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僕と彼女と彼女の生きる道 (フジテレビ系火曜22:00〜22:54)
制作/関西テレビ、共同テレビ
プロデューサー/重松圭一、岩田祐二
アソシエイト・プロデューサー/石原隆
脚本/橋部敦子
演出/平野眞(1、2、3、5、8、10、12)、三宅喜重(4、6、9、11)、高橋伸之(7)
音楽/本間勇輔
主題歌/『Wonderful Life』&g
出演/小柳徹朗…草なぎ剛、北島ゆら…小雪、宮林功二…東幹久、坪井マミ…山口紗弥加、岸本肇…要潤、石田和也…浅野和之、勝亦亮太…大森南朋、小柳凛…美山加恋、谷川亜希…田村たがめ、大山(小柳)可奈子…りょう、大河内順一…二瓶鮫一、大原豊…並樹史朗、タクシー運転手…春延朋也、スーパー店員…山路誠、主婦…ささいけい子、さくら…佐々木明、少年徹朗…堀川裕生、会社員…井上浩・木村方則・上村愛香・藤家さっこ、古山校長…中村方隆、教員…葛城奈海、上野瑛子…梅宮万紗子、銀行員…鍬形枝里香、患者…田村三郎、ナース…羽野敦子、少年徹朗…池田優哉、香山孝信…大高洋夫、井上美智代…大塚良重、今枝吾一…伊藤紘、青木伸二…林和義、居酒屋店員…中田寛美、看護師…今村和代・青木さなえ、医師…木村清志、ハローワーク職員…河野洋一郎、人事部男…田子裕史、斉藤裕一…松重豊、洋食屋店員…粕谷吉洋・矢谷健一・井上亜紀、大山隆三…阿部六郎、審判官…遠藤たつお、調停員…宇納侑玖・野田貴子、薬局店員…桜木裕子、神田理人…福本伸一、原口幸治…中根徹、村上令子…長野里美、法律事務所事務員…中村栄子、少年の母…菜木のり子、小柳義朗…大杉漣、井上啓一…小日向文世、大山美奈子…長山藍子
ほか

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第12回(3/23放送)
☆☆★
 凛(美山加恋)の親権を可奈子(りょう)にとられ、自暴自棄になる徹朗(草なぎ剛)をゆら(小雪)が叱咤したことに対して徹朗が反論。

「凛のことならともかく、俺のことをあれこれ言うのやめてくれよ」by徹朗

仮に一時的な感情からだったとしても、至極真っ当な台詞を最後の最後で聞けたことにちょっとホッとする。ビールを飲み干してダラダラとするも、すぐに深く反省。店のケーキを持っていってゆらに謝罪するとは、愛すべきほどに弱すぎ。不服申し立てしようかと徹朗はゆらに相談するも、もっと大事なことがあると説かれて(ここでは答えを見せずも、凛の父親と母親として2人で考えなければならないことがあることをゆらが教えたことが、後々に回想で明らかになる)、あっという間に完全なるゆらのペースに戻ってしまうのだけれど。
 勉強していた凛は思わず、

「ねぇ、お父さん」

と可奈子に呼びかけてしまう。親権を手にして問題はすべて解決したと思った可奈子だったが、凛にとっては何も解決していなかったのだ。そのことを徹朗から切り出されて思わず涙する可奈子は、このとき初めて徹朗は変わったと実感したことだろう。ゆらは徹朗を変えたのは凛だと言うも、可奈子はゆらの存在にこそ理由があるのだと思う。ダテにコートの襟立ててなかったということか。
 徹朗はにんじんグラッセを克服したことがきっかけになって、ついにはコックを本業とすることに。このあたりの天国的な決断に、死を受け入れて生徒と一緒に合唱をやろうとした『僕の生きる道』と似通ったテイストを感じた。もう少しこの決断部分を早いところに持っていってれば、このドラマから受ける印象も随分違っていたただろう。
 徹朗が凛に伝授する手紙の書き方講座の場面が実にいい。マンションを出てからの移動撮影にも歴史あり。ただ、凛ちゃんのかわいかったで集みたいなことは、本編の中ではやってほしくなかったという気も。
 凛が可奈子と一緒に神戸に去ってから早半年後、久々に会う凛のために店を貸切にして、徹朗は新たに習得したオムライスでもてなす。思いを伝えていたゆらも期待通りに現われて、めでたしめでたしのエンディング。文字通りの家庭教師(子供のみならず、大人たちも指南されまくり)が無理矢理のようにくっついていたかのような『クレーマー・クレーマー』は、わりきれようのないテーマに円満なエンディングをもたらした。まぁ、テレビ的にはこれでよかったのかもしれないけれど、だったらこのタイトルじゃなくてもよかったのではと思う。視聴率的に『僕の生きる道』を超えてしまったとはまた驚き。作品の出来ばえには、大いなる差があると思うんだけど。やはりタイトルはシンプルなほうがいい。(麻生結一)


第11回(3/16放送)
☆☆☆
 ゆら(小雪)の教育が実り、義朗(大杉漣)が大変身をとげる。家事を手伝うは、凛(美山加恋)とコミュニケーションをとるはで大活躍。審判でバランスの取れた食事が期待できないと言われたため、徹朗は仕事後にもコック(松重豊)のフライパンさばきを盗もうとする。盗んだ技で早速スパゲッティをこしらえる徹朗だったが、驚いたのはその料理の腕前よりも皿を3枚いっぺんに運ぶ技の方。
 審判で徹朗のことを立派な父親だと言い切った美奈子(長山藍子)のあり様は、ここまでのドラマ中で最も感動的だった。それが母からの罰だと思う可奈子(りょう)。娘サイドに立ちながらも、徹朗の必死を見届けてきた美奈子の苦渋の発言が心にしみる。『ニコニコ日記』も素晴らしかったですが、ここでも長山さんのうまさが光りました。
 可奈子は隠し玉とも言える強力な育児日記を裁判所に提出。徹朗の知っている凛は7歳の凛だけ。結局親権は可奈子に変更されるも、徹朗の留守にあがりこんで準備をさせ、その日のうちに娘を連れ去ってしまうなどということは許されるんでしょうか?凛から「さよなら」と言われるも、言葉を発することができなかった徹朗があまりにも気の毒。
 ここまではまるっきり『クレーマー・クレーマー』なんだけど、あと1回あるということは『クレーマー・クレーマー』の先があるということか。『クレーマー・クレーマー』はあそこで終わったからこそ、傑作になったわけだけど。何はともあれ、ゆらは鍵のかかってないドアを開けて入ったはいいけど、ちゃんと鍵を閉めないとね。電気もつけずにしゃがみこんだ茫然自失の徹朗を胸で受け止める様に、母性愛の完成を見る。こういう立派さは、小雪ならではの魅力でしょうね。(麻生結一)


第10回(3/9放送)
☆☆★
 凛(美山加恋)の親権をめぐっての審判にあたり、ゆら(小雪)は亮太(大森南朋)のいとこの弁護士(福本伸一)を徹朗(草なぎ剛)に紹介する。ゆらには、凛に昔の自分みたいに人を信じられないようになってほしくないという思いがあるよう。さりげなく思わせぶるゆらにはどんな過去が?ここ数回からゆらの返事「はい」も凛化してるかな。
 確かに離婚の原因は仕事第一主義の徹朗の方にあった。浮気の前歴もプラスされれば、審判のアドバンテージは可奈子の方にあるだろう。例えそうであったとしても、徹朗と凛とのここしばらくを体感してしまっている視聴者的には何とかならないものかと思うし、そう思わせるあたりが連続ドラマの本領というもの。このあたりがちゃんとしてないドラマがあまりにも多いので、若干なりともこういうちゃんとしたドラマに行き当たるとほっとする。
 可奈子(りょう)と凛が一緒にいる姿を思うと、、徹朗はほっとできない。キュレーターになった母・可奈子に

「お母さんカッコいい」by凛

って、確かにあれだけ容易にキュレーターになれるんだったらカッコいいんじゃないの(かなり根に持ってます)。ゆらv.s.可奈子は、

「ゆら先生は誰とでも親しくできる人だから」by可奈子

との一言で可奈子が片付ける一方的展開。
 凛が可奈子の家に泊まった日、マミ(山口紗弥加)が徹朗に告白するも、今の徹朗にとってはそれどころではなくあまりにもそっけない。このドラマの艶かしいパート担当だったマミも、涙を流しながらの微笑みに結構いい人だったんだといまさらながらに思う。
 ついに義朗(大杉漣)までもがゆらの生き方講座の受講生に!孫である凛との接し方も、ゆらに尋ねれば一発解決。毎度のカウンセラーぶりを遺憾なく発揮するゆらだけに、だったら最初の設定をもう少しきちんとやってほしかった気がする。義朗の上申書が泣かせるが、これもゆら効果といえばそうか。徹朗と義朗が和解できたのも、これまたゆらのおかげ。次の審判のことが不安で眠れない徹朗を寝かしつけるのもゆらと、だんだん母性の塊みたいになってきてるね。(麻生結一)


第9回(3/2放送)
☆☆★
 徹朗(草なぎ剛)は可奈子(りょう)にもう一度親子3人でやり直すことを提案するも、可奈子はもはや徹朗を愛することはないと言い切り、凛(美山加恋)と2人でやっていきたいと申し出る。神戸の新しい美術館で仕事が決まってるとは、可奈子のキュレーター業もとんとん拍子ですね。7年間の鬱積を突きつけられれば、いったんは凛を捨てた可奈子の気持ちにも酌量の余地ありか。
 明るくて過食気味のゆら(小雪)は、凛ちゃんのお父さんが好きだと亜希(田村たがめ)によまれてる。亮太(大森南朋)がゆらのことが好きなことも感づいていた亜希。ってことは、あのテニスあたりもすべてが嫌がらせだったってこと?! それにしても、ゆらは徹朗のストーカーじゃないかってくらいにこの2人は偶然よく会いますよね。どう考えてもおかしいと思うんだけど。もともといた家庭教師が、妻の家出をきっかけに子育てに悪戦苦闘するその夫と親しくなるプロット自体はおかしくないんだけど、このドラマのゆらのキャラクターはどうにも中途半端でしっくりこない。説明的じゃない意図が、逆にその不明瞭さをまねいている。小雪とりょうが逆の役を演じていたら、そこに狙いがあることが見えやすかったかもしれないが、もはやそれはありえないか。『ラブ・コンプレックス』ではりょうの方が目立ってましたけどね。
 義朗(大杉漣)は徹朗が突然銀行を辞め、洋食屋で働きはじめたことにくってかかる。洋食屋で働くことは、銀行マン的な発想だと無職なの?仕事や肩書きでしか生きられない親父みたいには絶対なりたくないとの子供の台詞はありがちだけれど、ここではよりきつい言葉に聞こえる。
 凛(美山加恋)が働くお父さんを社会見学する場面がいい。強面のコックさん(松重豊)からパフェをサービスされると、すかさずゆらの分もおねだりするあたりは絶妙。子供って、こういうところには妙に厳格だったりするもん。予期せぬ注文の品に、過食気味のゆらはもちろんニコニコに。

「お仕事お疲れ様でした」by凛

なんて言われたら、そりゃ娘を譲れない気持ちにもなるだろうね。そこには無条件の愛が。その場で凛が描いていた仕事する徹朗の絵を、仕事先を紹介しにきた義朗が見つけるあたりもうまい。その絵を見て初めて、義朗は息子の父親としての笑顔を知る。
 家庭裁判所に申し立てられた親権変更の調停は不成立になり、審判へ。ますます『クレーマー・クレーマー』の道をゆく。(麻生結一)


第8回(2/24放送)
☆☆★
 ニコニコ信用金庫への再就職が流れた徹朗(草なぎ剛)はハローワーク通いするも、9時〜5時の勤務で許される希望の職は見つからない。ゆら(小雪)は亮太(大森南朋)に好きな人がいると告白。もちろん徹朗のことだろうけど、いったい徹朗のどこにひかれたんだろう。けなげな父親ぶりに母性をくすぐられたか、それとも社会的地位からのドロップアウト組としてのシンパシーを感じたか。下校中の凛(美山加恋)の前についに可奈子(りょう)が現れ、一緒に暮らすことを約束する。
 可奈子はまたあっさりとキュレーターになったね。パリに何ヶ月行ってたかは知らないが、あまりにも容易だこと。画廊に勤めはじめた程度じゃないと、ドラマのリアリティが台無しになっちゃうなぁ。家出する前には壊れてしまいそうだったと言い訳する可奈子を叱咤し、抱きとめる母・美奈子の包容力を見るにつけ、同じようなポジションを長山藍子が演じた『ニコニコ日記』を思い出してしまった。井上(小日向文世)の死にホッとしたともらす宮林(東幹久)に人間味がにじむ。確かに本当の極悪人は、自らを極悪人だと言うはずもなく。
 徹朗の話がわかったら凛にピースさせるやり方は、いかにもこのドラマらしい趣向。遅出しピースにピンクの手袋がかわいいやらいとおしいやら。今の自分だったら、やり直せるのかもしれないと相談する徹朗とゆらの関係性は、その微妙さをもっと生かせるはずだと思うんだけど、どうしてこれまでの回想みたいなことをやらせちゃうんだろう。脚本のニュアンスだと、もっとゆらが空元気ぶりを発揮するところだったんだろうか。そこも似通ったタッチで済ませてしまうことに、もったいなさを感じた。徹朗をめぐるライバル(?!)、マミ(山口紗弥加)とスーパーマーケットで遭遇し、自らを北島三郎の北島と名乗ってハズすあたりの不器用さは、小雪のキャラクターをいかせていたと思うが。
 徹朗が可奈子に再縁をりき出す場面は、第1回のオープニングとまったく同じ配置。こういうおざなりじゃない感じは、このドラマも最もいいところだ。12回までやらなきゃいけない話かどうかは、この時点では判断しづらいところだけど。(麻生結一)


第7回(2/17放送)
☆☆☆
 部長の井上(小日向文世)が飛び下り自殺を図る。常務になれなかったことを事前に聞かされてのことだった。井上の変化に気がつかなかったことを、病院の面会時間が気になったせいにして入院中の父・義朗(大杉漣)にあたる徹朗(草なぎ剛)。こしあんではなくてつぶあんのあんぱんが食べたかったと義朗が駄々をこねるものだから、お互いに言い合いになって。ここでの徹朗がキレるきっかけは何でもよかったはず。それが些細なことであるほど、徹朗の行き場のない思いが強調される格好に。
 重苦しい雰囲気にジューサーで作ったバナナジュースのエピソードのおかげでしばしホッ。意識を回復した井上は、予想に反して見舞いに来た徹朗を穏やかに迎える。張りつめた表情を崩さなかった会社での井上とは別人のような面持ちに救いがあったからこそ、翌日の悲報にいっそう驚かされる。
 新部長の歓迎会で熱唱型の部長のご機嫌を逆なでするかのように、井上のカラオケ十八番「シクラメンのかほり」が連打で流れたときには、&g的な怖い話かとも思ったけれど、トイレの禁煙の文字を見て井上を思って徹朗が号泣するする場面を見て、何となくそう思ってはいたのだが、この回はこれまでで一番『僕の生きる道』のテイストに近かったかなと感じる。
 井上の意識が戻ったことを何にも先んじてゆら(小雪)に報告する徹朗を見て、おせっかいからエスパーを経てカウンセラーになった彼女がもはや夫婦を通り越して家族同然になったと確信。誰も来ない退職祝いに居酒屋で酔いつぶれる徹朗を介抱するマミ(山口紗弥加)の態度を面白くなく感じ、つい鍋をピカピカに磨いてしまうあたり、このドラマらしいきちっとした説明ぶりがいい。ここでの山口紗弥加が妙にねっとりとしていていい。
 新しい職場となるはずだったニコニコ信用金庫からは採用を断られ、学校から帰った凛には可奈子(りょう)から電話がかかってくる。ほぼ『クレーマー・クレーマー』状態。あらゆる要素が出揃ったせいもあるが、これまででは一番充実した回だった。(麻生結一)


第6回(2/10放送)
☆☆★
 徹朗(草なぎ剛)は来月いっぱいで退職したい旨を部長の井上(小日向文世)に伝える。子飼いの部下がその程度の人間だと見抜けなかった自身にムカつくと言い放つ井上は、常務への昇進がかかってるだけにいらだっている。凛(美山加恋)の担任の石田(浅野和之)は、なくなった凛の靴と下敷きを届けにきてくれた。徹朗の一喝が効いた形だが、石田も若いころは熱血教師だった模様。そんなしみじみ発言を父兄の前でするかどうかは疑問だけど。
 徹朗の退職を聞かされた同僚の宮林(東幹久)は、即座に徹朗を合コンに誘う。東幹久の合コンキャラは、合コンとは無縁に見えたこのドラマでさえも実現してしまうのか!洗面所で携帯を濡らしたと言い訳し、徹朗の番号を聞き出そうとする隣の席の女性に、みどり銀行の社員か否かで線引きされてしまう現実も、凛が家で待つ徹朗にはかえって都合がいい。
 義朗(大杉漣)が足を骨折して入院。

「お見舞いぐらい持ってきてあげたら」

と隣のベットの患者が言うのはドラマの世界ならではの定番。お見舞いの花のみならず、お中元、お歳暮にいたるまでそのすべては会社名と肩書きに対して送られたものだったとの見解も型通り。
 おせっかいキャラからエスパーに脱皮しつつあったゆら(小雪)は、ここで一気にカウンセラーにまで昇進?! 会社をやめることは間違ってないとゆらに言われ、そんな彼女の意見を聞いてほっとする徹朗。この2人の関係性は、まさに患者とカウンセラーでしょ。亮太(大森南朋)からの愚痴り電話をいったん切る理由ははトイレに行くためも、徹朗からのそれには走って駆けつけるゆら。“いったん切る電話”にこれほどまでの差があるとは。2人の待遇の違いが歴然とした瞬間。父に会社を辞めたことを切り出せなかった徹朗に、どの道を選ぶかよりも、選んだ道でどう生きるかの方が重要、というあまりにも適切なアドバイスをするゆらは、ここでもカウンセラーぶりを遺憾なく発揮する。
 これまたゆらが勧めてくれたせいで実行にうつされた(?!)徹朗と凛との気分転換小旅行。雪だるまを前にして、ちょっと考え方が変わって、今までと違った生き方がしたいと真剣に語る徹朗がいい。ゆらへの雪だるまのお土産もほほえましいだけに、あのアイスボックスをどうやって手に入れたかなんてことは考えないようにしなければ。ゆらに対して、週4日の家庭教師勤務は迷惑ではと冷たく問いただす美奈子(長山藍子)には棘を感じる。離婚直後に別の女が家に入り浸っていることへの可奈子(りょう)の実母的当てつけ?!
 凛によると、学校に中にはお父さんがいるらしい。確かに”校”の文字に目を凝らすと、“父”の字が含まれてるじゃないですか。

「ホントだ」by徹朗

との素直な感想に完全に同化してしまった。(麻生結一)


第5回(2/3放送)
☆☆
 買ってもらったばかりの靴とお母さんが作ってくれた体操着袋が学校でなくなってしまい、凛(美山加恋)はすっかり元気をなくしてしまう。ゆら(小雪)はいじめを危惧するも、徹朗(草なぎ剛)はさほど深刻には受け止めなかった。翌日、凛は朝からもどしてしまい、学校を休むことに。徹朗は凛の担任の石田(浅野和之)に掛け合うが、石田の対応はどこか杓子定規。校長とも話すが、そこに駆けつけた石田ともどもその原因を追究する姿勢が見えない。たまりかねた徹朗は、ついに声を荒げる。
 食卓に並ぶのは、レトルトのカレーとらっきょうときんぴらごぼう。その微妙さ加減は見ればわかるのに、そのことをわざわざ台詞で説明するのはこのドラマがやるべきこととは遠い気がする。ゆらが指南役となる連絡帳の綴り方教室化にも?あれほどの銀行員が、そこまで無知なはずもなく。連絡帳の書き方と言っても、丁寧か否か程だと思うし。
 気になるのは、ゆらの存在のせいですべての道のりが容易になっていること。もっとうまいキャラクター付けもあったはずだと思うゆらは、おせっかいキャラからエスパーキャラに脱皮しつつある。

「お母さんは凛に会えなくて寂しくないの?」という凛の声を、「凛はお母さんに会えなくてこんなに寂しいのに」と読み解くまではまだ理解できるが、夜中に電話をかけてきた徹朗の声を聞くなり、

「疲れてるみたいですね」

って、やっぱりエスパー?
 確かに建前重視の先生はいるだろうけど、公務員なぞと言う言葉を持ち出すかね。それって、むしろ自分の立場を悪くするでしょ。体操着袋を見つけた徹朗は、真っ先にゆらに電話して汚れたままを見せるか、洗濯してから見せるかを相談する。それ自体はいいとしても、青春風に走り出してかわいいキャラになるのはどうなんだろう?学校でなくした体操着袋を、なぜ学校以外の場所からで探すの?確かに、学校以外の場所から発見されたわけだけど。ゆらは告白された亮太(大森南朋)と一緒にさわやかにテニス?ちょっと考えるといろいろと引っかかることが噴出してきて、これではちょっといい点はつけられない。(麻生結一)


第4回(1/27放送)
☆☆☆
 ついに徹朗が凛を愛しいと思うにいたる重要回。凛(美山加恋)の成績が下がったことを知った徹朗(草なぎ剛)は凛を無下に叱りつけ、早速ゆら(小雪)に家庭教師の日数を増やしてもらうように頼み込む。徹朗はトップの営業成績を収めるも、上司の井上(小日向文世)からはさらなる上積みも可能だったと叱咤された。部下の岸本(要潤)から却下した企画書を再び提出されたため、徹朗はむしゃくしゃしたままにはねつける。定年をむかえた父・義朗(大杉漣)は、会社では誰からもねぎらわれることなく、バーで時間をつぶして徹朗が待つ家に帰宅する。義朗が若かれし頃の自慢話を繰り返すと、徹朗は唐突に離婚したことを打ち明ける。女房に捨てられるなんてみっともないと、怒りを爆発させる義朗も、酒によっていつしか寝てしまう。逆上がりが出来ない凛は、徹朗との朝練に励む日々。そしてついに逆上がりに成功。喜ぶ凛を見て、徹朗は思わず涙を流すのだった。
 苦々しくも律儀で淡々とした展開を見進めるに、段々教育テレビのドラマを見ているような気分になる。ここでいう教育テレビのドラマとは、生真面目なだけで面白みがないというステレオタイプな意味合いではなく、ゴールデンの連ドラなんかよりよっぽど大人向けなテイストに味わいがあるという意味。もちろん、ほめてるんです。
 徹朗がテストの点数が悪かった凛を叱ったことに対して、担任の先生からさとされるまではいいとして、そのことに関して家庭教師がいる前で謝るかなぁ。一刻も早く謝りたかったととるしかないが、やはりゆらの立ち位置がここでも気になる。その点を注視して見ているせいもあるかもしれませんが。
 厚生労働省のキャリアでさえも気が引けるほどもらっていたにもかかわらず、一度立ち止まって自分が本当に大切だと思うものに気がつくために会社をやめていたゆらは、いまや子供たちの心の奥にあるキラキラしたものにハマる。「キスしていい」って聞かれて、「ちょっと考えてみる」との答えは、普通に考えれば婉曲の断りだけれど、ゆらぐらいのエリートになるとその真意がはかりかねる?! 外資系の証券会社に勤めていたことについて、徹朗の「正社員?」との質問はケッサク。こういう人=男って、確かに多いかも。
 それにしても、義朗の何と哀れっぽいことか。あのしょぼい花束にも驚いたが、過去の栄光を繰り返すさまを見るにつけ、この人の老後までもが心配になってくる。そんな義朗から言われた言葉、

「お前は黙って俺の言った通りにしてれば間違いないんだ」

をオウム返しに部下にも言い放つあたりに、徹朗のベースがはっきりと見て取れるのだが、そんな徹朗だからこそ、凛の逆上がりに感動して思わず泣いてしまうエピソードには意外性があって面白い。徹朗に対して敬語じゃない凛も、もしかして初めてだったかな。(麻生結一)


第3回(1/20放送)
☆☆★
 ぎこちなくも(父と娘の関係のみならず、ドラマ自体も)、いよいよ『クレイマー・クレイマー』みたいになってきた。小学校の音楽会まで凛(美山加恋)と一緒に暮らすことにした徹朗(草なぎ剛)は、ついに離婚届を提出。ゆら(小雪)から凛が、可奈子(りょう)はケーキを習っていると思い込もうとしていることを聞かされ、凛に離婚した事実を伝えた。父親の義朗(大杉漣)にも離婚の報告をするために実家を訪れるも、タイミングを逃して言い出せない。徹朗は自分が小学1年生のときに書いた作文を探し出し、実家から持ち帰る。そこには、一方、ゆらは大学時代からの友人・勝亦(大森南朋)から好きだと告白される。
 これまでの寒々しい時間の流れに、アイロンがけのシーンが加わるだけで、ほっとするような何かが加わるのだから不思議なもの。いつものレーズン入りのパンが売り切れていることに悩む徹朗にも、これまでにない温かさが感じられて。離婚の話をしている時に、垂れるピザをお互いに指摘するエピソードもいい。まぁ、女房から離婚を切り出される男を情けないと言われちゃ、父親に離婚したことを言えませんよね。
 子供の気持ちを理解するために自らの過去に向き合う真摯なあり方は、『僕の生きる道』にも通じるところが。ふと、子供のころの自分は何を考えていただろう、と思いをはせたりして。祖母役の長山藍子と子供の絡みを見ていると、『ニコニコ日記』の楽しい気分を思い出すも、このドラマはその雰囲気では180度違っている。
 動物園のシーンなどは、いかにもこのドラマのテイストが出ていて面白かった。直立して動物を眺める徹朗と凛が、ちょっぴりだけ打ち解ける過程がいい。そしてペンキ塗りたてのベンチが、この親子に温かい情を芽生えさせる。あれだけべったりとくるペンキだったら、においでわかりそうなものだけどって、それを言っちゃいけません。赤い風船までも飛ばしてしまうと、すべてのアイテムが決まりすぎていて、あざとく感じられるようなところもあるけれども。
 しつこいようだが、どうにもゆらの存在がよくわからない。毎度毎度昔の会社の面々と食べ歩きしたり(勝亦の告白で格好はついたが)、毎度毎度凛の報告を入れてきたり。ここに何らかの理由がほしいと思うのは、テレビドラマに毒されすぎですかね(いや、これってテレビドラマでしょ?!)。そこさえはっきりすれば、もしくはすっきりさせないことをはっきりしてもらえれば、第3者としてのゆらが効いてくると思うんだけど。(麻生結一)


第2回(1/13放送)
☆☆★
 第1話も相当なものだったが、苦々しい語り口は衰えるどころか、いっそうエスカレートしているように感じられた。徹朗(草なぎ剛)は娘の凛(美山加恋)を義母の美奈子(長山藍子)に預けることを決心し、内心ほっとするも、凛の家庭教師・ゆら(小雪)から凛が学校の音楽会でハーモニカを吹くことを楽しみにしていることを知らされる。仕事で忙しい徹朗は、1人で留守番をしながら雷におびえる凛からの電話を気に留めようとしない。凛から連絡をもらって駆けつけたゆらは、一杯飲んで帰宅した徹朗に不満をぶつける。徹朗は母親の三周忌に実家を訪れるも、可奈子(りょう)が出て行ったしまったことを父親の義朗(大杉漣)に言い出せない。凛との生活に行き詰まりを感じている最中、ようやく可奈子から連絡が入る。会うなり説明を求める徹朗に、結婚生活において家政婦でしなかったと語る可奈子。さらには、凛を愛してないとの告白をする。
 第1話でも疑問だったが、ゆらのおせっかいぶりがどうにも気になる。

「家庭教師以上のことはしてくれなくて結構ですから」by徹朗

共感とは程遠い徹朗だが、この発言だけには大いに納得。徹朗の無礼さ加減もどうかと思うけど、他人の私生活に首を突っ込むゆらの気持ちもさっぱりわからない。痛かったのが、お互いの会社自慢合戦。「あなたの会社の100倍の社員がいた」なんて言われちゃうと、返す言葉もないもんね。ちゃっかりお寿司にもありついてるし。
 愛されるために生まれてきたはずなのに、父親ばかりではなく、母親からも愛されていなかったという凛(美山加恋)のせつな過ぎる境遇。ラッキースタンプの貼り方の乱れがいっそうに悲しくて。広いお風呂に一人でつかる姿はあまりにも孤独。
 最後まで見進めるに耐えられない気持ちになるも、凛と徹朗が川縁で共演するハーモニカにエピソードにかろうじて救われる。そう言えば、『僕の生きる道』でもすべてを救ったのは音楽だったはず。人間は音楽でしか救われないってこと?
 徹朗が先輩の宮林(東幹久)と部下の岸本(要潤)に、子供のころ父親とキャッチボールをしたか否かを聞くあたりで、このドラマがやろうとしているらしさのようなものが少し見えはじめた気がした。(麻生結一)


第1回(1/6放送)
☆☆☆
 タイトルを見るなり、二匹目のドジョウを狙っているのかと思ったが、実際の作品は、タイトルが黒地に白から(『僕の生きる道』)、白地に黒になった以上に、まったく別物だった。こういうドラマが見てみたいと常日頃思うも、なかなかお目にかかれるものではないだけに、『僕の生きる道』のヒットには感謝しなければと思う。
 ある朝突然、妻の可奈子(りょう)から離婚を切り出された徹朗(草なぎ剛)。会社が忙しいと取り合わず出勤するが、帰宅すると可奈子はすでに家を出たあとだった。翌朝になって、小学校1年生の娘・凛(美山加恋)が家に残っていることに気付く。
 産経新聞を置いて、日経新聞を手に取る自虐的なオープニングから、きっとこのドラマは意地悪づくしなんだろうなと思ったが、やはりその通りだった。きちんとした部屋の感じから、家事と育児をパーフェクトにこなしてきた妻のこれまでが垣間見える。敬語で会話を交わす父と娘には、2人のこれまでの距離感が端的に映されていた。日ごろ説明的なドラマばかり見せられているので、こういう描写には潔さを感じる。父と子供だけの朝食模様は、父子物における『クレーマー・クレーマー』以来の伝統的描写も(?!)、ここにはほのぼのしさのかけらもない。
 見進めていくに、こんな鈍感な男は離婚されてしかるべきかと思わせた。

「子供のお遊戯会や運動会にはビデオを撮りに行ってやった」by徹朗

の“やった”口調が無性に腹立たしい。そうはいっても、幼い凛を置き去りに家を出た可奈子にも共感できず。便秘で入院しちゃった凛が、ただただ哀れで。
 唯一の正しい人は、年収4000万の生活を捨て、睡眠7時間半の生活に乗り換えたらしい(ここだけは妙に説明的だった)凛の英語の家庭教師、ゆら(小雪)。なぜ彼女がそこまでわけしりなのかはいまいちわからなかったけど、人物配置からいっても、彼女ぐらいしか凛の代弁者はいないのか。ちょっと気になったのは、本編とCMとのつながりが微妙にうまくいっていなかったこと。この枠ではよくあることだけど。(麻生結一)




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