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ピュア・ラブIII (TBS系月〜金曜13:30〜14:00)
製作著作/毎日放送
制作協力/MBS企画
制作/山田尚
プロデューサー/芝野昌之、池田仁美
作/宮内婦貴子
演出/山本実、竹園元、皆元洋之助
音楽/栗山和樹
主題歌/『またあした』Every Little Thing
出演/麻生木里子…小田茜、遠宮陽春…猪野学、佐竹享…林泰文、鈴口典美…今村雅美、筒井みつる…揚原京子、吉住忍…尾崎麿基、成田牧子…衣通真由美、戸ノ山さつき…楠見薫、柳田ちづる…みやなおこ、高木伸隆…辻内将人、吉住裕太…窪田翔太、柳田真…福田賢二、元木ルナ…樋井明日香、新村久江…早水リサ、村松ひろみ…田中菜月、森本宗達…川津祐介、進藤千加子…吉野佳子、山しょう…玉生司朗、石本興司、中野螢、中井佳代、天王寺谷由美、尾後あすか、谷広子、押本奈緒子、八田麻住、宮田圭子、丸井玲香、長門義明、花岡未央…岡本奈月、森田雄貴、青沼佑樹、山本倫大、望月智成、豊住恵里奈、宇都宮可奈、土肥徹平、森信行、金崎由名来、高屋未来、麻生菊乃…高田敏江、白井昭彦…石倉三郎、麻生周作…篠田三郎
ほか

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第8週(11/17〜11/21放送)
☆☆☆★
 陽春(猪野学)の独壇場となる第36回にはただひたすらに驚かされ、そして泣かされた。息子が節目を迎えたときに渡してほしいと宗達(川津祐介)に託されていた陽春の母・千加子(声:吉野佳子)からの手紙。これを一人、陽春が読む場面には、これまでの全3シリーズを通しての総決算的な意味合いがあった。まさかパート2の第1週、僧堂で修行していた陽春を木里子(小田茜)が訪ねたまさにあの同じ瞬間を、陽春の母も同時体験していたとは。これはパート3を見越しての長期構想だったのか、それともここで偶然にもピタッとくっついたのか、どちらかは定かではないが、どちらにしてもすごいとしか言いようがない。そのまったく同じエピソードが、陽春が手紙を読む場面と木里子が読む場面と2度リピートされるも、その2度ともに目頭が熱くなってしまった。「この世の命を脱ぎ捨てて、この身が透明になったとき、見えてくるのかもしれません」という手紙の締めくくりには、姿勢を正したくなる思いに。
 その手紙の文面に、陽春の子供を生んでくれる人だとのくだりを読むにいたり、抗がん剤の副作用で子供が産めなくなってしまったことを思って、遠宮の家を途絶してしまうとの深い悲しみにくれる木里子があまりにもかわいそうで。真逆に、忍の誘導質問に“語るに落ちる”木里子は単純すぎるというか。そういう色ボケぶりがまた微笑ましく、いっそう祝福したい気分になるんだけど。
 呼吸がちゃんとできないと、死が見えてしまうと言うちづる(みやなおこ)もただただ悲痛。そんな弱気のちづるに息子である裕太(窪田翔太)が涙ながらに活を入れる気持ちもよくわかる。
 で、問題の“悪女”みつる(揚原京子)は、スペインにカミーノ・サンチャゴサンチャゴ巡礼の旅に出かけ、人生の意味を探ることに。悪女は概して最終回には劇的に改心するものだけど、こりゃかつて聞いたことのないほどの改心だこと。その跳躍する思考に、イルカのブローチは燃えないゴミだろう、などというツッコミも封印せざるをえなくなる。
 そして結婚当日を迎える最終回。

「おばあちゃん。もう決して言葉の語尾に“だよ”とか”よ”をつけて話したりしないから。だから安心して」

とのパパとおばあちゃんへの挨拶には、一視聴者としても大いに安心になる。出来ることならば、もう少し早く改心してほしかった気もするけどね。
 この赤い糸にまつわる密かなる大長編がとうとう終わってしまうかと思うと、ちょっと悲しいなぁ(第1シリーズを見始めたときには、“だよ”とか”よ”の連打にこの先どうなることやらと思ったものだけれど)。すっかり各キャラクターにも馴染んだこともあり、いくつかの未解決のお話にはとりわけ後ろ髪引かれる思い。いっそのこと、『いのちの現場から』シリーズの後釜として更なる続編をやってほしい気がする。(麻生結一)


第7週(11/10〜11/14放送)
☆☆☆
 木里子(小田茜)はみつる(楊原京子)が陽春(猪野学)の衣を鮮やかにたたむのを見て、深い敗北感を感じる!衣ひとつたたむのに、ここまで真面目に向き合ったヒロインをかつて知らない。そんなディテールのダイナミズムこそ、このドラマの真骨頂でしょう。
 意外だったのは、卒業式でお涙頂戴というエピソードがなかったこと。てっきり、6年2組のテーマソング、「手のひらのを太陽に」をみんなで卒業式に歌う場面があると思ったのに。前日のクラスだけのリハーサルで歌う方がさりげないし、断然よかったと思いつつ、単に卒業式をやるだけの予算がなかっただけかとも思う(あまりにもピュアじゃない憶測)。
 裕太(窪田翔太)のラブラブ発言に端を発し、木里子宅へ乗り込んでいくみつるの過剰反応があまりにもキュート(しかも2度も)。そんな礼儀作法の女王(?!)、みつるの陽春をめぐる詰問に、今にも泣きそうな木里子はさらにキュート(っていうか、全編泣き出しそうモードに入っていたような)。旅館を解雇されたことをちづる(みやなおこ)に言い出せず、真(福田賢二)が苦々しく悩むあたりもいかにもこのドラマらしい感じだ。真は最後の最後で逃げ出してしまうのかと思っていたけれども、本当にいい人だったんですね。(麻生結一)


第6週(11/3〜11/7放送)
☆☆☆
 陽春(猪野学)が催した子供座禅会の話から、“ピュア・ラブ”ワールドは早々に全開モードに。子供たちを引率してきた立場の木里子(小田茜)自らも座禅を体験ておいて、「陽春の素敵さの根源に触れたような気がした」だなんて、のろけの表現もいよいよ凝ってきたというか、単なるバカップルの片割れというべきか。その極ビュアぶりが、何とも微笑ましい。
 借金のせいで夜逃げ同然でいなくなってしまったルナ(樋井明日香)を心配して、

「そんなの希望的観測だよ」by木里子

との憤りも、通常の親子の会話とは思えないも、確かにそれは端的な指摘だとは納得。おそらくルナがいたら賛成しただろう、6年2組のテーマソング、「手のひらのを太陽に」をみんなで卒業式に歌うのが、最終回になるのかな。
 今週最大の衝撃は、戸ノ山(楠見薫)が髪形を変えてイメチェンに成功したこと?! ちなみに、元の髪の原型は、戸ノ山が大好きなウランちゃんだったらしいです。いわれてみれば確かに。カリカリきている婦長(衣通真由美)v.s.戸ノ山の対決が笑える。手術するちづる(みやなおこ)を思う真(福田賢二)の思いは、もうひとつのピュアラブかな。(麻生結一)


第5週(10/27〜10/31放送)
☆☆☆
 ルナ(樋井明日香)が第2シリーズの最終週に、移動教室(=修学旅行のこと)のお土産として木里子(小田茜)と陽春(猪野学)に買ってきた恋愛成就のお守りがここに再登場。このペアのお守りを陽春が木里子に見せた行為に、ラブコールなぞという言葉をあててしまうアナクロぶりから、いかにもこのドラマらしいうれしはずかしモードが全開に。これまでのパート1、2の中で出てきたエピソードを、ここぞというところに出してくるあたりはさすがにうまいが、今回はとりわけ夜逃げ同然で引っ越してしまったルナとの絡みだけに、いっそうつらく苦々しいところ。
 この第5週の最大の見ものは、何といっても龍雲寺でいとなまれた陽春の副住職入寺式。古式ゆかしく進められる式のおごそかな雰囲気が、画面からも伝わってくる。陽春が入念に僧衣をまとい、身支度する場面を入念に見せる一連がいい。木里子は陽春の神々しさ見とれて、

「素敵です!」

と感激の感想をもらす。まったく同感です!
 裏方のお手伝いにスーツを着てきた木里子に対して、みつる(揚原京子)は作務衣かパンツで来るべきだったとすかさずいやみを言う。チクチクとした言い方に、意地悪キャラの本領が発揮されるも、お客様にお茶を出す係はスーツの木里子が最適と、今度は忍(尾崎麿基)がこれ以上ないほどのナイスフォローを決めてくれる。
このあたりの応酬もニコニコとハラハラさせてくれて見ごたえたっぷり。
 次なるトピックは、陽春が副住職に就任後初めてのプロジェクトとなる子供のための座禅会。これを木里子に手伝ってもらうとは、話の運びが絶妙。ただ、

「座禅をする子供が増えれば、日本は変わるよ」by陽春

って、それはちょっとオーバーでは。肺リンパ管平滑筋腫症と診断されたちづる(みやなおこ)が入院中、夫である真(福田賢二)から毎日届く手紙を心待ちにし、手紙を呼んで涙するサブストーリーも、それ自体はつらい話なんだけど、何だか温かい気持ちにさせてくれる。(麻生結一)


第4週(10/20〜10/24放送)
☆☆☆
 龍雲寺の年始の挨拶にイルカのブローチをつけてくるみつる(楊原京子)とはずしてきた木里子(小田茜)との心理戦から、ドラマはいきなりにヒートアップ。

「やっぱり陽春さんからもらっていたんだ」by木里子

「つけてこないわ。案外気が弱いんだ」byみつる

あまりのばつの悪さに今にも泣きそうな感じの木里子と、すでに勝利したかのようにほくそえむみつるとの対照的な面持ちに思わず興奮する。ただこのブローチをめぐる女の闘いも、週末回で老師(川津祐介)の面前において陽春からブローチの出どころ(?!)について静かに問い詰められ、みつるがたまらず号泣してしまうことで解決しちゃった?! できればもっと熱く闘ってほしいんだけど。このドラマには似つかわしくないかもしれないが、それこそが面白かっただけに。楊原京子のあまりにもストレートないじわる演技は出色。
 寺庭婦人(=住職の妻)についての解説がふんだんに登場するようになり、いよいよ木里子(小田茜)と陽春(猪野学)の結婚話が本格化する?! 陽春との結婚が砂漠に見え隠れする蜃気楼、とはなかなかうまいこという。(麻生結一)


第3週(10/13〜10/17放送)
☆☆☆
 好敵手『真実一路』が女1人男2人の攻防ならば、こちらは女2人男1人をめぐる物語。ドラマの性質は正反対かと予想していたが、意外にもこの2本、かなり似ている。テイストはまったく異なるだけに、見比べると面白いのでは。
 陽春(猪野学)、二股をかける?! ここで、周作(篠田三郎)にナレーションにしばし注目。陽春目当てに龍雲寺をしばしば訪れるみつる(楊原京子)にやんわりと断わりのニュアンスをこめる陽春の台詞に対して、

「陽春の遠まわしに言った拒絶の言葉は、みつるの心には届かなかった」by周作NR

ところが、老師(川津祐介)のためのヒーターのカタログを集めてきてくれたみつるに、

「このとき陽春は、みつるのひたむきなこころを垣間見た気がして、はじめてみつるをいじらしと思った」by周作NR

と舌の根も乾かぬうちに心変わり。驚愕は、このNRから2分30秒後のNR。

「木里子(小田茜)は何も知らずに笑っていたが……。」by周作NR

こんな離れていて、この2つのNRがつながっているなんて、ホント意地悪というか、やってくれるというか。
 そしてドラマは、陽春が宿坊で買ってきてくれたイルカのブローチ問題へ。みつるが陽春から同じものをもらったと言ったことをかたつむりで話す木里子に、犬や猫のブローチじゃないんだから、とフォローにもならないようなフォローを入れる絶好調の戸ノ山(楠見薫)。ボストンのお土産だった昔懐かしいネックレス事件を回想されると、このエピソード自体もほとんどリピートみたいなものだということに気がつくのだけれど、何せそれが禅寺での攻防だけに余計刺激的に感じられる。
 自分のことは棚に上げ、佐竹(林泰文)と典美(今村雅美)のデートの模様には、

「のりみって、あれで気の小さいところがあるから」by木里子

とは失礼なことを。陽春の副住職就任のお祝いはまたまた冠。

「木里子さんにいただいた冠といつも一緒です」by陽春

こんな水飴のような発言も、禅寺で聞けば自己鍛錬の言葉にさえ聞こえる?! でもみつるに冠は腐るほどもらう物とけなされてガックリ。老師の痒いところに手が届くカール・ブッセの引用も耳に届かず、木里子はひとり美しい涙を流す。ますますみつるの存在が、ドラマを大いに盛り上げる。
 やはりちづる(みやなおこ)は肺気腫だったということ。あのせきはただごとじゃなかったですからね。(麻生結一)


第2週(10/6〜10/10放送)
☆☆★
 パート1のころから指摘し続けてきた古色蒼然とした台詞回しが、誰にとっても古色蒼然というわけではなかったことを、初登場のみつる(楊原京子)がものの見事に証明する。あまりにもハードルが高いと思われていた宮内婦貴子先生による困難極まりない台詞回しを、みつるを演じる楊原京子はいとも簡単に言いまわしてるじゃないの。ここまで若手女優陣(って、2人ぐらいしかいないんだけど)はあの台詞の前に総崩れ状態だったが、総崩れの原因は台詞にではなく、若手女優陣そのものにもあったってこと?! 初めて会った木里子(小田茜)が陽春(猪野学)の知り合いとわかるなり、早速ガンをつけるあたりのみつるの直情キャラぶりに、これからの展開が楽しみになる。陽春に懸想(=思いをよせる)するみつる。木里子もまた、自分のやきもち焼きぶりにびっくり。この2人はなかなかの好敵手になりそう。
 このドラマのコメディロールは、もはや戸ノ山(楠見薫)の独壇場。周作(篠田三郎)との恋の妄想の末に、慌てて思わず雑巾で顔を拭いてしまう戸ノ山が笑えるやら汚いやら。そんな戸ノ山の恋わずらいを脳腫瘍と勘違いして、「家庭の医学」を真剣にめくる菊乃(高田敏江)もおかしい。もちろんそこに載ってるはずもなく。戸ノ山とのデートを木里子と菊乃に促される周作(篠田三郎)が、実は観覧車好きことも発覚。
 娘の麻友(高屋未来)を引き取りにきた忍(尾崎麿基)の妹、ちづる(みやなおこ)が激しく咳き込んでいたのが少し気になる。その妹が去った後に、裕太(窪田翔太)が妹とのツーショットの写真を見る場面には思わずしんみり。

 タイトルバックに、

「初めてお会いしたあのときから」by木里子

って半端な台詞が入ってるのって、何なんでしょうね。随所にこのドラマ、変わってるからなぁ。(麻生結一)


第1週(9/29〜10/3放送)
☆☆★
 あの極ピュアカップル物語がまさかの復活!木里子(小田茜)と陽春(猪野学)が織り成す忍ぶ恋的不思議ワールドはパート2で極まったと思っていたのだが。木里子が再々発するような悲しい展開も、ここまでくると考えずらいし。いっそパート3中で同棲、パート4で結婚、さらにはパート5で出産までいっちゃう?!
 そんな勘ぐりもなきにしもあらずと思わせるほどに、木里子(小田茜)と陽春のいちゃいちゃぶりはエスカレートするばかり。デートで互いを絶賛しあうカップルなんて、『ぼくの魔法使い』級のバカップルでしょ。小田茜はその『ぼくの魔法使い』での怪演も記憶に新しいだけに、意外に芸風が広いことをここに認識させられたりもして。

「女性に支払いをさせることはできません」by陽春

何たるアナクロ。男も男なら、女も女。木里子はいまだに友達の典美(今村雅美)から携帯借りて電話してるよ。『菊次郎とさき』でお隣さんの電話を使わせてもらう時代じゃあるまいし。そんな天然記念物の品評会ぶりが、微笑ましくも楽しい。
 よく考えると、国民的美少女コンテストの第4回グランプリが小田茜で、第5回グランプリが今村雅美なのか。このシリーズって、国民的美少女なドラマだったんですね。パート3まで気がつかなかった。(麻生結一)




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