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彼女が死んじゃった。 (日本テレビ系土曜21:00〜21:54)
製作著作/日本テレビ
チーフプロデューサー/梅原幹
プロデューサー/田中芳樹
原作/一色伸幸、おかざき真里
脚本/一色伸幸
演出/佐藤東弥(1、2、5、8)、吉野洋(3)、猪股隆一(4、7、9)、南雲聖一(6)
音楽/CHORO CLUB feat.Senoo
主題歌/『トランジスタG(グラマー)ガール』TOKIO
出演/安西ハジメ…長瀬智也、石井玲子…深田恭子、吉川良夫…香川照之、熱海のバンド…クレイジーケンバンド、渡辺哲、デビット伊東、太郎…松丘慎吾、次郎…林伸行、南香織里…高岡早紀、高丸守…柳沢慎吾、糸山通…相島一之、伊藤サチ…本上まなみ、梁鳳英…チューヤン、井上善吉…石倉三郎、松ノ木与一…小山慶一郎、渡部護…岡田浩暉、入江ミカ…戸田恵子、伊吹ももえ…陣内孝則、群馬…須賀貴匡、江戸っ子寿司の親方…なぎら健壱、江成博士…桜井センリ、宇治達也…パパイヤ鈴木、歌川繭…遠藤久美子、勝股栄太楼…橋本さとし、大沢兄弟…工藤順一郎・工藤光一郎、小栗松造…きたろう、乾八千代…赤坂七恵、桜…いしのようこ、蒲田資雄…西村雅彦、石井ゆかり…木村佳乃
ほか

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第9回(3/13放送)
☆☆★
 自殺した次の日に、宝くじが100万円当選してたなんて、ゆかり(木村佳乃)はとことんゆかりだった。散々浮名を流してくるも、記憶に残るのはゆかりだけのハジメ(長瀬智也)が、豚毛と3本100円がぶら下がった歯ブラシツリーを燃やしてしまう場面は印象的。熱海でであったとろい女、八千代(赤坂七恵)は、ハジメを私のセビオン・グローバーだと言い残して去っていく。ハジメはその時はじめて八千代の存在に気がつくほどに、彼女の存在感は希薄だったわけだが、狂言回し的なその存在感は第1話から変わらず格別でした。
 携帯巡りの旅はア行をちょっと超えたところで挫折したけれど、ゆかりの死には196分の1の理由があるというオチは順当なところ。ハジメにとってのゆかりは、まさに夢の食い倒れ。ゆかりは速やかに、ハジメは緩やかに自殺する、とのナイーヴさと、玲子(深田恭子)をふってしまうハードボイルドぶりとの落差こそが、このドラマの真骨頂でしょうね。
 ゆかりへのあてつけに、どんなに痛くても楽しい宣言する3人の打ち上げがせつない。宝くじの100万円は、昔バイトをやっていた杵柄で免許も持ってるハジメが盛大に花火を打ち上げて使い切ったか。こういう場合、花火以外の手はないものかと思うんだけど、豆知識(香川照之)がプラネタリウムの語りをやってくれるラストの余韻は素敵だった。(麻生結一)


第8回(3/6放送)
☆☆★
 これまでの偉大なるゆかり(木村佳乃)のイメージから一転、終わりに差し掛かった携帯巡りの旅ではネガティヴな評価が続出する。クーリングオフの弱みにつけこまれ、3回までも奴隷扱いされたキャッチセールス業の大沢兄弟(工藤順一郎&光一郎)にしてみれば、ゆかりの死に歓喜の声を上げても当然だろう。ミラノの留学時代にゆかりをバイトで雇っていた和食屋の小栗(きたろう)にしてみても、2年間勉強してもまったくイタリア語が話せなかったゆかりは使えない人材。夢を探していたといえば聞こえはいいが、結局は夢から逃げていた逃亡者にすぎなかったゆかりは、そしてこの世からも逃げてしまったとは手厳しい。ゆかりと不倫関係にあった勝股(橋本さとし)にいたっては、愛人のルールを破ったゆかりの被害者の面をする始末。5分おきにメールを送ったり、妻に無言電話をかけたりといったゆかりは、これまでのゆかりとはまったくの別人だ。
 「私を探して」の問いかけは、「石井」でも「ゆかり」でもない、「555」の携帯への登録からはじまっていたのだ。不倫相手の数を自慢する勝股の携帯からゆかりからのメールを削除し続け、ゆかりの面目を守ろうとしたハジメ(長瀬智也)はゆかりの自殺の理由を探す旅で、自分自身を思い出し始める。エリートだと思っていた父親が重役専属の運転手だったことを恥じていた自分を恥じるだなんて、つらすぎる。ゆかりの心療内科のはしごも判明して、これまでで一番重苦しい回になった。(麻生結一)


第7回(2/28放送)
☆☆★
 ゆかり(木村佳乃)の詫び状編。次なる携帯巡りは、美容室を営む宇治(パパイヤ鈴木)を訪ねるハジメ(長瀬智也)の一人旅。単に文無しだっただけなのに、その不敵な笑みからいつしか美容師と客の関係を超えた関係に。そんなこんなで宇治に一から勉強し直すきっかけを与えたのだから、それはそれでゆかりの存在感というか、並じゃない目力というか。
 手作りアクセサリーを販売する繭(遠藤久美子)が一年前にゆかりに出会った場面は、空撮から見せるひねりっぷり。繭の片思いの相手・群馬(須賀貴匡)にちょっかいと聞けば、先輩を寝取られた玲子(深田恭子)の苦々しい思いが蘇ってくるけれども、実際には繭の恋愛成就のために一肌脱いでいたゆかりだった。いかに繭になりすましてメールしててくれたとしても、ゆかりの惚れっぽさはそのままなんだけど。遠藤久美子の土9というと、『君といた未来のために』を思い出します。
 ゆかりが「死ぬほど退屈なつまらないヤツ」のために作っていたアクセサリーは、豆知識(香川照之)ではなく玲子へのイヤリングだった。

「石井ゆかりは鏡だ。何で死んだんだと探せば探すほど、じゃあお前は生きてんのかって問い返される」byハジメ

これまでのハードボイルドなタッチからふっとこういうナイーヴさを見せられると、その落差はやはりより効果がでる。ゆかりの最後の職場、命の光研究所で、小さな3Dとなって蘇るゆかりにホロリ。(麻生結一)


第6回(2/21放送)
☆☆★
 ゆかり(木村佳乃)の携帯電話に登録された196件のうち、こなした分はまだほんのわずかだけに、これを第9話までにどうやって減らしていくのかに気が回りはじめるも(せめて第10話があれば!)、まずは地道にイブキモモエちゃん=ゲイバーで働く伊吹ももえ(陣内孝則)から再スタート。ここは意外にも「まじめぶっこぎ過ぎ」調に、アップダウンが激しく、来るたんびに別の女になっていたゆかりの人間像が明らかになる。ゲイバーに来るような女はコンプレックスの塊とまで言われてしまっては、もはや自殺の原因を探るまでもない?! おかま的にはハジメ(長瀬智也)よりも評判がよかった(?!)豆知識(香川照之)は、アメリカ人になりたいがために寿司職人になったと。なるほど、職人はグリーンカードが取りやすいのか。
 初の2本立てということで、矢継ぎ早に照明プランナーの入江ミカ(戸田恵子)登場。ここでは照明デザイナーとしても世の中と折り合えなかったゆかりが浮き彫りに(ちなみに前職は編集プロダクション勤務だった模様)。蛍光灯に色セロファンをまいたキッチュな味わいこそがゆかりのやりたかった照明だったが、ヨーロッパの猿真似に完全なる敗北を喫し、最後の仕事として江ノ電をライトアップすることに。には屋根にETERNITY。まぁ、見えなきゃ仕方がないわけだし、
 ゆかりの新しい顔が出尽くした感がある中では、むしろミュージカルの主役に抜擢と思いきや、リハーサルでの主役の代役の仕事だったハジメの話の方が苦々しくていい。体操のお兄さんをしてたキャリア以外に何も聞かない、いつでもどこでも誰とでもの落ち目のダンサー呼ばわりを返上するチャンスだっただけに、いっそうつらいところ。ボーリングで倒れなかったピン同士を

「俺と俺だ」

と例えるナイーブさよりも、プロならばプライドを捨てられるというももえの言葉にうながされて、追っかけの子供たちに有料でとんち体操を見せるラストの方が泣けてくる。
 まぁ、ここから2エピソードずつやったとしても、最後まで行き着くはずもなく、これからどうするんだろうという対処法の方が、ゆかりの自殺の真相よりも興味津々となってきた。おそらく、今回の2つのエピソードも実際は2話分じゃなかったのかな。(麻生結一)


第5回(2/14放送)
☆☆☆
 豆知識さん(香川照之)がゆかり(木村佳乃)の自殺の原因を突き止める妙案を思いつく。なるほど、パソコンの送信メールをチェックすればいいんだ(逆に、これをこれまでやってなかったことがいまさらながらに不手際すぎ)。ところが、すべての送信メールはすでにゆかりの手で削除されていた。ゆかりのことを理解できたらノーベル賞ものとの玲子(深田恭子)の言葉にも納得だが、その場に都合よく現れるコンビニの店員・松ノ木(小山慶一郎)が、監視カメラの映像を編集して、石井ゆかりスペシャルビデオを作っていたというエピソードは、のちのちその映像を効果的に使いたかった意図はわかるけど、それを自己申告するとはあまりに芸がない。
 そのときゆかりの携帯に電話をかけてきた、“みちくさ”(ありがち!)なるフォークバンドのリーダー、渡部(岡田浩暉)が次なるターゲットに。いったんは携帯巡りの旅メンバーから脱退していたハジメも、3年前渡部と一緒にヒップホップユニットを組んでいたんでいた縁で再び合流することに(ユニット名、RO@Dって、いかにもダメそう)。ブスの多いバンドの追っかけの中からゆかりをチョイスした渡部は、言ってみればハジメとゆかり兄弟。手をつないだことしかない豆知識さんは、松竹梅の小梅クラスということで仲間はずれに。ここで、ゆかりは作詞もしていたことが発覚。渡部に言わせると、ハジメの1年間の栄光とはとんち体操のおにいさん時代だったって。最高の年はと自らに問うて、2007年と答える渡部にしんみり。

 ゆかりが死んだ日か、その前の日に投函された渡部への手紙の中に同封されていた「555」という詩に渡部がメロディをつけた鎮魂のメロディにはホロリとさせられ、そんな特別な時間の曲にしみじみ調も極まる。

「江ノ電の中を走り抜けたね〜♪」

のフレーズに、その詩がハジメとの一夜について書いたものであることがわかる。初七日の最後の2分にラブホのロビーでゆかりに話しかけるハジメ。

「俺はお前か、お前は俺か」

着物をだらしなく羽織ったゆかりの後姿を追うと(パッと見は怨みの門番イズコ!)、そこは鏡に映った自分がいた。テレビ的じゃないゆえになおさら、このドラマが貴重に思える。(麻生結一)


第4回(2/7放送)
☆☆★
 ベットに寝ている豚毛の玲子(深田恭子)と3本100円の八千代(赤坂七恵)をハジメ(長瀬智也)がまじまじと見るオープニングかららしさ満載。3本100円の雰囲気をかもし出す八千代役の赤坂七恵がいい味出してます。イノウエゼンキチ(石倉三郎)が営む自転車店が次なる携帯巡りの旅の舞台。半年前の夜中の2時、自転車を求めていのうえ自転車のシャッターをたたくゆかり(木村佳乃)がいかにもそれらしい。人間には我慢できないことがあると言い残して自転車にまたがったまではよかったものの、すぐさま転倒。自転車に乗れないゆかりは近所で乗り方を練習するうちに、外国人留学生たちと三浦半島ヤッホー倶楽部というサイクリング倶楽部を結成する。なるほど、ありもしない自分の場所を探し続けてきたゆかりにとっては、40度の熱がある病人にとっての病院と同様に、自転車が必要だったか。人の死は単純じゃないと語るゼンキチがどこに隠れているかわからない人生の穴を、水につけてみないとわからないぐらい自転車のチューブの穴に例えるあたりには、座布団一枚的なうまさがある。ひとりハジメが自転車で滑走する場面など、ハードボイルドで印象的。
 もう一人のキーパーソンは、リョウホウエイ(チューヤン)。中国に妻子を残してやってきリョウはゆかりを好きになり、他のメンバーに乗せられて愛を告白。見事成就した話を聞き、玲子は2年前に大好きだった井口先輩をゆかりに寝取られた忌まわしい事件を告白して、姉への嫌悪感を改めてあらわに。大事な人を奪われて、玲子の心は殺される。小さいころ、お供物をゆかりに毒見させられていた玲子。代わりに井口はゆかりが毒見し、「毒はないみたい」とはゆかりだったら何の悪気もなく言ってしまいそう。

「姉は強盗殺人です」by玲子

の意はここにあった。確かに、死んだらみんな偉い、いい人とは言えないことも。
 帰国の直前のリョウの口からは、夜の海を見に行ったあの日のことを忘れないと言われて玲子はハッとさせられる。

「夜の海はどこでもドアだ」byゆかり

それが2人のすべてで、それで十分だったとの玲子の言葉が美しく聞こえる。
 ゆかりの知らなかった顔がいろいろ出てくる旅もいいし、台詞も決まってる。それをいい役者が演じて。なのに、何かが足りない気が。全体的に少し決まりすぎているかな。
 先日、グラミー賞で司会する木村佳乃さんの司会ぶりを見ていたら、あまりにも楽しげに奔放で、このドラマのゆかりとダブって見えた。当たり役ということでしょうか。(麻生結一)


第3回(1/31放送)
☆☆★
 ゆかり(木村佳乃)の携帯に登録された196人を全員訪ねようものなら、大河ドラマの枠でだって収まりきれないと自覚してか、携帯巡りの旅は分業化されることに。豆知識さん=良夫(香川照之)に言わせると、これは携帯巡りの旅的産業革命にあたるらしい。いつもおいけてぼりの八千代(赤坂七恵)が真冬の海辺でアイスを食べて、その棒を死んだ金魚のお墓に立てるエピソードがいい感じ。
 その分業化が玲子(深田恭子)と2人きりになるためのハジメ(長瀬智也)の単なる策略だとも気がつかず、良夫は張り切って漁師をしている糸山通(相島一之)に合うも、いかにもまがい物ちっくな“福”の印鑑を買わされたのみで、その死の手がかりになるようなことはいっさいわからず。生き迷っていたゆかりは、半年前からスウェーデンで開発された科学的セミナーに通っていたらしい。墓を暴くなとの糸山の捨て台詞には納得も、それではドラマは終わってしまうわけで。
 ハジメと玲子はイメクラのピンクナース、ナース28号ことイトウサチ(本上まなみ)と面談し、ゆかりがサチと同僚だったことがわかる。同僚と言っても、五年前に石川町のキャバクラでのことだけど。聞き物は、酒の勢いでこれまでのわだかまりを一気に吐き出す玲子。ゆかりへの恨み節の途中に、本当に吐きそうになっちゃって(このドラマ2回目)、こころざし半ばで大の字になる。親や友達を切って一人ぼっちだったと語るサチが、自分の電話番号を携帯に残しておいてくれたゆかりに対して感謝を述べる場面にしみじみ。さらには、豆知識さんがフィアンセでなかったことを告白する場面にもしみじみ。手さえも、ゆかりが子供を堕胎したときにしか握られたことはなかったか(あくまでも受動的に)。携帯巡りの旅を、僕の旅だと強く思う気持ちもよくわかる。
 酔っ払った玲子をラブホテルに連れ込もうとするハジメだったが、まだ日が高いのに全室満室。まさに、初七日までは死者=ゆかりは愛する人のそばにいるの仕業かな。あのキムチソースは、ゆかりの3大レパートリーの一つだったことが判明(あとの2つはすき焼きとうどんすき)。太陽が爆発して地球の終わりが来ても、8分20秒は光が届く話がはじめと終わりに出てくるあたりのまとめ上手ぶりになるほどと思いつつ、いっそう切なさが立ち込めてきて、ドラマがいっそうポピュラリティを失っていくことには心配になる。回想のみのゆかりを演じる木村佳乃が圧倒的な存在感。はかなげで色っぽい感じに魅力がある。(麻生結一)


第2回(1/24放送)
☆☆☆
 大化けもありかもと思ってはいたが、第2回目にして早くも面白くなってくれたのはうれしい限り。専業主婦の香織里(高岡早紀)が、ゆかり(木村佳乃)を殺したと自首してくる。しかし、アリバイがあった彼女は直接的な犯人ではありえない。ハジメ(長瀬智也)は香織里が美人だったため、ゆかりの携帯巡りの旅に積極的に誘う。携帯に登録されている次なる番号は何と拘置所。一同が面会した高丸(柳沢慎吾)はゆかりの家に押し入った泥棒で、その強盗の罪で収監されていたのだった。
 吐き気をもよおす香織里を介助するはずの玲子(深田恭子)が吐いてしまうきっかけからずらした面白さがはまりはじめて、香織里がゆかりのOL時代を回想するところで、このドラマがどういう構造で物語を進めていこうとしているのかが見えてくる。ドクター中松のフライングシューズ購入もすごいけど、パソコンを開通させてメール打つまでに4ヶ月もかかるなんて、何て孤独な闘いなの。そのときのメールが、

「かおりさんけんきゆかり」

ただ、送信者、および宛先の漢字変換はできてるみたい。濁点の方がやさしそうなものだけど。
 不安定だけどときめいていたゆかりは、常に劇的な変化を求める人間だったことが判明。OL後はインテリアコーディネーター、2年間のイタリアに語学留学、ミラノの和食屋でバイトして、日本で調理師学校に。行った学校だって片手でおさまらない。回想のドサクサに、カメラアシスタント歴も発見。

「お姉ちゃんは大きな迷子」by玲子

「自分に正直だっただけ」by香織里

「鏡に映った逆さまの私」by香織里

 すでにこの世にいない人物のパーソナリティを多人数の回想で浮き彫りにしていく手法は『生きる』型とでもいうべき定番だが、メロウになりがちなところを生きている香織里がゆかりと自分を比較する一段階分で、ドラマとしてのうまみが深まっている。「ゆかりは薬でゆかりは毒。ゆかりは光で私は影」の関係性が、ゆかりの自由が、香織里自身をつまらなく感じさせるだなんて、あまりにもつらい。ゆかりのメールはすべて削除=ゆかりを削除したも同然との発想がいかにも今風。これが手紙であれば、ここまでの罪悪感は生まれないはずだから。
 とっさの判断で自殺を演じたゆかりが、逆に空き巣をやっつけた話には、小話的な面白さに屈託なく笑うも、その後にふと実際のゆかりの自殺を思うにつけ、苦々しさがこみ上げてくる。木村佳乃と柳沢慎吾の息の合った掛け合いが絶妙。金魚鉢の金魚を持て余したり、別室でコーヒーを入れさせられたり、一人蚊帳の外の八千代(赤坂七恵)のエピソードも、ほんわかとしていていい。
 携帯巡りの旅の中で、1話に1人を癒していくやり方は、これからも続くのだろうか。ヨットに取れこんだハジメより一枚上手に生活に疲れた主婦を演じる高岡早紀は、不幸キャラをやらせるとさすがに上手い。『真実一路』で吹っ切れなかった分もいっきに取り戻した感じ。ただ、ごみの中に捨てられた指輪を探すのはいいとしても、家を空けた3日分のごみ、やたら多くないですか。せっかくゆかりが届けてくれた指輪のメルヘンも、ついそのあと片付けの方が気になっちゃって。なるほど、ハジメはとんちたいそうのお兄さんだったか。(麻生結一)


第1回(1/17放送)
☆☆
 突然自殺をとげた一人の女をめぐって、その女と一夜をともにした男、その女の妹、そしてその女のフィアンセをかたるすし職人の3人が、女の携帯電話に登録された196人を手がかりにその死の謎を探す旅に出るという、お久しぶりの一色伸幸脚本による奇妙な設定のドラマ。
 ラブホの待合室で違う相手と一緒にいたハジメ(長瀬智也)とゆかり(木村佳乃)はそこに流れたBGMを口ずさんだことで意気投合。泥酔のお互いの相手をくっつけて、ホテルを抜け出すことに。趣味の悪い成金・蒲田(西村雅彦)が所有する江ノ島のハーバーにつながれた大型クルーザーをねぐらにしているハジメはそこでゆかりと一夜を共にし、電話番号をお互いの携帯に登録しあって朝になって別れた。その後、ゆかりに電話しようとするが、データが見当たらない。熱海のホテルでダンサー稼業をこなし、一緒に踊っていた八千代(赤坂七恵)をクルーザーに連れ込んだ次の日の朝、金魚鉢を持って現れたゆかりの妹で女子大生の玲子(深田恭子)から、ゆかりがマンションから飛び降り自殺したことを聞かされる。
 今風なアイテム(=携帯電話)は使うも、題材のこね方には古めかしさを感じるし、思わせぶりな前ふりにもいまいちひかれない。ただ、適材適所のキャスティングが思惑通りにはまれば、大化けの期待感はなきにしもあらず。携帯めぐりの旅に出かける3人の中では、豆知識さんこと吉川良夫を演じる香川照之が早々に存在感をアピール。エンディングに、ゆかりを殺したと警察に自首してくる織里(高岡早紀)を登場させるあたりは、ドラマの展開への自信の表れ?!(麻生結一)




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