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恋文 (TBS系水曜22:00〜22:54)
製作/DREAMAX TELEVISION、TBS
プロデューサー/橋本孝、瀬戸口克陽
原作/連城三紀彦
脚本/岡田惠和
演出/新城毅彦(1、2、5、6、8、10)、酒井聖博(3、4、7、9)
音楽/REMEDIOS
主題歌/『柊』Do As Infinity
出演/竹原将一…渡部篤郎、竹原郷子…水野美紀、田島江津子…和久井映見、若林誠…要潤、石塚圭子…国分佐智子、三上晴江…能世あんな、竹原優…泉澤祐希、校長…浜田晃、警察官・係官…阿南健治、田島正造…岡本信人、辻美木子…いしだあゆみ、三田計作…寺尾聰
ほか

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第10回(12/10放送)
☆☆★
 あまりにも予想通りだったとはいえ、江津子(和久井映見)の臨終の場面は涙なしには見られないほど感動的。★ひとつ分は和久井映見の名演によるもの。郷子(水野美紀)ならずとも、その透明な消えゆくような美しさに見ほれてしまう。
 ドラマはここで完結しており、将一(渡部篤郎)が郷子のもとにどの面下げて帰るか、という後半部分はおまけみたいなもの。むしろ、このドラマ自体はそこをやりたかったのかもしれないけど。何が何でもハッピーエンドとしたかった意図はわかるが、ドラマの余韻としては自転車泥棒のエピローグにはどうにもピンとこなかった。岡田脚本らしいといえばらしいけど。(麻生結一)


第9回(12/3放送)
☆☆☆
 あまりにも壮絶だった美木子(いしだあゆみ)の死に様。やがて自分自身にも訪れるであろう死を生々しく目のあたりにしたことで、江津子(和久井映見)は激しく取り乱し、病院を飛び出してしまう。そんな江津子を捜しに来た将一(渡部篤郎)は、再び江津子と結婚することを強く決意する。そんな将一の決断に衝撃を受ける郷子(水野美紀)だったが、思い悩んだ末に自分のためにも結婚してほしいと江津子に告げる。
 それにしても、郷子(水野美紀)は出来た妻すぎるよ。離婚してあげた末に新婦友人代表で結婚式にまで立ち合うなんて。離婚届のことを最高のラブレターと言ってしまう将一(渡部篤郎)は、つくづくズルイ男だと思わせる。これはまさに、江津子から将一に送られた手紙から連なるラブレターの反復。将一が優(泉澤祐希)に離婚のを話した際、優が将一のことをインチキ呼ばわりするが、これほどにこの男言い表した言葉はないだろう。まさに、やさし過ぎるインチキ。
 ただ、3人だけの結婚式を見るにつけ、これは江津子(和久井映見)と将一(渡部篤郎)の結婚式というよりも、郷子も含めての3人の結婚式のように見えるところが面白い歪み方。計作(寺尾聡)と優(泉澤祐希)が海辺で語り合う場面にしみじみとし、ブーケについて語る美木子(いしだあゆみ)の回想に目頭が熱くなる。江津子が気を失いそうになるラストのハラハラがまたうまく、メロウに過ぎる流れにアクセントを与えている。
 ところで、肝心な場面にかかる流麗な曲は、スティーヴィー・ワンダーの「オーバージョイド」に似てませんか?(麻生結一)


第8回(11/26放送)
☆☆☆
 美木子(いしだあゆみ)の臨終に計作(寺尾聡)が間に合うまでの高まりは、涙なしには見られなかった。美木子の死を目のあたりにして、夜中一人取り乱す江津子が切実だ。自分もまた同じように死んでいくのかと想像する江津子の心中を思うと、ただただつらい気持ちになる。
 美木子役のいしだあゆみがあまりにも感動的。いしだあゆみ自身がモデルである『てるてる家族』で上原多香子が演じる夏子の健康的なイメージからは遥か遠く、臨終の美木子はリアルに痛々しい。受けに回る計作役の寺尾聡もいっそうに抜群だった。(麻生結一)


第7回(11/19放送)
☆☆☆
 ねじれた女の友情像が面白い。将一(渡部篤郎)と郷子(水野美紀)が結婚していたことを最初から知っていた江津子(和久井映見)に、郷子がその真意を問い詰める場面が最大の見せ場だが、だましてたつもりがだまされてた郷子が江津子と将一をだまし続ける共謀関係を結ぶ成り行きには、不思議な清々しさがあった。半年しか生きられないアドバンテージとそのあと取り戻す時間があるというアドバンテージ。そんな2人の微妙な立ち居地が、このドラマをいっそう興味深いものにしている。

「何だか男同士みたい」by江津子

に握手する郷子と江津子。

「乗りかかった船だし」by郷子

発言を聞くまでもなく、確かに水野美紀は男前だしね。

「女がいなければ男は生まれてこない」

という口癖を重ね合わせるまでもなく、ますますやつれ果ててきた美木子(いしだあゆみ)と事故にあって救急車で運ばれる計作(寺尾聰)のラインが、急速に縮まってきた。(麻生結一)


第6回(11/12放送)
☆☆★
 いっそうドラマはせつなくなって。お父さんはとんでもないバカ。でもお母さんはもっとバカかもしれないとは、何と正しい自己分析だこと。
 出色なのは、江津子(和久井映見)の似顔絵を描く将一(渡部篤郎)の姿を盗み見した郷子(水野美紀)が、将一に自分の絵も描かせるシークエンス。

「卑怯よ」

という郷子の絶叫に

「いろんな響子が見えるよ」

と返す将一の男のずるさよ。(麻生結一)


第5回(11/5放送)
☆☆☆
 将一(渡部篤郎)は手術に向かう江津子(和久井映見)の耳元でプロポーズ。そして郷子(水野美紀)には離婚を切り出す……。
 江津子と将一が語らう病室にいったんは飛び込むも、その場の空気を読んで父親の将一に、

「こんにちは、将一おじさん」

としゃべりかけるんだ優(泉澤祐希)の健気さには、郷子ならずとも泣けてくる。江津子の透明な美しさ、郷子の凛とした美しさはいっそう好対照に輝く。(麻生結一)


第4回(10/29放送)
☆☆☆
 江津子(和久井映見)の手術に必要な書類に親族のサインももらうため高崎へ行く将一(渡部篤郎)に付き添う郷子(水野美紀)は、妻というよりも母的な存在。不出来な夫をいつくしむ目には母性がにじむ。写真館に飾られた子供時代の江津子の写真は、もう少しさりげなく見せてほしかった。メロウなシチュエーションをメロウに見せられるとどうも(っていうか、あれは江津子じゃないでしょ?!)。
 毎度のごとく、ドラマの締めくくりがうまい。手術前に江津子の耳元で将一がささやくところを郷子が見てしまう場面の張りつめた瞬間に、次回も見逃せないと思わせる。(麻生結一)


第3回(10/22放送)
☆☆☆
 江津子(和久井映見)、最後の誕生日は、郷子(水野美紀)と将一(渡部篤郎)にとって10周年の結婚記念日と同日の10月25日。最後の誕生日と10周年の結婚記念日を両天秤にかければ、やはり最後の誕生日の方が重い。
 久々に会った夫は、家出前よりも日焼けして食欲旺盛、少し太ったようにも見える。鎌倉で聞いた別れ際の言葉、

「がんばれ」

の真意を知りたいものの、郷子は屈託のない将一のあり様にそのことを聞きただすことがきない。渡部篤郎はそんな男の甘えの体質をいかにもそれらしく演じて巧妙だ。結婚記念日恒例のローストチキンを作るのに、たまねぎを刻みながら思わず「北の宿から」を口ずさんでしまう郷子がおかしいやら、せつないやら。
 白眉は、郷子が再び江津子(和久井映見)の見舞いに訪れたとき、急な差込みに苦しむ江津子の背中を郷子が強くさする場面。もっと強くと頼まれて、さする平手がこぶしになる様が、まるで折檻しているようにも映る。いとこのふりをして夫の女に会いに来ている郷子の手には憎しみがこもり、そんな不自然な構図を悟ってか否か、江津子はより強く背中を叩かせることで、自分を罰しているかのようにも見える。複雑な思いがこみ上げてくるこのシーンは、名場面と呼ぶにふさわしい。うっすらと、計作(寺尾聰)と美木子(いしだあゆみ)の関係がほのめかされる。(麻生結一)


第2回(10/15放送)
☆☆☆
 話はねたばれしてるんだけど、随所にハラハラさせられつつ、しっとりとしたタッチに大人のドラマを見る充実感がある。郷子(水野美紀)が将一(渡部篤郎)の従姉妹だと偽って、江津子(和久井映見)と対面したあとの発言が秀逸。

「きれいな人だね。別に美人だとは思わないけど。ちっとも」by郷子

江津子(和久井映見)を言い表すのになんと的を得た、きつい一言なんでしょう。
 将一(渡部篤郎)と息子の優(泉澤祐希)が海で戯れる様をやさしく見守る郷子(水野美紀)がたまらなく美しい。水野美紀ははっちゃけたキャラクターをやるよりも、こういうしっとりした役をやった方がいきる。

「最高な女と結婚したんだなぁ」by将一

なんてズルイ殺し文句を言わせると、やはり渡部篤郎ははまる。妻にバスの扉越しに、

「がんばれ」by将一

という何気ない言葉こそ、将一にとっての別れの言葉?! せつなさがこみ上げてくる。初回以上に感じたのだが、寺尾聡が恐ろしくうまい。(麻生結一)


第1回(10/8放送)
☆☆★
 木下プロダクションがドリマックス・テレビジョンに名前を変更して制作した第1弾ドラマ(って、とっくに『大好き!五つ子5』のときからドリマックスだったような気もするが)。ここのところ濫作による筆の荒れぶりが目立つ岡田惠和による脚本を大いに心配するも、ほんのりといい予感も漂わせたりして、今度こそはの期待感も。オリジナルのラブストーリーでは信じられないほどに失敗していただけに(『僕だけのマドンナ』)、この原作物の脚色ではしっとりとした大人のテイストで巻き返していただきたいところ。
 『女子アナ。』と『しあわせのシッポ』では親友同士の役だった水野美紀と国分佐智子が、今回は会社の先輩後輩の関係に。ここのところ、水野さんはどんどん老け込んでいき、国分さんはどんどん若返っていってるみたい?! 水野美紀に子連れの役は記憶にないが、その頑強な様相のせいか、意外に母性を感じさせて、この役にはあってるのかもと思わせた。心の葛藤に見せどころのあるいい役だけに、がんばっていただきたい。
 どこかで見たことがあるような渡部篤郎が、今クールでもまたまたお目見え。ただ、この誠実でありながらにして不可解さを併せ持つ誠一のキャラクターには、そのパターン演技にも引っかかる部分も多いかも。どちらが早く逝ってしまうかを同室の江津子(和久井映見)と賭ける入院患者役のいしだあゆみの病人ぶりは、早々にあまりにもリアル。人生にも滑ってばっかりだと語る誠一の漁協の同僚、計作役の寺尾聡が、思慮深そうだった『こころ』とはまったく違ったキャラクター作りで驚かせてくれる。やっぱり芸幅ありますねぇ。(麻生結一)




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