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ブラックジャックによろしく〜涙のがん病棟編〜 (TBS系2004.01.03)
新春ドラマ特別企画
製作著作/TBS
制作/TBSエンタテインメント
チーフプロデューサー/貴島誠一郎
プロデューサー/伊與田秀徳
原作/佐藤秀峰
脚本/後藤法子
演出/平野俊一
音楽/長谷部徹
主題歌/『LIFE is…〜another story〜』平井堅
出演/斉藤栄二郎…妻夫木聡、赤城カオリ…鈴木京香、出久根邦弥…加藤浩次、皆川泰子…国仲涼子、高砂春夫…笑福亭鶴瓶、庄司直樹…阿部寛、伊東美咲、藤谷美紀、梨本謙次郎、山本圭壱、辻本良江…薬師丸ひろ子、宗形正臣…松尾政寿、宇佐美孝志…石橋貴明、古谷一行
ほか

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☆☆☆
 連ドラ放送時にはその真摯な制作姿勢には好感を持つも、主人公の過度な無鉄砲ぶりに対しては何度となくイライラさせたが、このスペシャル版では斉藤がわずかながらも人間として成長していたこともあって(このわずかが大事!)、そのあたりの違和感はかなり解消されていた。
 斉藤(妻夫木聡)は第四外科(通称・がん病棟)での研修で、久しぶりに同期の出久根(加藤浩次)や宗形(松尾政寿)と一緒になる。顔合わせの時、川渕教授(古谷一行)からはいきなりにガン細胞扱いされ、出ばなで釘を刺された格好に。指導医は、抗がん剤の研究に熱心な庄司(阿部寛)に決まった。紹介状を手に診察にやってきた主婦・良江(薬師丸ひろ子)に対し、庄司は即座にすい臓がんだと告知する。治らないなら告知しないという庄司の言葉を信じ、良江は手術を受ける。しかし、手術は成功するも、肝臓に腫瘍が再発する。一方、出久根は抗がん剤を使わない宇佐美(石橋貴明)につき、抗がん剤の副作用に苦しんだ末、宇佐美の元にやってき胃がんの患者・まどか(伊東美咲)を担当することに。痛みに苦しむまどかの治療法に疑問を抱くも、出久根にはどうすることも出来なかった。
 斉藤と出久根のそれぞれの担当医である庄司と宇佐美の対比がいかにも図式的ではあるが、その重いテーマからするとわかりやすさを優先させたことは有用だっただろう。同じように無力にさいなまれたとしても、これまでのような理想主義のお子様キャラから若干なりとも脱皮していた斉藤の成長ぶりには、正直ホッとする。自転車の後ろに乗せた泰子(国仲涼子)が話しかけるも、その声は耳の届かず、無心でペダルをこぎ続けるエピソードなどはとりわけ秀逸。まぁ、我慢して我慢して、あとちょっとだったのに、やっぱり最後には暴走して、がん細胞並みの生命力を発揮してしまうわけだけど。

「永大の癌が癌の勉強してる」by赤城(鈴木京香)

って、相変わらずその毒舌ぶりがカッコよかった赤城も、出番は連ドラの最終盤と同じく少なめは残念。
 今回感心させられたのは、むしろ出久根のパートの方。末期がん患者のまどかを必死で励まそうとする出久根の献身ぶりが感動的で、とりわけ花壇に植えたチューリップを見せる場面には胸を締め付けられる。ここでの抗がん剤の投与に消極的な宇佐美の言葉には重みがあった。それだけに、もう少しうまい役者にやってほしかった気がする。
 庄司と宇佐美との因縁が回想で語られるあたりも切実でいいのだが、2人があっさり和解してしまうラストはあまりにも清々しく、ちょっぴり拍子抜け。抗がん剤が効かなかったら、医者は何をすればいいんだろう、という神のみぞ知る問いかけは、テレビ的に丸く収まったわけだけれど。
 その絶望のとき、世の中がまぶしく見えるとかみ締めるように語った良江役の薬師丸ひろ子の名演技に感激。見た目に健康そうだったのは、抗がん剤の副作用が少なかったってこと?! 赤いポストが取り去られ、すべての希望もなくなったかのように見えるも、新しいポストが設置され、というエピローグがいい。基本路線は連ドラ時からほぼ踏襲されていたが、脚色はよりこなれてきているように感じた。作品のテーマを考えても、このドラマは連ドラでやるよりもスペシャルでやった方がそのよさが出るのかもしれない。(麻生結一)




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