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東京ラブ・シネマ (フジテレビ系月曜21:00〜21:54)
制作著作/フジテレビ
プロデュース/中島久美子、樋口徹
脚本/藤本有紀(1、2、3、5、6、7、8、9、11、12)、高橋美幸(4、10)
演出/平野眞(1、2、4、6、8、10、12)、成田岳(3、5、7、9、11)
音楽/上田益
主題歌/『恋するふたり』大滝詠一
挿入歌/『ラジオスターの悲劇』バグルス
出演/高杉真先…江口洋介、卯月晴子…財前直見、千葉吉成…宮迫博之、坂本理紗…伊東美咲、園田麻子…白石美帆、日向暎二…玉山鉄二、峰沙耶香…石川亜沙美、篠原忍…高岡蒼佑、八木のり平…荒川良々、相沢真紀、長谷部彩子、住田玲奈、のりえ…キシモトマイ、池津祥子、平尾良樹、菊田由美子、アイビー・チェン、野口優樹、松美里把、山田誠吾、ト字たかお、小松田昭子、中村ゆう子、山田夏海、ケビン・タニグチ…上條恒彦、岩田丸、篠宮まき、篠崎はるく、井之上チャル、スマイリーキクチ、政岡泰志、辻修、鶴見…堀部圭亮、Special Thanks…ゴリエちゃん、市川勇、大高洋夫、後藤康夫、瀬戸陽一朗、Special Thanks…山田花子、緋田廣人、あづみれいか、真鍋尚晃、松元ドカン、長野里美、宝井誠明、佐藤旭、溝口敬一朗…豊原功補、石川裕司、園田敏郎…綿引勝彦、二瓶鮫一、須永慶、福本伸一、菊池均也、三井善忠、三浦光弘、黒沢雄平…大江千里、豊田…小市慢太郎、岡本…阿南健治、山中貞之介…三谷昇、松原智恵子、堺照子…浅田美代子、二階堂絹世…鷲尾いさ子、江戸川薫…竹中直人
ほか

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第12回(6/30放送)
☆☆★
 先週の予告篇ですでにたっぷり見せてもらっていた吉成(宮迫博之)と麻子(白石美帆)の結婚式だったけど、意表をついたのはそれがかもめ座閉館上映会のドサクサにとりおこなわれたということ。指輪の代わりにあのニセモノのトルコ石を贈るのは、フェノミナンの江戸川社長(竹中直人)=チューさん=ひまわりのおじさん=名脇役?

「何じゃいそりゃ」by江戸川

とはごもっともなご感想で。少なくとも招待状が届いて名前を見た時点で、いろいろと気がつきそうなものでしょ。
 真っ白なスクリーンにキスを交わす吉成と麻子の影が映し出されるお決まりのロマンティックはくすぐったさの極み。さらにくすぐったいのが理紗(伊東美咲)と暎ニ(玉山鉄二)のお二人さんで、ノベライズを買い占めた理紗に、

「抱きしめていい?」by暎ニ

って、まるで高校生級なトークが繰り広げられて、思わず見ていて恥ずかしくなる。
 そんなこんなのおかげさまで増刷されたノベライズよりも、『バザールで恋買います』の復活を後押ししたのは、山中貞之介監督(三谷昇)のコラム「嗚呼映画人」と松原“花だより行進曲”智恵子(ご本人)のインタヴューの方だったという意表が、先週の予告篇にはなかった更なるお楽しみ。“奇跡のロードショー 公開未定”なんて映画の予告を見せられれば、さすがに見たくてたまらなくなる“幻”に弱い大衆心理かな。
 ここからとんとん拍子で上映にまでこぎつけて、というミラクル・ハッピー・ストーリーだったら、それはそれで気分爽快に見通せたはずだけど、さらなるいろんな障害をもうけて話をすんなりといかせないようにするテイストは、最後の最後まで健在だったか。だったら、高島屋の屋上での星空上映会に、卯月(財前直見)はてるてる坊主ぐらい作っていくかいがいしさがあってもよかったかもね。映画オタク的モノローグのラストに『素晴らしき哉人生』とは、また大きくくくってきたものよ。
 上映後、真先(江口洋介)は卯月をいきなり晴子呼ばわり!このレビュー中で決して卯月を晴子と書かなかった、いや単に書き変えるタイミングを逸した不幸中の幸いが、ここに見事に結実した?! 妙に報われた気分。(結)


第11回(6/23放送)
☆☆
 今回が最終回かと思わせといて、来週までやってしまうフェイントの入ったもたせっぷりと、お互いに告白しそうでなかなかしない真先(江口洋介)と卯月(財前直見)のじりじりとした関係とがあまりにもぴったりフィットする最終回1回前。回を追うごとに初々しくなってきてる真先と卯月の35歳カップルは、大人の一途なラブストーリー『ひまわり』調にまで到達できるのか?! 「あんな人、絶対にいませんよね」by麻子(白石美帆)という意味では、すでに『ひまわり』に肩を並べているのかも。
 理紗(伊東美咲)って、「自信満々な顔で偉そうなこと言って」る女でしたっけ?若気の至り的な暴走キャラだと認識してたんだけど。自信満々な顔で偉そうなこと言ってるのって、どう考えても卯月の方でしょ。暎ニ(玉山鉄二)と絡んでるうちに、卯月を意識しすぎて自らと同一化しちゃったの?卯月と理紗がほとんど口を聞いていなかったという新事実もここに発覚?! 真先、卯月、理紗、暎ニの恋の四角関係に火花が散れば、それはそれで面白くなったのかも、などとなかった挿話に思いをはせたりして。
 『えびボクサー』初日の晴れ舞台に真先が来てくれるかくれないかの話に、映画オタク的モノローグ『勝手にしやがれ』って、いったい何で? 映画の内容とは似ても似つかないけど、卯月の気持ちとしては『乙女の祈り』って感じでしょ。結局、『バザールで恋買います』にトラブルが発生して、真先は初日に間に合わないわけだけど、そのことに関して何のおとがめもなしだと、このエピソードでやきもきさせられたこと自体がむなしくなってくるよ。
 吉成(宮迫博之)が温泉場で拾った変わった石が、変わった石収集の本家本元、江戸川(竹中直人)に託されるあたりのお遊びや(第4話レビュー参照)、フィールド・オブ・シネマで『ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール』をやっているあたりの小さなディテールに、むしろ喜びを見出したりして。(結)


第10回(6/16放送)
☆☆
 35歳たちのラブラブショー、話はほぼ割れきっている状況で何という初々しさの持続力か。大人の恋の不器用さよりも、高校生級のうれしはずかし恋愛模様を感じるのは、大人の哀愁が漂う様をどこにも発見できないせい?!

「タイミングがいいんだか悪いんだか、大変ね」by照子(浅田美代子)

とは、一言でこのドラマをいい表した名言よ。年長組の照子さんにももう少し見せ場があれば、このドラマももう少し大人っぽくなれたかもね。
 映画オタク的モノローグ、『恋におちて』は古典的不倫物につきここでは不適。意味だけでいっても、むしろ『突然炎のごとく』でしょ。だって黒沢(大江千里)、あまりにも突然燃え上がってるんだもん。いくら離婚直後の元カレとはいえ、このプロポーズまでの着火スピードは尋常にあらず。卯月(財前直見)をめぐる三つ巴のディナーで、驚くべきほどの率直キャラの黒沢と昔から変わらない屈折キャラの江戸川(竹中直人)とに挟まれれば、永遠の大学サークル部長キャラを貫く真先(江口洋介)こそがやっぱり卯月に一番ふさわしいと思えてくる。
 フェノミナンの女子社員3人組(相沢真紀、長谷部彩子、佳田玲菜)による知り合い恋愛トークに自分の置かれた境遇とピッタリと重なって、理沙(伊東美咲)と卯月がピクリとくるあたりは、気が効いてて楽しいところ。「あなたには関係ないでしょ」(by卯月)に「俺には関係ないことだ」(by真先)と言い合う掛け合いにとどまらず、エレベーターですれ違がってみたり、靴を履き違えてみたりといった定番で押すハラハラも、ここまで徹底されてれば楽しく見ていられる。(結)


第9回(6/9放送)
☆☆
 恋に不器用を絵に描いたような古典的な展開が、主人公たちの自覚によっていよいよ動き出した。卯月(財前直見)がすでに結婚する相手に出会っているかもしれないとの、ご本人以外にとっては周知の事実をずばっと指摘するのは、溝口(豊原功輔)と正式に婚約した真先(江口洋介)の元カノ・絹世(鷲尾いさ子)。絹世が卯月と真先の間を取り持つのは、ドラマ的には一番納得がいけるところ。
 ココモの危機的状況は何も変わってないはずなのに、吉成(宮迫博之)が戻ってきただけで精神的に大復活を遂げた真先は、『バザールで恋買います』のノベライズの帯に書かれた言葉、「恋だと気がつくまで二ヵ月半」の文言に、男も女も超越していろいろ話せる存在だとしか思っていなかった卯月を急激に意識することに。確かにここまでこぎつけるのにちょうど2ヵ月半。このじれったい展開も、計画的犯行だったのかと思うと、少し許せる気分になる。
 恒例の映画オタク的モノローグに、

「予感がします。『恋人たちの予感』」

とはようやくまさにの思い。これで前々からのプロデューサーの自己表明、トム・ハンクス&メグ・ライアン的なノリの半分は出揃ったということか(『恋人たちの予感』でメグ・ライアンと共演していたのはトム・ハンクスじゃなくて、ビリー・クリスタルなので)。卯月の元彼・黒沢役で大江千里が登場。その意表をつくキャスティングにちょっぴりうれしくなる。
 それにしても、卯月は一人では食べきれないほどの麻婆豆腐作っちゃって。裏番組『麻婆豆腐の女房』への無言の宣戦布告かと思いきや、ちょうどそのころ、『麻婆豆腐の女房』は静かに最終回を迎えておりました。むしろ、エールだったか?!(結)


第8回(6/2放送)
☆☆
 まれにみる天真爛漫キャラ、真先(江口洋介)への嫉妬心をココモ潰しというわかりやすい形で見せはじめたことで、ようやっと本格的に江戸川(竹中直人)がドラマに混ざってくる。混ざったら即座にオープニングで見ごたえある対決場面とは、何ごとにも仕掛けが遅いこのドラマらしからぬ手際のよさよ。いい映画は脇役がしっかりしてると、江戸川への賛美の意味も込めて主張する真先に、いい映画は監督がしっかりしてるとあてつけ気味に正論で言い返す、海外映画祭で助演男優賞まで受賞経験済みの元名脇役・江戸川。どっちにしても、映画人・竹中さんご自身を礼賛する言葉であるというのが、この場面のミソかな。
 麻子(白石美帆)と理紗(伊東美咲)が、いまさらながらに真先をめぐって火花を散らす関係に。ここは何ごとにも仕掛けが遅いこのドラマらしいといういいわけで済まされても、吉成(宮迫博之)と江戸川のご対面をあれだけ引っ張って肩すかしを食わせるのは、テレビドラマの見せ方としてはどうだろう?
 恒例の映画オタク的モノローグも、いよいよネタ切れかな。計算が得意な吉成がヘッドハンティングされるさまに、「みな『許されざる者』か」って、そんな映画的に外れで大げさなことを。選択肢が邦題に限られてしまうだけに、そのセレクトはなかなか難しくもあるんだろうけど。
 相次ぐドラマ的空転の中にあって、やっぱり頼りになるのは仕事でがんばるキャラを通す真先と卯月(財前直見)になってしまうか。沈み行くタイタニック号の船長に自分をなぞらえる真先の、映画愛という名のしぶとさを発揮しての挽回が、今後の焦点になっていく感じ。ただ、ここまで真先と卯月のお互いを思いやる気持ち以上がもう一歩見えてこないのは、ちょっと不満なところ。何ごとにも仕掛けが遅いこのドラマだけに、来週あたりには少しは垣間見せてくれるのかな?(結)


第7回(5/26放送)
☆☆★
 餅屋は餅屋ということで、業界でも有名なキワモノ映画配給の雄、ココモにフェノミナンが甲殻類がボクサーになる映画の宣伝協力を申し出たことで、ドラマは久々に映画の話になる!カンヌで買った本命作と抱き合わせで買わされた映画の話を、リアルなカンヌ映画祭閉幕日に登場させるとは、なかなかおつなことをするね(単なる偶然だったとしたら、これは映画の神様の思し召しか?!)。ココモが配給する映画は、作品自体のキワモノさをキワモノ系のタイトルが越えている印象。『おっとキリンジ』のチラシには、元麒麟児・北陣親方のコメントだって載ってそう。
 登場人物たちが仕事をすれば、それなりにドラマが正常化することを証明したのが宣伝会議の場面。真先(江口洋介)と卯月(財前直見)が真っ向勝負を試みたことで、ドラマはかつてないほどの盛り上がりをみせることに。たとえ麻子(白石美帆)があの会議に参加しても何の意味もなかったとしても、そしていつしかその場が愛の告白会議になっていたとしても、何はともあれドラマが盛り上がったことをお祝いすべきでしょ。
 ここでの映画オタク的モノローグも、『会議は踊る』のセレクト自体は○。ただ、どうして「会議は踊る。されど進まず」の名言をフルフレーズで言わせなかったの?まさにあのシチュエーションにはもってこいだったのに。
 映画ファンは映画館絡みの話にめっぽう弱いことをフル活用したサブストーリーには、しみじみとさせられる。麻子の親父さん(綿引勝彦)が『追憶』のポスターを眺めながら、映画館の歴史を追憶するわかりやすさといい、娘への思いを託した光だけのスクリーンの話といい、映画館にはスウィートな味わいがよく似合う。麻子の親父さんといい、真先といい、信念を貫く男はお金を掴み損ねる現実はビターだけど。
 告白あり抱きつきあり、さらには狙撃までありと、いつもの東京ラブラブショーぶりは、ドラマも終わりに近づいて駆け込み的に連打される。元俳優であったことが判明したフェノミナン社長の江戸川(竹中直人)も、遅まきながら恋模様に混ざってきたか。次回も映画の話ならいいのに。(結)


第6回(5/19放送)
☆☆
 今週も快調に(?)登場人物のオール“恋のラブラブショー”状態が持続。手持ちの映画はすでに『バザールで恋買います』に移ってるだけに、『35歳で恋買います』とあてた方がふさわしいか。結局、35歳で恋を買えなかった真先(江口洋介)と卯月(財前直見)のご両人がせつないパートを一手に引き受けてくれたおかげで、珍しくドラマはちょっぴりだけほろ苦テイストに。自らを「お姉さん」と言い放つしかない三十路女の背中の哀愁に心打たれる。でも、“35歳で知識と経験とお金”があれば、それだけでも上々では。一方の真先にあるのは、仲間=吉成(宮迫博之)と一升瓶のみだもん。一応、社長でもあるけど。
 それにしても、恋の合い間に映画の仕事をちょこちょこやりつつも、いつでもどこでも頭の中は映画じゃなくて、恋を買いにいくことでいっぱいという登場人物たちのラブホリックぶりには、いまさらながらにビックリ。戦前の予想では、シネマの比重がもう少しあるのかと思っていただけに、ここまで映画業界が単なる箱としてしか扱われてないと、ちょっとさびしいなぁ。
 映画おたく的モノローグは、「あいつも『旅立ちの時』か」。今話のトピックが映画のノベライズ化だっただけに、映画について語られた場面はここだけということか。映画嫌いのキャラクターを出すアイディアがあるんだったら、いくらでも映画の話が出来そうなものなのに。もちろん、最初からそういうのは狙ってないのかもしれないけど。
 麻子(白石美帆)、あんな深刻な顔して何考えてるのかと思ったら、仰天恋の勘違い!間抜けすぎるキャラがはまりすぎてて、ある意味笑える。吉成(宮迫博之)はいつの間にか恋の相談役に。まぁ、いいポジションでは。それにしても、絹世(鷲尾いさ子)はなぜ出版社の溝口(豊原功補)とつきあってることをあそこまでもったいぶってたの?倒れた絹代の病状をなぜ吉成が聞きにいったの?フェノミナンノの社長役の竹中直人が、ドラマにほとんど絡んでこないのがあまりにももったいない。まぁ、ご本人自身がその後の料理番組でそう言ってらっしゃいましたし。(結)


第5回(5/12放送)
☆★
 簡単にだまされる人=吉成(宮迫博之)と簡単に物をなくす人=理紗(伊東美咲)がいたおかげで、癒す人=麻子(白石美帆)やかばう人=照子(浅田美代子)、そしてさとす人=真先(江口洋介)が簡単に活躍できたシンプル編。先週回は、のんびりテイストのそのシンプルさが功を奏して楽しく見通せたんだけど、今話は映画の話になりそうでならないあたりのスリリングさ以上の楽しさを見出せず。
 まだ物語のシンプルさはいいとしても、どうして登場人物のメンタリティまでもシンプルになっていくの?よく目を凝らしてみていくと、日向(玉山鉄二)だけが小学生キャラじゃなかったことに気づかされる。吉成のお腹の具合を心配をしてる麻子に、あらゆる知的なたたずまいを拒絶する理紗。そんな保護者同伴が必要不可欠なキャラたちのサポートを一手に引き受ける卯月(財前直見)の親戚のおばちゃんぶり、もしくはタクシーの運転手ぶりが、ドラマにうっすらとF2テイストを与えている。もちろん、仲間の尻拭いさせたら江口洋介を上回る役者はいないということも、改めて思い知らされたわけだけど。
 今話の映画おたく的モノローグは、冒頭の小津話つながりで『晩春』だったわけだけど、毎度のごとくドラマの内容とはほとんど関係なし。そのまま副題にも使えそうな『我等の仲間』ぐらいのことを言ってくれれば、ただそれだけにだって感激できるんだけど。まぁ、何はともあれ、『バザールで恋買います』、ドラマに絡んできて!(結)


第4回(5/5放送)
☆☆☆
 地方映画祭に仕事を忘れて(?!)、登場人物たちが仲良し映画サークルの合宿的なノリで大いに盛り上がる。 “湯けむり映画祭”なんて、またあいまいな名前をつけてくれたななどと思いつつも、温泉気分でゆったりなこんな展開の方が、浮世離れしたこのドラマ的にはしっくりいくでしょ。総片思い合戦(?!)なんかも、妙に学生っぽいし。
 そんな大いなる楽しげにちょっぴりのペーソスがチラホラ。とりわけ、縫い物が得意な吉成(宮迫博之)の伏線が、ラストの破けたスクリーンをみんなで縫い合わせるエピソードにつながっていくあたりの展開はなかなか気が効いてていい。たとえショボくて貧乏臭くても、永遠の映画青年たちはこういう一致団結にこそ泣けてくるのよ。
 引退した往年のハリウッド女優がデブラ・ウィンガーだなんて言われちゃうと、また別の意味で泣けてくるんだけど。ちなみに上映会のシーンでスクリーンに映ってたのは、ウーピー・ゴールドバーグと監督のロザーナ・アークエットで、決してデブラ・ウィンガーではありません。映画『デブラ・ウィンガーを探して』はデブラ・ウィンガーを探しに行くお話ではなく、ロザーナ・アークエットが同業のハリウッド女優たち34人へのインタビューを通して、40代の女優としての自分探しをするドキュメンタリーです。その中の一人がデブラ・ウィンガー。
 今話の映画おたく的モノローグは、温泉につかるのが『素顔のままで』か。あまりに温泉と関係なさ過ぎない?それを言うなら、温泉だけに『お熱いのがお好き』じゃないの。どっちもどっち?! 江戸川(竹中直人)が居酒屋で語る、川原で変わった形の石を探す話は、『無能の人』(竹中直人初監督作品)でしょ。こっちの方が、断然うまい!なるほど、今話は脚本家が違うのか。(結)


第3回(4/28放送)
☆☆
 もっとお仕事モードを上げていった方がドラマとしては目標の大人テイストになっていくはずなんだけど、現状は一部の人を除いて、登場人物のオール恋愛中毒状態。そうなってくると、タイトルの変更が急務になるか。『パリのラブラブショー』ならぬ『東京のラブラブショー』こそが、このドラマのタイトルにはピッタリくるでしょ。F2向けへの転換って、わかりやすさへのさらなる追求だったの?
 真先(江口洋介)とタメ(35歳)だったことが判明した卯月(財前直見)は、日向クン(玉山鉄二)との会話のときだけ、急に「マチルダさんみたい」になってしまう。これこそが、エリート女性の『きみはペット』的衝動?! それにしても、相対する玉山鉄二のイメージを180度転換させる舌ったらず甘えキャラはどうしたことか。売れっ子映画評論家の「見るべし」印で動員数2割り増しって、多かれ少なかれ、こういうことってあるんでしょうね。先日借りてきたレンタルビデオにも、そういう類のステッカーが張ってあったっけ。忍(高岡蒼佑)の映画おたく的台詞には、改善の余地あり。「『月の輝く夜に』残業ですか?」って言わせても、その内容と絡んでこないのであまり面白みが出ない。どうせ絡ませないんだったら、会話全部映画のタイトルにしちゃったらどうよ。
 そして真先は、大学の後輩だった『とくだねモーニング』のプロデューサー(堀部圭亮)を最後はやっぱり殴るのね。こういうエピソードがもっともF1的なような気もするけど、とりあえずは江口洋介の腹芸のおかげで、ドラマはテンポよくたるみなく進んでいく。正しいF2的リアクションは、オンエアー後に殴る卯月の方だろうけど。『美女か野獣』に引き続いて同じようなポジションにキャスティングされた白石美帆が、ちょっと前の矢田亜希子ばりなせつない失恋キャラになりつつある。(結)


第2回(4/21放送)
☆☆★
 語り口の軽快さが、連打されるそのデタラメまでも楽しげにする?! 本年度アカデミー賞最有力候補作品が『戦場のバイオリン弾き』とは、『戦場のピアニスト』のわかりやすいパロディだこと。このタイプの映画が、全米興行成績1億ドル突破することは、間違ってもありませんけど。
 ケビン・タニグチ監督((上條恒彦!)の『グリーン・コーヒー』がレイトショー公開になったのは、いい落しどころだったのでは。まぁ、当日に決定したレイトショーにあれだけ客が集まったら、どんなにいいでしょうね。もはや、宣伝の必要なしか?! まさかとは思うけど、麻子(白石美帆)は付け焼き刃のトルコ語で、トルコ映画の字幕つけようとしてた?!
 待望の映画おたく的役回りは、篠原(高岡蒼佑)に固定化された模様。でも、いくら6年間恋から遠ざかってるからって、まだ35歳になりたての女性に『黄昏』(1981・アメリカ)をなぞらえるのは的外れかな。台詞としても、『グッバイガール』(1977)、『愛は霧のかなたに』(1988)ぐらいのことは言ってくれないとね。なんてツッコミ入れ甲斐が随所にあるおかげで(?)、このドラマは退屈とは無縁です。(結)


第1回(4/14放送)
☆☆☆
 フジの月9がF1層(20〜34才の女性)を狙ったこれまでの基本路線をかなぐり捨て、F2層(35〜49才の女性)向けにシフトして作ったドラマ第1弾。ふたを開けてみると、なるほど軽妙洒脱にちょっぴりのペーソスがある展開で、これがフジ的にいうところの大人向きなのかとそれなりに納得させられる。
 スーツ役を危惧した(?!)江口洋介はまったくの問題なし!これが着崩したスーツで助かったよ。弱小配給会社の社長らしく、礼儀正しくもあんちゃん風なテイストも忘れない映画バイヤーぶりが好感度大。ライヴァルは大手映画配給会社のエース、卯月晴子(財前直見)。あの英語の発音を駆使して映画の買い付けバリバリやってるんだもん。彼女も相当の努力と苦労を重ねたんでしょうね。そして女は、35歳の誕生日にワンルームマンションを買うのだった。
 映画祭を誤解したようなオープニングは危険極まりなし。パシフィック・フィルム・フェスティヴァルなる映画祭のドサクサに楽屋落ちネタで攻めてきたときには、どうしようかと思ったけど。制作サイドとしては、これ撮った後で、イマイチうまくいかなかったからやめようか、なんてこともちょっとは思ったかもね。でも、あれだけの人揃えちゃってたら、引くに引けんわな。
 『トプカピ』『俺たちに明日はない』に「小津安二郎的な・的な・的な・雰囲気・雰囲気」でお茶を注ぐベタさ加減が、映画ファンの心をくすぐる。初日のレイトショーを一人で見に来る女は、ダメじゃないけど確かに怖いかも?! デパートの手帳売り場の方には恐縮しつつも、映画のバイヤーである前に、映画好きである主人公の生き生きした語りっぷりが楽しい。こうなったら『探偵レミントンスティール』みたいに、映画の小ネタを山盛り入れてしまっては。ミニシアター素人呼ばわりするほどには、江口洋介演じる高杉も買い付け歴5年ぽっちだったりするんだけど。
 「サイボーグみたいなデカイ女」(石川亜沙美・178cm)の命は短くて、秘書としての寿命は25歳までの4年か。伊東美咲(171cm)よりも大きな人って、早々いないでしょ。財前さんだって165cmあるのに。もう一人のキーパーソン、鷲尾いさ子は175cm!密かに日本のテレビドラマ史上、もっとも女性がタワーに輝いてた瞬間だったかも。
 プロデューサーが語るところのトム・ハンクス&メグ・ライアン的なノリとはちょっと違ってたけど、江口洋介と財前直見のコンビにはかなり期待できそう。2人の掛け合いは、今後もコンスタントにドラマを盛り上げてくれるのでは。息切れしないで、このままの調子でがんばってほしいところ。(結)




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