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エースをねらえ! (テレビ朝日系木曜21:00〜21:54)
テレビ朝日開局45周年記念番組
制作/tv asahi、共同テレビ
チーフプロデューサー/松本基弘、関口静夫
プロデューサー/三輪祐見子、森安彩
原作/山本鈴美香『エースをねらえ!』
脚本/瀧川晃代(1、2、5、8、9)、金杉弘子(3)、高山直也(4、6、7)
演出/松田秀知(1、2、7)、六車俊治(3、5、9)、小林義則(4、6、8)
音楽/住友紀人
オープニングテーマ/『エースをねらえ!』HIROMI
エンディングテーマ/『愛のために。』上戸彩
テニス監修/松岡修造
出演/岡ひろみ…上戸彩、藤堂貴之…吉沢悠、竜崎麗香…松本莉緒、緑川蘭子…酒井彩名、尾崎勇…石垣佑磨、千葉鷹志…柏原収史、音羽京子…金子さやか、愛川牧…森田彩華、塩山みさこ、平岩紙、若葉由奈、セイラ、神崎詩織、斉藤ゆり、小野麻亜矢、大久保綾乃、桜川博子、長谷川恵美、水野はるか、菅原禄弥、栗田よう子、松本圭未、亀井彰夫、夏秋佳代子、プロテニスプレイヤー…小野田倫久・原田夏希、竜崎総一郎…夏八木勲、宝力冴子…ベッキー、太田健作…甲本雅裕、岡美智子…高橋ひとみ、岡修造…高橋克実、宗方仁…内野聖陽
ほか

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第9回(3/11放送)
☆☆☆
 世界デビューをかけたひろみ(上戸彩)v.s.お蝶夫人(松本莉緒)の決勝戦は、観客入ってないのにテレビ中継されてる!しかも解説はドラマでテニス監修をつとめる松岡修造その人。その壮絶なバトルにふさわしく、松岡修造の弁も熱っぽい(ややひろみひいき)。
 それにしてもひろみというか、上戸彩はテニスのフォームが様になってきましたね。尾崎(石垣佑磨)にだったら、素で勝てるのでは。彼のやり方じゃ、すぐに手首を傷めるはず。
 このドラマのラストマッチにふさわしく、ひろみとお蝶夫人のラリーは両者の以心伝心ぶりがすごい。1対1のワンセットオールによる最終セット。お蝶夫人は多彩なショットを披露して、ひろみにテクニックを教えようとしていたのか。さすがはひろみのテニス的母。

「応えたい、お蝶夫人の気持ちに応えたい」byひろみ

テニス的娘は清々しい汗を流しながら、浮かんでくる宗方(内野聖陽)の言葉の数々を反芻する中で、

「この一球は絶対無二の一球なり」

でついにハモって師弟的一体化を果たし、見事お蝶夫人を撃破する。敗戦後にお蝶夫人は尾崎への頼み事。

「海が見たいんです」byお蝶夫人

海を背に、

「人は思ったより強いものですね」byお蝶夫人

嫉妬も悲しみも海の底へと葬り去った悟りの境地のお蝶夫人は、ついに音羽(金子さやか)一派とともに、後進の指導に当たることに(って、まだ高校生だろう!)。

「レシーブするとき、ラケットの面がまっすぐ向かっていなくってよ」byお蝶夫人

子供への指導とて、まったく言葉に手抜きがないあたりがさすがです。
 オーストラリアからの新コーチ・レイノルズ(イアン・モア)役が、川平慈英じゃなくてよかったというのが『新撰組!』後的な感想(あのヒュースケン以来、トラウマのようになってまして)。万能の人、宗方は千葉(柏原収史)に対してカメラマンとしての心得をアドバイス。藤堂(吉沢悠)には「岡を頼む」と前言を撤回して思いを伝える。
 いよいよアメリカに出発するひろみは、死期の近い宗方や音羽率いる西高女子テニス部OG(?!)の面々から盛大に見送られる。病室に一人、宗方が日記にペンを走らせた「エースをねらえ!」の文字は、飛行機に乗り込んだひろみの耳にまで届いたか。クライマックスをさりげなく描いている感じが、いっそう好印象だった。
 テニスを始めてからの猛烈な上達ぶりを鑑みるにおそらくほんの数年後、USオープンの控え室にひろみはいた。高校時代はずっとアディダス着てたけど、プロになったらナイキと契約したみたいですよ。アニメで見たときのボリュームには程遠いも、正統派のスポ根物としての姿勢を貫き通してくれたあたりは立派。懐かしさを差し引いても、大いに楽しめる域だった。(麻生結一)


第8回(3/4放送)
☆☆☆
 全日本ユース選抜選手の中でも、アメリカでの国際大会に出場できる=世界を目指せるのは男女一名ずつだけの狭き門。トーナメント1回戦、ひろみ(上戸彩)は前田理沙に6-3、4-6、6-2のセットカウント2対1で勝利。片山美和とのセミファイナルは、6-3、4-6、6-4で何とかものにする。このスレスレ僅差の勝ちっぷりは、確かに宗方(内野聖陽)がひろみの理想モデルとするかつてのヒンギス風かも。ちなみに、前田理沙も片山美和もドラマにはまったく登場せず。
 お蝶夫人(松本莉緒)とお蘭(酒井彩名)が準決勝でついに激突、と思いきや、お蘭の父親が事故で病院に運ばれたことによってお蘭は棄権を宣言する。決勝の組み合わせはもちろん、お蝶夫人v.s.ひろみ。憧れの人を越えることに踏ん切りがつかないひろみを察して、宗方(内野聖陽)はひろみに藤堂(吉沢悠)と試合をすることを命じる。最初は藤堂のサーブについていけなかったひろみも、藤堂から一喝されてついにリターンエースを奪取。そのあとはエンドレスにラブラブラリーの応酬ですよ。宗方の狙いは、相手がお蝶夫人であろうと藤堂であろうと夢中で球を打つことを感じさせることだったんですね。そして宗方は思う。藤堂はひろみをちゃんと包める男だと。字で書くと、なかなか生々しいです。
 宗方、倒れる!主要登場人物はまんべんなくかけつけるも、宗方は単なる過労だと偽って、明日にお蝶夫人との対決を控えるひろみに心配をかけまいとする。甲斐甲斐しく宗方の世話をするお蘭は「仁」から「兄さん」という呼び名に、宗方は「緑川」という呼び名を「蘭子」に呼びかえる。よく考えてみると、お蘭の父親は宗方の憎むべき父親でもあるわけですよね。父親の事故が2人の関係を溶かしていくよ。
 どこで聞きつけたか、音羽(金子さやか)!豪華な花束を持って宗方のお見舞いに。選手に選ばれなかったことはそれでよかったと自らに言い聞かせるように言う音羽に、

「いいコーチになれよ」by宗方

との一言。宗方は音羽が子供たちにテニスを教えていたことを知っていたのだ。いつの間にそんなリサーチを!
 「お父様のために」テニスをやっていたお蝶夫人は、その竜崎総一郎(夏八木勲)から言い放たれる。

「宗方君が育ての親なら、生みの親は君だよ」by竜崎

ってことは、宗方とお蝶夫人は夫婦かい!お蝶夫人の夫人はひろみの母親の意味だったのか?!
 父と和解したお蝶夫人は宗方を見舞うも、病室に近づくその足音だけでお蝶夫人と見破る宗方。さすがはひろみの父と母の仲ですね。

「お前ほど潔いテニスプレーヤーを見たことがない」by宗方

その根拠がどこにあるのかはさっぱりわからずも、とりあえずは最上級の賞賛ということで。藤堂と尾崎(石垣佑磨)の怖いぐらいに清々しい友情対決を経て、ついにひろみが母なるお蝶夫人に挑戦する!(麻生結一)


第7回(2/26放送)
☆☆☆
 失意のひろみ(上戸彩)が藤堂(吉沢悠)宅を訪れると、そこには水野真紀がいた!藤堂の母役かと思いきや姉役。そりゃ、そうでしょうね。藤堂のひろみ評が面白い子呼ばわりで、さらに顔が曇る?!相手の成長を妨げない愛し方を模索する藤堂は、実は居留守をつかっていたのか。
 ひろみの悩みの相談相手ファーストチョイスはもはや音羽(金子さやか)!最初は子供相手のテニス指導は断ろうと思ったらしいです。って、この人何歳よ。やっぱり空は群青色だ。音羽は子供たちのテニスにかける純粋な気持ちをひろみに伝えたかったんでしょう。口元には女神のような笑み!
 神出鬼没なお蘭(酒井彩名)からは、宗方(内野聖陽)が二度とプレーできない体であることを聞かされたため、謝罪のために今度は宗方の邸宅へ。今話はお宅訪問特集?!

「この一球は絶対無二の一球なり。されば心身を挙げて一打すべし!」by宗方

人生において一日として同じ日がないように、テニスにもまた一球として同じ球はないとは、なんて有難い有名格言なんでしょう。
  二次選考は4戦全勝したものだけが全日本ユース選抜のメンバーに選ばれるというサバイバルな闘い。1敗もできないという状況の中で、よりによってひろみは、お蘭と宝力冴子(ベッキー)と同じグループに入ってしまう。ここからは、ひろみのロッキーばりのトレーニングが開始。縄跳びはあんな飛び方でいいの?これぞまさに、絶対無二の一跳なり!
 試合前日、彼氏と破局をむかえた宝力冴子は、持ち前の小気味のいい動きを忘れてしまったかのようにイライラとして落ち着きがない。

「たった一つの恋が、これほどまでにプレーを変えてしまうなんて」

恋におぼれた絶好サンプルとして宝力、ひろみの前に完敗する。
 心の弱さにおびえすぎてオーバートレーニングのひろみはグロッキー状態で、変えのシューズを忘れた藤堂とともに自動ロックに体育館に閉じ込められる。階段を転げ落ちる空き缶の音を合図に、寒さに震えるひろみは藤堂の胸に抱かれる。
 そんな甘くせつない藤堂との思い出を全部忘れたいともらすひろみに、

「人間、何事も知ってしまったら、知らなかった昔には戻れない」by宗方

との厳しい指摘は、有難格言第2弾。藤堂は恋をするにふさわしい資格を自問自答する。

「危うく自分の思いに負けそうになった。まだまだだ」by藤堂

と深く反省。冷静になって考えてみると、この子達はまだ高校生のはずなんですけどね。まぁ、アスリートは老けるのも早いというし。
 お蘭との闘いを前にして、宗方と音羽の言葉が脳裏を駆け巡る。もはや音羽は宗方と同格か!試合に入れば、ボールのラリー以上に凄まじいのはもちろんモノローグ群。ただ、ひろみとお蘭の兄弟弟子対決に、ひろみのモノローグが途中までまったくなかったところがミソ。宗方の言う「岡というプレーヤーの闘いざま」の意味をワンゲーム取った時点で悟るお蘭。宗方がとしてのお蘭にテニスを教えたのに対して、ひろみにはプレーヤーとして引き付けられていたのだ。何たる深読み!

「バカだったわ、私。私も一人のプレーヤーとして、仁、あなたを魅了したい」byお蘭

有限実行の人、お蘭は7-5、6-3で勝利。挨拶を交わす2人の何たる清々しさか。竜崎(夏八木勲)の鶴の一声で、特例処置として1敗したひろみもメンバー入りを果たす。選考基準でもめるのは、あらゆるジャンルに共通か。
 はじまりから時はすぎ、あれから一年のしみじみ調。ここ最近のテレ朝ドラマの映像の美しさは何としたことでしょうね。とりわけ、空の色が抜群です。宗方は習字で“翔”、そして“夢”と書いて倒れる。(麻生結一)


第6回(2/19放送)
☆☆☆
 世界について。ドラマ中、「世界」という言葉が何回繰り返されたことか。おそらく三桁でしょうね。全日本ユース育成プロジェクトが竜崎理事(夏八木勲)によって華々しく発表される。

「まさかお父様と宗方コーチ(内野聖陽)の温めていたプロジェクトがこれほどのものとは。いいでしょう」byお蝶夫人(松本莉緒)

ここのところのお蝶夫人って、普通の台詞よりもモノローグの方が多いのでは。20秒後。

「お父様、わたくしお父様の娘として、ようやくその期待にこたえることが出来るのですね」byお蝶夫人

ここまでためを作ってさらにモノローグって、このジャンルに関してはすでにお蝶夫人は世界クラスでしょう(って、どのジャンル?!)。これまた世界を目指して筋トレ中のお蘭(酒井彩名)の目力もやはりワールドクラスか。回想シーンで登場する若かれしころのお蘭はあんなにもかわいかったのに(って、今だって17、8歳のはずだけど)。仁への思いを証明するために、岡を叩きのめすって、そんな物騒な。
 一方、よく考えればまだまだテニス初心者のひろみにとって「世界」の二文字がピンとこないのも当たり前。そんなひろみに世界を伝える教材ビデオがヒンギスなのはうれしい。

「ヒンギスに出来て、お前に出来ないはずがない」by宗方

という激励が飛び出すってことは、このドラマの時代設定って2、3年前のまだヒンギスが強かったころなんでしょうか。それとも単に技巧派の代表としてヒンギスを引用しただけ?! 実際のヒンギスは、コンプレックスになるほどに身長が高かったお蘭演じる酒井彩名ほどの身長だと思うんだけど。ちなみに、1997年にはロランギャロスに全仏オープンの決勝、マヨーリv.s.ヒンギスを見に行きました(単なる自慢!)。
 選抜強化選手の選考会に行ってみると、もはやひろみの名前は広く知れわたっていた。

「あなたの評判は聞いてるわ」

と話しかけてきたのは、同じブロックに入った美咲瑤子(菅原禄弥)。彼女はプロの公式戦にも出場したことがあると吹いていたが、実際には審判に文句をつけるだけのクレーマーで、口ほどにもないやつ。
 一方、これまたひろみのことをよく知っている同じく1年生で選抜された帰国子女の宝力冴子(ベッキー)は、驚くべきほどに動きが小気味いい。そんな彼女は、テニスのために恋を犠牲にしたことなど1回もないという。
 今話のピークは、何といっても高校生にして子供たちにテニスを教える音羽(金子さやか)の、まるで引退したプロ選手のような隠遁生活ぶりにつきるでしょう。

「あなたは私をはじめ、いろんな人を踏みつけそこまでのし上がってきたのよ」

昨日の敵は今日の友とはことか。もはや音羽はひろみのアドヴァイザー的存在に。この場面の空の色は群青色。カッコよすぎる画作りに、このキャラクターが愛されていると思う。そういえば、『早乙女タイフーン』の金子さやかもかっこよかったですよね(逆に、思いっきりカッコ悪かったのが『ビックマネー』のとき)。
 なぜ世界を目指さなければならないのか?との自問自答に明け暮れるひろみは、第2試合ではまったくいいところがなく、1セットも取れないまま敗れてしまう。

「何かにとらわれた心のままコートに立つなんて、テニスへの冒涜よ。恥を知りなさい」byお蝶夫人

これがひろみとお蝶夫人の唯一の会話。お蘭からは激怒のびんた、目力つき。向き合う宗方とひろみの周りをカメラが回る回る。よくよく考えてみると、大したエピソードは一つもないんだけど、十二分にドラマティックに仕上がっている。このドラマ、密かにやりますね。(麻生結一)


第5回(2/12放送)
☆☆★
 恋愛について。テニス部の男女合同合宿では、宗方(内野聖陽)から男子と同じメニューを課されるひろみ(上戸彩)。

「お前の腕と足はまだ細い」by宗方

放送終了までに、どれだけ太くなるかが見もの?! 食事の時間にも、しょうゆを渡さない作戦でひろみへのイジメが続く。島(平岩紙)にいたっては、イジメに心血を注ぐあまりに皿を見ずにしょうゆかけてるし。妙にしょうゆの出が悪かったのもイジメの一環?!
 夜間、一人コートに残って千回素振りするひろみに、藤堂(吉沢悠)が優しく励ましの言葉をかける。そんな藤堂とひとみを遠くから見つめるテニス部密着記者の千葉(柏原収史)。王道のすべてがここに。
 高校の部活の合宿だというのに、お蝶夫人(松本莉緒)はまるでオペラを見に行くかのようなドレッシーな装い。そんなガンバリ屋さんのお蝶夫人を見ているとせつなくなるという尾崎(石垣佑磨)に思わず納得。衣裳分を考えると、荷物とて大変な量でしょうに。これをガンバリ屋さんと言わずして何と言う。
 途方もなく広い大広間でひろみを待っていた宗方はくもの巣柄の着物!ここで女性アスリートとしてあるべき恋愛論が語られる。藤堂が気になって、練習に身が入らないひろみに、

「恋をしてもおぼれるな。一気に燃え上がり、燃え尽きるような恋はするな」×2

2回リピートです。2人(藤堂or宗方)を選ぶなと迫る宗方の気迫たるや。ここに師弟愛を超えた関係が完成する。それにしてもひろみはよく練習するよなぁ。『プライド』の面々は練習しないよなぁ。
 神出鬼没!加賀のお蘭(酒井彩名)は他校の合宿まで偵察後に一言。

「仁(=宗方)はあの子(=ひろみ)に夢中!」byお蘭

その猛特訓の様を見守る藤堂も一言。

「もう特訓はさせるほうとするほう、どっちがつらいと思う?」by藤堂

そりゃ、やっぱりするほうでしょ?! そんな藤堂を呼びつけて、宗方が語る恋愛論PART2。

「男なら女の成長をさまたげるような愛し方はするな」

そう言われて宗方をいい人だと言う藤堂こそがいい人。
 男子部員・香月との練習試合を命じられたひろみは最初一方的にやられるも、途中からワールドクラスの負けず嫌いぶりが爆発し、遂には宗方仕込みのライジングショットが火をふく。女を超えるテニスの入り口に立ったひろみ。その模様を音羽(金子さやか)がちゃっかり見ててくれたのはうれしかったけど、いっそのこと合宿もお蘭と一緒に偵察してほしかったです。待ち合わせした藤堂と握手し、逆方向に歩いていくエンディングがいい。セピア調の映像もその場面にピッタリ。『異議あり!』といいこれといい、テレ朝のドラマは画作りが凝ってますね。(麻生結一)


第4回(2/5放送)
☆☆☆
 関東大会のダブルスで、お蝶夫人(松本莉緒)のパートナーに抜擢されたひろみ(上戸彩)だったが、お蝶夫人の視線はあまりにも冷たい。練習でまったく息の合わない2人は予想通りとしても、他がジャージで練習している中、唯一人真っ赤なワンピースでプレーするお蝶夫人は予想しようもない域。宗方(内野聖陽)の決定を覆させようとするおなじみのいじめっ娘グループの中でも、とりわけ最後の公式戦に執念を燃やす音羽(金子さやか)の目が鋭く光る。

「だったら、私たちの手でそう仕向けるしかないわね」by音羽

 星野(塩山みさこ)と島(平岩紙)ペア、ひろみと麗香ペアによる練習試合に、何と音羽が審判!意地悪極まりないアイコンタクトの応酬に端を発し、ひろみが狙い撃ちにされる中でそのラリー以上にモノローグ合戦が激化してくる。

「苦しいでしょう。でもこれがあなたの選んだ道。わたくしはもう二度と、あなたに同情なんかしなくってよ」byお蝶夫人

「まだまだこんなもじゃないわよ、岡さん」by音羽

「より高く飛ぶためには、より低く身をかがめなければらない。だから今、骨の髄まで苦しんでおけ」by宗方

あついのかさむいのか、哲学的なのか意味不明なのか、そのあまりにもあいまいな境界線に言葉のシュートが面白いように決まる。こんな脚本を書こうものなら普通は怒られるところだけれど、このモノローグの嵐、心の声の凄みこそが、『エースのねらえ!』の『エースをねらえ!』たるところだから。
 この世の終わりという顔で落ち込んでいたひろみの前に、加賀のお蘭(酒井彩名)が登場。

「世の中にはテニスができない苦しみだってあるのよ」byお蘭

と遠山の金さんよろしく、白昼堂々全治二ヶ月の傷をおった右肩をはだけて見せるお蘭。すかさず、お蝶夫人との激闘中に転倒した場面のインサート。この演出のけれん味と切れ味を『乱歩R』にも分けてあげたい。お蘭の恨み節に、テニスが出来るだけでいいとの悟りを開くひろみの読解力にはまたまたびっくり。
 モノローグの多用は、このドラマをいっそうドラマティックで地味なものに切り裂いていく。

「こんなに攻めてるのに、つらくないの?苦しくないの?」by音羽

「つらくなんてない。こんなの、つらいうちになんかはいらない」byひろみ

「なぜなの?どうしてこの娘はいつもこうして立ち直れるのかしら?」byお蝶夫人

怒涛の心の声の応酬にただただしびれるのみ。
 
「相手に認めて欲しかったら、相手に負けないくらい努力しなくちゃ」

という藤堂の励ましを真に受けて、今度は夜通し壁打ちに励むひろみの手には血豆が。この素直さこそが、ひろみのワールドクラスたるゆえんか?!
 ついに準決勝。ひろみをリードし、フォローするように宗方から指導されたお蝶夫人は、

「ではやりましょう」byお蝶夫人

とあまりに横柄な態度。ただ、そこは有限実行の人。試合はひろみにラケットを振らせないほどのお蝶夫人の一人舞台に。ところが、ひろみが凡ミスを連発し足を引っ張ることしばしば。

「敵よりも見方のほうが怖いわね」

という観客からの野次に、UFJつばさ証券のコマーシャルを思い出したりして。そんな声にますます落ち込むひろみを見かねて、「わたくしはもう二度と、あなたに同情なんかしなくってよ」の前言を撤回して、お蝶夫人がついに正義の人になる。

「お黙りなさい!」

その一喝のバックミュージックはチェンバロの調べよ。見違えたひろみは、お蝶夫人との息もピッタリに快勝。試合後に足を痛めてへたり込むひろみを宗方がお姫様だっこで退場するおまけつき。

「やることが派手だな。宗方さんは」by千葉(柏原収史)

モノローグの地味さからのギャップは恐ろしいほど。
 前日に暗に示される宗方の日記。決勝戦の前に語られる一球論に、

「ハイ」

って、急にお蝶夫人までもが素直になっちゃって。太田(甲本雅裕)が率いる大原高ペアとの戦いは第1セットはとるも、第2セットはひろみがひざを打撲したことで落としてしまう。いよいよ最終セットに。

「だけど例えこの足がちぎれても、戦い抜いてやる。後のことなんかどうでもいい」byひろみ

スーパープレーなんか一つも登場しない。あるのはスーパーなモノローグのみ。
 太田までもが認めるひろみのとてつもないスケール。とてつもない素材だけに、時々恐ろしくなるとの宗方の告白にこそ恐ろしくなる。家着に和服を着ておいて、あの子を育てるには若すぎるって。
 ついに、西校テニス部のナンバー5、音羽はひろみに完敗宣言してテニス部を去ることに。宗方が義母兄だということを激白するお蘭。そんなひろみとお蘭の会話をテニスコート外で盗み聞きするお蝶夫人の耳のよさといったらもう。しかも、途中までしか聞かない!叱咤されるさまざまな声の中に音羽の言葉も混入。

「だから、強くなりなさい」by音羽

ついつい音羽に肩入れしているものですから。
 より強くなるために宗方に改めて弟子入りを直訴するひろみに対し、宗方が難問をぶつける。

「なぜ鳥は空を飛べると思う?」by宗方

「えっ?」byひろみ

読解力の人、ひろみもさすがにこの唐突な鳥の例えにはついていけず。もし鳥が空を飛べることを疑えば、「逆巻く風にのまれ、地に落ちる」なる文学的な例えがあまりにも絶品で、思わず笑いながら拍手してしまう。(麻生結一)


第3回(1/29放送)
☆☆★
 ひろみ(上戸彩)がお蝶夫人(松本莉緒)からリターンエースを奪った続き。ただその後は本気になったお蝶夫人に完敗。ただ、グラウンドにはへたり込むもその目は負けてない。そんなひろみにお蝶夫人からの禅問答。

「私かテニス、どちらかひとつを選びなさい。よくって」

このクエスチョンのすごいところは、お蝶夫人とテニスが並列になり得ないところ。それをテニスをやめろの意にとるひろみの読解力も、また超人的。宗方(内野聖陽)はテニス協会の理事でもあるお蝶夫人パパ(夏八木勲)に、岡ひろみがいずれ世界に通用する選手になると言い放つ。その根拠って、やっぱりあのアンバランスさ、まとまった試合もろくにできないスケールの広さなのかな?!
 いったんはテニス部をやめたひろみは、突如マッチメークされたお蝶夫人と加賀のお蘭(酒井彩名)との壮絶な試合を目のあたりにすることに。事実上の決勝戦にふさわしく、ボールのうなり声だってこれまでいれとも大違い。さらにすごかったのが、転んで脱臼するお蘭の悲鳴。負傷後も自分が勝っていたことを主張するお蘭に、

「聞き捨てならないことをおっしゃるわね」

と食い下がるお蝶夫人との美貌対決は見もの。
 ついに、自分にとってのテニスの大事さを思ったひろみは、健全な高校生にあるまじく夜中に学校のグラウンドへ。そんな浅はかな思惑などお見通しとばかりに、暗闇からは宗方の声。サーブ練習後に転がるボールの量は痛快の域。お蝶夫人はそんなひろみと同列に見られることに、

「不愉快ですのよ」

と宗方を威嚇。お蝶夫人からしかとされた直後の試合は、2時間にも及ぶ大熱戦。疲れ果て、思わず弱音を吐くひろみに、

「そこにボールがある限り、お前の足は動く」

と暗示をかけられると、「さっきまでが嘘みたい」なほどに大復活。さらには、顔面でボールを受け、視力が弱まってもボールを打ち返すところで、初めてそのワールドクラスぶりを見せ付ける。残念だったのは、音羽(金子さやか)の意地悪が学校新聞の一面を飾ったひろみへの羨望にとどまったこと?!(麻生結一)


第2回(1/22放送)
☆☆★
 がっかりさせられるドラマばかりの今クールにあって、まったく期待していなかったこのドラマがなかなかのダークホースぶりを発揮している。お蝶夫人(松本莉緒)からもらったラケットが見つからなかったひろみ(上戸彩)は、藤堂(吉沢悠)から借りたラケットで団体戦の準決勝に出場する選手の座をかけて音羽(金子さやか)との試合にのぞむ。最初は圧倒されるばかりだったが、次第に力みだした音羽が自滅し、ひろみが棚ぼた的に勝利。勢いに乗ったひろみは、準決勝でも勝利をおさめる。ところが決勝の相手は、くじ運悪く加賀東のエース・緑川蘭子(酒井彩名)にあたってしまい、その男子なみのサーブにはまったく手が出ずにストレート負けを喫してしまう。翌日から再び始まった宗方(内野聖陽)からの特訓中、ひろみはラケットを投げ出し弱音を吐く。
 県大会の個人戦は棄権校が出たために、よりによってお蝶夫人と1回戦で対戦することになってしまったひろみ。ムキになるお蝶夫人の強打に一方的な試合展開になるも、サーブのコースを見極めろという宗方からのアドバイスを思い出したひろみは、ついにお蝶夫人からリターンエースを奪う。
 いじめにあうも、随所に守られている岡ひろみに、これでこそ『エースをねらえ!』だとの思い。これって単なるノスタルジー?! いやいや、音羽v.s.ひろみなんて、やっぱり純粋に面白いでしょう。ガラスの破片に腕をケガしたお蝶夫人は、宗方に治療してもらっといて

「よくもこんなことを」

って、何されたって言うの。このあたりのアングルはコミックから抜け出てきた感じ。次の日は服を破ぶられたショックで学校を休んだ?! お見舞いの花束をお蝶夫人のお父さん(夏八木勲)に渡す時も、ひろみは「お蝶夫人に」って。敬称の常識を超えたその錯綜具合がすごい。
 ひろみに惨敗した音羽の怒りは絶頂に達し、さらにいじめはエスカレート。あの制服の汚し方はあんまりでしょ。ただ、ラケットをめぐる怪しげな行動をお蝶夫人に見破られ、

「恥を知りなさい」

って言われちゃってシュン。金子さやかがますますいい味出してます。
 ついにベールを脱いだ加賀のお蘭の弾丸サーブ実写版。ボールがひろみの肩をこれでもかってぐらいにかすめる『巨人の星』並みの空き缶練習が泣けてくる。宗方のひろみ評はやはり謎。「あのアンバランスさ。まとまった試合もろくにできない。そこにスケールの広さがある」って、ほめてるんだか、けなしてるんだか、笑わそうとしてるんだか。試合中の心の声は実写でも健在。これを聞いてるだけでも、思わず微笑んでしまう。第2回の方が視聴率が伸びているのも納得の盛りだくさん。大人向けのドラマじゃないけど、折り目正しく作ってあるので見ていて安心です。(麻生結一)


第1回(1/15放送)
☆☆★
 アニメ版を夢中になって見ていた懐かしい思い出にひたりながら見始めるも、すぐさま目を覚まさせられる。よく考えてみると、『エースをねらえ!』を実写でやるという行為は、『巨人の星』を実写でやってしまうことに等しい愚行だと。そのことに早めに気がついたおかげで、むしろ割り切って楽しめた。っていうか、随所に爆笑の渦だった。
 高校の入学式の日、テニスコートで華麗にプレーするお蝶夫人(松本莉緒)に魅せられて、ひろみ(上戸彩)はテニス部への入部を決意する。ひろみの腕前は、高校からテニスをはじめた初心組の中でも下位レベル。ところが、新任のコーチ・宗方(内野聖陽)は、地区大会の選手の中にひろみを選ぶ。試合まで日にちはない。ひろみは宗方から厳しいトレーニングを課される一方、先輩たちからはひどいいじめをうけるのだった。
 第1回最大の見ものは、何と言っても音羽京子(金子さやか)のベタな意地悪三昧ぶり!『日本列島だんちでクイズ』では好感度大の金子さやかが、ここでは絵に描いたようなワルぶりを発揮。高校生全員がありえないほどに老けてる?! お蝶夫人と宗方は、本格的にコミックを模倣しましたね。同じありえない系だったら(?!)、裏よりもこちらをお薦めするという意味も込めて、★ひとつおまけということで。オープニングの主題歌はオリジナルと同じも、終わりの歌が

「夕焼けのテニスコートで〜っ」

じゃなかったのが残念!この枠の普遍のテーマは、「なぜベストをつくさないのか!」みたいですね。(麻生結一)




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