕季子、女…安めぐみ、沖田林太郎…日野陽仁、菜葉隊士・小松…ビビる大木、房吉…星ルイス、八木為三郎…巻嶋一将、広沢富次郎…矢島健一、小森久太郎…荒木優騎、中岡慎太郎…増沢望、谷三十郎…まいど豊、浅野薫…中村俊太、谷万太郎…若松力、お初…清水美那、岩木升屋番頭…研丘光男、松平上総介(主税助)…藤木孝、葛山武八郎…平畠啓史、秋月悌次郎…堀部圭亮、女衒…池田政典、望月亀弥太…三宅弘城、谷万太郎…若松力、古高俊太郎…中山俊、若い衆…神田山陽、侍…数井智広、助手…亀井彰夫、芸妓…照恵・照雪・本條秀邦、初菊…平岩紙、小六…亀山忍、番頭…田村元治、平山五郎…坂田聡、平間重助…剛州、野口健司…岡本幸作、香具師…田中登志哉、高崎左太郎…政岡泰志、中山忠能…仲恭司、中川宮…浜口悟、佐伯又三郎…松谷賢示、黒神…大至、行司…三十代木村庄之助、熊川熊次郎…舞の海、鵜殿鳩翁…梅野泰靖、池田徳太郎…野仲功、祐天仙之助…渡部雄作、村上俊五郎…立川政市、ヒュースケン…川平慈英、お富…木村多江、伊藤軍兵衛…光石研、月廼屋仲助…福永幸男、仲助の妻…柊紅子、武市半平太…デビット伊東、萩原糺…榎木兵衛、滝本繁蔵…沼田曜一、松井八十五郎…浅沼晋平、松井きぬ…芦沢孝子、おしず…乙葉、橋本左内…山内圭哉、ひも爺…江幡高志、広岡予之次郎…橋本じゅん、稲田重蔵…山下大輔、松平容保…筒井道隆、幾松…菊川怜、有馬藤太…古田新太、植木屋平五郎…島田順司、西郷(大島)吉之助…宇梶剛士、木戸孝允(桂小五郎)…石黒賢、伊東甲子太郎(大蔵)…谷原章介、徳川慶喜…今井朋彦、おりょう…麻生久美子、岩倉友山(具視)…中村有志、お登勢…戸田恵子、おすず(明里)…鈴木砂羽、久坂玄瑞…池内博之、内山彦次郎…ささきいさお、小野川親方…嵯川哲朗、佐々木只三郎…伊原剛志、粕谷新五郎…伊吹吾郎、お梅…鈴木京香、芹沢鴨…佐藤浩市、坂本龍馬…江口洋介、勝海舟…野田秀樹、榎本武揚…草なぎ剛、香川敬三…松本きょうじ、谷守部…栗根まこと、とみの母…岡林桂子、桑名藩兵…橋沢真一、警固兵…中舘英暢、旅人…平山陽祐・金井真澄、薩摩藩士…高津知巳、刺客…林京介、たま…松元環季、とみ…太田あやか、加納鷲雄…小原雅人、上田楠次…山崎一、渡辺九郎左衛門…佐藤拓之、植木職人…佐藤彰・杉山亮太、松本良順…田中哲司、西村兼文…本間憲一、大久保一蔵(利通)…保村大和、松平定敬…高橋一生、薩摩兵…西田聖志郎、林権助…三谷昇、竹中重固…菊池均也、篠原泰之進…小梶直人、兵士…石丸ひろし、会津藩士…多賀基史・清水伸、大場一真斎…佐渡稔、三木三郎…平泉陽太、明治天皇…中川景四、長州兵…古川真司、服部武雄…梶浦昭生、志士…河本タダオ・堀岡真・吉田勢生、板倉槐堂…舟田走、峯吉…篠原勇、藤吉…松村明、佐々木の配下…長棟嘉道・西脇礼門・大橋寛展、茨木司…大塚幸太、佐野七五三之助…安藤聖、富川十郎…鈴木慶太、中村五郎…長倉正和、会津藩士…今野哲治、僧侶…大門伍朗、広島藩役人…濱口優、三吉慎蔵…荘司優希、本屋の店主…樋渡真司、伏見奉行所役人…濱田和幸・地西広幸、黒田了介(清隆)…峯尾進、中西昇…猪狩賢二、長州の浪士…小沢和義・松原正隆・ミョンジュ、仙波甲太郎…宅間孝行、お幸(子役)…牧田菜々子、お孝(子役)…金子莉奈、京屋忠兵衛…横山あきお、塾頭…宍戸勝、松平伊豆之守…大石継太、新選組隊士…高橋志朗・本間康之・五十嵐貴裕・諏訪田寛幸・諏納健人・徳永伸太郎・水口真吾・北山雄一郎・細谷浩二・長井貴人・若田部学・嶋田昌浩・沼上佳司・川津史彦・福岡和成・片岡伸吾・赤沼正一・田中栄一・山崎貴司・大塚太心・山本道俊・米山勇樹・高畑雄亮・中村信幸・河野安郎・見目竜一・竹田寿郎・真木仁・千葉清次郎・天乃大介・村田鉄信・中村正人・松本真治・中川泰幸・井原多生・山下大輔・金森規郎・後藤健・佐藤健司・中谷隆信・山口喜生・永井正浩、浪士…宅間孝行・古山忠良、寺田屋番頭…枝光利雄、真木和泉…大谷亮介、河上彦斎…高杉亘、鷹司輔熈…立川三貴、寺島忠三郎…加藤大治郎、入江久一…渡辺航、長州藩士…恵秀、おきよ…こばやしあきこ、女中…山野内真由、会津藩士…吉野容臣・佐伯彰二郎、宮部鼎蔵…四方堂亘、吉田稔磨…佐藤一平、池田屋惣兵衛…岡田正、池田屋番頭…伊藤正博、会津藩士…野添義弘、奥沢栄助…松島圭二朗、新田革左衛門…赤堀二英、宿屋の仲居…今泉あまね、長州藩士…諸井孝行・松本航平、町人…池田昭広・松本享子、北添佶磨…松井工、与力・井沢…清田正浩、役人…村上洋康、芸妓…本條秀邦・藤舎朱音・鼓友緑利江、料亭の女将…竹乃内明日香、料亭の主人…矢柴俊博、長州藩士…恵秀・伊達建士、会津藩士…田中充貴・咲野俊介・野添義弘、大和屋の番頭…本多晋、居酒屋の主人…顔田顔彦、役人…前田寛之、力士1…割石秀樹、力士2…中村竜也、力士3…宮田景介、菱屋太兵衛…藤田宗久、菱屋の番頭…佐々木睦、速見又四郎…七海智哉、森田屋の番頭…舩阪裕貴、森田屋の手代…青山義典、久坂の仲間…恵秀、住職…坂田金太郎、阿比留鋭三郎…矢部太郎、前川荘司…谷本一、小六の子分…中川泰幸・井原多生、家里次郎…かなやす慶行、遠藤丈庵…鈴木健、柳…藤井秀剛、役人…佐藤旭、壬生狂言士…八木喜久男・八木孝久、手代木直右衛門…原康義、茶屋の主人…市原清彦、問屋場の主人…赤崎ひかる、役人…小山修・高橋志朗、祐天の子分…天現寺竜、祐天の子分…天乃大介・松本信治、役人…佐藤旭、祐天の子分…ヘイデル龍生、庄屋…久保晶・山崎海童・佐藤誓、佐々木の部下…久米原信昭、飲屋の浪人…田中輝彦、親方…原金太郎、松平家家臣…山賀教弘、松平家家臣…岡田智樹、徳次郎…飯田まさと、寺尾…小林ひでのり、月廼屋清蔵…農崎裕二、講武所役人…山賀教弘、勝邸門人…五辻真吾、松本藩士…加藤重樹・千葉信弥、近習…中山峻二、イギリス水兵…ケン・コーガー、イギリス水兵…マシュー、番頭…井上浩、宿屋の女…川渕真由美・椎名あきら・若松恵・長谷川香織・菅原祥子・藤原まゆか・樺山資子、伊牟田尚平…中村まこと、神田橋直助…小林健一、そば屋の主人…木村祐一、そば屋の女将…城山未帆、使いの若者…森野憲一、役人…広田稔・平山陽祐、侍…石田晃一、洗濯女…高橋幸子、浪士…羽柴誠、町娘…城山未帆、塾頭…豊嶋みのる、松浦安左衛門…森田ガンツ、門人…藤原習作、人足…森喜行、女店主…吉田瀬津子、町娘…吉田恵、店主…杉村幸義、公儀隠密…中村正人・滝光浩・荻野英範、沖田惣次郎(子役)…田辺季正、ハリス…マーティ・キーナート、宮川勇五郎…木挽礼、農民1…関野昌也、農民2…向出淳卓、盗賊A…村上靖尚、盗賊B…松本信治、盗賊C…井原多生、滝本家・女中…東城亜美枝・阿部和、芸者…西川小扇女・西川真弥、居酒屋の夫婦…篠田薫・戸村美智子、永井尚志…佐藤B作、孝明帝…中村福助、沖田みつ…沢口靖子、土方為次郎…栗塚旭、近藤ふで…野際陽子、近藤周斎(周助)…田中邦衛、八木源之丞…伊東四朗、佐久間象山…石坂浩二
ほか

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最終回「愛しき友よ」(12/12放送)
☆☆★
 予想では勇(香取真吾)の死後も、歳三(山本耕史)の最期まであたりを1回程度費やして描くのではと思っていたが、勇が斬首されるまででドラマは完結。勇が板橋宿に幽閉されている間、他の新撰組隊士たちのそれぞれの境遇を織り込むにしても、最終回的な総集編風にならない程度に手際よく裁いていく感じは流石である。中では、襲撃を受けた療養中の総司(藤原竜也)をかばって斬られたお孝(優香)と、刑場での勇の一部始終を見守るつね(田畑智子)のあり様に心を打たれる。
 それはいいとして、正直に言うとその本編以上に感慨があったのが、香取真吾が司会をつとめる『スマステーション』の全枠を使って組まれていた、この最終回の前夜祭的な企画の方。これはNHKこそがやるべきことのようにも思えるが、テレ朝の他局援護射撃ぶりはあまりにも大胆で、その常軌の逸し方は清清しくさえあった。山南と明里と今生の別れの場面などを改めて見せられるに、この軽量級大河にも節々に名場面もあったな、などと思い返したりして。出演者たちの和気藹々とした雰囲気も楽しく、こういう並びをもう少し先に見ていれば、これほどキャストに難癖をつけることもなかったかなとも思ってみたり。(麻生結一)


第48回「流山」(12/5放送)
☆☆★
 最終回一回前最大の見せ場は、流山での駐屯を怪しむ新政府軍の薩摩藩士・有馬藤太(古田新太)と勇(香取慎吾)が対峙する場面。そしてついに新政府軍の陣へ出頭せざるをえなくなる勇に、嘘を突き通して生き延びろと諭す歳三(山本耕史)が何ともいえない色気を漂わせていい感じ。この大河は山本耕史のための大河であったようにも思えてくる。(麻生結一)


第47回「再会」(11/28放送)
☆☆
 江戸で官軍を迎え撃とうとする勇(香取慎吾)と江戸を火の海にすることを何としても避けようとする勝海舟(野田秀樹)とのつばぜり合いは、演技合戦的な面白みとしては今一歩の印象。その勝により隊の名を甲陽鎮撫隊と改めさせられた新選組は甲府へ出陣する最中、勇と意見が対立して永倉新八(山口智充)と原田左之助(山本太郎)が去る。
 後日談的な色合いが強まる中で、もっともしんみりさせたのが療養中の総司(藤原竜也)とみつ(沢口靖子)が別れを告げる場面。みつがあげた隊士の中で、生きているのは島田魁(照英)のみとは、思えば信じられないほどに遠くへ来てしまったとの総司の感慨にも納得がいくところ。
 そんな島田が相撲取りのニセ手形を押していたことが松平容保(筒井道隆)にバレる壬生の相撲興行のエピソードも、とても懐かしく思い出される。やっぱり後日談的でしょ。(麻生結一)


第46回「東へ」(11/21放送)
☆☆
 もはや1話で何日分なのか判別がつかないほど、進行の駆け足ぶりは相当なものに。ここしばらくはトメをはっていた伊原剛志演じる佐々木只三郎がオープニングで致命的なほどの銃弾を浴び、一応は勇(香取真吾)に見取られながらも、並みのキャスト並に息絶える。他に密偵の山崎(桂吉弥)と永倉(山口智充)が愛したおその(小西美帆)も死亡。
 新選組が江戸に引き上げることになったことにより、八木家の人々もここにて御役ごめん。男装したひで(吹石一恵)がサービスカット的に最後の勇姿を見せる。トピックは、ラッパ飲みする榎本武楊役で草なぎ剛が友情出演したことかな。(麻生結一)


第45回「源さん、死す」(11/14放送)
☆☆
 肩を鉄砲で撃たれて負傷した勇(香取慎吾)の仇を討たんと血気盛んになる歳三(山本耕史)以下隊士たちのなだめ役として、かつてきなきほどの賢者ぶりを発揮する源さんこと井上源三郎(小林隆)。副題の「源さん、死す」のままに、鳥羽・伏見の戦いで命を落とす直前に敬意を表してのことだろうが、そんなせっかくの布石も逃げ遅れた周平(浅利陽介)を救わんとして一人薩長軍の砲撃の只中に飛び込んでいく源三郎が、刀で鉄砲の弾を弾き飛ばすマトリックスもどきのせいですべてが吹っ飛ぶ。『武蔵 MUSASHI』の巌流島ジャンプにもたじろいだけれど、これはそれ以上の衝(もしくは笑)撃。(麻生結一)


第44回「局長襲撃」(11/7放送)
☆☆
 大政奉還、王政復古の大号令と連打されると、何だか日本史の時間を受けているような気分になってくる。岩倉友山(中村有志)らがちょっとした小悪党にしか見えないあたりに苦笑させられつつ、1話1日の法則が守られているのか否もだんだんわからなくなってきた。
 これまでほとんど見せ場のなかった龍馬(江口洋介)の妻・おりょう(麻生久美子)を申し訳程度に挟んだりしているせいか、一回休み的な印象を受けた回。(麻生結一)


第43回「決戦、油小路」(10/31放送)
☆☆☆
 尊王派の中にあっては所詮元新撰組との位置づけでしかないことを痛感した伊東甲子太郎(谷原章介)が勇(香取慎吾)の暗殺を企てることでその出自を払拭しようとする話と、そんな伊東の門弟でありながらにしてにして勇を心から慕っている平助(中村勘太郎)が立たされるジレンマを描いた回。七条油小路で斬りあう中にあって、何とか平助を逃がそうとする新撰組の面々の心情と、その気持ちを感じつつもなおかつ斬りかかっていくしかない平助の思いとがのっぴきならないところで結局悲劇に終わるあたりは、これまでの隊士の死と同様に何ともせつない。
 岩倉(中村有志)から屈辱的な扱いを受け憮然とする伊東は、まさにかつて武士として認められなかった勇そのもの。伊東が自らの手で勇を手にかけようと決意して望む二者会談の場面では、今にも伊東が勇に斬りつけんとするその緊迫した空気の中で、伊東とかつての勇とが重なっていき、ついに腹を割って話すにいたるあたりの語り口が実にうまかった。(麻生結一)


第42回「龍馬暗殺」(10/24放送)
☆☆★
 龍馬(江口洋介)暗殺の首謀者に関しては、新撰組説、薩摩藩黒幕説、京都見廻組の今井信郎説と諸説あるようだが、今回の大河で龍馬を斬った男に指名されたのは佐々木只三郎(伊原剛志)。次の日のドラマではお袋ギャグでしか会話できない男を演じている伊原剛志も、ここでは真ギャクの役作りに雰囲気を醸す。龍馬の霞みゆく視線の先には地球儀が、という余韻は納得のいくところでは。龍馬の死によって心配になってくるのが、クレジットのトメが誰になるとか、というドラマとはあまり関係ないところだったり。
 それにしても、各方面に寝返り続けている捨助(中村獅童)の強運にはただただ驚くばかり。今回は、坂本用の防弾チョッキならぬ、防刀チョッキに助けられたか。(麻生結一)


第41回「観柳斎、転落」(10/17放送)
☆☆★
 河合の死(大倉孝二)以来、すっかり評判を下げた武田観柳斎(八嶋智人)だったが、伊東(谷原章介)の先導で新撰組を離脱した御陵衛士に手引きしたつもりが受け入れられず、絶望して自害した若手隊士たちの一件によりついには逃亡。
 伊東からも薩摩藩の西郷(宇梶剛士)からも相手にされず行き場を失った観柳斎を内部抗争に歯止めをかけようとする勇(香取慎吾)は許すのだったが、程なくして斬殺されてしまう。いいとこなしの観柳斎だったが、こっそり河合の墓参りをしていたエピソードで最後に救うあたりがいかにも三谷脚本らしい。(麻生結一)


第40回「平助の旅立ち」(10/10放送)
☆☆★
 加速度式にキャストが減っていく今日この頃。伊東甲子太郎(谷原章介)の離脱により、平助(中村勘太郎)が新撰組を去ることに。孝明帝(中村福助)が崩御、お幸(優香)も予告なしに短い生涯を閉じる。ただ、妹役で再登場が約束されていると知るからか、それほど感慨が深まらないのは都合が悪い。そして誰もいなくなり、トメは佐々木只三郎(伊原剛志)に!(麻生結一)


第39回「将軍、死す」(10/3放送)
☆☆★
 脱走した谷三十郎(まいど豊)は斎藤(オダギリ ジョー)によって斬殺されるが、続けざまに浅野薫(中村俊太)も脱走。三十郎からの誘いに引き続き、浅野の企てに引きずり込まれた周平(浅利陽介)はいったん切腹を命じられるも、源三郎(小林隆)の嘆願によって近藤家との養子縁組を解消されるにとどまる。どうにも頼りない周平には随所にひやひやとさせられるも、ここまでに周平と源三郎のラインをもう少し太めに描いてあれば、源三郎の懇願にもグッときたかもしれない。
 龍馬(江口洋介)とおりょう(麻生久美子)、左之助(山本太郎)とまさ(はしのえみ)の2組のカップル誕生は殺伐とした展開の中にあってホッとさせるところ。最後の大物、一橋慶喜役で今井朋彦登場。イメージキャストは唐沢寿明だったんですけど、大ハズレでした。(麻生結一)


第38回「ある隊士の切腹」(9/26放送)
☆☆☆
 テレビではあまりお目にかかれないようなアイロニカルに過ぎるコメディの仕立てはもはや笑えない域だけれど、こういう珍しい試みこそが三谷幸喜脚本作の存在証明だと思うし、これを否定してしまうと何も残らくなってしまう(何もやっちゃいけなくなる)ことも加味して、いつもよりいい点数にする。
 「ある隊士の切腹」の「ある隊士」とはもちろん勘定方の河合耆三郎(大倉孝二)のこと。時代遅れのレッテルを返上するのに必死な武田観柳斎(八嶋智人)に西洋軍学の珍書を買うための50両を都合してやったがために切腹せざるを得なくなる河合の顛末を終始コミカルに描くも、結末が切腹であるだけに笑えるはずもなく。長州藩に対する幕府からの処分を通達するために広島に向かった勇(香取慎吾)に同行した伊東甲子太郎(谷原章介)が勇の先行きを予見するまでもなく、新撰組が時代から取り残されていくことを象徴しているかにも映る。河合の切腹後、飛脚のすずが聞こえてくるエンディングがあまりにも悲しい。トメ前の永井尚志役で佐藤B作が登場。小劇場系の大物で固められたキャスティングは最後まで不動のようです。(麻生結一)


第37回「薩長同盟締結!」(9/19放送)
☆☆★
 勇(香取慎吾)、永倉(山口智充)に引き続き、松原(甲本雅裕)までもが身請けの体勢万全って、新撰組はいつから後家同士の溜まり場に?!、などとのん気に構えていると、松原に殺された長州浪士の妻・お初(清水美那)は夫の復讐を果たすべく、手料理を振る舞う間に油断した松原を討ち果たす。
 最後まで女を救おうとした松原(甲本雅裕)の、その松原の仇をうった斎藤(オダギ リジョー)の、そしてすべてを自分のせいにしておさめた歳三(山本耕史)のそれぞれの思いに勇がしみじみとなるあたりの都合のよさはいかにも新撰組的か。
 歴史的なメインストーリーは、火の粉をかぶる覚悟で西郷(宇梶剛士)と桂改め木戸(石黒賢)を引き合わせた坂本の奔走のおかげで成立した薩長同盟頬ずりつきの方。そのちょっと前に勇が寺田屋に踏み込まなかった借りとは、寺田屋大騒動の借りってことね。(麻生結一)


第36回「対決見廻組!」(9/12放送)
☆☆★
 おりょう(麻生久美子)に言い寄るもつれなくされたことで物に当り散らした天狗こと捨助(中村獅童)こそが原因だった祇園の火事に、ここのところ不逞浪士の取り締まりにおいて手柄の奪い合いをしていた見廻組と先陣争いとなるも、勇(香取慎吾)の見事な指揮ぶりにより火事は大事に至らず、佐々木只三郎(伊原剛志)も新撰組の存在を認めざるを得なくなる。
 新撰組やんちゃ三人衆=総司(藤原竜也)、左之助(山本太郎)、平助(中村勘太郎)が新しい屯所である西本願寺の宝物を破ってしまったりといった面白サイドストーリーも盛り込みつつ、ここ最近の展開の手際のよさは維持されていたという印象。(麻生結一)


第35回「さらば壬生村」(9/5放送)
☆☆★
 山南(堺雅人)=明里(鈴木砂羽)ラインに触発される形で発生した勇(香取慎吾)=お幸(優香)ラインを経て、前置き通りに永倉(山口智充)=おその(小西美帆)ラインも成立。このスリーラインに勢いづいた左之助(山本太郎)は心に灯った炎をまさ(はしのえみ)にぶつけるも、またまた砕け散るあたりは毎度おなじみといった感じ。
 高杉晋作の挙兵を聞きつけた桂(石黒賢)が長州に帰参したため、押しかけ密偵としての任を解かれた捨助(中村獅童)は、新撰組にかち合ったドサクサに刀を飛ばすに、

斎藤(オダギリジョー)「出来る!」

って、いつから彼はコメディ担当になったの(おそらく「寺田屋大騒動」の根本原因を作った前回あたりからなんだけど)。それにしても、三谷さんは捨助で遊んでるよなぁ。
 期待の岩倉具視役は中村有志。彼がパントマイムをスパルタ特訓した『課外授業 ようこそ先輩』は感動的だったなぁ、なんてあんまり関係ない話でこの場は代えさせていただきます?! 斬った長州の浪士からの遺言に忠実に、その妻に金を届けに行くエピソードで松原忠司(甲本雅裕)にもスポットが当たる。
 新撰組が西本願寺へ屯所を移すことにより、引き裂かれるひで(吹石一恵)と総司(藤原竜也)。この2人って、ひでの片思いじゃなくなってたんですね。何はともれ八木邸でもいろいろありました。ほうきがさかさまの締めくくりに余韻があっていい。(麻生結一)


第34回「寺田屋大騒動」(8/29放送)
☆☆☆
 山南(堺雅人)の試衛館合流秘話をオープニングに持ってくるとは、やはりいまだに山南の死を引きずっているのかとしんみりとなったのも束の間、確かに引きずっていなかったわけではないけれども、それは山南と明里(鈴木砂羽)の悲しみの関係を模した、勇(香取慎吾)と深雪太夫(優香)の大騒動な関係の方で。
  深雪太夫を身請けし、伏見の寺田屋で出迎える勇のもとに一足先にやってきたのは、何と連絡なしに京にやってきていた妻・つね(田畑智子)とみつ(沢口靖子)だった!ここからは歴史的登場人物を縦横無尽に使い切っての三谷ワールドが炸裂。つねと深雪太夫の鉢合わせが坂本(江口洋介)と密談していた桂小五郎(石黒賢)の差し金だったりするお遊びもちょっとワルのりしすぎのような気もするけど、まぁ面白ければすべてはOKということで。こういう出し入れのタイミングなんかは、やはり抜群にうまい。
 つねと深雪太夫の直接対決を何とか回避しようと、新撰組嫌いのお登勢(戸田恵子)がとっさの機転を利かせたり、源三郎(小林隆)と歳三(山本耕史)が入れ替わり立ち代りに勇の身代わりになろうとしたりといった成れの果てに、

勇「みなそれなりにありがとう」

とは、いかにも三谷さん的な締めくくりで。もっといい点をつけてもいいかとも思ったけれども、そうなるとこの回が一番面白かったことになってしまうわけで、それも『新撰組』的にはマズいでしょ。(麻生結一)


第33回「友の死」(8/22放送)
☆☆☆
 前回の「山南脱走」に引き続いて、みっちりと「山南切腹」の回。1日1話の法則という足かせこそがここでは異色の面白さの原動力となっており、今回ばかりはその試みを肯定せざるを得ない。
 なぜだか書き忘れていたのが、山南役の堺雅人はこれまでもとてもよかったが、その最期はいっそう素晴らしかった。この大河でこれほどまでに一人の登場人物にこだわったこともなかったか。しかも2回連続で。三谷さんは山南が好きだったんだろうなぁ。
 何とか山南が切腹せずに生き延びられる方法を見出そうとする新撰組の面々の数々の試みにもしみじみとさせられたが、何といっても季節はずれの菜の花を切腹直前に探してくる明里(鈴木砂羽)にホロっとさせられた。彼女はすべての事情を知っていたんですね。愚かそうに見えてそうじゃなかった悲恋キャラを見ていたら、まったく関係ないんだけど『峠の群像』で数右衛門(小林薫)を愛した美波(樋口可南子)を思い出し、明里も最後死んでしまうのではとちょっと心配になる。(麻生結一)


第32回「山南脱走」(8/15放送)
☆☆★
 明里(鈴木砂羽)を連れてしみじみと脱走する山南(堺雅人)が出色。新たに新撰組に加わった伊東甲子太郎(谷原章介)を疎ましく思い、実は山南こそを評価しているとの歳三(山本耕史)の心の内を語らせたことが、次週に向けては実に大きい。このワンシーンによって、山南という存在のジレンマが深まっていくという寸法だ。そのお見事な手はずに、☆☆☆は第33回にとっておきたいと思った。裏切られるようなことがあれば、この回を☆☆☆に訂正します。(麻生結一)


第31回「江戸へ帰る」(8/8放送)
☆☆★
 新撰組の鬼局長に、と松平容保(筒井道隆)直々にお願いされ、将軍の京都入りを老中に談判するべく勇(香取慎吾)は江戸へ。

彦五郎(小日向文世)「いやぁ、懐かしいねぇ」

って、懐かしいどころの話ではなく、完全なほったらかし状態だったでしょ。寝たきりになってしまった周斎(田中邦衛)が、新撰組の活躍を話す場面のいかにも誇らしげな感じにはしみじみとなる。ゲンコツ加えて寝てるらしい娘のたまと初対面に、

勇「母親に似てよかった」

とはどうだろう。結構微妙?!
 勇の江戸での評判を計るバロメーターとしては、松平主税助改め上総介(藤木孝)ほどに最適な人物もいないだろう。お汁粉七杯で112文分食べた明里役でNHK女優の鈴木砂羽が初登場(ちょっと前にご本人がおっしゃってましたので)。インテリフェチの明里にとって、山南(堺雅人)ほど理想に近い存在もないはず。
 ついにキャストの序列でふで=野際陽子を乗り越えた坂本=江口洋介は、土佐弁よりも薩摩弁の方がうまいぞ!大切な人=総司(藤原竜也)の労咳を助けてあげられなくても、攘夷をよしとするのか、との良順(田中哲司)の問いに、時代のジレンマが集約されていた。
 いやらしい話になってしまうが、NHKは役者のランクで一律のギャランティを支払うシステムなので、やはりこの大河は相当安上がりということになる。逆に次回作はランクの上の俳優がこぞって出演しているため、やはりお金がかかる。つまりはここまで大物不在となると、この2作品中でバランスをとっているとしか思えない。西郷隆盛までもはけてしまったので、あと残ってるのは徳川慶喜、岩倉具視あたりだけれど、あんまり期待できないなぁ。田村正和が兄弟で阪妻を語る番組に出演したのは、大河への前ふりだと思ってたんだけど。(麻生結一)


第30回「永倉新八、反乱」(8/1放送)
☆☆★
 ベテラン大物キャスト不在の中で、ついに江口洋介がトメに。1時間後スタートの日曜劇場(『逃亡者』)では一番手と続けば、WOWWOW的な表現を借りるならさしずめ8月1日は江口洋介スペシャルデー!
 その坂本(江口洋介)と大島吉之助(宇梶剛士)の初対面にしてつたない方言対決の脱力した前ふりがウソのように、池田屋での働きに対しての恩賞金に端を発して新撰組が内部分裂を引き起こしはじめる展開は、かつてなきほどのテンションの高まりを見せる。殺戮のない静の展開としては、これまでで一番の出来ばえだったのでは。
 その戦いぶりを細かく査定して、分け前に差をつける歳三(山本耕史)の発想が気に食わない永倉(山口智充)は、勇(香取慎吾)と歳三に力が集中する形となった新撰組の新体制発表にも異論を唱える。そこで明らかにされた芹沢(佐藤浩市)暗殺の真相に、ついに激怒して脱退を口にするも、脱退は法度に反すると反論する歳三はさらに一枚上手か。
 新体制からはずされて面白くない山南(堺雅人)の入れ知恵で、会津藩主・松平容保(筒井道隆)へ建白書提出を画策する永倉らだったが、その企ても斎藤(オダギリジョー)の内通で筒抜け状態。容保との謁見に際しても勇に先回りされて、誠実を絵に描いたような青筋を立てての勇の弁舌にまんまとひっかかって(?!)、永倉は反旗を翻意する格好に。ここに今後の勢力図がつまびらかとなって、ドラマへの興味が若干にしても高まってきた。ただ、書き上げた建白書をその日のうちの持って行かなきゃいけなかったのは、やはり1日1話の法則の弊害かな?!(麻生結一)


第29回「長州を討て」(7/25放送)
☆☆
 三谷版新撰組で随所に便利使いされている捨助(中村獅童)は、この回ではすべての歴史的事件の目撃者にまで昇格する。早速、佐久間象山(石坂浩二)が河上彦斎(高杉亘)に斬殺される場面に遭遇。石坂浩二は『白い巨塔』の東教授に佐久間象山、『東京湾景』のヒロインの父親役と堅物系の役が続くも、こういった力み気味の役柄にはピタッとこない印象。いずれもが知性と教養を兼ね備えた地位の高い役どころだが、ご本人のイメージと合致するからといって、それが必ずしも当たり役になるわけではないということか。石坂浩二はなさけなかったり、優柔不断だったりする役柄も実にうまいだけに。
 象山の従者としての職を失った捨助が、空腹に任せて「蛤食べたいなぁ」とつぶやくと蛤御門の変が勃発?! 久坂玄瑞(池内博之)と寺島忠三郎(加藤大治郎)に桂小五郎(石黒賢)へ届けてほしいと遺髪を託され、訪ねた桂からは池田屋で意図的に桂を救ったととられて、自分の連絡係になって京の情勢を知らせてほしいと頼みこまれたりと、その大活躍ぶりで影の主役級の狂言回しぶりを発揮する。今後もこればっかりだとどうかと思うけど。(麻生結一)


第28回「そして池田屋へ」(7/18放送)
☆☆★
 三谷版池田屋事件のキーパーソンは、意表をついて捨助(中村獅童)だった?!桂小五郎(石黒賢)と捨助の絡みは、いかにもらしいんだけど。不穏な動きを見せる尊攘派の不逞浪士たちの動きに対して先手を打つにあたり、勇(香取慎吾)は八木源之丞(伊東四朗)に相談?って、どっかでガス抜きしようとしたのかもしれないけど、ちょっと緩すぎないかい。
 池田屋の2階建て立体セットでリアルに見せたやり方はなかなか興味深かったが、殺陣のリアリティはもう一歩かな。期待が大きすぎたのもあるけれど。(麻生結一)


第27回「直前、池田屋事件」(7/11放送)
☆☆★
 回想シーンにしか登場しない(しかもほんの一瞬の)佐藤浩市がトメとは、このドラマのキャスト不足もいっそう深刻度を増してきてる。生きてるときは3回しかトメにならなかったせめてものお詫びのしるし?!
 次回が池田屋事件の回なのに(「そして池田屋へ」)、副題が「直前、池田屋事件」とはちといやらしい気もするが、参院選の速報番組で時間が前倒しになったことを考えると、これぐらいの見栄きりは必要だったかな。
 まずは佐々木只三郎(伊原剛志)が再登場し、幕府直参連合・見廻組の結成を報告。永倉(山口智充)は死んだ友に託されたかんざしをついに小常(小西美帆)に手渡す。元朝ドラヒロイン小西美帆の登場も、このエピソード自体をまったく思い出せず。そんな永倉は芹沢暗殺の噂を勇に問いただすも、勇は自分はかかわっていないと言い切る。ここで、ヒュースケン(川平慈英)との一件が例え話として登場。『人間の証明』で登場したジョニー・ヘイワード(池内博之)との夢の対決に思いをはせる。勇(香取慎吾)に谷昌武(浅利陽介)を近藤家の養子にという話に、歳三(山本耕史)は反対、山南(堺雅人)は賛成。
 ここからは、哀れの5連発。最初の哀れは勇。自らの所業に悩み、歴史の表舞台に立つことを望んでいないことを山南に吐露して、影ながら人間味をアピールするも、新たなるメンバーの勇の印象は怖いの一言。そこでお得意のゲンコツを口に入れちゃったら、もっと怖いだろうに。地味に哀れだったのが斉藤(オダギリジョー)。路上で寝起きしてるころのクセで、眼を開けて寝てるって。存在自体が哀れなのが左之助(山本太郎)。風呂に入らないので臭いという理由で、まさ(はしのえみ)からきっぱりとふられる。でも、意外に字はうまかったみたい。悲しく哀れな平助(中村勘太郎)。非番の日に総司(藤原竜也)の名を語って遊興三昧も、運悪く勇に見つかってしまう。総司をうらやましく思う平助に対するここでの勇の励ましの言葉がいい。『せかちゅう』的哀れはひで(吹石一恵)。総司の病気を心配してるのに、いっこうに振り向いてくれない。
 武田(八嶋智人)は、商家・桝屋で多量の鉄砲と火薬その他の武器を発見。「私が見つけました」を連呼するガス抜きぶりも無効にさせるほどに、枡屋の主人の口を割らせた斉藤に教わって歳三が実行した一番痛い拷問が気になる。あの太いろうそくから想像するに……。
 ここまで『新撰組!』を見ていなかった方にも、次回はご覧になられることをお奨めします。まぁ、『武蔵 MUSASHI』の巌流島はこけましたけどね。(麻生結一)


第26回「局長近藤勇」(7/4放送)
☆☆
 勇(香取慎吾)がお久しぶりの妻・つね(田畑智子)に近況を知らせる文というアイテムを使うことで、1日1話の原則を守ろうとするこそくな手段はこれで2回目。あまり繰り返しても仕方がないが、その足かせのメリットがどうにも発見できないので、その試み自体はやはり肯定しがたい。
 メインストーリーは、新選組が大坂まで活動範囲を広げることに待ったをかけようとする大坂町奉行・内山彦次郎(ささきいさお)との抗争。それにしても、佐々木功はいつからささきいさおに?
 大いに気になったのが、ついに内山と太刀を交えることになった総司(藤原竜也)が頻繁にまばたきをしていたこと。真剣勝負時にこんなことは、去年の『武蔵 MUSASHI』ではありえなかったこと。あれはまばたきしなさすぎだったけど。(麻生結一)


第25回「新選組誕生」(6/27放送)
☆☆☆
 1年間のちょうど折り返しが、このドラマの過去最高回になった。前回より修羅の道コンビを結成した歳三(山本耕史)と山南(堺雅人)が芹沢(佐藤浩市)排除のために躍起になる過程と、芹沢が斎藤(オダギリジョー)を用心棒につけて、お梅(鈴木京香)と嵐山に紅葉狩りにいく場面の対象的な描き様は実にうまくいっていた。とりわけ、死臭が漂うほどの紅葉の赤が目に焼きつく。この嵐山のシーンといい、宴の場面といい、音楽も新曲が多かったですね。それだけ力が入っていたということか。
 暗闇の八木邸で芹沢を襲うシーンは壮絶そのもの。ここは脚本云々というよりも、シャープな演出に魅せられた。ただ、新撰組襲名の日に芹沢が斬られるという皮肉なめぐり合わせ自体は、らしからず意地悪でいい。今一歩の印象だった佐藤浩市も、最後の最後で鬼気迫ってくれました。さすがです。(麻生結一)


第24回「避けては通れぬ道」(6/20放送)
☆☆★
 トメが佐藤浩市に(確か2回目)、ドラマには殺気が(これは確か初めて?!)、含蓄のある人の上論を説いて、源三郎(小林隆)が存在感をアピール(これは間違いなく初めて?!)と、ドラマ開始半年目にして初めて尽くしの回となった。最大の見せ場は、何といっても歳三(山本耕史)と山南(堺雅人)の細工に陥れられ、ついには新しく定められた法度に従って新見(相島一之)が切腹させられる場面。山南に気をつけろとの暗示的な言葉にもゾクッとなる。
 見世物小屋で見た「アホ〜、お前死ぬで」と連呼するオウムに芹沢(佐藤浩市)がムキになる場面もいいが、お梅とちぎった総司(藤原竜也)をこれでもかと殴りつける芹沢はその上をいく。狂気を見せつける佐藤浩市の凄みには大いに感心したけれど、ちょっと出すのが遅すぎたかな。
 いつも日本の将来を憂いている坂本(江口洋介)が遊興三昧、みたいなガス抜きはどうしてもやらないと気がすまないんでしょうね。(麻生結一)


第23回「政変、八月十八日」(6/13放送)
☆☆
 副題の「政変、八月十八日」のままに、三条実美ら公卿たちと長州藩の攘夷過激派が京都から追放された事件が起こった日における浪士組の活躍(?!)を描いた回。1話を1日の出来事にすることには再三反対してきたが、ついに時間まで出してきちゃったよ。緊迫した場面が緊迫しない原因はこの変なくくりのせいだとは思いつつ、そのあたりの徹底ぶりには敬意を表するとして。
 お花畠の警護において、浪士組の存在感をアピールした芹沢(佐藤浩市)がいなきゃ、やっぱり何も出来ないといった雰囲気を推し量って、歳三(山本耕史)が修羅の道宣言することによって、ついにドラマは動きはじめるのか?! 虫干しをしていなかった甲冑が痒かったりするあたりは、いかにもという感じ。(麻生結一)


第22回「屋根の上の鴨」(6/6放送)
☆☆
 前回の抗争がきっかけでむしろ親交を深めた小野川部屋と話をつけて、壬生で相撲の興行を行うことになった勇(香取慎吾)たち。松平容保(筒井道隆)が町人を装い、お忍びで相撲を見に来るオマケつき。
 グッズ販売も好調、興行は大成功するも、そんな勇の順風満帆ぶりが面白くない芹沢(佐藤浩市)は、部下の又三郎(松谷賢示)を斬り捨てるは、街に火をかけるはで、その傍若無人ぶりはとどまるところを知らず。佐藤浩市の芹沢は陰のある研ぎ澄まされた悪人というよりも、どこか善人臭さが消えないやせ我慢する普通の男という印象でインパクトが弱い。(麻生結一)


第21回「どっこい事件」(5/30放送)
☆☆
 前回の羽織に引き続いて、今回は浪士組の旗がお披露目される。“誠”の文字は風になびけば、試衛館の“試“に見えなくもないとは、これって史実なんでしょうか?かなり苦しいと思うんだけど。こういう小さな抵抗は、レジスタンスっぽくて歴史物的ではあるけれども。
 メインストーリーは浪士組v.s.力士たちの悶着。お騒がせ帝王・芹沢(佐藤浩市)が力士の一人に手傷を負わせてしまったものだから、危うく全面抗争に発展するところを勇(香取慎吾)がいかにもらしい誠実な男気を示したことで、意気に感じた相撲部屋の小野川親方(瑳川哲朗)が手打ちにしよう言い出してめでたしめでたし。
 芹沢に斬られてしまう熊次郎役で舞の海が登場。

小野川親方「体は小さいけれど、小技の効く面白い力士」

との追悼文は舞の海のイメージ通りでした。(麻生結一)


第20回「鴨を酔わすな」(5/23放送)
☆☆
 新撰組のトレードマークである羽織誕生秘話が冒頭に登場。

勇(香取慎吾)「実をいうと私、赤穂浪士が大好きなんです」

との小学生的発言であの装束が決定したとすると、微妙な気持ちにもなるが。締めくくりは、勇と芹沢(佐藤浩市)と龍馬(江口洋介)と桂(石黒賢)がもしも一緒に酒を飲み交わしたら、という一席。ここは桂の弁術にあっさり屈してしまう芹沢の小者ぶりを見せようとしたもの。
 新入隊士の募集で河合耆三郎(大倉孝二)や松原忠司(甲本雅裕)が新たに加入する一連の笑劇風の作り方などは、堂に入っていてさすが。(麻生結一)


第19回「通夜の日に」(5/16放送)
☆☆
 八木家の姑・久(正司歌江)が逝き、勇(香取慎吾)たちは久の葬儀一切を浪士組で取り仕切ることに。ところがそこに八木家となんら関わりのない久坂玄瑞(池内博之)がやってきて……。
 こういう閉じた設定をやらせると、確かに三谷さんはそれなりにうまいんだけど、所詮はそれなり止まり。久坂玄瑞を絡めるやり方だって、もうちょっと真実味のある方法を探してもらわないと。1日で1話を完結させる無理による何とも苦しげな展開も食傷気味に。芹沢(佐藤浩市)からの五両の香典、ニ両抜いてるお梅(鈴木京香)のしたたかさはマル。ただ、佐藤浩市の芹沢にはもう一歩突き抜けた凄みが足りない。(麻生結一)


第18回「初出動!壬生浪士」(5/9放送)
☆☆
 久坂玄瑞(池内博之)らが幕府を揶揄する目的で立てていた数え歌の立て札を引き抜いたことで、ついに壬生浪士組が始動、というラストがやりたかったがためのそれまでといった感じ。試衛館派と芹沢派とで、役職の取り合いをする攻防はちょっぴり面白かった。(麻生結一)


第17回「はじまりの死」(5/2放送)
☆☆★
 副題「はじめての死」は言い換えるならば、初めての痛切。佐々木(伊原剛志)が見張り役として送り込んだ殿内(生瀬勝久)が芹沢(佐藤浩市)に斬られたことで、勇(香取慎吾)もこれまでのように無邪気ではいられなくなった(はず)。ここからは一気呵成に、とここのところ似たような期待感ばかりを書いているような気が。
 ドラマとしての無理は、各話を1日の出来事に収めてしまおうといういかにも三谷さんらしい試みによる。この禁を破らないとなると、幕末のダイナミズムを描くのはいっそうの至難の業になるのでは。仮に1話1日を宣言されているとするのなら、そんな公約は視聴者のために存分にお破りください、と申し上げたくなる。
 一切台詞のない壬生狂言で描かれる牛若の千人斬りの話が、御伽草子からきているとの博識ぶりを発揮する芹沢が意外。硬くなって、いつものうんちくマシーンぶりを発揮できない山南(堺雅人)もまた意外。お幸(優香)はこれが初登場だったかな。(麻生結一)


第16回「一筆啓上、つね様」(4/25放送)
☆☆★
 京でのこれまでの成り行きを、勇(香取慎吾)が江戸に残る妻・つね(田畑智子)にあてた手紙で説明していくという趣向。あの手この手で見せてきたうちのあの手の一つがこれなわけだが、相変わらず喉ごしはいいんだけど、噛みごたえはもう一歩の印象。上洛した将軍家茂は群集の彼方、「よっ、征夷大将軍」と声をかけた狐目の男・高杉晋作は目にもとまらぬ早足で逃亡、代わって久坂玄瑞(池内博之)が登場。
 謎の女・お梅(鈴木京香)の素性も見えはじめて、チラッと芹沢鴨(佐藤浩市)と絡む。笑ったのは、会津藩主で京都守護職の松平容保(筒井道隆)に面会する際、勇が貸し紋付の家紋をしわで隠すエピソード。ドラマの大勢にまったく影響のないエピソードを最初に思い出してしまうのも、どうなんだろう。(麻生結一)


第15回「行くか、残るか」(4/18放送)
☆☆★
 前々回あたりから調子が出てきて、浪士組を朝廷のためのものと位置づけた清河八郎(白井晃)と勇(香取慎吾)らとの決裂を描いた今回も展開は実にスムーズで、あっという間に45分を見通せた。ここにちょっぴりの凄みが加わればと思うのだが……。もっと言うならば、初回からこのぐらいの調子が出ていれば……。ところてんには酢醤油?餡蜜?何はともあれ、とんでもない恩人・清川のおかげで試衛館の面々は京都に来られたということで、ここからがいよいよ本題。(麻生結一)


第14回「京へ到着」(4/11放送)
☆☆★
 芹沢(佐藤浩市)&取巻き連中と勇(香取慎吾)&フレンズは、京都郊外の壬生にある八木源之丞(伊東四朗)邸に寄宿することになる。ここでの八木家の人々の覚悟の程が、決死のものであるほどに笑わせてくれる。浪士を引き受けるのは、雷に打たれたようなものとはつらすぎます。中でも最大の被害者は、娘のひで(吹石一恵)。間違いが起きないようにと男装させられるはめになるも、体が虚弱だとあちこち触られたり、滞在のお礼にと勇に剣の稽古をつけられたりと踏んだりけったり。こういう災難巻き込まれ型(?!)のキャラクターを演じさせると、吹石一恵はハマります。『ロッカーのハナコさん』シリーズしかり。
 高箒の上下をしつこいほどに入れ替えたりといった小ネタのうまさは相変わらず。ちなみに最重要エピソードは、清河(白井晃)が朝廷に建白書を提出するお話でした。白井晃の曲者ぶりは絶品。『お厚いのがお好き』が終わっちゃったのは、非常に残念。(麻生結一)


第13回「芹沢鴨、爆発」(4/4放送)
☆☆★
 これまでの中ではもっとも見ごたえがあった第13回。「芹沢鴨、爆発」という副題は、昨年の“見たまま副題”シリーズを髣髴とさせる?! やはり出てくる人が出てくれば、ドラマの出来ばえもアップすると思った次第。
 浪士組の先番宿割の任についたものの、宿の確保がままならずに途方にくれていた勇(香取慎吾)のもとに、試衛館の面々が加勢に駆けつけるあたりから群像物らしいよさが出てくる。素早い部屋割りで切れ者ぶりを発揮し、勇の存在を認めさせることを高らかに宣言する歳三役の山本耕史がいい。
 せっかく宿割が片付いたのに、佐々木只三郎(伊原剛志)の指図で芹沢鴨(佐藤浩市)を仲間から切り離す目的から一人部屋を割り当てようとするも、運悪くそこは鶏小屋で、

「そりゃ、まずいだろ」by勇

とはまた率直な感想だこと。ここからは芹沢鴨の爆発ぶりを堪能する。どうせ宿無しと開き直った芹沢は、宿場のど真ん中で焚き火を始める傍若無人ぶり。事態収拾のためにキャンプファイヤーばりの炎の前で土下座し続ける勇と芹沢の対決が見ものだ。大河ドラマだったら、これぐらいの盛り上げは常時やってくれないと。七面鳥状態で真っ赤になった勇を冷やすべく、試衛館の面々が一緒に水をぶっかけるオチも楽しい。(麻生結一)


第12回「西へ!」(3/28放送)
☆☆
 第12回最大の感想は、ようやく芹沢鴨役の佐藤浩市がとめになったかという、またもやキャスティングに関してのこと。でも、芹沢が死んじゃったらどうなるんだろう、などという近い将来の心配までしてしまったり。
 ドラマは浪士組が京都に向けて出立するまでの一日を描いている。こういう構成が頻発するのは、脚本家の嗜好以外の何ものでもないでしょう。これだからドラマがなかなか前に進まないともいえるし、これぐらいやらないとドラマが一年持たないともいえる。
 面白かったのは、清河八郎(白井晃)が立案した東海道を通っての上洛行程を、清河の影響力を弱めようとする佐々木只三郎(伊原剛志)が中山道に変更してしまうエピソード。無役だった勇(香取慎吾)を役付けにするための五十両を清河にわたすべく、歳三(山本耕史)が思いついた金づるは、やっぱり捨助(中村獅童)だったか。ちなみに、捨助は架空の人物らしいですよ(「新撰組を行く」より)。
 笑ったのは、浪士たちでごった返す伝通院にやってきて、何やかやと世話をやくみつ(沢口靖子)の大活躍ぶり。勇の京都行きを快く思っていなかったつね(田畑智子)が見送りに来るシーンがあっさり味なのはいい。(麻生結一)


第11回「母上行って来ます」(3/21放送)
☆☆
 身分にこだわる似た者同士、勇(香取慎吾)と養母のふで(野際陽子)が、勇が浪士組として京へ旅立つ直前に和解する話がメイン。ともに百姓の家に生まれ、武家の世界に入ろうと死に物狂いでやってきた自らを、

「あなたは私です」byふで

と勇に重ねる場面は感動的。勇の兄・宮川音五郎(阿南健治)が名刀・虎撤(実はまがい物)を贈る場面の痛々しさには、それまでにこの音五郎という登場人物に関するもう一歩踏み込んだ描写があればもう少し感激できたのにと思う。存在感の問題かもしれないけど。
 香取慎吾が演じる近藤勇像へのもやもやとした思いは、

「よく言えば純粋、悪く言えば幼い」by桂小五郎(石黒賢)

との台詞に吹っきることができた気がする。勇がお盛んな歳三(山本耕史)の身代わりになるお得意の“一発殴ってシリーズ”の第2弾は、歳三に思いを寄せるお琴(田丸麻紀)篇。様々な思いが相まって、ついに浪士組が動き出す。ドラマの世界よ開け、と切に願って。(麻生結一)


第10回「いよいよ浪士組」(3/14放送)
☆☆★
 将軍家を不逞の浪士から守るべく、幕府が身分を問わず志のある人材を募集するという知らせは、夢破れた勇(香取慎吾)にとってこのうえないもの。試衛館の食客を引き連れて、浪士組入隊を受け付る伝通院を訪れるも、そこは支度金目当ての浪士たちで溢れかえっていた。
 どうにも今回の大河は世界が外へは開かれず、どうしても狭い世界で閉じようとする。もちろん、それこそが三谷幸喜脚本の真骨頂であるのだから仕方がないし、今回のような一所に人が集まってきて、といったシチュエーションをやらせるとやはり抜群にうまい。人の出し入れのドサクサの中で、殿内義雄(生瀬勝久)、粕谷新五郎(伊吹吾郎)あたりが初登場。勇の講武所出仕を反故にした張本人・松平主税助(藤木孝)と浪士組最高責任者・松平上総介(藤木孝)は同一人物だった!有限不実行ぶりもまったく同様。そんなつながりを考えると、前回分にも★一つほどプラスしたくなる。(麻生結一)


第9回「すべてはこの手紙」(3/7放送)
☆☆
 講武所の教授方見習への推挙を無下に取り消しにされた勇(香取慎吾)は、その理由が農民出身であったからだと勝海舟(野田秀樹)に指摘されて愕然。再び講武所を訪れて食い下がるも、佐々木只三郎(伊原剛志)から改めてお前は武士ではないと言い放たれて、打ちのめされてしまう。
 身分の差に屈辱を覚える過程はこのドラマの重要な部分だけに、もう少し痛切にやってほしいところだけど、随所に笑わせようという意識が先にたってなかなかドラマが深まっていかないところがもどかしい。(麻生結一)


第8回「どうなる日本」(2/29放送)
☆☆
 今日もまた、試衛館道場は食客たちで大にぎわい。

「まだ増えるか!」byふで(野際陽子)

ヒュースケン(川平慈英)だったら、「まだまだ増えるんです!」とでも言うんでしょうかね。藤堂平助(中村勘太郎)一人分のくいぶちは、北辰一刀流伊東道場の主・伊東大蔵(谷原章介)の眼前で、伊東の門弟・加納(小原雅人)を沖田総司(藤原竜也)が撃破したことで増えることに。谷原章介はBS1の競馬番組の司会をやってましたが、やはりここできましたか。
 メインストーリーは、試衛館の石田散薬をまとめ買いする松本藩士の伊藤軍兵衛が、情緒不安定による乱心の末に東禅寺でイギリス人を切り殺すエピソード。初めて目のあたりにするイギリス人たちが話す英語を聞いて、即座に自分をほめているのだと解釈するみつ(沢口靖子)のポジティブさに思わずニコニコとしてしまう。軍兵衛役の光石研は、『武蔵MUSASHI』の吉岡伝七郎役からの続投です。
 歳三(山本耕史)はお見合い相手・お琴(田丸麻紀)とあったその日にメイクラブ。それにしても、納豆にきな粉とは聞いたことないなぁ。(麻生結一)


第7回「祝四代目襲名」(2/22放送)
☆☆
 勇(香取慎吾)の4代目襲名披露がとりおこなわれた府中六所明神に天然理心流の門弟が一堂に会する場面は、いかにもにぎやかしくて楽しげ。紅白の野試合では、沖田惣次郎改め総司(藤原竜也)がようやくクレジット2番手のふさわしい大活躍をする。
 ただ、最大の見せ場は勇の襲名を祝うためにやってきた龍馬(江口洋介)との対決シーンでしょう。対決といっても立ち合いの場面などではなく、何といっても土佐勤王党にあこがれる勇に、多摩勤王党結成を呼びかける場面につきる。多摩勤王党を連呼する面々は、NHK的な極限では。(麻生結一)


第6回「ヒュースケン逃げろ」(2/15放送)
☆☆
 周助(田中邦衛)ではなく、ヒュースケン役に川平慈英!大河というよりも『HR』!

「お前本当は日本人だろ」by歳三(山本耕史)

「それはどういう意味ですか?」byヒュースケン

こりゃ、コメディだ。「こんなキャスティングでいいんですか?」と問えば、きっぱりと「いいんです」って言われちゃいそう。
 日本の女と西洋の女の違いについて。

「西洋の女とは違うのか?」by歳三

「ぜんぜん違います」byヒュースケン

「ぜんぜん違うのか?」by歳三

「その話は置いといて……」byヒュースケン

間と呼吸がまるっきり『HR』。清河八郎役で白井晃が登場し、ますます『HR』。ヒュースケンを闇討ちにしようと待ち伏せしていた攘夷派の浪人たちに金で雇われていた永倉(山口智充)だったが、勇の説得にあっさり寝返る。その清い選択に対してヒュースケンが、

「ブラボー!」

って言っちゃうんじゃないかとヒヤヒヤする。

「世間の波にもまれ、私も大人になりました」by永倉

それでもまだ22歳か。マントを貸してお富(木村多江)を後ろからハグさせるって、今で言うセクハラですよね。お富は台詞ゼロも、木村多江はなかなか雰囲気があった。
 どうしてこの大河のキャストが軽量に見えてしまう理由がついに判明。確かに田中邦衛はとめにふさわしい大物なれど、その田中邦衛が出演する『はんなり菊太郎』のとめはその田中さんじゃなくて、香川京子なんですね。つまりは、大河のとめが金曜時代劇のとめじゃないわけです。沖田総司(藤原竜也)と土方歳三(山本耕史)が逆なのも引っかかるところ。こういう俗っぽい見方も、大河を見る楽しみのひとつでしょ。(麻生結一)


第5回「婚礼の日に」(2/8放送)
☆☆★
 自分の祝言そっちのけで、頼ってきた手負いの山口一(オダギリジョー)を助けるためにがんばる勇(香取慎吾)がいかにもらしい。このとき勇は27歳。それにしては少し幼さすぎるか。勇(香取慎吾)と武家の娘であるつね(田畑智子)との婚礼の1日が描かれているが、こういうシチュエーションで人の出し入れをやらせると、やはり三谷幸喜は抜群にうまい。勇がみつ(沢口靖子)に手伝ってもらう着付けのシーンなども楽しいし、桂小五郎(石黒賢)が祝いの席とまったく関係のない演説をぶったりするあたりもいい。山南(堺雅人)にいっては、来客の接待役になっちゃってるし。大河らしからぬ面白さが満載だったが、三谷さんがおっしゃる大河らしい大河はどこに行ってしまったのだろうとも考えたり。試衛館に押しかけてきた役人たちを、機転を働かせたみつの肘鉄一発、捨助(中村獅童)の鼻血で乗り切ったのには笑ったけど。
 一を江戸から逃がすために、勇が芹沢鴨(佐藤浩市)と掛け合う場面はさすがに凄みがあった。佐藤浩市が一枚かんだだけで、俄然ドラマが重厚になるのだから大したものです。(麻生結一)


第4回「天地ひっくり返る」(2/1放送)
☆☆★
 副題の「天地がひっくりかえる」とは、桜田門外の変のことだった。そんな歴史が動き出す瞬間の回にドラマもちょっとだけ動き出す。稽古代の払いが滞っている試衛館の門弟・広岡子之次郎(橋本じゅん)の住まいを訪ねた勇(香取慎吾)は、同じく広岡から借金を取り立てるためにやって来ていた山口一(オダギリ ジョー)と遭遇。広岡を取り押さえた2人は、広岡のなじみの料理屋に場所を移すも、そこで店番をしていた水戸藩の脱藩者・芹沢鴨(佐藤浩市)の手引きによって、広岡は裏口から逃げてしまう。芹沢が「明日の朝楽しみにしてな。天地がひっくり返る」と言い残した通り、翌朝桜田門外で大老・井伊直弼が水戸浪士達に暗殺される。
 試衛館では歳三(山本耕史)の捕らぬ狸の皮算用から、坂本龍馬(江口洋介)から勇の評判を聞いて訪ねてきただけの山南敬助(堺雅人)が道場破りにされてしまう。このサイドストーリーに絡む周助(田中邦衛)とみつ(沢口靖子)がケッサク。戦う前の一喝、

「やっちまえ」

はほとんど五郎さんばり。自信満々で立ち合うも、あっけなく敗れてしまう惣次郎(藤原竜也)に、

「こんなときに学びやがって」

とは確かにね。弟の敵は姉である自分が打つとばかりに槍を片手にハチマキをしめるみつに扮する沢口靖子の一挙手一投足も楽しい。佐藤浩市がドラマに加わったことで、ドラマに若干凄みが出る。来週も登場してくれればいいんだけど。(麻生結一)


第3回「母は家出する」(1/25放送)
☆☆
 ひねらない展開は、確かに青春模様っぽくはあるけれど。偶然再会した龍馬(江口洋介)が土佐に帰ることを知った勇(香取慎吾)は、紹介された橋本左内(山内圭哉)ともども試衛館道場に招く。ところが、彼らが交わす天下国家の話についていけない。そんな客人をはばかることなく、勇の縁談をめぐって養父の周助(田中邦衛)と養母のふで(野際陽子)が大ゲンカ。ついにはふでは家を飛び出してしまう。ふでの説得におもむいた勇は、人は出自を変えることはできないとたしなめられる。詐欺まがいの道場破りで薬を売りさばいたことがばれてしまった歳三(山本耕史)は、逆にその門人たちに袋叩きにされる。武士になりたいと試衛館への入門を勇に頼み込む傷だらけの歳三に対して、勇は武士以上に武士らしくなると宣言する。
 ふでの嫌がらせとも思える厳しい言葉に、勇と同じ農民出身であるがゆえの複雑な心境が見え隠れするあたりが今話の肝。まぁ、そのひねり様だって、まっすぐの範疇内だけれど。龍馬と左内の話に耳を傾けるも、沖田惣次郎(藤原竜也)と井上源三郎(小林隆)がふざけ合って道場を走り回ったりするために、勇はなかなか話に集中できなかったりするあたりのドラマの作り方は、いかにも三谷幸喜的。香取慎吾の勇は、誠実かつ無知な感じがそれっぽいかも。龍馬よりも圧倒的に後輩に見えてしまうのは、あまりにも大河ドラマ的だけれど。(麻生結一)


第2回「多摩の誇りとは」(1/18放送)
☆☆
 記憶の限りにおいて、『新選組!』の第2回は大河史上最弱キャストだったのでは?クレジットを見進めるにつけ、大河らしいキャストがほとんど見当たらないことに驚く。もちろん、ドラマが面白かったら、そんなことはどうでもいいんだけど。
 1857年、勇(香取慎吾)はみつ(沢口靖子)と一緒に故郷の多摩へ出げいこに向かった。薬の行商をしている親友の歳三(山本耕史)と再会した勇は、豪農である滝本家の財産を盗賊から守ってほしいと頼まれ、滝本家の御曹司・捨助(中村獅童)がつれてきた永倉(山口智充)を助っ人に盗賊と対決するも、歳三の命を救うために、勇は生まれて初めて人を斬ってしまう。
 若かれしころに盗賊と相対するエピソードは、この手のドラマの定番中の定番。三谷さんがおっしゃる大河らしい大河が、定番の羅列だとするとちょっと怖いなぁ。盗賊との対決といえば、『武蔵 MUSASHI』の第1回が『七人の侍』の盗作云々で問題になっているけれども、あれを盗作というならば、もやは何もできなくなってしまうのでは?薄味のこの回などに比べれば、圧倒的に迫力があったわけだし。

「まるで鈴の音のような声をされている。」by土方為次郎(栗塚旭)

みつ(沢口靖子)が幼女風でかわいい。『燃えよ剣』『新撰組血風録』などで土方歳三を演じた栗塚旭が、その実兄・為次郎を演じるあたりは洒落てますね。(麻生結一)


第1回「黒船が来た」(1/11放送)
☆☆★
 オープニングの時代背景を説明するロールスーパーから実にわかりやすい。さらにはテーマ曲がこれでもかというほどに勇ましく、ドラマのテイストもそのあたりとイコールになるであろうことを早々に予期させる。
 「元治元年(1864年)4月29日 京都」のテロップをせるや、一気に人物紹介しきってしまう手際のよさから実に快調。新選組隊士による浪士取締りの御用改めを冒頭に持ってくることで、このドラマの群像劇としてのあり方を印象づける。新撰組が桂小五郎(石黒賢)を急襲するシークエンスから坂本龍馬(江口洋介)も軽く顔見世程度になめておいて、彼らと近藤勇(香取慎吾)とが出会った10年前の江戸にまで話がさかのぼるあたりも定石通りで、とてもきれいなまとめぶりだった。
 そばの話一つをとって、近藤、桂、坂本、そして土方歳三(山本耕史)のキャラクター設定をきちっとやってしまうあたりもちゃっかりしている。ここから、佐久間象山(石坂浩二)の従者に扮して、ペリーの黒船を見に行くまでの展開がとことん明るい。その明るさは軽量級とも紙一重なれど、とりあえずはとことん暗かった『武蔵 MUSASHI』とは180度違ったドラマになりそう。
 江口、石坂ラインは『白い巨塔』コンビか。枠だけで計算すると、今週は石坂浩二を5時間も見てしまいました(『白い巨塔』2時間スペシャルに『ウルルン滞在記 番組推薦!今が旬!世界の大珍味スペシャル』、そしてこれ)。このときの坂本龍馬は確か10代だったはず。なるほど、江口洋介のチンピラ風の役作りは苦心のあとだったのね。佐久間象山が名付けの名人ぶりをはっきして、近藤に鬼瓦、土方に豆腐と名付けるあたりは三谷フレーバーかな。ありがたい話も二度と同じことは言えないとの佐久間のご立腹も、三谷さんの本音でしょうか。(麻生結一)




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