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ライオン先生 (日本テレビ系月曜22:00〜22:54)
制作著作/よみうりテレビ
制作協力/THE WORKS
チーフプロデューサー/田中壽一
プロデューサー/堀口良則、霜田一寿、池田禎子
原作/重松清『ライオン先生』『タンタン』
脚本/武田百合子、小田切正明、江頭美智留、田中江里夏、宮崎涼
監督/小田切正明、白川士
音楽/溝口肇
テーマ曲/『Love,Peace&Soul』SOUL'd OUT
タイトル曲/『Lost Wing』Lyrico
出演/高村雄介…竹中直人、高村恵理…岡本綾、榊原隼人…今田耕司、石井光男…渡辺いっけい、早川将太…要潤、守屋千夏…小池栄子、眞野裕子、増子倭文江、長谷川朝晴、緋田康人、川津春、大島蓉子、冨家規政、佐竹久典…山下真司、中丸新将、長谷川朝晴、村上淳、石野真子、羽場裕一、美保純、大谷直子、大杉漣、二瓶鮫一、矢沢幸治、山口美也子、忌野清志郎、藤崎直美…原千晶、石橋蓮司、段田安則、高村京介…西村雅彦、【生徒役】相武紗季、池永亜美、石井智也、ウエンツ瑛士、小倉愛美、和希沙也、金沢美波、川野直輝、川村陽介、北村悠、佐藤佑介、塩澤英真、末高斗夢、杉浦匠、平愛梨、高藤疾土、富田麻帆、仲程仁美、萩原明子、浜上竜也、秀島亜里沙、平岡祐太、広澤草、藤谷祥子、松居遥、三浦涼介、水野快令、矢倉亮、山岡由実、山崎愛美、山根和馬、山本彩乃、吉田友一
ほか

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第10回(12/15放送)
☆☆★
 『僕の生きる道』『ヤンキー母校に帰る』と同様に、このドラマもクラスがまとまるために選んだのは合唱だった。ただ、他の合唱でまとめようとしたドラマと違うところは、かなりやけくそ気味だったこと。説教調の演説をはじめようとする遠藤沙織(仲程仁美)を制して、難しいことは抜きにしてと言ってみたり、合唱後のおごりや守屋(小池栄子)がくるからと男子生徒をつったりする中途半端さも、高村のこれまでの弱気ぶりからすれば、かなり吹っ切れた方?! 佐竹(山下真司)も昔はボールを持って引っ張っていってたって、『スクールウォーズ』だ〜っ。あの入院中の教師こそが校長(石橋蓮司)だったか。
 一致団結の成り行きはもう少しじっくり描いてほしかったが、コンサートが大成功をおさめ、ようやく報われた思いでうれし泣きする高村の元に落合奈々(萩原明子)が子供をおろしたことを報告にくるあたりの手厚さは、きれい事だけでこのエピソードを終わらせなかった。「うれしいような、寂しいような、悔しいような、悲しいようなそんな1日」、という高村の感想にはしみじみとなってしまった。
 学校にも自分自身にも限界を感じ、教壇を去る決意をする高村。教室を回って生徒たち一人一人と握手を交わす場面に、不人気で誰も見ていなかったこのドラマを見通した感慨も交じり合ってほろっとなる。ついに生徒たちの前でかつらを脱いだ高村が、海辺を一人歩くエピローグもいい(かつらを脱いだときに、誰一人驚いてなかったのが逆に驚きだったけど)。(麻生結一)


第9回(12/8放送)
☆☆☆
 生徒の落合奈々(萩原明子)が自殺を図り、意識不明の状態に。一命はとり止めるも、妊娠していることがわかる。

「こんなときに何も出来ない」

と自分の無力を嘆く高村(竹中直人)がいっそうに悲痛。誰かが誰かの命を支えていると奈々を励まし、連日病院に通う高村だったが、学校では高村と奈々が関係しているという悪い噂が広まる。何から何まで裏目裏目に出るあたりがいかにもこのドラマらしい。生徒からの質問に答えが見つからず、逆に生徒たちに高村は問う。

「なぜ学校に来るのか?」

その根源的過ぎる質問にもまた、このドラマらしい。『マンハッタンラブストーリー』に引き続き、ハゲた画家役で忌野清志郎が登場。(麻生結一)


第8回(12/1放送)
☆☆
 彩(相武紗季)とひとみ(山岡由実)がグラビアモデルにスカウトされるも、芸能プロダクションの矢作(宮本大誠)という男がとんだ偽者で、という話は使い古されたもので新味に欠ける。このドラマの面白さは高村(竹中直人)の教師としての苦悩に尽きるのだが、今話はそういった味つけは薄かった。
 恵理(岡本綾)の恋人に会うサブストーリの最終形、飲んだくれの結婚論はアドリブかね。教師の娘宣言する恵理(岡本綾)がいい。(麻生結一)


第7回(11/24放送)
☆☆☆
 教師という職業のほの暗い部分を徹底的に描こうとするそのスタンスには感服せざるを得ない。授業をタンタンとやるだけだから“タンタン”とあだ名をつけられている理科の教師、石井(渡辺いっけい)がいつものように早弁をしていた淳平(川村陽介)に対して授業中、突然切れる。興奮した石井は淳平を教室から追い出そうとするが、そんな豹変した石井の態度に大部分の生徒たちは授業をボイコットしてしまう。
 教師は生徒にとって通りすがりの大人だと石井に言い放たれ、呆然とする高村(竹中直人)。結局は傍観者としてしか存在しえない高村の教師としての自問自答はあまりにも痛切で、これまでのトイレへの駆け込みとは一線を画するせつなさがあった。
 白眉は、高村と石井が取っ組み合う様をひたすら手持ちカメラで追いかけたワンシーンワンカット。竹中直人と渡辺いっけいの熱演に見ているほうも力が入った。(麻生結一)


第6回(11/17放送)
☆☆☆
 高村雄介(竹中直人)、またまた生徒たちにその本質を見極められる。織原(平岡祐太)が書店で万引きしているところに偶然居合わせた高村は、店主をますます怒らせて警察沙汰にしてしまうは、県議会議員である織原の父親(大杉漣)には怒鳴られるは、はたまた停学処分にならなかった織原に関してひいきだと生徒からは問い詰められるは、かつらを脱いで頭をかかなければいけないような神経をすり減らすことだらけ。
 コミカルに思えていたかつらのエピソードまでも痛々しく、高村は教師であることの無力さにひたすら悩み苦しむ。ドラマは真面目を通り越して、もはや暗ささえ漂わせている。結局、織原の父親は収賄罪で捕まるも、そこでもまた高村は無力だ。織原が書店の店主に謝りに行くエピローグに救いがある。(麻生結一)


第5回(11/10放送)
☆☆★
 テストの答案を全教科白紙で提出したあおい(和希沙也)に援助交際の疑惑。いかにも今っぽいトピックを正攻法で描くやり方はいつもの通りだが、この真面目なトーンに慣れてきたこともあって、ドラマにすんなりと入っていけるようになったのはよかった。
 あおいの母親・美沙子役で登場した美保純は、おみや入りの役や子供とコミュニケートとれない母親役などをやると、いつもながらぴたっとくる。(麻生結一)


第4回(11/3放送)
☆☆★
 さやか(富田麻帆)の父(羽場裕一)が痴漢容疑で逮捕されるも、さやかは父親の無罪を一途に信じて、という誠実な展開がこのドラマのテイストにふさわしく、これまでの中では一番の好篇となった。高村(竹中直人)のライオン先生ぶりもふさわしく決まる。さやかの父親の弁護士役で村上淳が特別出演。とはいっても、特別に新鮮な切り口などはないんだけど。
 小池栄子扮する保険の先生、千夏の胸のはだけっぷりは、異性に欲望を抱く男子生徒に理性を持たせるための訓練だったことが今話判明する?!(麻生結一)


第3回(10/27放送)
☆☆
 あらゆる問題点が常に遠く感じられてしまうところは、学園ドラマとしては致命的な部分。安藤(北村悠)と江成桃子(平愛梨)はあっさりとかけおち。教師のあり方について、高村(竹中直人)が石井(渡辺いっけい)に質問するくだりもあっさりと流される。
 昔は先生というだけで尊敬されたも、という現状の困難こそがライオン先生そのものなのだろうし、そうなってくると故意にコミカルをしつらえるのはいっさいやめたほうがいいとさえ思えてくる。大輔(山根和馬)がレコード会社の最終審査に残ったことに関わる波紋も、エピソード自体は悪くないだけに、ドラマとしてのまとまりに欠けるのが残念だ。(麻生結一)


第2回(10/20放送)
☆☆
 直前に放送されている『ビギナー』に輪をかけてまじめなドラマ。退学寸前の安藤(北村悠)の父・秀彦(段田安則)が、かつての恩師と会ったことを語る場面はなかなか見ごたえがあったが、全般的にはドラマは湿り気味。何のために学校に通うのか分からない、という生徒のストレートな問いなどに、教育ドラマとしてのあり方を見せる。
 本編以上に見ごたえがあるのが(?!)タイトルバック。オープニング、エンディングのダブルで非常に優秀。(麻生結一)


第1回(10/13放送)
☆☆
 若かれしころは熱血教師だった古典教師、高村(竹中直人)も、中年となった今は生徒たちの心をつかむことができず、脱ぐことをためらってしまうかつらのせいで頭皮が痒くなる症状に悶絶しながら、人知れず苦悩する……。コミカルとシリアスのバランスがとりきれていないきらいはあったが、その苦々しいシチュエーションを生かせれば興味深いドラマになるかもと思わせた。便器にかつらを落とし、必然的にライオン先生が瞬間的に復活(?!)する場面はケッサク。これまでの重松清原作のドラマ化にいいものがないのが、ちょっとひとつ心配なところか(『キャッチボール日和』『定年ゴジラ』『エイジ』『ビタミンF』……。どれもNHKか)。(麻生結一)




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