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真実一路 (フジテレビ系月〜金曜13:30〜14:00)
制作/東海テレビ放送、泉放送制作
企画/鶴啓二郎
プロデューサー/高村幹、平野一夫、福田誠、小松貴生
原作/山本有三『真実一路』
脚本/小森名津、田部俊行
演出/佐藤健光、小池唯一、金子与志一
音楽/福島祐子
主題歌/『星影の小径』根津歩
出演/林田(守川)むつ子…高岡早紀、丸山圭吾…加勢大周、守川義平…大浦龍宇一、守川しず子…須藤温子、隅田恭輔…涼平、松崎(井上)千代…中村久美、トキ…片岡富枝、林田孝一郎…八木橋修、林田宗次郎…鈴木浩介、林田宗次郎(少年期)…落合扶樹、守川しず子(少女期)…原田舞美、守川義夫…岡田慶太・立石航大、松崎…佐藤二朗、林田敏子…前田真里、ミモザ…のママ…阪上和子、中本…野口優樹、ユキ…中丸シオン、絵理…小林美佳、木村正人…加藤厚生、熊谷…渡辺哲、大越護…木村剛、丸山芳乃…八木昌子、ナレーション…沢田敏子、久保田…岡部務、医者…田口主将、飲み屋主人…加藤弘樹、支店長小倉…沼崎悠、将校…金森規郎、男…成田浬、渡辺…かなやす慶行、林田省造…横内正
ほか

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第13週(12/22〜12/26放送)
☆☆
 男に自殺され、後を追って自らも自殺を試みた女が、かつて捨てた娘に助けられ、別れた夫の仏壇の前で横になっている。何と激しい物語か。なのにドラマ自体は妙に冷静で。全編を通してのこの作品への感想がこれにつきる。

「丸山圭吾(加勢大周)は私の愛そのもの、守川義平(大浦龍宇一)は私を生かしてくれた。隅田恭輔(涼平)は一緒に夢を見ていこうとしていた相棒だったのに、みんな私の前から消えていなくなったわ。恋にだけ生きる女は悪い女だと思う?」byむつ子(高岡早紀)

台詞の毒がドラマの毒になりきれなかった残念。結局、むつ子は守川家に戻ってめでたしめでたしって、ハッピーエンドかい。ここまでくると、むしろ変なドラマの部類に入る。(麻生結一)


第12週(12/15〜12/19放送)
☆☆
 隅田(涼平)をめぐって愛憎劇を繰り広げていたしず子(須藤温子)とむつ子(高岡早紀)が何と雪解けムードに。しず子自身が過労で倒れたり、義夫(岡田慶太)が病気になったり大変なことが重なったとはいえ、まさかいきなりに。まぁ、『真実一路』の遥か先の路を行き始めたわけだから、もはや何でもありってことなんだろうけど。(麻生結一)


第11週(12/8〜12/12放送)
☆☆
 とうとう義平(大浦龍宇一)までも死んでしまった。千代(中村久美)がしず子(須藤温子)に語るこれまでのいきさつをあらためて思うにつけ、物語が『真実一路』から遥か遠くへ来てしまったとこをかみ締める。

「お前たち三人はいったいどうなってるんだ!」by隅田(涼平)

永遠にむつ子の愛を独り占めできないことを嘆く隅田の一言こそが、このドラマの全容を言い当てているようにも思えた。むつ子(高岡早紀)が圭吾(加勢大周)の遺骨が入った守り袋を捨てる海辺の場面が印象的。(麻生結一)


第10週(12/1〜12/5放送)
☆☆
 借金取りに追われる身に、

「このままじゃ簀巻きにされて、海に捨てられちゃうわ」byむつ子(高岡早紀)

と相変わらず台詞は物騒なれど、いまいち盛り上がりに欠けるもどかしさ。主演の高岡早紀もまた、抑制を効かせすぎ、余裕綽々に見え過ぎるように思えたが、薔薇の棘を握り締め、手から血が滴り落とすあたりには本領の片鱗を見せていたかな。
 隅田(涼平)が自分の研究への融資を取り付けるために、しず子(須藤温子)に、そして義夫(岡田慶太)に近づき利用しようとするくだりなども非常に丁寧に描かれているのだが、丁寧すぎてテンポが出ない。
 ただ、むつ子(高岡早紀)としず子(須藤温子)が義平(大浦龍宇一)と隅田をはさんで対峙するあたりから、ドラマに凄みが出てきた。もはや『真実一路』でもなんでもなくなってしまった感もあるが、要は盛り上がってくれればそれでいいわけで。(麻生結一)


第9週(11/25〜11/28放送)
☆☆
 しず子(須藤温子)はむつ子(高岡早紀)からついに本当の父親のことを打ち明けられることに。研究費用の捻出と借金の取立てから逃れるため、隅田(涼平)に義平(大浦龍宇一)の銀行から融資を受けられるようとりなしてほしいと懇願されたむつ子は、しず子(須藤温子)を介して義平を翻意させようと画策する。しかし、しず子は自分の研究について熱っぽく語る隅田の話を聞くうちに、次第に隅田に同情を寄せるようになり……。
 それぞれの嫉妬が絡み合う展開に、ようやくこのドラマの本領が発揮されつつあるように思える。ただ、北原白秋の「真実一路」の一節からはいっそう遠ざかりつつあるか。もちろん、このドラマ自体が原作とはまったく別の経緯をたどっているわけだから、それをどうこういっても仕方がないんだけど。死んだと聞かされた母親が生きているのではと疑い始めた義夫(岡田慶太)に、義平としず子で母親が死んだ病気が肺病と心臓病と食い違うあたりのハラハラなどは、もう少し引き出せたところか。(麻生結一)


第8週(11/17〜11/21放送)
☆☆
 一度死んで再び生き返った圭吾(加勢大周)が、今度こそ本当に帰らぬ人となってしまい、いよいよドラマは小説『真実一路』に追いついてきた。あと1ヵ月でドラマも終わってしまうわけだし、そろそろ急がないといけないといったところか。
 22歳になったしず子(須藤温子)は見合い相手、大越(木村剛)をすっかり気に入るも、先方からは破談の申し入れが。しず子は最初、家を出て行った母・むつ子(高岡早紀)の存在が破談の理由だと思い込むのだが、大越の口から義平(大浦龍宇一)がしず子の実の父ではなかったせいだという本当の理由を知らされる。
 物語は波乱万丈に進むも、ドラマがそれほど波乱万丈に見えないのがこのドラマの不思議なところ。丁寧な作り自体には好感が持てるんだけど。(麻生結一)


第7週(11/10〜11/14放送)
☆☆
 むつ子(高岡早紀)と圭吾(加勢大周)に離婚届を突きつけられた義平(大浦龍宇一)は、しず子(原田舞美)の出生の秘密を絶対に口外しないことをむつ子に承知させて、判を押すことに同意する。むつ子は父・省造(横内正)に絶縁を言い渡されるも、結局その父の最期を一人で看取ることに……。
 ドラマは劇的になだれ込んでしかるべきも、全般的に抑制が効きすぎててか、いまここでという肝心なときに感情の高ぶりに欠けるのが非常に残念。むつ子のジレンマも義平の離婚を拒絶する思いも、サラッとしすぎていて拍子抜けしてしまう。当初はやりすぎるドラマを懸念していたのだが、これじゃやらな過ぎじゃないの。(麻生結一)


第6週(11/3〜11/7放送)
☆☆★
 むつ子(高岡早紀)は、13年前の圭吾(加勢大周)が出征した日の義平(大浦龍宇一)の嘘をとうとう知ってしまう。ここから物語は急展開するのかと思いきや、依然としてじっくりしているあたりは、いかにもこのドラマらしいところ。むつ子自身はもう少し燃焼度が高くてもいい気がするけど、あのおっとりさ加減がまたお嬢様体質ということで。(麻生結一)


第5週(10/27〜10/31放送)
☆☆★
 あれから12年たったということは、宿命の子、しず子(原田舞美)も12歳になったということ。戦死したはずの圭吾(加勢大周)が突如、現われるあたりは規定路線だが、その圭吾がなぜ連絡をくれなかったのか、というむつ子(高岡早紀)にとっての唯一の疑問こそが、義平(大浦龍宇一)にとってあまりにも致命的な事実であるという構図は非常に強固。むつ子がしず子の爪を切りながら、夜爪は切ると親の死に目に会えないという話をする場面は、のちのちの展開を暗示する。
 しず子に会いたいという圭吾からの懇願の手紙、しず子に見られたらどうするつもり?しず子が同じ家の中にいるというのに、義平とむつ子はそんな大声で怒鳴りあって大丈夫?随所に見え隠れしたご都合主義もご愛嬌ということで。何せ圭吾は、部屋で拳銃を磨いてたりするわけだし。(麻生結一)


第4週(10/20〜10/24放送)
☆☆★
 むつ子(高岡早紀)の妊娠が発覚するやいなや、圭吾(加勢大周)の戦死が知らされるこれでもかというほどの悲劇のあり様。ここからの怒涛の展開がすごい。林田(横内正)が無理やり病院で子供をおろさせようとしたことで、むつ子は子供を守るために家出。すると、かつて1人の男を愛し、憎みあいさえした千代(中村久美)に再会。雑炊屋を営む千代のたくましく生きる姿に心を打たれて、ここにいきなりの大同団結。義平(大浦龍宇一)からの求婚、即座の拒絶。そして結婚、女児出産、いったんの家出。そして過去との決別。
 1ヵ月程度だったら持ちこらえられそうなほどのエピソードを1週間で使い切ってしまうあたりの贅沢ぶりがたまらない。(麻生結一)


第3週(10/13〜10/17放送)
☆☆★
 一つの嘘が大いなる罰となって、むつ子(高岡早紀)、圭吾(加勢大周)、そして義平(大浦龍宇一)を三者三様を傷つける展開がいかにも文学的。むつ子の思いを圭吾に伝えなかった義平の苦悶が悲痛だ。

「父親と兄の懇願と涙を振り切れなかった」by義平

とのもったいつけた言い回しがまたいい。その思いの深さが視聴者にのみ知らされているからこそ、召集令状が届いた圭吾とむつ子を一目でも会わせなければいけないとの思いで、むつ子を地下蔵から脱出させ(地下蔵に閉じ込められたむつ子の大爆発もすごい)、二人乗りの自転車で駅に急ぐ場面にはグッとくる。(麻生結一)


第2週(10/6〜10/10放送)
☆☆★
 展開が濃密になる前に、芝居が濃密極まりないことになってきております。まぁ、ピストル自殺に地下蔵監禁ときて、展開が濃密じゃないなんてことはもはや言えないわけだけど。むつ子(高岡早紀)を一身に思いながら、

「たとえ地獄に落ちたって、あの人を愛する気持ちに変わりはない」by圭吾(加勢大周)

と熱く語る圭吾をついついアシストしてしまう義平(大浦龍宇一)がせつない。そういえば、むつ子の見合い相手、木村を演じる加藤厚生と大浦龍宇一は、愛の劇場『太陽と雪のかけら』コンビですよね。(麻生結一)


第1週(9/29〜10/3放送)
☆☆★
 『真実一路』のタイトルなれど、その実態は『真実一路』の創作的前日談。つまりは何をやっても、どこまでいっても問題なしのお墨つきをいただいているというわけ。このあたりの変化のつけ方は、いかにもこの枠のテイストらしいところ。
 『真珠夫人』に続く文芸路線第2弾を強調されているが、こちらのほうがより地道なドラマになるのではと予想する。ただ、第1週目からいきなりにヒートアップする場面も。圭吾(加勢大周)と1年前からつきあっているむつ子(高岡早紀)と圭吾と2年前から同棲している千代(中村久美)が大激突。このあたりは、待ってましたといった感じ。包丁をちらつかせたりとなかなかの物騒さで、中村久美が鬼気迫る演技を見せる。(麻生結一)




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