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愛しき者へ (フジテレビ系月〜金曜13:30〜14:00)
制作/東海テレビ放送、東宝株式会社
企画/鶴啓二郎
プロデューサー/風岡大、阿部謙三、佐藤毅
原作/わたなべまさこ『独りまつり』より
脚本/金谷祐子、金井寛
演出/藤木靖之、皆川智之、村松弘之、北川学、三木茂
音楽/椎名KAY太
主題歌/『かわらないこと』KOKIA
出演/佐伯春菜…馬渕英里何、松園薫…国生さゆり、松園貴士…増沢望、宇治正臣…升毅、宇治芙美…田中ひろ子、青山良平…松永博史、佐伯輝子…増子倭文江、野々村学…大柴邦彦、三田麻子…藤田瞳子、野々村修…原田篤、野々村桃子…加治佐悠、松園美怜…安谷屋なぎさ、佐伯麻也…笠原織人、井田…加藤純平、河村秀一…吉岡毅志、青木房枝…石原舞子、片桐…谷川俊、大山健夫…山中篤、佐伯泰三…津嘉山正種、重原騏一郎…中野誠也
ほか

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第13週(6/23〜6/27放送)
☆☆☆
 長年のわだかまりを乗り越えすぎたか、すべての登場人物が自責の念にさいなまれはじめる。

「私が悪いんです」by全員

が合言葉となるほどに、それぞれがそれぞれの反省に至る。
 そんなうちひしがられた人たちが向かう場所は決まって小淵沢。そんな大自然の営みに最後の砦、薫(国生さゆり)までもが足を踏み入れた。真っ白なスーツにロングスカートで土いじりしながら、美怜(安谷屋なぎさ)への思いを語る薫の晴れ晴れとした表情が印象的だ。
 そんな薫には、乳がんというさらなる受難が。春菜(馬渕英里何)が執刀した薫の手術に、全出演者(といっても人数は少ないが)の思いが集束していく様が実に美しい。手術は見事成功するも、運命は薫にさらなる受難をあたえる。ここでの唐突な心停止に不自然を疑う暇もないままに、薫が蘇生する場面に思わず目頭が熱くなる。幸せの儚さを身にしみて感じさせてくれる国生さゆりの名演よ。
 薫の命を救った春菜が、美怜こそが薫を救ったのだと語る場面の幸福感は、美怜に「お母さん」と呼びかけられる春菜の思いに引き継がれる。ここでの馬渕英里何、泣く演技が相変わらずうまいねぇ。

「君には言葉に尽くせないくらい感謝してる」by貴士(増沢望)

総反省状態から、総感謝状態へ。極端を避け、地道な道をセレクトして歩んできたこの数週間に終止符を打ち、大いに極端に走る大団円を見とどけて、清々しい気持ちになる。(結)


第12週(6/16〜6/20放送)
☆☆☆★
 麻也(笠原織人)は、血のつながりを越えて愛に育まれ、美怜は(安谷屋なぎさ)は血のつながりに飢えて、いっそういこじになる。置かれている立場は真逆にあっても、お互いの気持ちがわかるからこそ、麻也と美怜は家族愛から逃避行するのだ。
 哀れ、薫(国生さゆり)にいいこと一つもなし!美怜にはあなた呼ばわりされ、最愛の父・重原会長(中野誠也)は明かりが消えるように静かに逝き、ついにはこの広い世界に血のつながりがある人間は一人きりと号泣する。そんな見るも無残な薫に、負けないほどの号泣で返す春菜(馬渕英里何)。この二人の因果な関係には、ほとほと感動するよ。もちろん、重原会長の臨終場面は、きっちり手持ちカメラ。このあたりの基本に忠実な演出ががたまらない。
 美怜にかつての自分たちを語る春菜の曲解には唖然。

「お食事したり、花火したり、楽しかった!」

って、それは最期の最期だけでしょ。あの愛憎の日々を視聴者は忘れまい。
 薫の不幸はさらに続く。重原開発の事実上の倒産を画策していた秘書の大山(山中篤)に対して、

「裏切り者!」(エコー〜!)

まさに薫の魂の叫びよ!そして乳がんの宣告。いや、宣告前に自己判断であきらめの境地に。ちゃんと病院で検査しなきゃ、ダメでしょ。全財産をばらまいても、天涯孤独なホスト・良平(松永博史)からも相手にされないさらなる哀れ。
 良平がこのドラマを一言で言い当てる。

「代理母と依頼人のラブロマンス」

言われてみれば、確かにその通り。そんな得意なシチュエーションを有してなお、このドラマは一切の極端を拒絶し、ひたすら地道な方向にいくよ。(結)


第11週(6/9〜6/13放送)
☆☆☆
 ドラマからケレン味が消え、得たものの何倍もの代償を今払わされることになる主人公たちの相克と葛藤が、これでもかとばかりに描写される。仮釈放になった秋元(樋渡真司)の再登場はエピソードとしてはここに欠かせないものだったが、悪人顔で春菜(馬渕英里何)に迫る様と、麻也(笠原織人)の心臓手術の後を見て、身を引く善良とのギャップは埋めきれず。
 こじれてねじれて、もはや説明不能かと思われたあまりにも複雑な麻也と美怜(安谷屋なぎさ)の出生の秘密も、意外なことに麻也に関してはあっさりと解決の方向へ。たださすがに、父・秋元が代理母の麻子(藤田瞳)を刺し殺した話はできなかったか。(結)


第10週(6/2〜6/6放送)
☆☆☆
 新たなる愛憎のジレンマは、抜き足差し足で音もなく忍び寄ってくる?あまりにも静かな第2部の滑り出しを揺るがすのは、小学6年生にまで成長した麻也(笠原織人)と美怜(安谷屋なぎさ)が禁じられたままに知り合ってしまうこと。何にもまして、子供は止められない。そんなドラマ的ハラハラが、早々絶妙にはまる。
 芙美(田中ひろ子)の軽口、「氏より育ち」とはあまりに罪作りな発言よ。10週目にして、麻也&美怜の掛け合いが生んだ初のコミカル場面も、一瞬にして打ち消されることに。それでこそこのドラマ。どうやらこのドラマは、さらなる八方塞がりへと歩みだした模様。(結)


第9週(5/26〜5/30放送)
☆☆☆★
 怒涛の展開とはこういうことをいうのか。そのすべてが予想外。話の跳躍についていくのに見る側も必死になり、そんなドラマを1週間に5回も見られるという喜びをだたひたすらに噛みしめる。

「誰一人悪意をもってやったことではないはずなのに、これが自分に嘘をついて生きようとしたことの報いなのでしょうか」by春菜(馬渕英里何)

ドラマのすべてを言い当てるかのような春菜のモノローグに、これまでの成り行きが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
 母親でもなければ女でもないとの袋小路に陥る薫(国生さゆり)が大荒れにつき、手がつけられない。ついには親友・芙美(田中ひろ子)にまでも平手打ちを食らわす始末。貴士(増沢望)から愛の告白を受けた春菜(馬渕英里何)から美怜を返せと詰め寄られて、

「美怜?気安く呼ばないで」

と絶叫で応酬する芝居の濃さにゾクゾク。
 ドサクサの只中で、麻子(藤田瞳子)が刺殺される。春菜と幸せになろうと誓い合った2人だったのだが……。あらゆる不自然もその衝撃が上回って、ただひたすらに痛切な思いにかられる。麻子が亡くなる場面の見せ方も、あまりにショッキング。闇にベットがぽつんとは、何と演劇的なことよ。
 ガラガラを振り回しながら、薫が美怜の泣き声に翻弄される。

「お願いだから泣き止んでよ!」by薫

美怜に懇願する薫の形相をベビーベッド越しにとらえる斜めのアングル。いまどきこんなカッコいいことをやってくれるなんて、ありがたや。

「そうやってあなたまで私を責めるのね」by薫

貴士ならずとも誰もが思うだろう。薫は母親に向いてないと。
 酔っ払いと化し続けようとする薫に、貴士は離婚を言い出せない。

「もっと困ればいいのよ」by薫

貴士と薫のののしりあいには戦慄するのみ。この場面、どう見ても貴士は、薫の頬を本当に張ってます。演者たちの意気込みにうれしくなるところ。
 美怜が春菜に見えてしまう薫の心情をが痛切。熱を出す美怜を抱きかかえ、夜霧の中に向かってかけていく薫。後を追う貴士。

「これは罰よ」by薫

霧の中に消えていく、あまりにも罪深き人々よ。ここに薫の達観のきっかけが。
 春菜は宇治(升毅)に脅しをかけ、そして麻子の息子の母になる。

「まったくしなくてもいい苦労背負い込んでくるんだから」by春菜の母

まったくだ。
 そして、まるで最終回を迎えたのように、全員が達観の境地に。春菜と貴士の潔い別れの場面が、奇妙なほどの清々しさを残す。互いを許しあってさえ、尋常がこれっぽっちもないなんて。複雑なかかわりあいがさらに複雑にこじれていく中でも、なおかつ春菜と薫はかかわろうとするのか。別れの時には、出会いのアップルパイでおもてなし。ついには、はじめて美怜を抱く春菜だった。そして誰も後悔してないって?茶番スレスレが、スレスレであるほどに面白い。
 急展開!それから10年!春菜、外科医に!このドラマには第2章があったんだ。(結)


第8週(5/19〜5/23放送)
☆☆☆
 夜のドラマとはまったく違う次元の濃密さでドラマは展開。薫(国生さゆり)自身が望んで選んだ代理母出産の道だったのに、生まれてきた愛はまったく違う愛だった……。傍目には春の光のような幸せな家族の姿の真相に、ただただ震えるのみ。
 もはやかかわる必要のない3人が、どうしてもかかわらずにはいられないという不可思議。憎しみと感謝の気持ちがここまで隣りあわせだったことをかつて知らない。

「やはりあなたは美怜の向こうにあの人を見てたのね」by薫

結局、誰も幸せになってないよ。展開の選択肢はさらに無尽蔵に。(結)


第7週(5/12〜5/16放送)
☆☆☆
 敵味方入り乱れての大葛藤大会。その破天荒はとどまることを知らず、とうとう春菜(馬渕英里何)と貴士(増沢望)・薫(国生さゆり)夫妻は一つ屋根の下で生活してしまう事態に。春菜の父親(津嘉山正種)は激昂し、薫の父親(中野誠也)はすべてを飲み込むという好対照。
 ロケの東海テレビドラマたる面目躍如は、貴士の後姿に立ち上る蜃気楼よ。スイカの食べカスをクロスさせることで、時間の経過を見せるなんてそんな古典的な手法を堂々と使ってるあたりもいい。線香花火がぽとりとは、いかにもらしい演出。
 一時期は、薫が冷蔵庫の前で食料にむさぼりつく姿をさらけ出したりと、どうなることかと心配するも、終いには略奪愛が絡む本音トークまでも温かムードに。嵐の後の静けさか、ゆったりとした陽だまりの時間を過ごす春菜と薫。一体、この人たちのモラルはどうなっているんだ!崩壊寸前の均衡が実にスリリング。(結)


第6週(5/5〜5/9放送)
☆☆☆
 お腹の子供を自分で育てようと決心しようと思ったのも束の間、今度は代理母として生きていこう決意したりと、今話の春菜(馬渕英里何)も精神的に大忙し。いくら春菜が脅威の順応能力を兼ね備えているとはいえ、薫と共同生活させられた日にゃ、そりゃ気が滅入るよ。
 さらなるシャッフルを呼び起こす春菜の「愛してる」宣言。貴士(増沢望)は思わず「すまない」って謝っちゃいましたか。その後手後手ぶりに、ただただハラハラ。

「とにかく今は落ち着きましょう。あなた今、興奮してるのよ」by薫

って、一番興奮してるのが何を隠そう薫さんご本人。春菜の母性に抱かれた日も今は昔か。
 修(原田篤)の告白にだましだまされ、偽り偽られて、薫との連係プレーも抜群にその体裁を維持するも、すぐさま平手打ちの一喝とは、何たる攻守の切り替え(?!)のすさまじさよ。さらには麻子が善意の裏切り。そして本当の妊婦然とする薫が、本格的に正気を失っていく。

「あなたは私で、私はあなた。二人で一人なのよ」by薫

そんなこと言われた日にゃ、そりゃ目を丸くするしかありませんね。あぁ、今週も面白かった!(結)


第5週(4/28〜5/2放送)
☆☆☆
 妊婦である春菜(馬渕英里何)と、母子健康手帳まで作って妊婦的に同化していこうとする薫(国生さゆり)の精神的エスカレートに痛切と恐々が入り混じる。貴士(増沢望)も含めた3者の関係性があまりにも至近距離にあるがゆえに、なおさら傷つけあってしまうという展開は、メロドラマ的に無敵だ。
 そんな心理戦にやせ細っていく春菜に薫(国生さゆり)を尻目にただ一人、宇治の妻を演じる田中ひろ子だけが、ますます太っていく(あまりにも『昼どき日本列島』的で喜ばしすぎか?!)。なぜか顔もにやけてるし。
 薫に隠れて逢引を繰り返し、ついには再度関係を持ってしまう春菜と貴士に薫が逆襲!春菜は伊豆の別荘に強制隔離され、料理も残さす食べなきゃいけません攻撃(?!)にあう。過酷はさらに極端に走るのか?!(結)


第4週(4/21〜4/25放送)
☆☆☆
 互いのことを思いやれば思いやるほどに、傷つけあっていく関係にキリキリさせられっぱなし。春菜(馬渕英里何)の出産を自分のことのように振るまう薫(国生さゆり)があまりにも痛々しい。妊娠していない薫が、生まれてくる子供は男の子がいいか、女の子がいいかと夫・貴士(増沢望)に問う痛切たるや。
 かと思うと、世界的指揮者の名前がクラウディオ・ジュリアーニだったりするベタないかがわしさがにニコニコさせられたり。とにかく、見てて楽しいですよ。(結)


第3週(4/14〜4/18放送)
☆☆☆
 伊豆の別荘での春菜(馬渕英里何)と貴士(増沢望)の濃厚な心理戦と嫉妬に狂う薫(国生さゆり)の取り乱しぶりとにどっぷりと身をゆだねた一週間。

「やってんのね、あの2人!!!」by薫(国生さゆり)

なんて台詞が平気に吐かれる空気に飲まれっぱなし。何がすごいって、登場人物の葛藤がすごい!そしてロケがすごい。サスペンスドラマと見まがう岸壁ロケの場面たるや、馴れ初めのシチュエーションとしてはあまりにも尋常じゃない。やっぱり、東海テレビのロケシーンはすごいですよ。車との接触事故をおこした薫のその場面が、そのときではなく週末回に出てくるあたりの構成の凝り様も、あまりにも無駄すぎて素敵だ。(結)


第2週(4/7〜4/11放送)
☆☆☆
 ある程度覚悟はしていたものの、ここまでの加速度的に濃厚さが増していくとは。春菜(馬渕英里何)の恋人、学(大柴邦彦)がいきなりの自殺、そしてさらには衝動的な春菜の後追い自殺未遂を口火に、ドラマの混沌はいよいよ本格化してきた模様。

「君たちはそうやっていっつも僕の噂話をしているの。通りでくしゃみが出るはずだ。他にはどんなこと?」by貴士(増沢望)

「あなたが知れば、くしゃみどころじゃすまない話よ」by薫(国生さゆり)

「そうね。何だか怖そうだ」by貴士(増沢望)

怖そうじゃなくて、本当に怖いんです!“受胎可能日”なる複合語の重みに押しつぶされそうだ。

「寝るか寝ないか、最後の決定権があるのは私です」by春菜

やられっぱなし春菜の逆襲がいよいよはじまる?!(結)


第1週(3/31〜4/4放送)
☆☆☆
 しょっぱなから、いきなり不幸の雨霰。恋人は医療ミス、義父は脳梗塞に。挙句に大学の学費が払えず。

「もう私、私立の医大なんか行かなきゃよかった!」by春菜(馬渕英里何)

見ながらに気になってはいたけど、その言っちゃおしまいの言葉さえ吐くのか。
 泣き、わめき、叫ぶ馬渕英里何の喜怒哀楽全開熱演がすごい。演出は隙間がないほどに濃厚。こうなったら、途方もないほどのドラマになってしまえ!(結)




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