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貫太ですッ! (フジテレビ系月〜金曜13:30〜14:00)
制作/東海テレビ放送、テレパック
企画/鶴啓二郎
プロデューサー/市野直親、沼田通嗣
脚本/清水有生
演出/奥村正彦、藤尾隆、淡野健
音楽/小西真理
主題歌/『雑草の花』STANCEPUNKS
出演/伊達貫太…山田純大、進藤あゆみ…渡辺梓、田島知花…渋谷亜希、進藤円…笹岡莉紗、シゲさん…渡部雄作、田所さん…剛州、ノブヒト君…一條俊、あけぼの君…北条宗章、民子…江口徳子、進藤周…東海孝之助、進藤率…佐藤慶季、進藤零…島綾佑、伊達太郎…鈴木省吾、伊達美奈子…松沢有紗、川島猛…宅間孝行、櫨山修三…大塚幸太、豊泉淳一郎…京晋佑、立花力造…笠井一彦、谷口みのじ…久松夕子、柏木さん…津久井啓太、千夏…廠のえる、タツオ…宮内乙、ケンタ…岡田祥世、ヒロシ…山内颯、神山…美斉津明子、曽根…三谷悦代、小学生貫太…鈴木祐真、青年進藤…田島俊弥、進藤正史…篠塚勝、亀岡万次郎…石坂浩二、テルさん…寺島信子、田島勇介…伊吹吾郎、伊達春子…由紀さおり、伊達信助…石倉三郎
ほか

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第13週(9/22〜9/26放送)
☆☆☆
 あゆみ(渡辺梓)の死後、ドラマは求心力を失ってしまっていたが、最終週は清々しく爽やかに締めくくってくれた。信助(石倉三郎)が港の再開発の投票で突然賛成派に回ったり、エリートは挫折に弱いということか、ノブヒト(一条俊)が司法試験の模試の結果が悪かったからといって飲んだくれたりといった前半のエピソードは、ふりのわりにはそれほど膨らまなかったものの、貫太(山田純大)が真の父親として円(笹岡莉紗)の結婚話に悩む最終エピソードにはしみじみとさせられた。
 世界的チェリスト、豊泉淳一郎(京晋佑)とは、いかにもこのドラマがつけそうな名前だけど、春子(由紀さおり)のイヤな予感がぴったり的中するあたりの小さな意表には思わず噴き出してしまう。シゲさん(渡部雄作)がロリコン説を唱えるあたりも、その前科があるだけに発言に重みがある?! 『昔のダンナ』なる昼ドラのふざけたネーミングもらしくて楽しい。
 貫太の口癖「よし」が円の口癖になっていたのには、思わずうれしくなってしまった。こういう何気ない微笑ましさに、脚本の善良性が光る。フィアンセとけんかして、新婚旅行をすっぽかそうとする円を成田空港まで送っていこうとする貫太が成田の場所を知らなかったりといった、貫太のおバカキャラぶりよりも、山田純大はシリアスなパートの方があっていたのでは。
 いったん円の結婚話が壊れて、海辺でしょげかえる貫太を慰めるのは幻影としてのあゆみ(渡辺梓)。このドラマの海絡みのシーンはいずれもが美しかった。(麻生結一)


第12週(9/15〜9/19放送)
☆☆
 あゆみ(渡辺梓)の死後、ドラマは完全に後日談化している。ただ、同じ雨降って地固まる系でも、このドラマのそれには人情があっていい(似て非なる同じとは、もちろん『こころ』のこと)。みのじ(久松夕子)が子供たちのために3千万円の小切手を貫太に渡す締めくくりは、信助(石倉三郎)が借金の保証人になって3千万円の負債を背負う前の先週あたりから、すでに察しがついていたけれど。
 窮地に追い込まれた伊達新聞店を再建するためにやってきた長男・太郎(鈴木省吾)の妻で経営コンサルタントでもある美奈子(松沢有紗)が、まさにゴーンばりのコストカッターぶりを発揮するあたりは、いかにも今風。早速にリストラされるのがシゲさん(渡部雄作)というのも、リアルに世知辛い。あけぼの(北条宗章)って、元曙山=力士だったんだ!民子(江口徳子)は松井の種を求めてニューヨークに?! 改革には痛みをともなうとも、またどこかで聞いたようなお話。
 臨時ニュースのために火曜日の放送が冒頭2、3分ほどで飛んだわけだが、その代わりに放送された時間が夜中の0:30過ぎって、どうやって気づけっていうんでしょうね。まぁ、連続ドラマに対するNHKの仕打ちほどじゃないかもしれないけど。通常放送もセリーグの優勝決定のせいでズタズタ。金曜深夜の連続放送では台風情報が出ずっぱりって、まともに見られる枠っていつなんでしょう。(麻生結一)


第11週(9/8〜9/12放送)
☆☆★
 あゆみ(渡辺梓)の死に際して、貫太(山田純大)もこれまでのように屈託なくいられるはずもなく、それに引きずられる格好で、ドラマの元気のよさまでもが失われてしまった印象。節度を感じたのは、あゆみが死んでしまったのちにあゆみの写真が出てきても、「渡辺梓(写真)」のクレジットを2番手に出すような大いなる過ちは犯さなかったところ?!
 本当は伊達新聞店にとどまりたい思いと裏腹な気持ちを表すのに、円(笹岡莉紗)が貫太に悪態をつくのはこの手のドラマのパターンで、いかにもひねりがない。数えてないけど、貫太の小さな親衛隊たちが伊達新聞店に出戻ってきたのって、これで何度目だろうか?
 カント=哲学者になった貫太と、丘の上の女子大学生、由加里(森脇英理子)との絡みは、貫太のあゆみへの強い思いを表すことで終了。何はともあれ、人生いろいろということで。(麻生結一)


第10週(9/1〜9/5放送)
☆☆☆★
 あゆみ(渡辺梓)たち家族が進藤(篠塚勝)と一緒に広島へ帰った矢先に、すぐさま江ノ島に戻ってくる展開には強引さを感じるが、そのマイナス分を差し引いても、その後の展開の高まりには大いに感激した。見せ方自体はもともとうまかったが、脚本もシリアスなパートが増えるにつれて、なるほどこれがやりたかったのかと、俄然納得がいってきた次第。
 率(佐藤慶季)が抱える闇が、2年前に犬を拾ってきて泥棒あつかいされたことに端を発して、そのときの遺恨が今なお母であるあゆみへ向けられていたというショッキング。そして、これまでのいきさつのすべてが、率が犬の貫太を捨てに行く海岸のシーンに集約される。犬の貫太と人間の貫太という紛らわしさにも、それなりに意味はあったかな?!
 犬の貫太を海辺に捨てた率を責める寛太(もちろん人間の方)。海鳴り、波の水しぶきの音が効果的に使われていただけにいっそう、無音と化す率が言葉を発する瞬間にはハッとさせられた。このシークエンスはあまりにも感動的だ。夏の海なのに、見るからに冬の海を思わせるような色を落とした映像も美しい。
 けな気にも櫨山(大塚幸太)との結婚を装って、貫太に気がないふりをする知花(渋谷亜希)とあゆみとが、貫太への思いをぶつけ合う場面がまた絶品。店の扉を額縁に、ワンショットで2人を納める見せ方は、まるで演劇を見ているかのよう。ここまでやっていいんだろうかと、ちょっと心配になったほどに素晴らしかった。これだから、この枠のドラマは見逃せないと思えてくる。
 らしいところでは、前半に登場した新キャラ、民子(江口徳子)が強烈。貫太の子ダネ目当てにあわられて、求愛のダンス的フラメンゴ攻めって、ベタねた系では過去最高の面白さ?!(麻生結一)


第9週(8/25〜8/29放送)
☆☆☆
 貫太(山田純大)、ひたすらにせつない。湘南の海もまたせつない。そして、貫太に一生の友達だと言い放たれる知花(渋谷亜希)の思いもせつない。あゆみ(渡辺梓)と貫太のケンカはあれが最初で最後だなんて、その行く末を思い、ホロリとさせられる。先生(石坂浩二)から問われた、チェロを弾くときにありのままでいることの難しさに必死でもがいて、そのことが愛する人のため演奏することだと気がついた円のチェロの音の余韻がいい。
 物語上、失踪していた進藤(塚本勝)は戻ってこなければならなかったわけだが、その手はちょっとどころじゃなく古臭かったか。

「初めてだよ。息子に殴られたのは」by進藤

普通の親は生涯息子に殴られないよ、とつっこんでた矢先に、貫太が父・信助(石倉三郎)を殴っていたことが判明。???となりつつも、再びのせつなさモードに再びやられる。(麻生結一)


第8週(8/18〜8/22放送)
☆☆☆
 先生こと、亀岡万次郎(石坂浩二)の亀だけに、亀の恩返し的大活躍のおかげで、ドラマはこれまでとはまるで違った含蓄を醸し出して大いに盛り上がった。このキャラクターが1週で消えてしまったのはあまりにも残念だが、石坂浩二が昼ドラに出続けるということ自体から、かなりの異常事態なわけで。
 1本73500円のワインを半ダース買ってみたり、人の家のポストの色をペンキで塗り替えたり、小鳥たちに導かれるままに新聞を配ってしまったりと、その様々な奇行のエスカレートぶりと、随所に垣間見せる博学ぶりとのギャップが、この有名画家のキャラクターをたまらなく魅力的なものにしている。バッハの無伴奏チェロも軽々と弾きこなし、ブッシュ大統領からだってファックスが届くって、このつわもの役も、石坂浩二が演じたからこその説得力か。勝手にブッシュ大統領出しちゃったりして、フジテレビに出演拒否されたりしないか、ちょっと心配になる。とりわけ、亡くなった妻にそっくりという春子(由紀さおり)との絡みにはしみじみとなる。膝枕で由紀さゆりの「赤とんぼ」が聞けただけでも、石坂さんは出演して大満足?!
 それにしても、ここまで信助(石倉三郎)に「身を粉(こな)にして」って連呼されちゃうと、いざというときに“こな”って言っちゃいそうで怖いよ。健康おたく、シゲさん(渡部雄作)のヨーグルトきのこには、妙に懐かしい気分に。実は本名は長嶋茂雄って、どうしてもこういうべたネタも入れたがるこのドラマ。(麻生結一)


第7週(8/11〜8/15放送)
☆☆★
 周(東海孝之助)の思春期の目覚め、貫太が傷害罪で逮捕、そして田所さん(剛州)の娘・さおり(石黒えりか)の遅れてきたヤマンバファッションと毎度のごとく盛りだくさんの1週間だったけど、そのすべてをぶっ飛ばしたのが、ラスト1分で登場した先生(石坂浩二)の衝撃。その場面を数回見直すも、やっぱりあれは石坂浩二だよ。
 男の魅力は“ヘロモン”って、相変わらずこのドラマはこういうバカねたが好きだなぁ。そんな貫太のわざとらしいまでのバカさ加減は、某大国の諜報部員である姿をカモフラージュするためだったという、春子(由紀さゆり)による今週のいやな予感。傷害罪で逮捕された貫太が実はのぞきを捕まえた英雄だったというほのぼのしさも、いかにもらしい落とし方。そしてまた表彰って、このドラマは表彰も大好きだからなぁ。
 出会い系サイトが出てきたのは、裏(『キッズウォー5』)に同じ。田所さんの娘の名前はさおりちゃん。南沙織のファンだったからで、由紀さおりのファンだったからではありませんでした。(麻生結一)


第6週(8/4〜8/8放送)
☆☆★
 最悪の夏休みは、これでもかってほどの人情のてんこ盛り。ほのぼのしいを通り越して、あまりの愚かしさを発揮する登場人物たちの中にあっては、寛太(山田純大)さえも賢者に見えてくるほど。
 基本路線は、入院中のあゆみ(渡辺梓)のベッド代獲得大作戦なんだけど、その逸脱ぶりは半端じゃない。特に、円(笹岡莉紗)が「理想の新聞販売店作文コンクール」で入選した作文の内容を、従業員一同でそのままに再現しようとする試みなどは、スラップスティックにやりたい放題だ。
 貫太と知花(渋谷亜希)の偽装結婚式は、嘘から出たまことのせつなさ入り。知花が3ヶ月で出戻った花嫁のウェディングドレスを着るはめになるあたりのトホホはらしいところだし、円の作文にまったく出てこなかったシゲさん(渡部雄作)が、結婚式の司会者で生き生きとするあたりもなかなか楽しい。めちゃくちゃに書かれても、結局みんなが円に感謝してしまうハートウォームなおとし方などはなかなかうまい。ただ、あの荒唐無稽は作文じゃないだろ。
 寛太がタラバガニ食べ放題クイズに当選する展開は、作文コンクールと類似しすぎていてどうかと思ったが、台風の最中、夕刊を配ろうとする熱い心意気がそんな不自然も乗り切っていく。もともと、おしゃれなイタめし食べるお金あったら、それもベット代にあてるべきだったと思いつつも、ドラマの活気分でこれまででは一番楽しめた。
 予告通り、タイトルバックから江ノ電が消える。(麻生結一)


第5週(7/28〜8/1放送)
☆☆
 宛名違いのラブレターがめぐりめぐって、

「これぞ真珠夫人だぜ!」by勇介(伊吹吾郎)

というとってつけたような同局の歴史的ドラマの賛辞的セリフに収斂するまでのおバカな展開は、努力の跡が痛々しいまでのがんばったでしょう級。

「千里の道も一歩まで」

って、寛太(山田純大)のボキャブラリー不足は、『クニミツの政』の国光(押尾学)に比肩。シゲさん(渡部雄作)はそっちの方もいける両刀だった?! 、このドラマ、ホントこういうベタ、好きだよなぁ。貫太の声だけは聞こることが発覚した率(佐藤慶季)。ということは、貫太のあゆみ(渡辺梓)への告白が聞こえていた!、というオチは、深刻にならないこのドラマらしくていい。
 オープニングのタイトルバックで、走行中の江ノ電の目前に貫太が運転するバイクが飛び出すシーンが危ないとの苦情により、来週から映像を差し替えるとのこと。それほど危ないようには見えないのだが……。(麻生結一)


第4週(7/21〜7/25放送)
☆☆
 騒々しいだけの貫太のキャラクターを救っているのは、どことなしか憂いのある山田純大の魅力なんだけど、それだけにちょっと中途半端な感じもしたりして。
 太陽にほえろのパロディなんて小ねた出したり、がんばってるのはわかるんだけど……。空き巣犯の話ののんびりしたノリと臭い説得ぶりも、いかにもこのドラマらしいほのぼの調で悪くはないんだけど……。(麻生結一)


第3週(7/14〜7/18放送)
☆☆
 あゆみ(渡辺梓)が病に倒れたことで、濃厚な人情劇にさらに拍車がかかりそうで怖い。どうして普通じゃだめなんだろう?(麻生結一)


第2週(7/7〜7/11放送)
☆☆
 ベタながら、ドラマは正常化。丁寧に作ってあるので、その誠実は伝わってくる。朝、新聞を配るからこそ目撃してしまう様々な出来事、というアイディアをフル活用すれば、もっとドラマはスリリングになりそうだけど、そこは目指してないか。
 昼はスーパー、夜はパブと夫の残した借金を返そうと24時間労働する不幸せの塊のようなあゆみ役を、渡辺梓が熱演。でも、普通借金は自分で返しにいくんじゃないの?借金返済の運び屋までやってしまうところも含めて、『貫太(山田純大)ですッ!』ってことなんだろうけど。(麻生結一)


第1週(6/30〜7/4放送)
☆★
 清水有生脚本と山田純大といえば、すぐさま思いつくのが傑作『あぐり』。あの感動を再びといきたいところだが……。
 貫太のキャラクターがどうしても愚か者に見えてしまって、作品の誠実さが打ち消されてしまうのはいかにも都合が悪い。貫太の恩人である進藤(篠塚勝)が借金にまみれて姿を消し、家計を助けるために夜パブで働き出した進藤の妻・あゆみ(渡辺梓)の売り上げに貢献するためにボトル3本入れるんだったら、その分のお金を別のことに使った方がいいのでは、なんてのはまだ序の口のうちで、様々な疑問が次々に噴出してくる。そんなこんなを許容するかどうかで、作品への共感度も変わってくるわけだけど。ある程度慣れが必要?!同じく清水有生脚本の『嫁はミツボシ。』には最後まで慣れることができなかっただけに、かなり心配になる。
 貫太が海に連れ出した率(佐藤慶季)がトラックに轢かれそうになる場面で、偶然通りかかった円(笹岡莉紗)が歩道からその様子をみるところは、笹岡莉紗主演の『エスパー魔美』にも似たような場面があったような。もちろんあのときには、魔法で子供を助けたんだけど。(麻生結一)




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