TV DRAMA REVIEW HOME

14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜 (日本テレビ系月曜22:00〜22:54)
制作著作/よみうりテレビ
制作協力/ホリプロ
プロデューサー/竹綱裕博、梶野祐司、山本和夫
原作/市川たくじ『Separation〜君が還る場所』
脚本/瀧川晃代(1、2、10)、渡辺千穂(2、3、4、5、6、7、8、9、10)
脚本協力/渡辺千穂(1)、沢田石野枝(1、2、3、4、7、8、10)、清水友佳子(4、5、9、10)
演出/山本和夫(1、10)、岡本浩一(2、4、6、8)、白根敬造(3)、白川士(5、7、9)
音楽/窪田ミナ
主題歌/『幸せの表現』GABALL〜feat.Joanne
出演/五十嵐裕子…高岡早紀、井上悟…中村俊介、蒼井優、堀川美弥…酒井若菜、岩崎ひろみ、羽場裕一、鈴木ヒロミツ、乃木涼介、牛尾田恭代、仲根かすみ、松尾政寿、菅野莉央、ナツキ(原島千夏)…伊藤沙莉、工藤あかり、西端さおり、勝野洋輔、吉村明宏、川津春、佐藤充浩、国枝量平、梶山豪英、浅見小四郎、脇知弘、塩山義高、林田直樹、田村三郎、和田アキ子、田山涼成、大谷直子、大森暁美、堀川千鶴子…丘みつ子、藤本春美…戸田恵子、神田勉…石黒賢
ほか

>>公式サイト


第10回(9/8放送)
☆☆☆
 最終回にいたり、これまでにもましてミラクルが幾重にも折り重なりあって、物語はほとんど説話のようになっていく。見せ方のユニークさもここに極まり、最後まで見進めるに、このドラマこそが今クール随一のカルトドラマであったと確信させられた。
 悟(中村俊介)をビルの屋上から突き落とそうとした神田(石黒賢)に、とうとう記憶の若返りの異変が、というプロローグからその仕掛けは実に巧妙だ。悟が目の手術後、その目に最初にとびこんでくるものが、4歳児スケールに若返った裕子(工藤あかり)だったという、ここはもうこれしかないともいえるショック!

「こんなにちっちゃくなっちゃって」by春美(戸田恵子)

まったくだ。

「頭ん中、グチャグチャです」美弥(酒井若菜)

これまたもっともだ。
 若返りの薬を作ったときに分離した液体には、何と“劇薬”とのステッカー表記!いわゆる廃棄物で毒性が強い、ってそんなアバウトな説明が謎めいてさえ聞こえてくるよ。もっとも、毒素を中和できる可能性のある細菌を培養できるんだったら、最初からそれをやればよかったのでは?
 記憶が子供に若返った神田が人生ゲームにせいを出す様が、はた目にはナツキ(伊藤沙莉)の方が遊んでもらってるように見える配置の妙に、いつもながら感心する。4歳児スケールの裕子と美弥のツーショットなんかも、抜群でしょ。

「秘密。女同士の」by4歳児スケールの裕子

見せ方もうまいが、台詞もさえてる。
 火事のシーンの必然性のなさなど、もはやケレン味の塊としか言いようがない。緊迫感のない悠長な逃げっぷりは、それが仮に説話だとしても是とはしがたいが。そのドサクサに薬を飲んだ裕子は、若返るばかりか、洋服の寸法まで大きくなってるじゃないの。裕子が一挙に順を追って若返っていく連続図は美しくも壮観。霊魂だけが浮遊したのか、何だかわけはわからないんだけど、光の玉になった裕子にホロリ。宇宙の彼方まで飛んでいっちゃうドラマ(『愛するために愛されたい』)とは雲泥の差なり。
 ただ、今話の真のミソはその直後にこそあった。裕子が逝って、そして悟は岸壁の岩場の溝に横渡り、そのすぐそばには美しい春美が日傘をさしてたたずむ、って何だこれは!このツーショットは、見た目夫婦の図。ちょっぴり母・息子風。

「あると思えばある。いると思えばいる。会えると思っていれば、いつか必ず会える」by春美

春美は今回の経験を機に、何かしらを開祖したとでも言うのか?! 一言一言があまりにもありがたいぞ。終始無音に、波の打ち寄せる音が心に残る。
 そして5年後。冒頭にいわくありげに語られていた、

「さわれなくったって、見えなくったって、いつでも私は悟のそばにいる」by9歳児スケールの裕子

の台詞がここに響いてくる構成。もはや、なぜその場にあの指輪が落ちていたか、などということは問うまい。とりあえず説話だし。指輪を北極星にかざすのラストまで、その分厚さにすっかり感心した。
 まぁ、悟のレストランの一連はいいとして、ナツキに5年後はあったか否かはフォローしなきゃダメでしょ。★一つ減点。やっぱりあの薬は毒性が強すぎた、なんて化学的なことを言い始めると愛のドラマとしてはさめちゃうとしても、ナツキだったらレストランに食べにくるぐらいのことにはなってると思ったんだけど……。(麻生結一)


第9回(9/1放送)
☆☆★
 子供になった裕子(菅野莉央)が裕子(高岡早紀)の娘だというカモフラージュには妙に納得。自分をかえりみなかった母・加代子(大谷直子)にこれまでのわだかまりをぶつけて、それを裕子が言っていたことだとすりかえるくだりにもおかしみがある。悟(中村俊介)の視力がいっそう低下していく効果の使い方も○。
 ただ今話では、妙に台詞のつっかかった感じが随所に気になった。北極星の話への入り方もエピソード自体はしみじみとさせるも、そこまでの運びが雑だ。ところでラスト、なぜ裕子は悟が倒れて病院に運ばれたことを知ってたの? 神田(石黒賢)は記憶の若返り具合は微妙も、存在は完全なるダメな悪役のそれになる。(麻生結一)


第8回(8/25放送)
☆☆☆
 物語自体の面白さに今話でも舌を巻く。夜間徘徊していたことで富士そばの前で補導された裕子(菅野莉央)が、身分を証明できずにそのまま拘束されてしまうとは、なるほど考えたね。9歳の児童といえども知能は35歳だけに、あっさり逃亡も可能だった?! そして、横須賀への随分手近な愛の逃避行。雀荘に勤めたかと思ったら、とってつけたようなコミカル調は、このドラマに頻発する唯一の余計な手。
 驚愕の神田(石黒賢)がまたまた大変なことに。若返りのアンプルの効果が、肉体ではなく記憶の若返りにあらわれる事実に仰天する。記憶がさかのぼるにしたがって、愛する記憶も過ぎ去っていくというタイムリミットの設け方が絶妙だ。さらには、視力が悪化していく悟(中村俊介)の話もあり、ドラマの行方をどうにでも出来るほどのエピソードはそろって、フィナーレへの準備は万全に思える。(麻生結一)


第7回(8/18放送)
☆☆☆
 その見せ方上手は、9歳の少女に若返ってしまった裕子(菅野莉央)の視点を通して、いっそうに冴えを見せる。子供の目線と大人の視線との違いを強調した冒頭はとりわけ秀逸。漢字が読めなくなっていたり、失禁してしまったりといった裕子に関する地味な変化の積み重ねは、ドラマのうねりをいっそうダイナミックなものにしている。おかしなところがまったくないとはいわない。ただ、矛盾しそうでしないそのギリギリ感が実に面白いのだ。

「私は悟に一人の女として見てほしかった」

なんて生々しい台詞を吐く、見た目9歳児の女の子にどきっとさせられつつ、夫婦愛の高まりは頂点にいたる。大きすぎて指に合わなくなってしまった指輪の、それが愛のあかしであるがゆえという使い方もうまい。
 それにしても、まさか神田(石黒賢)までもが若返りの薬をあおるとは。苦いコーヒーを飲むことで、大人であることを確認する案には、妙に納得。(麻生結一)


第6回(8/11放送)
☆☆☆★
 見せ方の工夫という意味では、今クール随一。リアルなパートが非常に手堅いので、メルヘンのパートの驚きがいっそうに引き立つ。人を思う心が若返りを促進させるとは、豪くナイーヴにいきついたなと最初はちょっとがっかりしたが、愛情を感じたときに出る脳内物質(?!)なんてアバウトな説明が出てきたあたりから、その世界観を仮想していくうちに、次第に何ともせつない気持ちにさせられていった。

「原島!」

と呼びかけられて、子供の姿のナツキ(伊藤沙莉)が神田(石黒賢)と対等に渡り合ってる様なんて、なかなかのものでしょ。こっそりと届けられる悟(中村俊介)のランチを、そうと知らずに楽しみに待つ裕子(蒼井優)の食いしん坊に泣けてくる。ただ、自力で悟の味だと悟ると、さらに感動できたと思うんだけど。
 最大の驚きは、17歳の裕子と35歳の裕子(高岡早紀)が対話し同化する夢の場面。アウストラロピテクスからホモサピエンスにの図よろしく、歩みとともに足が細くなっていく効果も見事だが、そこに行き着くまでのオレンジ→グリーン→ピンク→イエロー→ブルーの各場面の画作りには舌を巻いた。こういうテレビドラマ以上の試みは、掛け値なしにうれしい。
 若返りの瞬間をウェディングドレスと絡めたアイディアも、メルヘンとしてはこれ以上が考えづらいほど。裕子をサポートする春美(戸田恵子)のバランサーぶりがいっそう効いてる。(麻生結一)


第5回(8/4放送)
☆☆☆
 なるほど!幻想、もしくは悟(中村俊介)の幻覚で高岡早紀版の裕子も登場するのか。トリックの多重構造は大いに歓迎したいが、いっそうに似てない2人の裕子を助長させる点との兼ね合いは、あまりにも悩ましい。

「君が僕の知らない君になった」by悟(中村俊介)

そりゃそうだ。どう考えても、見た目別人だもん。唯一、声質は非常に似てる。ここに演技力も加味して、蒼井優のキャスティングを正当化してみる。
 かつて愛した17歳の裕子への思いが、若返りという退行の過程を保存しようとする偏愛という形でよみがえったことをほのめかす神田(石黒賢)。元に戻りたい一身で、神田にすべてを託す裕子。ドラマの構成はサスペンスフルに強固だ。愛することの努力を説く春美(戸田恵子)がその賢者ぶりで、SFじみたプロットに真実味を与えている。若がえった裕子を触れようとしない悟が年上好みだった?!、との考察はなかなか鋭いね。(麻生結一)


第4回(7/28放送)
☆☆
 あれ?裕子(高岡早紀)って別人になる薬を飲んだんだっけ?確か若返りの薬を飲んだと記憶してたんだけど。

「自分の姿が若返っていくことに、心が追いつかないということも十分に考えられます」by神田(石黒賢)

裕子はおろか、視聴者の心も追いつかず。別の女優を使うとしても、顔の路線ってものがあるでしょ。高岡早紀と蒼井優は、何一つとして重ならないもん。説教であっさり気がつかせる展開は、全7話のドラマを見ているかのよう。
 ただ、点数をそれほど悪くしなかったのは、今後への期待感に加えて、昼間にさらに超デタラメなドラマ(=『キッズウォー5』)を見てしまったせいで、免疫ができていたから?!(麻生結一)


第3回(7/21放送)
☆☆★
 異変の兆候にゆれる夫婦の姿を丁寧に描いている点には好感は持てるも、随所にちょっとじっくりとしすぎていて、物語る手際自体は第1、2話に比べると落ちる。
 時間をさかのぼってやり直したいと誰もが強く願う気持ちと、実際に若返りがはじまると途端に若返りたくなんかないと思うようになる皮肉。このあたりの引き裂かれ具合にどれぐらい肉薄してくれるか、今後が楽しみだ。
 裕子役の高岡早紀は、センターから思いっきりとばしてるやり方ももはや限界?!、なんて思いつつ、やはり大元がお若いですね。大人の眼差し、ナツキ(伊藤沙莉)は、さらに真に迫ってる。原島千夏の表札にMKKのシールとは、そこにもディテールがあったか。
 このドラマに登場するレストランの厨房だが、映画『ディナーラッシュ』に登場する厨房にそっくり。もしかしたら、参考にしているのかな?!(麻生結一)


第2回(7/14放送)
☆☆☆
 今クールの特殊メイキャップ賞授賞決定!その効果こそがこのドラマの生命線だけに、若返ったり老化したり、そしてまた若返ったりといった裕子(高岡早紀)の変貌ぶりにあっけにとられて、ドラマに引き込まれること必至である。

「今日の彼女、珍しくテレビ映りよくありません?」

とは女性の女性評らしい辛辣さ。そんな裕子の美肌効果のみならず、キメの細かい作りのおかげで、ドラマの非科学的な世界観に違和感を感じる余地をなかなか与えてくれない。
 さらに若返りのアンプルをもう1本、裕子が飲もうとする場面のハラハラ。私有地に勝手に胎内の赤ちゃんの写真を埋めるシーンのしみじみ。結局2本目のアンプルは飲まなかったのに、さらに若返り始めてしまう謎々。多種多様な見せ方に魅せられて、次回がどうしても見たくなるドラマになる。(麻生結一)


第1回(7/7放送)
☆☆☆
 大いに興味を抱かせた第1回。夫婦愛を謳っておいて、かなりのSFで攻めてくるあたりがいかにもこの枠らしいところ。しかし、ドラマは奇抜さだけにとどまらず、
細部にわたる入念な描写にも見入らせるものがあった。意味深な台詞の含ませ加減も実にうまい。
 裕子役の高岡早紀は随分と老けたなと思わせといて、あの風貌は若返りの薬の効果を高めるための仕掛けだったのか。元人気キャスターが、半人前の料理人を恋人(中村俊介)にするかはちょっと引っかかるけど。確かに、ハワイのおすし屋さんと結婚した女優さんもいらっしゃいましたし、無きにしも非ずか?!
 月9の初回延長を意識してか、10分開始時間を遅らせたのは○。本来は、初回延長なんて視聴者の意向を無視したいさぎの悪いやり方はやめてもらいたいんだけど。(麻生結一)




Copyright© 2003 TV DRAMA REVIEW. All Rights Reserved.