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エ・アロール (TBS系木曜21:00〜21:54)
製作/DREAMAX TELEVISION、TBS
プロデューサー/貴島誠一郎、加藤章一
原作/渡辺淳一『エ・アロール それがどうしたの』
脚本/相沢友子
演出/平野俊一(1、2、5、6、9)、高野英治(3、7、10)、松田礼人(4、8、11)
主題歌/『LAT.43°N』a.mia
出演/来栖貴文…豊川悦司、園山麻子…木村佳乃、岡本杏子…吉行和子、川端昭一…三波豊和、小西由美子…山田スミ子、杉のり子…水川あさみ、藤谷智哉…安居剣一郎、岡本泰子…秋山菜津子、橋本和子…長内美那子、浜口千鶴…筒井真理子楢沢編集長…春田純一、白石佳奈…一戸奈未、矢部賢吾…松尾敏伸、、古賀雅子…弓恵子、高田直樹…新田純一、内田昇…三觜要介、店長…掛田誠、コンサートゲスト…ワカバ、古賀信三…織本順吉、野村幸彦…布施博、東山正憲…伊東四朗、東山節子…白川由美、高見義彦…山下真司、江波玲香…草笛光子、野村義夫…津川雅彦、立木重雄…緒形拳
ほか

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第11回(12/18放送)
☆☆☆
 語り口のうまさは最終回に極まった感じ。失礼ながら、これほど味わい深いドラマになろうとはちょっと予想していなかった。エ・アロールの経営危機にも銀行に経営権を譲らなかった来栖(豊川悦司)は、自分のマンションを売却してエ・アロールに移り住むことに。
 失意の来栖をはげますべく、ホームの入居者たちがクリスマスツリーを飾り付けするエピソードが実にいい。点灯されたツリーを見上げながら、10年後のデートスポットを目指そうとにこやかに語り合う老人たちのそれぞれの笑顔が感動的だ。
 腹部大動脈瘤の手術を拒んでいた立木(緒形拳)と船に乗り、亡くなった父親と重ねてあわせて手術を勧める来栖の変貌ぶりには初回からの成り行きを思うにつけ、しみじみとなる。ここで聞き役となる立木役の緒形拳が絶品だ。
 麻子(木村佳乃)へプロポーズする場面に、このドラマの粋を見る。海外の老人ホームを取材して、一冊の本にまとめる仕事を依頼された麻子は結婚早々の別居状態を危ぶむ。来栖はそこで一言、

「それがどうしたの?」

 家族を作る夢がかなったと語って手術に向かう立木に思わずホロリ。院長室にかかげられた来栖の肖像画に、立木の手術が成功したことを暗示させるあたりもさりげなくていい。来栖と麻子の結婚式にも、立木と杏子(吉行和子)が絡むユーモアがいいアクセントに。経営難の話などはきれいごとに過ぎるといってしまえばそれまでだが、この大人のドラマの魅力を損なうものではなかった。台詞のない場面の美しさも出色。流れるような映像に居心地のよさを感じる。(麻生結一)


第10回(12/11放送)
☆☆☆
 院長室に立木(緒形拳)ばかりか、野村(津川雅彦)までもがいりびたりというオープニングからおかしみにあふれていて、大人のドラマの味わいがいよいよ熟成されてきた印象だ。腰の調子が悪い立木に鍼を勧める野村が、鍼業界の回し者呼ばわりされるあたりも笑える。結局このことは、のちのち笑えなくなるのだが。
 エ・アロールの入居者、堀内が部屋に風俗嬢・エリカ(矢沢心)を呼んでいたときに心臓麻痺で死んでしまう。院内には腹上死の噂が広まり、退去を申し出るものも現れる。来栖(豊川悦司)は支払わなければならない解約金のことで頭を痛めることに。腰の痛みを訴えていた立木(緒形拳)がいやいやながらに精密検査を受けると、腹部大動脈瘤で手術が必要なことがわかる。ところが立木はその運命を受け入れると手術を拒否する。
 ドラマの前半に再三話題に上った風俗嬢のお話をドラマも終盤にさしかかったここで出すあたりに、ドラマとしての統一感を感じる。堀内という入居者を実際に登場させないあたりもうまい。
 来栖(豊川悦司)が立木を説得するにあたり、熱血ぶりを示す場面との対比が見事だったせいもあり、そのあとふと思いついてエ・アロールの看板にリースをかける場面が名場面になった。無言で麻子(木村佳乃)を抱きしめるエンディングも余韻があっていい。(麻生結一)


第9回(12/4放送)
☆☆☆★
 すべてを知った上で、だまされたっていいと佳奈(一戸奈未)を一心に信じようとする立木(緒形拳)がしみじみとせつない。許しを請うわけでもなく、最初から金目的だったと本当のことを打ち明けた佳奈に微笑みかける立木には、何ともしれないやるせない気持ちになる。ミツバチっぽい黄色のしましまマフラーのかわいさが、いっそうの悲しみをさそう。
 院長室を立木にアトリエに使ってほしいと提案する来栖(豊川悦司)が、立木と酒を飲み交わす場面がいい。佳奈は立木が若かれしころに付き合っていた女の分身だったという後付けも、アトリエで描かれていたあの絵の風情に余韻となる。話をせかす事のない相沢友子の脚本がとてもいい。(麻生結一)


第8回(11/27放送)
☆☆☆
 しっとりとした大人のドラマという意味合いでは、今クールはこのドラマが一番だろう。麻子(木村佳乃)から突然別れを切り出された、戸惑いの日々を送る来栖(豊川悦司)。野村(津川雅彦)と玲香(草笛光子)の結婚ですっかりしょげ返っていた立木(緒形拳)は、以前飲み屋で意気投合した女子大生、白石佳奈(一戸奈未)とつきあうようになり、途端に再び活力をみなぎらせるのだが……。
 努力なしくて、つなぎとめられる恋なんかない、との言葉も、ねっとり系の杏子(吉行和子)が言うとそれだけ説得力があるね。玲香と結婚した野村(早速義夫と名前で呼ばれていた)が、自分が死んだときの部屋の受取人を玲香に変更する一連のエピソードにしみじみとなる。空欄だった将来の夢について、妻の夢を叶えてやること=世界一周旅行がしたいと書き加える野村に、人生の希望を見る。
 麻子(木村佳乃)が来栖(豊川悦司)に切り出した別れ話は、酔った勢いという理由で即復縁と結構いい加減。スケートに行ったり、ボーリングに行ったり、今度はいきなりハッピー街道をまっしぐら。
 そのように、いたるところに幸福が転がっていた回だけに、いっそうまったく逆の運命をたどる立木(緒形拳)のあり様がつらいものに感じられる。老年の男の悲哀を緒形拳が人間味豊かに好演している。(麻生結一)


第7回(11/20放送)
☆☆☆
 エ・アロールを出て行くことになっていた玲香(草笛光子)に野村(津川雅彦)がいきなりのプロポーズ、電光石火で入籍にまでいたる。先んじて玲香にプロポーズしていた立木(緒形拳)は大いに落ち込むも、野村の息子夫婦(布施博&野村ちこ)に結婚を反対されているを気に病んでいる玲香の姿を見て、一肌脱ぐことを決意する。立木に頼み込まれて野村の息子夫婦の説得にあたった来栖(豊川悦司)だったが、その直後に麻子(木村佳乃)から別れ話を切り出されてしまう。
 そういえば、結婚式にはじまったこのドラマ。再び熟年結婚を描いて、それぞれの転機のときを描いた折り目正しさがいい。印象的だったのが、一晩中来栖に抱き締めてもらうも、結局2人だけで出会うことはこれきりにしてほしいと申し入れされてしまう杏子(吉行和子)の、

「ちゃんとふってくれて、ありがとうございました」by杏子

という決別の言葉。これまでのストーカーぶりが嘘のように、人間の奥の深さを見せる。(麻生結一)


第6回(11/13放送)
☆☆☆
 救急車事件で改めて死を身近なものとして突きつけられたことが原因か、杏子(吉行和子)は来栖への思いをまたまた抑えきれなくなり、暴走機関車ぶりが再燃する。男が女に心を開く瞬間は合鍵をもらったとき、との助言を受けて、見事栗栖から合鍵をゲットした麻子(木村佳乃)は俄然優位に立ったとも思われたが……。
 玲香(草笛光子)をめぐって立木(緒形拳)と野村(津川雅彦)がけんかする様があまりにも大人気なく、無邪気にも見えてきて無性にいとおしく思えてくる。クラシックのチケットを玲香に渡せずにいる野村もかわいかったが、コンサートのあとで、つい今しがた聴いた曲目を2人して思い出せないあたりもおかし味があってよかった。果たせなかった妻への思いを、今ここにはらそうとする野村には、ただただしみじみとさせられた。
 病気を口実に来栖を引き止める杏子に、合鍵をゲットして料理を作って来栖の帰りを待つ麻子のある意味ショッキングなエンディングを見るにつけ、内容はだんだん心境ドラマみたいになってきてると感じる。(麻生結一)


第5回(11/6放送)
☆☆★
 来栖(豊川悦司)と息子の昇(三觜要介)のもつれた関係が主軸に、心筋梗塞で倒れた古賀(織本順吉)の受け入れ病院が見つからない話が最後に絡む。もはや手放し運転であったとしても、出演陣の含蓄でそれなりに見せてしまうドラマだが、ちょうど祖父、祖母と孫の関係にあたる入居者たちと昇とのコミュニケーションは、これまでにない取り合わせだったせいもあって新鮮だった。
 そしてまたまた、大学病院への不信感が高まるような受け入れ拒否のエピソード。まぁ、あんなにのんびりしてたら、少なくとも『ER』だったら亡くなってるところだけれど。(麻生結一)


第4回(10/30放送)
☆☆☆
 こっそり企画されたポルノ上映会は、女性入居者も入り乱れての拍手喝さいの大盛り上がり。その微笑ましい展開には、年長者ドラマならではの味わい深さもあった。上映会でセレクトされた作品は、『四畳半襖の裏張り』。これはにっかつロマンポルノの中でも傑作といわれている作品だし、ポルノというよりも文芸作の趣だけに、本来的には大騒ぎするほどのことじゃないんだけど。最初、上映会に難色を示す来栖(豊川悦司)に、立木(緒形拳)がよぼよぼ演技で懇願する様が笑える。
 その来栖と立木の院長室での語らいが、次第に友人同士のそれに見えてくるようになる。川辺で麻子(木村佳乃)と立木が老いることについて語り合う場面にもしみじみとしてしまった。CXのドラマでは感心できないものが多い相沢友子脚本も、今回はなかなかいい。
 主題歌が前になったり後になったりふらふらしてしまうあたりは、いかにもTBSのドラマ的。挿入歌の“ROSE”がネスカフェのCMでも流れる。今回はいつもにもまして、緒形拳と木村佳乃が絶妙だった。(麻生結一)


第3回(10/23放送)
☆☆★
 おかし味と哀愁をにじませて、大人向けのドラマとしていっそう安定感が出てきた。
軽々しく結婚を口にすることを来栖(豊川悦司)になじられ、自分には時間がないと語る立木(緒形拳)が悲痛だが、来栖(豊川悦司)の着メロに『サザエさん』のテーマを設定する悪戯で切り返すあたりは、年の功というべきか。杏子(吉行和子)を抱きしめたことを軽く告白するやいなや、反射神経的に手が出て麻子(木村佳乃)に頬をぶたれた来栖(豊川悦司)の、いかにも不意をつかれた感じがおかしい。(麻生結一)


第2回(10/16放送)
☆☆★
 大手新聞社の元編集局長・野村(津川雅彦)が、亡くなった妻について語る場面は涙を誘うところ。ここでの感極まった風の津川雅彦が久々にいい。過去の栄光とらわれすぎて、というありがちなキャラクターがいかにもそれらしく見える。
 逆に、東山節子(白川由美)と夫・正憲(伊東四朗)との施設内別居という興味深い話の方が、すっかり薄まってしまった点はマイナスの部分。来栖(豊川悦司)の恋人・麻子を演じる木村佳乃は『ニコニコ日記』以降、演技スタイルを変えたのかな?! 脱力した感じが以前とは別人のよう。(麻生結一)


第1回(10/9放送)
☆☆★
 『渡る世間は鬼ばかり』の枠だったら、『愛するために愛されたい』なんかじゃなくて、こういうドラマこそふさわしいだろう。ただ、『愛するために愛されたい』のせいでこの枠の視聴習慣もすっかり薄れたか、『白い巨塔』崩しの30分拡大放送もまったく功を奏せず。『白い巨塔』は22.8パーセントをかせいで、このドラマはダブルスコアの以上の差をつけられてしまった。
 ただ、高級老人ホームが舞台だけに、キャスティングは『白い巨塔』以上に大物ぞろい。亡き父の跡を継いで院長になった来栖貴文(豊川悦司)が入居者名簿に目を通す場面にはしみじみとさせられる。岡村杏子(吉行和子)が恋愛のターゲットを藤谷(安居剣一郎)から来栖に乗り換える人質交代のエンディングまで、にぎやかしく見せてくれたのはちょっと意外な感じ。(麻生結一)




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