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流転の王妃・最後の皇弟 (テレビ朝日系)
制作著作/tv asahi
チーフプロデューサー/五十嵐文郎
プロデューサー/中込卓也
制作統括/早河洋
原作/『「流転王妃」の昭和史』愛新覚羅浩、『薄傑自伝』愛新覚羅薄傑
脚本/龍居由佳里
監督/藤田明二
音楽/葉加瀬太郎
ナレーション/仙道敦子
出演/愛新覚羅溥傑…竹野内豊、愛新覚羅(嵯峨)浩…常磐貴子、桜井哲士…反町隆史、川島芳子…江角マキコ、ハル…木村佳乃、嵯峨尚子…野際陽子、遠山久信…仲村トオル、李香蘭…天海祐希、他他拉貴人…伊東美咲、美容師 お菊…久本雅美、貞明皇后(皇太后)…草笛光子、甘粕正彦…竹中直人、工藤正二…段田安則、嵯峨幹子…岩崎ひろみ、三格格…椋木美羽、愛新覚羅?生…市川由衣、愛新覚羅慧生…早瀬英里奈、李順豊…浜田学、陳藩…西島千博、本庄繁陸軍大将…上田耕一、兵士…稲垣義明、竹田宮妃殿下…かとうかずこ、竹田宮殿下…中丸新将、関東軍参謀…渡辺哲、嵯峨実勝…北村総一朗、瓜爾佳…黄愛玲、食堂の女将…李丹、食堂の主人…翁華栄、婉容…劉丹、愛新覚羅溥儀…王伯昭
ほか



総合評価
☆☆☆
 激動の時代に、国境を越えて貫かれた壮大にしてパーソナルな、一組の夫婦の愛に関する物語。“激動の時代に”、“国境を越えて”、“愛を貫いて”、“壮大なスケールで”、と大河ドラマに必要な要素をことごとく兼ね備えた期待の話題作で、この尺の長さで高視聴率をマークしたことも特筆に価する。
 サブタイトルを含めたタイトルが「流転の王妃・最後の皇弟 戦乱の愛 真実の物語 〜ラスト・エンペラーの時代を生きた夫と妻の波乱の生涯〜」とはまた随分と長ったらしいものをつけたものだと思っていたがだが、それは制作サイドの思い入れそのものかもしれない。その長さに見合うだけの見ごたえある作品に仕上がっていたことも事実。とりわけ第1話が素晴らしかった。逆に、第2話の作り方には大いに疑問が残る。


第一夜(11/29放送)
☆☆☆
 1936年、嵯峨侯爵家の長女・浩(常盤貴子)は満州国の皇弟・溥傑(竹野内豊)と見合いをする。それが関東軍の意向であったために、最初乗り気ではなかった浩も、溥傑の誠実な人柄に触れるなり心引かれ、結婚式を挙げることに。日本と満州国、ふたつの国の結婚という現実を背負わされたその新しい人生には、想像を絶する多難が待ち受けていた。
 溥傑と浩は、日本で新婚生活をスタートさせる。浩は近くの海岸で女工のハル(木村佳乃)と親しくなり、浩の家をたびたび訪れていた縁で、中国人留学生・李(浜田学)と恋に落ちる。ところが、ハルと李は反日の罪をきせられ拘束されてしまう。
 日中戦争が本格化してくる中、溥傑と浩は満州国に渡った。浩はそこで、傍若無人に振る舞う関東軍を目のあたりにする。肝心の皇帝・溥儀は、ひどく日本人を嫌っており、その冷たい態度は例外なく浩に対しても変わらなかった。心のよりどころは溥傑の存在だけ。そんな中、浩は妊娠し、長女・慧生を出産する。溥儀からもようやく受け入れられた浩だったが、関東軍の中国人に対する横暴はいっそうひどくなるのだった。
 キャストの出し方が凝りすぎてて、役名と俳優がクロスして以上に見にくかった冒頭。オープニングの演習のシーンで溥傑とその親友・桜井(反町隆史)のツー・ショットが映るなり、気分は一瞬『ビーチボーイズ』、もしくは『利家とまつ』に。もちろん、真面目で誠実を絵に描いたような溥傑役に竹野内豊がうってつけであることに気がつくのに、それほど時間はかからなかったのだが。初登場シーンの硬骨感ぶりは、第一夜のラスト、抗日派の公開処刑をとめられなかった自身の無力を嘆く場面に連なっていく。ここでの竹野内豊の熱演が胸を打つ。素晴らしい締めくくりに、否応なく第2夜への期待感は高まっていくのだが……。


第二夜(11/30放送)
☆☆★
 溥傑(竹野内豊)の陸軍大学校留学のために、日本で生活していた浩(常盤貴子)と娘たちは、実家の嵯峨家に身を寄せていたのだが、溥傑の卒業を機に学習院初等科に進学していた長女の慧生を残し、次女・?生をつれて満州に帰国することになる。表向きは穏やかな新京の街も、関東軍の横暴はエスカレートするばかり。そんな時、ソ連軍が参戦し、事態は一変。程なくして、日本は敗戦する。失意の溥儀は皇帝を退位し、満州国は解体となった。溥傑は溥儀と空路で日本へ飛び、浩たちは陸路朝鮮半島から後を追うことになっていたのだが、その計画はソ連軍にすでに知られてしまっていて、溥儀と溥傑は空港で拘束されてしまう。浩たちは何とか宮廷を脱出するも、ここから浩のあてどない流転生活がはじまるのだった。
 肝心の流転の成り行きは残り時間では描ききれないほどのボリュームと考えてか、地図で“→”を出して、足跡をしめすのみの省略三昧。ここまでのドラマが格調高く立派なものだっただけに、細かいいきさつを一切放棄しはじめられてしまって、見ているほうとしてはただただ呆気にとられるのみ。この流転こそが真の見せ場になったはずなのでは。いっそ放送が無期延期となった『西部警察』の穴埋めには、このドラマを今流行の(?!)2クールで20話でやればよかったのではと思ったりして。娘・慧生(早瀬英里奈)の心中事件の真相を描くだけも、1話分はあったでしょう。流転の末に1961年、再会を果たした溥傑と浩。第一夜で紫禁城を歩く観光ムービー風のシーンがあったのは、思い出の地として紫禁城を出すためだったのね。
 溥傑と浩のいずれかがメインをはるシーンばかりなので、豪華な脇を固める配役陣はいずれも特別出演的な印象だったが、中では冷徹な工藤を演じた段田安則とたまらなくカッコよかったハル役の木村佳乃が印象的。音楽演出が過剰で、いい場面に水を差したことしばしば。とりわけ、第二夜にその印象が強い。泣かせるメインテーマを使いたくなる気持ちはわかるんだけど。第一夜の出来ばえが素晴らしかっただけに、いっそう残念に思えた。ただ、それでも語り口の折り目正しさに好感を持てたし、そのスケール感がそのあたりのドラマとは比較にならないほどのものであったことは間違いない。(麻生結一)




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