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3時のおやつ (テレビ朝日系2004.01.09)
第3回テレビ朝日新人シナリオ大賞ドラマ
制作著作/テレビ朝日
プロデュース・演出/田村直己
協力プロデュース/里内英司
脚本/清水優
出演/牧野耕平…要潤、篠塚充恵…有森也実、篠塚亜紀…太田琴音、蛍原徹、松田悟志、唐橋充、谷津勲、窪園純一、山素由湖、岡田正、柴田さやか、くわばたりえ、宝田三吉…石橋蓮司、上原寿恵、藤本洋子、浜口悟、藤田浩、岡井泰彦、小池茅、河野明子、大河内浩、篠塚吾郎…石井正則
ほか



☆☆☆★
 第3回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞の大賞受賞作品。売れないマジシャンと病床の少女との心のふれあいという売り文句だけを聞くと、ありきたりなドラマを想像させるが、さにあらず。着想が実にユニークで、語り口の巧みさにも大いに感心させられた。これほど小品のよさを存分に味わったのは久しぶり。
 売れない若手芸人・牧野(要潤)は舞台での仕事を打ち切られたかわりに、週3回家庭訪問して病気療養中の少女・亜紀(太田琴音)に芸を披露するという一風変わった仕事を引き受けるのだが、この少女は只者ではなかった。知る人ぞ知る天才芸人・ジニアス吾郎(石井正則)を父に持つ亜紀からのダメだしは実に的確で、まるで大師匠のそれ。亜紀と牧野が時間を置かずして、大師匠とその弟子の関係におさまるあたりのおかし味は格別。
 不治の病の少女と芸道の道を究めた師匠という、結びつくはずもない2つのキャラクターが一体化する異色の面白さは、臨終前の病室で牧野が催すショーで感動的に締めくくられる。懸命に芸に取り組む牧野と、神社の境内で父が見せる名人芸とがオーバーラップするところも正統的でいいし、ついに臨終をむえた亜紀の病室の窓からカメラが引いて引いて、満開の桜の花びらが散ってという見せ方も感動的。
 ジャグリングに奮闘する要潤と大師匠の口ぶりがかっこよくさえある太田琴音の好演が光る。一つ残念だったのが、上方の芸人のはずのジニアス吾郎を石井正則が演じていたこと。これはやはり、上方出身の芸人さんがやる役だったのでは。たとえば中川家の礼二とか。『お厚いのがお好き』の石井正則は面白かったですけど。(麻生結一)




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