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ちょっと待って、神様 (NHK総合月〜木曜23:00〜23:15)
連続ドラマ
制作・著作/NHK名古屋
制作統括/銭谷雅義
原作/大島弓子『秋日子かく語りき』
脚本/浅野妙子
演出/西谷真一(1、2、5)、海辺潔(3、4)
音楽/小六禮次郎
主題歌/『元気を出して』島谷ひとみ
出演/久留竜子…泉ピン子、天城秋日子…宮崎あおい、久留春夫…塚本高史、原田ゆかり…裕木奈江、茂多三郎…勝地涼、久留リサ…碇由貴子、天城良平…伊沢勉、天城真子…佳梯かこ、大迫薬子…鈴木惠理、神の使い…京本政樹、笠間米子…安達祐実、久留一夫…津嘉山正種
ほか

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第5週「そこにあるのに気づかないこと」(2/2〜2/5放送)
☆☆☆★
 ついに竜子(泉ピン子)が家族全員に告別をする一週間に終始しんみりさせられっぱなし。竜子が天国に戻る儀式を茂多(勝地涼)と薬子(鈴木惠里)と一緒にやっていると、そこへ息をきらせて一夫(津嘉山正種)が飛び込んでくる。一夫の目には秋日子(宮崎あおい)が瞬間竜子に見えるも、よく見るとやはり秋日子(見た目:宮崎あおい&中身:泉ピン子)のまま。この入れ替わりのトリックはめったに出てこないだけに、出てくると余計に効果的だ。ゆかり(裕木奈江)に呼び出された一夫は、心の中に妻は生き続けていると告白。ここで、どんなに人生が素晴らしいかを秋日子に説く竜子の言葉には、2人が一心同体でやってきた経緯分だけの重みがある。そして竜子はついに一夫にその正体を明かす。抱き合う2人の姿は実に感動的だが、そこを春夫(塚本高史)に見られてしまうのユーモアでオブラートするあたりのつつしみもいい。
 竜子にのっての最後の1日は海への家族旅行。ついにおばさんの形状をした竜子(?!)と一夫が再会する夜の海辺の場面は涙なしには見られない。ぱっと見ると、そこにはすでに秋日子の姿はない。ここにこの見せ方の手法が極まった。冥土の土産に砂浜に寝そべる夫婦の姿に、夫婦の愛は言葉も見つめかえす目も要らない、ただ隣にいて、お互いを感じあうだけでいいという秋日子の台詞がかぶさってくるように思えてくる。
 春夫(塚本高史)が小さいころに海で助けられたことを思い出し、秋日子に母の姿を思う場面も、両親の離婚をセッティングする秋日子が、公園で遊ぶ小さいころの自分を見る場面も心に残るが、とりわけ家族写真の場面はNRの素晴らしさにうなった。NHKドラマの一人二役にはずれなしか、宮崎あおいの隙のない演技が全編を通して素晴らしかった。狂言回し的だった泉ピン子も、最終週に大いに泣かせてくれた。ロケの効果はいずれも絶品。やっぱりCK制作のドラマは一味違いますね。(麻生結一)


第4週「もう一回セイシュン!?」(1/26〜1/29放送)
☆☆★
 茂多(勝地涼)から告白された秋日子(見た目:宮崎あおい&中身:泉ピン子)は、歩きながらに時々竜子(泉ピン子)に戻ってたら、そりゃ赤ちゃんも泣き出すでしょうよ。

「もう限界なんだろうね」by竜子

って、またのんきな。まぁ、ここの神様は随分と気長みたいですけど。そんな竜子はゆかり(裕木奈江)が一夫(津嘉山正種)に優しくする姿を見て、姿が秋日子なのもお構いなしに夫をよろしくと後を託す。親友の薬子(鈴木惠里)と茂多からはここ最近の怪しげな言動を追求されたため、ついに真相の全貌を告白。時を同じくして一夫とリサ(碇由貴子)も秋日子が竜子であることに気がつき始める。
 恋愛してもう一回青春をやり直す篇も、しみじみ調に入れ替わりのビックリがいいアクセントになって好調を持続する。とりわけ、一夫が結婚記念日に竜子をプラネタリウムに連れて行った話は心に残る。リサが宛名の修正液の下に竜子と書かれていることに気がつき、別れを告げにきた秋日子にお母さんと言って抱きつく場面もタイミングが絶妙。茂多と夜空を見に行った秋日子が、その空に一夫との思い出を思い浮かべる場面もいい。親友の名前=大迫薬子を思い出せないようじゃ、もはや観念するしかないところにも納得。
 ただ、天国への選択には疑問も。竜子が秋日子の肉体を借りてそのまま地上にい続けたとしても、結局竜子の記憶は次第に薄れちゃうんじゃ、秋日子がそのまま残るのと同じになるのでは?結果が同じになってしまうことまで把握したお話ならば、それはそれであまりにもむなしく悲しい。おそらく、そこまでは考えてないでしょうけど。
 天国への猶予期間が無限に引き伸ばされてるし、時間軸もかなりグズグズになってきているが、今のところはドラマの味わいがからくもそれらを上回っている印象。だが竜子も言ってるように、そろそろ限界かな。(麻生結一)


第3週「お母さんみたいになりたくない」(1/19〜1/22放送)
☆☆☆
 ここぞというところでの入れ替わりの面白さも絶妙に、尻上がりに面白くなってきている。家出した竜子(泉ピン子)の娘・リサ(碇由貴子)を追って、秋日子(見た目:宮崎あおい&中身:泉ピン子)は東京に向かう。モデル事務所のスカウトを名乗る男性にだまされそうになるリサをすんでのところで救出し、名古屋に戻ってくるも、家には一夫(津嘉山正種)の同僚・ゆかり(裕木奈江)が家に来ており、秋日子の中の竜子は大いに落胆する。秋日子の家では父・良平(伊沢勉)と母・真子(佳梯かこ)が離婚寸前。父親と母親のどちらに付くのかを問われ、秋日子は竜子の胸で泣きじゃくるしかない。ゆかりに我慢がならないリサ(碇由貴子)は再び家を飛び出し、秋日子の家にやってくる。秋日子はリサを家に帰すも、今度はそこで春夫(塚本高史)の恋人・米子(安達祐実)と鉢合わせ。リサは再び家を出ると言い出すが、一夫(津嘉山正種)が語った竜子への感謝を聞いて反省。竜子はついに天に戻る決意をする。
 いかがわしい事務所のプロモーション用プロマイドという名目で、リサがセクシーな衣装をきせられようとするところで、カメラマンにとび蹴りを食らわせる秋日子が瞬間、竜子(泉ピン子)に見えるあたりは実にうまい。母親のようにだけはなりたくないというリサに、家族の心配や家事しかできないような女性にはならなくていいという秋日子にもしんみりさせられたが、お母さんはいるだけで、みんなを和ませてくれたと語る一夫の一言にはさらにしんみり。主婦への応援歌のようなニュアンスも、おしつけがましくないところがいい。それにしても、やっぱり裕木奈江は主婦の敵役なんですね。(麻生結一)


第2週「親が子のためにできること」(1/12〜1/15放送)
☆☆★
 設定は荒唐無稽なんだけど、変にはしゃがないところには好感が持てる。

 竜子(泉ピン子)の息子である春夫(塚本高史)の恋人、米子(安達祐実)の手料理を絶賛する家族に秋日子(見た目:宮崎あおい&中身:泉ピン子)はますます気落ちする。そんな春夫は就職活動を装うも、実際は大学を留年していた。秋日子は春夫を激しく問いただすも、当然相手にされない。秋日子は親が子供ためにできることはわずかしかないことを自覚し、夜なべしてお弁当を作る。
 久留家にいりびたる秋日子に母親の真子(佳梯かこ)が、よそのうちの方がいいのかと詰め寄る場面で、見た目秋日子の竜子に一瞬、秋日子自身の気持ちが乗り移るところが秀逸。弁当を届けた会社で、夫の一夫(津嘉山正種)が仕事のない窓際族になっていたこと以上に、一夫が同僚のゆかり(裕木奈江)と一緒に弁当を食べている場面に愕然とするあたりから、「昼の帯ドラの波乱が現実のものとして降りかかってくる」展開に期待するも、その後はあっさりとしたもので。入れ替わりの方法は、単にロケットの秒読み風に10数えるだけとは、随分簡単な。死んだからではなく、生きてても何もできなかったであろうと自分の無力を嘆く主人公にいたたまれなく。(麻生結一)


第1週「オバサンは女子高生」(1/5〜1/8放送)
☆☆
 交通事故で死んでしまった主婦が、一緒に事故にあって助かった女子高校生の肉体を借りて人生を取り戻そうとする筋立ては、『天国から来たチャンピョン』と『転校生』と『ビッグ』をミックスしたような感じだが、独自色はそこにおばさんパワーが加わっているところかな。
 竜子(泉ピン子)は、24回目の結婚記念日に夫・一夫(津嘉山正種)に贈るネクタイを買うも、高校生の秋日子(宮崎あおい)が乗る自転車と交錯したときにトラックにはねられ、命を落としてしまう。神の使い(京本政樹)の計らいで、生き残った秋日子の肉体を1週間借りて地上に戻ることになる。早速、自分のお通夜に行くのだが、一夫(津嘉山正種)、息子の春夫(塚本高史)、娘のリサ(碇由貴子)らは、それほど悲しんでいるようにも見えず、竜子は大いにショックを受ける。
 “泣いたカラスが”ではないが、通夜では落ちこんだ翌朝には再びおばさんパワーを復活させている竜子が笑える。秋日子役の宮崎あおいは、シーンによっては二役の画映りに。『ブルー、もしくはブルー』『天使みたい』に引き続いて、NHKはこの手法にかなりの自信を深めている模様。
 朝から血液型占いを見たり、みのもんたのおもいっきりテレビ情報が出てきたり、そろそろ消えそうなタレントを名指しで「まだ生き残ってる」と言ってみたり、NHKらしからぬ部分も目についたが、何はともあれ第1週は泉ピン子さんの女子高生コスプレがとにかく怖かったです。いったんは捨てられ秋日子が引き取るも、それを目にした一夫が秋日子の母・真子(佳梯かこ)に懇願して再び譲ってもらうベンジャミンの木のエピソードにはしみじみとさせられる。(麻生結一)




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