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白い巨塔 (フジテレビ系木曜22:00〜22:54)
制作/フジテレビ、共同テレビ
制作統括/大多亮
企画/和田行
プロデューサー/高橋萬彦、川上一夫
原作/山崎豊子
脚本/井上由美子
演出/西谷弘(1、2、5、9、11、16、19、21)、河野圭太(3、4、6、14、17、20)、村上正典(7、8、10、12、15、18)、岩田和行(13)
音楽/加古隆
主題歌/『アメイジング・グレイス』ヘイリー
出演/財前五郎…唐沢寿明、里見脩二…江口洋介、花森ケイ子…黒木瞳、東佐枝子…矢田亜希子、里見三知代…水野真紀、亀山君子…西田尚美、佃友博…片岡孝太郎、佐々木蔵之介、三浦理恵子、高畑淳子、潮哲也、田山涼成、中原丈雄、木村多江、大林丈史、平泉成、中村俊太、奥田達士、小林正寛、福島勝美、津田真澄、湯浅実、田口主将、櫻庭博道、薺藤崇、山田明郷、渡辺憲吉、山上賢治、小林勝也、橘ユキコ、水野あや、立川絵理、片岡涼、梅沢昌代、財前杏子…若村麻由美、鵜飼良一…伊武雅刀、黒川きぬ…池内淳子、佐々木よし江…かたせ梨乃、菊川昇…沢村一樹、鵜飼典江…野川由美子、国平弁護士…及川光博、関口仁…上川隆也、曾我廼家文童、河合美智子、奥貫薫、品川徹、廣川三憲、森麻衣子、隈部洋平、田中啓三、小林高鹿、永幡洋、高村尚枝、根本俊二、新納敏正、森山米次、大和、湯澤幸一郎、牧野エミ、三宅正信、南條瑞江、中村方隆、歌川椎子、酒井麻吏、蓼胡奈津、佐々木麻緒、長谷川由里、齋藤正博、高坂勇輝、岩永智、牟田浩二、永幡洋、高村尚枝、山素由湖、のむらゆみ、島ひろ子、森崎よしえ、原楠緒子、安田洋子、山本勝、河原田ヤスケ、宮澤亜理沙、中根徹、鈴木眞弓、森田聖子、堀本能礼、兎本有紀、戸沢佑介、鈴木修平、飛田恵里、丹波葉之介、嶋崎伸夫、廣澤恵、江口ヒロミ、浜田道彦、菊地佐玖子、小林正史、大橋一三、浜口悟、朱源実、中山克己、真白由春、乾小順、福月里代、森康子、岩永智、伊藤勝智、石橋拓己、西原亮、藤本至、中野絵理子、北本美紀、神崎智孝、森信雄一郎、今林久弥、中谷敬子、平澤佐友里、石津準子、アウグスト・コバルチク、イエジ・ゼルニク、スタニスワフ・バナシュク、アンジェイ・オハル、ロジャー・アレン、ポール・カミンスキ、リカヤ・スプナー、柳原弘…伊藤英明、東貞蔵…石坂浩二、財前又一…西田敏行
ほか

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第21回(3/18放送)
☆☆☆
 実に整理整頓が行き届いた締めくくりなれど、その美しいまとめぶりが逆に不満だったりして。財前(唐沢寿明)の手術に執刀した東(石坂浩二)は、ステージIだったはずのガンがすでに手のほどこしようがないほどに胸膜にまで広がっていたことに愕然とする。財前に周囲がガンの告知しない道を選ぶあたりがあまりにも皮肉。
 ガンの権威である財前にそのことが見破れないはずがない。母・きぬ(池内淳子)に電話するエピソードの中に、自らの病状を悟る財前。1978年版では、確かトイレの洗面台に映った変わり果てた顔にゾッとする壮絶極まりないシーンだったはず。このあたりのソフトなテイストこそが21世紀の『白い巨塔』を象徴している気がする。真実の人、里見(江口洋介)に密かに再検査を頼み、余命約3ヶ月との自らの診断を里見による告知で確認する財前。

「ただ、無念だ」

と言って、右手で里見の肩を叩こうとするも、手のしびれでそれがなしえないシーンにはさすがに胸がつまる。
 財前五郎株大暴落の大損害をこうむったはずの又一(西田敏行)までもが、もう一度おもろい夢を見ようとやつれはてた婿を励ますのなら、あとの人が悪い人であるはずがない。すべては恩讐の彼方に、みんないい人になってしまう後味のよさにはちょっと居心地が悪くなる。みんなが総出で悪い人になっちゃった『相棒』の最終回はあれほど居心地がよかったのに。中では夫を失うであろう杏子(若村麻由美)に、

「女の一生は男の一生よりも長い」

とのあまりにも重い言葉を吐く鵜飼夫人(野川由美子)の存在感が圧倒的。
 財前が絶命する時、ドラマは男の友情ドラマに収斂してしまうのか。父である東、里見、そして財前までをも並列に語る佐枝子(矢田亜希子)の訳知り顔的な発言もおざなりすぎる。オールスターキャストドラマの宿命もあろうが、これはサービス過剰。余韻に浸る時間がほしかったのに。
 第1回から急発進して一気加勢に見せきり、アウシュヴィッツが登場した特別篇で最高潮に上り詰めてからは、緩やかに下降線をたどったというのが最後まで見終えての感想。比べる対象が違うといわれればそれまでだが、朝ドラ再放送枠『ひまわり』のキャラクターの描き込みの素晴らしさから比較すると、この 『白い巨塔』ではもう一歩登場人物たちを深め切きれなかったように思える。そう思ってしまうのも、井上由美子脚本に対する期待感が高かったからに他ならないのだけれど。興味深かったのは、財前と里見の善悪の構図が、随所に逆転していた点。(麻生結一)


第20回(3/11放送)
☆☆☆
 飼い犬=柳原(伊藤英明)に手を噛まれるベくして噛まれた財前(唐沢寿明)。財前からメスを奪うかもしれないことをいまさらながらに自覚して再証言に応じる里見(江口洋介)。この2人ともの思慮の欠如が愚かしくではなく、間抜けに見えてしまうのはちょっと都合が悪いも、それでもドラマはいっそうに高まっていく。さらなる高みもあったような気もするが。
 財前サイドもカンファレンスの記録には気が回るも、看護士がとる看護計画検討記録にまでは気が回らなかったか。敗訴した勢いで倒れてしまった財前もやはり人の子。財前の肺がん手術に東が執刀することになる皮肉はさすが。だったらいっそ、亀山看護婦(西田尚美)にもオペに入っていただきたかったですね。
 この平成版が田宮二郎版を超えられない最大の理由をここで思い出す。財前が劇中で死んだのと時を同じくして、田宮二郎も実生活で死んでしまったのだ。もちろん、フィクションとノンフィクションの重なり具合に身をふるわせたあの最終回を上回ってほしいとも思わないけれど。唐沢さんには『新撰組!』の終盤に出て、盛り上がらない大河を元気に盛り上げていただかなくてはいけませんから。何役がいいでしょうね。(麻生結一)


第19回(3/4放送)
☆☆☆
 法廷に立って証言した東(石坂浩二)は、病院長の職を辞する覚悟の捨て身作戦に出る。陪審員制度があれば、これはかなり効果的だったはずも、財前(唐沢寿明)サイドに抱き込まれた船尾(中原丈雄)の反証により討ち死にの形に。
 財前(唐沢寿明)はいよいよ勝利を確信するも、その過信こそが命取りだったか。インフォームドコンセントを争点にした財前とよし江(かたせ梨乃)の対質尋問で、すべての責任を柳原(伊藤英明)に転嫁してしまったがばっかりに、柳原がついに謀反を起こす。
 それぞれの心情をもう少し濃密にすくってほしい気もするが、物語の面白さは盤石なので、安定した出来ばえのままに最終回をむかえられそう。(麻生結一)


第18回(2/26放送)
☆☆☆★
 第二部になってからは、もっとも充実した出来ばえの回。やはり、財前(唐沢寿明)に対峙する東(石坂浩二)の構図は絶品ということかな。裁判には協力しないと言っていた東が突如、弁護士の関口(上川隆也)に信頼にたる鑑定医の紹介を約束する。心境の変化を佐枝子(矢田亜希子)に問われ、里見(江口洋介)に会って財前の落ち度を確信したと答えるも、その落ち度とは医学的なもの以上に、財前に対して自らから手を差し出すはずだった東退職の日、12.26にあわせて佐々木庸平(田山涼成)の手術が行われたことだったか。石坂浩二の東は、憤りを押し隠すかのような瞬間に特徴あり。
 ところが、財前の手が回って鑑定のために裁判に出廷してくれそうな医師は誰もいなくなり、ついに東自らが立ち上がることに。対抗して財前サイドが鑑定報告に用意した医師は、これ以上が思いつくはずもないというほどの隠し玉、船尾(中原丈雄)だった。
 印象に残ったのは、初めて差しで対決した財前と関口の問答。命を扱うことへの自覚がなさすぎる、3000人の命を救っても、一人を死なせては許されないという関口の言葉を、実際に生と死の狭間に立ったことのない人間の幼稚な詭弁だと言ってのける財前。そんな財前も、オペ中に初歩的なミスを連発。死んだ人間にメスを入れようとしているような言いようのない恐ろしさにおののく。いつになく弱気の財前にケイ子(黒木瞳)は、ヤケ酒はニ流のやること、愛人を抱くことは三流のやることとピシャリ。
 野田薬局の愛娘・華子の色気大放出ぶりは、『特命係長 只野仁』を引きずっているかのようにみえる三浦理恵子。

「外科医は訴えられるぐらいじゃなきゃダメ?!」by華子

と言われて、ヤケ酒を飲む柳原(伊藤英明)はケイ子的に言えばまさに二流。そんな弱い人間の代表格である柳原は、証言を頼まれて揺れる看護婦の亀山(西田尚美)との再会にその弱さはマックスに高まり、勢いにまかせて華子を抱く。確か、佐枝子と三知代(水野真紀)のツーショットって、随分と久々では?!
 ドラマはいっそう深刻を極めるも、若村麻由美、水野真紀、伊藤英明と出演者的には随分とおめでたいことが続いているようで。(麻生結一)


第17回(2/19放送)
☆☆☆
 予想に反して、財前(唐沢寿明)は控訴された。ただ、新証拠や新証言が出てきたわけではなく、財前の前途を揺るがすものではない。大学を辞めた里見(江口洋介)の家には、な・な・なんと大河内(品川徹)が訪ねてくる。大河内は里見の研究の成果が臨床の現場でも役立つと、民間の千成病院への紹介状を持って来たのだ。意外ないい人ぶりを発揮する大河内は、病院の外では表情もちょっぴり柔和?!
 早1年。千成病院に勤務する里見は、有限実行とばかりに千成病院で患者のための治療を実践中。と、そこへ疲れ果てた関口が現れたものだから、思わず東(石坂浩二)に相談するようにと確信的に口を滑らせる。灯台下暗しとはまさにこのことか。

「そういうつもりで言ったのではないのですが」by里見

なんてはずがない。
 財前はケイ子(黒木瞳)をがんセンター予定地に連れ回してるうちはよかったけれど、総回診中に食道ガンの患者が庸平(田山涼成)に重なって見えるようじゃ、かなりの末期症状か。気がつけば、残すところあと4回か。
 柳原(伊藤英明)は財前に自宅に呼びつけられ、又一(西田敏行)主催のもと、薬局の娘・野田華子(三浦理恵子)と強制お見合いの席に着かされる。もちろんこれは政略結婚のようなもの。さすがに又一もここでは実弾は出さず。(麻生結一)


第16回(2/12放送)
☆☆☆
 真実の人である以上に無自覚な悪魔性に引っかかりを感じていた里見(江口洋介)だったが、それだけに裁判の証言後にすべてを失った喪失感はいっそう痛々しかった。
 鑑定医報告では、洛北大の唐木教授(平泉成)が財前(唐沢寿明)に有利な報告を行う。訴えはついに棄却された。又一(西田敏行)、岩田(曾我廼家文童)、鵜飼(伊武雅刀)の悪人トリオは、遅れてやってきた唐木を笑顔で迎え入れる。又一はポケットから実弾を取り出すも、唐木もさすがにこれは受け取らない。それにしても、又一のポケットからはいつでもどこでも実弾が発射されるようになってるんですね。報告そのものは無難かつ妥当な見解だったとはいえ、実際には鵜飼の手が回っていたということか。

「ハラハラさせるのはこれで終わりにしてね」

と財前の首を閉めながら胸に飛び込む杏子(若村麻由美)に凄みあり。
 国平(及川光博)は控訴はあり得ないと断言するも、従業員からも裏切られたよし江(かたせ梨乃)は、もはや捨て身で関口(上川隆也)に控訴を依頼。従業員への退職金と称して金庫の有り金を強奪した信平(廣川三憲)こそをまずは訴えるべきだとも思ったけれど。
 鵜飼がもったいつけた布をはがして披露するのは、浪速大学付属ガンセンターの模型。それはまさに白い巨塔だった。山陰医科大学の教授の打診をけり、里見が浪速大学を去るのと時を同じくして、教授回診の際に意地を見せた看護士の亀山君子(西田尚美)もやめることに。財前に会釈する亀山、そのことに気がつかず、大学を去る里見の後姿を見やる財前、財前が過ぎ去ろうとしたときにその姿を見上げる里見。こういう見せ方のうまさはさすがと言うしかない。(麻生結一)


第15回(2/5放送)
☆☆☆
 柳原(伊藤英明)の尋問の続き。カルテの書き換えはあったか否かを問われるに、唇を震わせながら改ざんはなかったと言い切る柳原。そんな悲痛な声に耳をそば立てる又一(西田敏行)!この緊迫した場面に、笑いをとる必要があるかどうかは疑問。逆らいがたく爆笑してしまったけれど、ここで爆笑させてしまっては、せっかくの密度の濃い空気が薄まってしまう。
 続いて、原告であるよし江(かたせ梨乃)の尋問が行われる。よし江による財前評で、教授回診が大名行列のようとはあまりにも的確な表現。ところが、被告側の弁護士・国平(及川光博)が挑発的な質問を連打したため、よし江はすっかり取り乱してしまう。その状況を岩田(曾我廼家文童)は、

「5回の裏で逆転。4対2でリードちゅうとこでんな」

と評し、又一は

「7回はいっとるやる。6対2ぐらいちゃう」

とより甘口の分析するが、国平はそんな計算は無意味だと一同をたしなめる。
 教授の妻ならばどこに行っても楽しいけれど、被告の妻ならゴミだしするのもいやとは、杏子(若村麻由美)もうまいことを言う。里見(江口洋介)の妻・三知代(水野真紀)から攻めるべく、くれない会での一芝居もケッサク。若村麻由美さんは『夜桜お染』でも素晴らしかったけれど、こちらではまったく違った一面を見せてくれていてお見事です。
 ここのところ見せ場の薄かった財前(唐沢寿明)が久々に本領を発揮するオペのシーン。いったんは執刀を断わり、そしてピンチになってはなばなしく助けにくるあたりの芝居がかった感じが、あの妻にしてこの夫というか、いかにもそれらしい。裁判においては敵対関係にある里見が、何の迷いもなく財前に執刀を頼むあたりには前話同様、患者に対する一途さ以上に無自覚な悪魔性を感じてしまった。里見のキャラクターにもう一要素加える手厚さも必要だったか?! 亡くなった患者のために真実を明らかにすることに伴う代償に苦悩する様が薄いので、単に融通の利かない人に見えてしまうことしばしば。
 里見が裁判所に向かうまでの時間配分もうまくない。三知代の説得が里見が家を出る直前であるのも気になったが、そんな引きとめを振りきってを出た里見を待ち構えていた佐枝子(矢田亜希子)から切り替わって、第三回証人尋問がはじまってしまうのもいかがなものか?厳格な里見にしては遅刻しすぎなのでは?証言に立ち、出廷すか否かをためらっていたとの里見の台詞が思ったほど痛切に響いてこなかったのが残念で、思わず小さなあら捜しをしてしまった。ドラマの面白みがいよいよピークに達しつつあることは疑いもない。(麻生結一)


第14回(1/29放送)
☆☆☆
 もう裁判なのかと感じること自体、それだけこのドラマに引き込まれている証拠かな。裁判に際し、財前(唐沢寿明)の前にはマスコミが殺到。お弁当の佐々やんでは、弁当のキャンセルが相次ぐ。原告側の証人としてたつことを弁護士の関口(上川隆也)に確約した里見(江口洋介)に、弁護士の国平(及川光博)は出廷の撤回を要求。ここに果てしなく長い救いのない争い、医療裁判が始まる。
 財前が被告になったその朝に、

「お早う」

との第一声を発する里見。これぐらいの無自覚な悪魔性がなければ、妻・三知代(水野真紀)の反対にも耳を傾けることもなく、真実のために証言台に立つ強い意志を持つことは不可能か。佐枝子(矢田亜希子)は、父・東貞蔵(石坂浩二)に今回の裁判で原告者側の弁護人を務める関口の下で働いていることを告白。東は辞めるようにと諭すも、佐枝子は父の仕事をもっと深く知りたいとの殺し文句を吐く。
 第一回証人尋問。佃(片岡孝太郎)は佐々木庸平(田山涼成)の死は不可抗力だったと述べるも、財前の診断ミスだとの関口の反対尋問にはうろたえてしまう。高ぶる佃に、

「感情的になったらあかんわ」×2

のリフレインな感想を持ったのは又一(西田敏行)その人。「死体や標本にだけ向き合う一解剖医」(by国平)、大河内(品川徹)はその場が証言台であるにもかかわらず、一人だけ横柄な口ぶりでらしい輝きを放つ。傍若無人でさえある断定調が素敵。臨床医としての自覚に欠けるとの捨て台詞も鮮やかに、公判は佐々木側の有利で推移する。そんな中で、財前サイドでは早速に作戦会議。

「一回の裏を終わって、0対2ちゅう感じでんな」by岩田(曽我廼家文童)

そして又一は、鵜飼(伊武雅刀)と国平の2人にお約束の実弾攻撃に出る。ただ、教授選のときよりもやや薄めだった?! それも加味されてのあの含み笑い?!
 2回目の証人は柳原弘(伊藤英明)。関口にカルテの改ざんについて問い詰められるに柳原はあせるばかりで、となるはずも、表情に変化が乏しいように感じられる。“第一回証人尋問”がテロップ入りなら、“第二回証人尋問”も出すべきか。上川隆也と及川光博の好対照ぶりが出色。(麻生結一)


第13回(1/22放送)
☆☆☆
 前のめりに突き進んでいく感じが面白かった第1部に比べると、ドラマがじっくりとしてきた分、脇の甘さが目立ちはじめたのも気がかりだが、それ以上に25年前よりもあらゆる事柄が複雑になった現状において、この物語が時代という風雪に耐えうるのかについてハラハラとしてしまい、のん気に見進められなくなってきた。よし江(かたせ梨乃)の依頼を受けた関口(上川隆也)は、浪速大病院に乗り込むも、応対した佃友博(片岡孝太郎)はカルテだけしか証拠として提示しない。大学は早速事故調査会議を開き、若手でやり手の弁護士、国平(及川光博)は患者への曖昧な見解を事実で整理すると称して、カルテの改ざんを指示する。 
 佐枝子(矢田亜希子)へのバイト代は、よし江と庸一(中村俊太)が持ってきた裁判の着手金200万円の中から支払われた。いったんは受け取る佐枝子だったが、誤診を訴える気がないのなら着手金を受け取るのはおかしいと関口の弁護士としてのあり方を責め立て、バイト代を返却する。そんな佐枝子の思いに負けた関口は、佐枝子と一緒に佐々木家に着手金を返しに出かけるも、偶然にも訪ねてきた里見(江口洋介)から証言の確約を取り付ける。、関口は再び浪速大病院に行き、今度はカルテだけでなくすべての記録の提出開示を求める。
 あまりにも簡単であまりにも手際よく、事実が改ざんされていく過程には驚くばかりだが、その改ざんされたカルテを窓に貼り付け、光に透かして修正液の裏に隠された嘘を暴く関口の手際のよさにはさらに感心させられる。最初の証拠保全の際、カルテのそばでボールペンをせわしなく動かす関口を見て、てっきりそこに仕込まれた隠しカメラでそのすべてを撮影しているのかと思ったのに、そんなスパイじみたことはさすがにしないか。
 今話は実質上関口が主役の回で、財前(唐沢寿明)の見せ場は少なかったが(上記のあらすじにも財前の文字がない!)、財前と里見の医師としてのあり方に関しては、いっそう微妙な思いに。かつて見た1978年版で里見が善であり続けたときのような、割り切った気分にはなれない(ディテールを覚えているわけではないので、あくまでも印象ですが)。
 正しい行いは常に何がしかの犠牲の上に成り立っているとはいえ、バイト報酬の全額を返却する佐枝子(矢田亜希子)の清さは、食うに困ってない人の所業。関口はアルバイト料を数えなくていいの?借金を抱えているはずなのに。クレジットのとめは伊藤英明! 89へぇ〜ぐらいでしょうか。(麻生結一)


第12回(1/15放送)
☆☆★
 ドラマは本格的に医療過誤裁判の話にシフト。物語る推進力にいったんセーブがかかったこと以上に、微妙な糸の綻びも気になって点数はこれまでよりも低めにするも、前クールから引き続いてこのドラマがもっとも見ごたえのある連ドラであることに変わりはない。
 財前五郎(唐沢寿明)はポーランドの学会から帰国するなり、死亡した佐々木庸平(田山涼成)の息子・庸一(中村俊太)に問い詰められ、里見(江口洋介)からは診断ミスを指摘される。帰国祝賀会のお祝いムードを味わう間もなく、鵜飼(伊武雅刀)からは浪速大学の看板に傷をつけないようにと念を押されるが、財前の自信は揺らぐことがない。
 佐々木家の葬儀に赴いた里見は、よし江(かたせ梨乃)から浪速大の関係者には来てほしくないと言い放たれる。よし江と庸一は裁判に訴えることを決意するが、警察も医師会で紹介された弁護士も裁判に勝ち目はないと素っ気ない。最後の望みと訪れた医療裁判専門の弁護士、関口(上川隆也)からもいったんは断られるが……。
 スペシャルで手厚くいった反動か、今回は随所に緩め。まぁ、スペシャルでそのすべてを出し切った感もあり、今話とあわせるとちょうど平均化されたあたりか。ヘマな死なせ方をしたと柳原(伊藤英明)に責任転嫁する財前の傲慢がようやく決まりはじめたあたりに、これからの期待感が膨らむ。

「僕はきみには人一倍期待してるんだから」

との殺し文句も、「予測の範囲」と居直る財前並みに予測の範囲。里見の論文が権威ある橘賞を受賞したことさえも内心面白く思っていない財前のいやな奴ぶりの駄目押しがいい。
 ただ、葬儀屋の口ぞえ以来、よし江のあり方が微妙に気になって。着替えもできずやつれてる風でもなく、毎度お美しいよし江はどうなんだろう?里見を責め立てるくだりを室内と屋外に分散したのはなぜ?他は電話で、関口だけ事務所に訪ねたのも?
 関口が裁判所を通じ、病院の証拠保全手続きをとるエンディングは見事に決まっているが、関口が訴えに関してエレベーターでしゃべるのを里見が聞いてしまう嘘っぽさには、ちょっとがっかりした。(麻生結一)


第11回(1/8放送)
☆☆☆★
 ドラマを見せきる推進力にひたすら圧倒された、第2部のオープニングにふさわしい出来ばえの2時間スペシャルだった。第一外科の教授の座を射止めた財前(唐沢寿明)は、術後の病状に疑念を抱く里見(江口洋介)から再三再四、患者の佐々木庸平(田山涼成)を診察するようにうながされるも、教授就任の有頂天の心持ちに加えて、ポーランドで開かれる国際外科医学会のことで頭の中はいっぱいで、それどころではない。仰々しい見送りを受け、日本を飛び立った財前は、ワルシャワでも完璧な執刀ぶりで、ポーランドの医師たちをうならせる。ますます自信満々となる財前を、現地駐在の案内役・平泉諒子(奥貫薫)はアウシュビッツ強制収容所後に案内する。
 財前の教授へのバージョンアップは、オールバック仕様だった!教授回診後に里見とすれ違う場面で、第1部と第2部が見事につながる。くれない会に正式入会した杏子(若村麻由美)はいっそうの絶好調で、もっと登場してほしいと思わせる。東の妻・政子(高畑淳子)の失脚(?!)に、明日は我が身と顔を見合わせる面々の俗物ぶりが見ものだ。
 見せ方の絶妙は、ポーランドにおける国際医療学会での鮮やかな手術(『タンホイザー』を曲調にあわせて使うあたりも抜かりなし)、そして講演の大成功ぶりと、時を同じくして佐々木庸平の容態が悪化していく描写との対比に極まる。アウシュビッツにひかれた線路に運命の分かれ道はいずれもが地獄との暗示は、これから見舞われる財前の地獄をその歴史の重みが上回っていたとしても、冷気が張りつめたようなこのポーランドでのロケが理屈ぬきの圧巻だったことに疑いはない。アウシュビッツという歴史的負の遺産が、視聴率25パーセントの中で語られたことも重要か。ニセ妻、ケイ子(黒木瞳)と財前とがワルシャワの街で戯れるシーンも、日本での緊迫とあまりにもギャップのある叙情的な見せ方がお見事でした。
 ついに死んでしまった佐々木庸平の病理解剖を拒むよし江(かたせ梨乃)が、葬儀屋の運転手から医療ミスではとの指摘をうけて翻意する成り行きには??? あの運転手がいきなり語り出しただけもビックリだったのに。病理解剖に現れた大河内(品川徹)とエマーソン博士とが偏屈度でイコールに見えてたのは狙い通り?!
 新しい登場人物として、いよいよ関口弁護士役で上川隆也が登場。朝ドラ再放送枠の『ひまわり』で弁護士修習生を演じている上川隆也のキャラクターが、そのまま時を経たかのような貧乏弁護士ぶりに、共通の井上由美子脚本の基本姿勢がうかがえて興味深い。関口の事務所は、『ひまわり』の赤松(奥田瑛二)の事務所によく似ていたでしょ。(麻生結一)


第10回(12/11放送)
☆☆☆
 どうやら、この回が第1部の最終回という位置づけらしい。医局が菊川(沢村一樹)に教授選の辞退を迫ったいきさつを聞き、露骨な肩入れから身を引こうとする鵜飼(伊武雅刀)の腕をグッと掴み、脅しともとれるような詰め寄り方をする財前(唐沢寿明)の迫力には圧倒されるものが。
 見せ場のピークはそこにあったか、教授選の決戦投票自体はいたってノーマルに進んだ印象。1978年版の開票シーンの方にはキリキリとなった記憶が残っているだけに(あくまでも記憶だけれども)、それに比べれば随分あっさりとした仕上がりに思えた。
 退官する東(石坂浩二)の最後の総回診の物寂しさと、“問題の”佐々木庸平(田山涼成)の食道がん切除手術をそれと同じ時間にセッティングしてしまう財前の憎々しさがシンクロして、否が応にも第2部への期待感が高まっていく。(麻生結一)


第9回(12/4放送)
☆☆☆☆
 読み物的な面白さが最初のピークに差し掛かりつつある。話の先を知っている人もそうでない人も、とりこにしてしまう物語の推進力は超一流。『白い巨塔』が理屈抜きに楽しめる稀有な作品であることを、改めて強く認識させられた第9回だった。
 東(石坂浩二)が教授選の投票を棄権するという仰天行為に出たことで、開票結果は予断を許さない状況に。緊迫の結果待ちにハラハラドキドキも、そこでCMを挟むのね。結局、財前(唐沢寿明)と菊川(沢村一樹)ともに過半数に達せず、決選投票に持ち込まれることになる。
 ここからの、第3の候補者・葛西に入った7票をめぐる票とり合戦の「ばかげた白熱ぶり」が見物だ。思わぬ票の伸び悩みにやけっぱちになる又一(西田敏行)は、娘婿五郎にさとされて新たに決意表明するも、ズラがズレてるよ。そして浮動票を握る野坂(山上賢治)には何と実弾7発の大盤振る舞い!ここまで風呂敷の包みが並ぶと、もはや華麗ですらある。
 菊川(沢村一樹)の後ろだて、船尾(中原丈雄)に選挙戦における甘さを指摘されて、面目丸つぶれの東のがやり場のない怒りを玄関の庭木にぶつけるシーンは絶品だ。こういうプライドの人は、プライドを踏みにじられることほどに傷つけられることはない。憔悴しきった父を大学まで送り届けた東の娘・佐枝子(矢田亜希子)が、財前の笑みに噛み付く前ふりもよかったけど、東の目の前で教授の椅子にどっかと腰を下ろし、教授選勝利後のシュミレーションを試みる財前の不敵さには身震いするしかない。(麻生結一)


第8回(11/27放送)
☆☆☆★
 本当は教授になりたくないと芝居がかった熱弁を振るう財前(唐沢寿明)に対して、大河内(品川徹)は一言も言葉をかけない。しかし、がん撲滅デーの講演を依頼した里見(江口洋介)にかける、

「回りくどい遠慮はいらん。辞退したまえ」

との言葉はむしろ財前への言葉に聞こえてくる。このあたりのドラマ的なうまさには、舌をかまざるを得ない。
 医師会長、岩田(曾我廼家文童)の教授選の票読みを聞くにつけ、頭を悩ませる又一(西田敏行)が再びの実弾攻撃をほのめかすけれん味たっぷりが変に楽しい。軍資金を懐から取り出す又一に(あれだけの札束をよくぞ胸元におさめられたものよ)、

「あんた、疲れるわ」by岩田

って、確かにね。財前陣営と菊川陣営で互いに過半数をもくろむ様があまりにもスリリング。

「おろかな強引さよりも賢い妥協」

だとほくそえむ東は、財前への同情票を阻止しようと、直前に苦渋の棄権という飛び道具を使うのだったが……。
 くれない会のゴルフ大会に、ゴルフ経験者として乗っかる杏子(若村麻由美)がここでもつわものぶりを発揮。逆に、あからさまに村八分状態にあう東の妻・政子(高畑淳子)がいっそうに哀れで。くれない会の会長である鵜飼の妻(野川由美子)のグループに、財前、菊川のもう一極、葛西陣営の野坂の妻が含まれているあたりも、ちゃっかりしているというか。
 市民公開講座の講演後、里見の元を訪れた佐々木よし江(かたせ梨乃)は、夫の庸平(田山涼成)をつれて診察にやって来る。ここに超重要人物が登場し、ますます『白い巨塔』の面白さは深まっていく。(麻生結一)


第7回(11/20放送)
☆☆☆
 大河内(品川徹)の強権発動により、第1外科の教授選は全国公募することになった。早速菊川(沢村一樹)を自宅に招く東(石坂浩二)だったが、そこに東が執刀する手術の助手を務めたいと申し入れるために財前(唐沢寿明)が現れる。
 手術後、ケイ子(黒木瞳)の店で久々に飲み交わす東と財前の決定的な決裂が見物だ。価値のない年代物のワインとは東のこと、そしてラベルだけの粗悪品とは財前のことか。
 ようやく真価を発揮したのが杏子(若村麻由美)。ケイ子との直接対決に、医学部が業の深い人間の集まりだと語るのを聞くにつけ、またまた病院に通うのが怖くなってくる。手術に限るならば、人間性をどがえししてでも腕の確かな財前にお願いしたいところだけれど。(麻生結一)


第6回(11/13放送)
☆☆☆
 教授の座を狙う財前(唐沢寿明)に新たなる壁が。財前とは水と油の病理学教授、大河内(品川徹)は教授選考委員に立候補するや、最高得票を獲得して委員長に就任してしまう。

「一切の私情を廃し、大いなる責任を持って公平無比の厳正なる選挙を行いたい」

と鵜飼(伊武雅刀)と東(石坂浩二)を“君”呼びにして釘を刺す様を見て、この硬骨漢を1978年版ではこの役をどなたが演じてらっしゃったかと必死に思いかえしてみると、そうでした。加藤嘉さんですよ。あれはすごかった。言われてみれば、品川徹は加藤嘉にかなり似てるのでは。
 似ているといえば、里見の妻・三知代役の水野真紀と1978年版の上村香子もよく似ている。当時、上村香子がとても素敵だった記憶があるが、よく似ている水野真紀がまだ素敵とまでは思えないのはなぜだろう?
 鵜飼と東が、時を同じくて教授の地位と権力を振りかざす様がいかにもいやらしく、『白い巨塔』を見ているのだという充実感を感じさせる。財前はわざわざ里見(江口洋介)を自宅に訪ね、一度は断った末期がん患者、林田加奈子(木村多江)の手術を引き受ける代わりに大河内教授に取り次いでほしいと頼み込むわけありの遅まきが、自主退院を強要される林田の悲しみをいっそう際立たせている。死を前にして「いいやつでいたい」と吐露する林田がいたたまれない。(麻生結一)


第5回(11/6放送)
☆☆☆
 東(石坂浩二)の部屋で、財前(唐沢寿明)がばったり菊川(沢村一樹)と鉢合わせをするところからはじまる前週の補足のような回。里見(江口洋介)からガンの告知を受けた林田(木村多江)が、身よりも友人もいないことを激白する場面は悲痛。新キャラクター、病理学の大河内教授(品川徹)が強烈なインパクトを残す。
 見進めながらに気になっているのが、財前が悪の化身で、里見(江口洋介)が善の化身であるという構図が随所に揺らいでしまう瞬間だ。田宮二郎の財前はもっと野心に満ち満ちていたような気がするし、山本學の里見はもっと一点の曇りもなく善良だった気がするのだが、それは記憶レヴェルのイメージなのだろうか。それとも、時代が両者の立ち居地をずらしてしまっているのだろうか。それとも脚本がそのせめぎ合いでまだ迷っているのだろうか。いずれかであることを断言できるほどに自信はないが、だからといってこのことがドラマの面白みを損なわせているわけでは決してない。
 一方、ビックリするほどに迷いがないのは、実弾攻撃に拍車をかける又一(西田敏行)その人。悪徳商人にも似たその押しの強さもすごいが、まったく正調なイントネーションなど気にしてない西田さんの関西弁も、いっさいの迷いがないところがある意味すごい。(麻生結一)


第4回(10/30放送)
☆☆☆★
 あざとさと、しぶとさと、あつかましさ。これぞこの作品という3大要素が出揃った回が盛り上がらないわけがない。教授婦人会、くれない会会長選挙のデキレースからその面白さは全開に。鵜飼の再任が規定路線に対して、東の妻・政子(高畑淳子)が補佐役をはずされてしまういやらしさが楽しげに決まる。
 財前(唐沢寿明)が悪運の強い男である兆候は、早くも顕著に。関西財界の大物である特診の五十嵐(大林丈史)の場合も、手術中の緊急事態にいったんは窮地に立たされるも、結局は危機的状況を回避。内心財前の失敗を心で願い、一命を取り留めて思わず舌打ちする東(石坂浩二)の苛立ちがまた、鮮やかに切り取られている。
 ラスト、時期教授選に東が擁立を企てる菊川(沢村一樹)と鉢合わせになる場面にはゾクゾクさせられた。ただ、菊川役に沢村一樹はさすがに若い気がしたが(実際の年齢と言うよりも、見た目の貫禄)。新薬の営業中に卒倒し、末期がんであることが判明する林田(木村多江)の薄幸ぶりはあまりにも皮肉だ。(麻生結一)


第3回(10/23放送)
☆☆☆
 改めて見直してみると、里見(江口洋介)が正義の人であるという人物配置が図式的過ぎるうらみもあるが、そんなきれい事をも飲み込んでしまうほどのえげつない裏取引に凄みがある。又一(西田敏行)が財前(唐沢寿明)の教授選の参謀を頼む地元医師会長、岩田役の曽我廼家文童が存在感抜群だ。教授会での財前の査問を画策する東(石坂浩二)もようやっとドラマに浮上してきた。
 今話では女サイドの壮絶なつばぜり合いも見もの。財前の妻・杏子(若村麻由美)が焼きたてのパン持参で、東教授宅へご機嫌うかがいするものの、東の妻・政子(高畑淳子)に文字通りの門前払い。それでも、まったくひるむことのない杏子が圧巻。
 それにしても、鵜飼医学部長役の伊武雅刀がうまい。(麻生結一)


第2回(10/16放送)
☆☆☆★
 ぐいぐいと引き込まれて、すっかりドラマのとりこになる。原作が色あせないということか、脚色が的を得ているのか、演出が見せ方上手なのか、はたまた出演者が見事にはまっているのか。今のところはそのすべてにおいて、このドラマを見ごたえあるものにしている。
 鵜飼(伊武雅刀)の誤診をとっさに鵜飼の手柄にすり替えようとする財前(唐沢寿明)。するとすかさず、鵜飼が東(石坂浩二)への報告を問いただす場面のたたみかけは絶品という他ない。
 「タンホイザー」序曲の効果は抜群も、「アメイジンググレイス」はちょっと違うような気も(正直言うと、いまだに1978年版の音楽が口をついて出てきてしまうのだが)。
 財前の甘さをフォローするべく実弾攻勢に出る又一役は、やはり関西の俳優さんに演じていただきたかった気もするが、あの役を演じられるだけの大物がどうしても思いつかない。西田敏行がうまいことに異論はないも、えげつない感じが足りない気がする。(麻生結一)


第1回(10/9放送)
☆☆☆
 1978年に放送された『白い巨塔』のリメイク。オリジナルがテレビドラマ史に残る金字塔なだけに、リメイクには懐疑的な思いもあったが、冒頭の手術シーンから釘付けに。少なくともこの秋クールの新ドラマ、第1週目に関してはこのドラマが一番見ごたえがあったし、唯一時間を忘れさせてくれた作品だった。
 奇跡的なほどに豪華だった前作のキャステクングとはまだ比べようもないが、今回も連ドラ2本分ぐらいのキャストはそろっており、それぞれがそれぞれにそれなりにぴたっときているのでは。せっかくなので主なキャストの比較をしてみましょう。

財前五郎(浪速大学第一外科助教授) 唐沢寿明←田宮二郎

里見脩二(浪速大学第一内科助教授) 江口洋介←山本學

花森ケイ子(クラブ『アラジン』のママ) 黒木瞳←太地喜和子

東佐枝子(東教授の娘) 矢田亜希子←島田陽子

里見三知代(脩二の妻) 水野真紀←上村香子

関口仁(原告側弁護士) 上川隆也←児玉清

菊川昇(心臓外科医) 沢村一樹←米倉斉加年

国平弁護士(被告側弁護士) 及川光博←小林昭二(河野弁護士)

佃友博(浪速大学第一外科医局長) 片岡孝太郎←河原崎長一郎

鵜飼良一(浪速大学第一内科教授・医学部長) 伊武雅刀←小沢栄太郎

財前杏子(五郎の妻) 若村麻由美←生田悦子

東恵美子(東教授の妻) 高畑淳子←東恵美子

亀山君子(浪速大学外科病棟ナース) 西田尚美←松本典子

佐々木よし江(死亡した患者の妻) かたせ梨乃←中村玉緒

柳原弘(浪速大学第一外科医局員) 伊藤英明←高橋長英

東貞蔵(浪速大学第一外科教授) 石坂浩二←中村伸郎

財前又一(財前マタニティクリニック院長、五郎の舅) 西田敏行←曽我廼家明蝶


 オリジナルのキャストはほかに、岡田英次、加藤嘉、小松方正、戸浦六宏、清水章吾、堀内正美、山田吾一、谷幹一、北林谷栄、金子信雄、渡辺文雄、佐分利信と数え切れないほどのキラ星ぞろぞろ(っていうか、渋すぎるよ)。いまさらながらにキャスティングのすさまじさにはただただたじろぐのみ。そしてその誰もが究極の演技を見せてくれた。とりわけ、田宮二郎と中村伸郎の攻防は忘れられない。当たり前かもしれませんが、お亡くなりになった方も多数いらっしゃいますね。合掌。
 ただ、リメイクのキャストも並べてみるとなるほどなと思わせる。ってことは。数年後の『アタック25』の司会は、上川隆也になるんだろうか?
 ならではのアクの強さ、複雑な人間模様がいかように展開されるのか、次回以降にも期待したい。(麻生結一)




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