レビュー：クニミツの政

クニミツの政

（フジテレビ系火曜22：00～22：54）

制作/関西テレビ、ＡＶＥＣ
プロデューサー/重松圭一、和田豊彦
原作/安童夕馬　漫画/朝基まさし
脚本/大石哲也
演出/赤羽博（1、2、3、6、9、11）、中島悟（4、5、7、10）、位部将人（8）
主題歌/『Are you alive？』LIV
挿入歌/『あなただけを』a.mia
出演/武藤国光…押尾学、佐和真澄…伊東美咲、不破俊一…佐々木蔵之介、吉長小百合…吉岡美穂、坂上明日香…上原美佐、猿渡一郎…マギー、滝沢沙織、桜井裕美、松崎佑紀、園原佑紀乃、瀬戸陽一朗、広岡由里子、やべけんじ、柳楽優弥、山内菜々、勝部演之、古田新太、でんでん、阿南健治、花原照子、大高洋夫、野仲功、藤田宗久、五代高之、山下容莉枝、国分佐智子、高林由紀子、佐々木勝彦、泉晶子、佐渡稔、近江谷太朗、井上浩、野仲功、松井範雄、山崎大輔、大林丈史、西田健、鳥羽潤、黒坂真美、永田杏奈、篠田光亮、谷川清美、八名信夫、五木田進…斉藤暁、由良桃絵…横山めぐみ、坂上竜馬…大杉漣ほか

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第11回（9/9放送）
☆☆★
　してやったりの仕掛けが、最後の最後まで地味極まりなく貫かれていたあたりに好感が持てる。スケボーで階段から転落して意識不明に陥った克也（篠田光亮）を、文字通り体をはって助けた坂上竜馬（大杉漣）に心を打たれて、20代の投票率が大幅アップ、ってこううまくはいかんだろうと思うも、そこに大いなる苦々しさをブレンドしての締めくくりも、その潔さがこのドラマらしかったのでは。
　佐和（伊東美咲）がニューヨーク支局への栄転を断るあたりの丸さは、致し方ないというしかないか。

「この町がどう変わっていくかを見届けるのが私の志」by佐和（伊東美咲）

って、そんな志の低いことでジャーナリストを口にされてもね。
　小さな感激は、このドラマが唱えた選挙運動の心得のひとつ。勧誘電話のゴールデンゾーンは20～21時。21時以降に電話しちゃいけないのは、連ドラがはじまるから！そのテレビドラマ的な発想の割り切りのよさに、うれしくなってしまった。（麻生結一）

第10回（9/2放送）
☆☆☆
　稚拙だといってしまえばそれまでだが、脱力した正義感ぶりと純朴なドラマの作りに好感が持てる。文部省選定レヴェルだった前半戦との作風の転換には驚かされるばかりだけど。
　市長選において、自らが第二秘書を勤める坂本（大杉漣）の最大のライバルである不破（佐々木蔵之介）の派手な出陣式における演説を聞き、過剰に酔いしれる国光（押尾学）。一方、手弁当的な坂本の出陣式とのコントラストは、両陣営の現状をシンプルに描いていてわかりやすい。
　ここまではまだよしとしよう。圧巻は、道路族のキーマンである国会議員、宇治村（西田健）の圧力によって不出馬の窮地に追い込まれる不破を、国光がものの見事にアシストしてしまう展開。そんな国光のバイタリティは呆れを通り越して、微笑ましくさえある。実は不破、坂本の父親で元市長、坂上竜太郎の門下生だったというオチつき。通りでこの人、根がいい人なはずだ。
　国光に殴られ、佐和（伊藤美咲）に殴られる不破の殴られる人ぶりと、不破にキスされ、国光にキスされる佐和のキスされる人ぶりを対にするなんて、密かにこのドラマ、うまいな。一地方都市からニューヨーク支局に栄転でわが社はじまって以来の大抜擢って、そりゃそうだろうね。国光が将来、国政を背負ってたつ器？そんな曲芸的な展開も、それはそれで何だか楽しそうだと思わせる。そんなゆったりとしたノリにちょっぴりうれしくなる。（麻生結一）

第9回（8/26放送）
☆☆★
　今思えば、このドラマの小学教師篇って何だったんだろう？そう思えるほどに、この政治家秘書篇のマジメぶりがここに極まってきた。廃品処理場をめぐるお話が、廃品のリサイクル品で供託金にめどがたつ話に化けるあたりの甘口マジメ路線も、子供向けの社会派ドラマとしてはいい落としどころでは。
　坂上（大杉漣）v.s.不破（佐々木蔵之介）の市長選、どっちもそれなりに立派な候補者というのも、実のところはかなり変わった構造。佐々木蔵之介が演じる一見悪そうも、中身は実はいいやつキャラクターは、『元カレ』で彼が演じている役柄にも類似していて興味深い。この手の役は、佐々木蔵之介の専売特許?! 無能な猿渡（マギー）が重宝されるきれいごとは、この手のドラマとしては毎度のぬるま湯。
　佐和（伊東美咲）が飲みかけていたビンを口にする国光（押尾学）に

「あっ！（小声）」

なんて中途半端なリアクションにこっそり笑う。（麻生結一）

第8回（8/19放送）
☆☆★
　保育園の園長である民子（高林由紀子）の娘・法子（国分佐智子）が舞（山内菜々）を連れ出した一件も、市長が仕組んだことだと告発するあたり、いかにもこのドラマらしい真面目さだ。展開に新味はないが、無認可保育園に関する社会派をまぶしつつ、ちょっといい話に仕上げているあたりは、よどみがなく見やすい。（麻生結一）

第7回（8/12放送）
☆☆
　国光（押尾学）が教師をやめたことで、物語は本格的な選挙戦に突入するも、これはドラマ的には大いなる致命傷。偽教師と生徒たちの絡みこそが、このドラマの面白みだったのに。
　坂上（大杉漣）の公約って、市長選レヴェルを越えているのでは？テキ屋まがいの国光も、教壇上での存在感ほどには大見得をきれず。選挙はゲームなんかじゃないと凄んだ末に、吾妻（古田新太）が選挙参謀になる段取りのツルツルさには安心感はあるものの、やっぱり小学教師篇の方が面白かったかな。（麻生結一）

第6回（8/5放送）
☆☆★
　真面目で折り目正しいドラマの進め具合は、やはり小学生が夏休みに見るドラマとしては最適の部類では。教師の免許を持たずに教壇に立っていた荒唐無稽も、国光（押尾学）がそのことを悪びれず謝るだくだりにはしんみりとなったし、だからこそ生徒たちの無言の涙にも納得がいった。
　父親（五代高之）と母親（山下容莉枝）の離婚を阻止するべく、江頭（大高力也）が泳ぎを練習するシーンは、騒いでるばっかりでちっとも練習しない『ウォーターボーイズ』の何倍に及んだことか。親子３人をプールに突き落として和解に導くあたりも、型破り教師ものの醍醐味そのもの。町から出て行こうとする国光が教え子たちに引き止められるラストも、これしかないという感じ。
　真澄（伊東美咲）に国光が体罰教師であることの記事を書くように促したり、国光に坂上（大杉漣）の秘書をやめるようにそそのかしたりと、ベストタイミンで大忙しぶりを発揮していた不破（佐々木蔵之介）に決定的に欠けているものを指摘する選挙のプロ、吾妻（古田新太）の役回りは、これからさらに大きくなっていきそう。『笑顔の法則』で孤軍奮闘していた滝沢沙織が、不破の秘書役で人知れずひっそりと活躍中。（麻生結一）

第5回（7/29放送）
☆☆★
　みんなでめだかを探せ！の巻。このドラマ、小学生あたりが見ると、結構面白いと思えるのかも。大体、国光（押尾学）が必要以上にボキャブラリーに不足している設定は、小学生にもわかるドラマにするためでしょ?! だったら、傷口につばつけたら、ばい菌入るって教えなきゃね。
　何はともあれ、あっという間に見通せてしまうのがいい。『ウォーターボーイズ』が遅く感じるだけに、なおさらそう思えるのかもしれないが。
　今話の主役、江狩（渡辺直樹）が帽子でメダカをキャッチする飄々が、すがすがしくていい感じ。ただ、今後このドラマが再び政治ドラマ色を強めていくかと、大いに不安になるんだけど。（麻生結一）

第4回（7/22放送）
☆☆★
　生徒会長選挙一色の内容も、児童会長選挙のことを考えると終始引っかかっちゃって（前話のレビュー参照）。ただ、ドラマ自体は第１話からは想像もできないほどに、折り目正しく仕上がっていて好感が持てる（同じ脚本家の『逮捕しちゃうぞ』も同じ成り行きでリタイアを多数生んだと記憶する）。
　カリカチュアされた選挙戦のいきさつに、大人の選挙の世界が鏡のように見えるあたりの狙いは、清々しく達成されている。欲を言えば、もっと苦味があるといいんだけど、テレビ討論会に政見放送なんて大仰な仕掛けはなかなか面白い。
　目的が目的とはいえ、一生徒にあそこまで加担する国光（押尾学）っていいの？、なんて言いはじめると、ドラマの成り立ちからガタガタと崩れ落ちていってしまうんだけど。メリットの意味を知らない先生は先生にあらずだし。（麻生結一）

第3回（7/15放送）
☆☆
　国光（押尾学）は学校移転反対の署名運動を盛り上げるため次に企てたのは、生徒会長選挙。あれ？小学生だったら、児童会長じゃないの？生徒会長は中学生からでしょ。
　最初、御手洗（池田仁）のポスターだから、トイレに貼るのかと思った?! 国光のアドバーザー役なのか？、吾妻（古田新太）が初登場。（麻生結一）

第2回（7/8放送）
☆☆
　シチュエーションはふざけてるんだけど、物語の成り行きはいたってマジメで、文部省選定級（特選には内容が及ばず?!）。国光（押尾学）は暴走キャラというよりも、すでにかなりの賢者の趣で、判断の的確さはすでに坂上竜馬先生（大杉漣）も越えてるかも。でも、ドラマ的にはこれでいいの?!
　大嫌いなピーマンをガマンして食べる求道者ぶりを国光が見せて、無理やり国光に苦手な牛乳を飲まされたと嘘をついていた茜（塚本璃子）は約５秒ほどで改心。子供たちと一緒に収穫した無農薬野菜のおかげで、利権が絡んだ給食問題も一件落着と、赤子の手をひねるかのように次々と問題が解決していく様は気持ちがいいけど、明日明後日分の野菜はどうするんだろう？、なんて考えたら、すべてのリアリティが吹っ飛んでしまった。あのおばあちゃんたちがそんなにたくさんの野菜作ってるはずないしね。
　『天使みたい』のドラマ愛の詩枠とイコールな若年層向けと思えば納得もいくんだけど、だったら22時台に放送するのは如何なものか。まぁ、21時台も夏休み向けドラマやってるわけから、どうしようもないか。翔子役の樋井明日香は、『ピュアラブ』シリーズでも似たような役をやってたような。（麻生結一）

第1回（7/1放送）
☆☆
　『2001年のおとこ運』『春ランマン』に今回の『クニミツの政』と、名実ともに火10の顔（?!）となった押尾学主演ドラマ。世直し政治ドラマの前ふりも、急展開を見せていきなりガッコの先生ものに。非常勤講師って、いつから教員免許いらなくなったの?! 破天荒とデタラメの狭間を行き来するわりには、落としどころは心得てる?! 室温が何度か上昇しそうなほどに熱血にすぎるけど。
　キャストは全体的に小粒。脚本大石哲也、伊東美咲、吉岡美穂とは、薄っすらと『逮捕しちゃうぞ』ラインが見える。（麻生結一）