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抱きしめたい (NHK総合2002.10.26)
平成14年度文化庁芸術祭参加
制作・著作/NHK
制作統括/阿部康彦、木田幸紀
原作/島田律子『私はもう逃げない〜自閉症の弟から教えられたこと〜』より
脚本/吉田紀子
演出/勝田夏子
音楽/城之内ミサ
出演/沢田未来子…和久井映見、沢田道朗…加瀬亮、山下祐治…西島秀俊、未来子(8才)…山下夏生、道朗(3才)…大隅祐輝、有福正志、飯島大介、大城英司、高山広、小柳友貴美、中込佐知子、松嶋亮太、小林高鹿、佐藤銀平、小池直道、菅原永二、渡辺剛士、沢田一朗…竜雷太、久保田あや子…三崎千恵子、沢田朋子…いしだあゆみ
ほか



☆☆☆☆
 ここ数年に見たドラマの中で、もっとも泣けたドラマ。泣けるドラマが必ずしもいいドラマとは思わないが、このドラマにはお涙頂戴的な甘さは一切ない。きれい事じゃないその現実には、突きつけられるたびに打ちひしがられるしかない。
 作品は自閉症の弟を持つ姉の視点で描かれているが、見進めるにこのドラマが自閉症という障害を説明している作品ではなく 普遍的な家族の物語であることに気付かされる。それぞれがそれぞれに思いをぶつけあう口論に、誰しもが抱えているような問題の端々が見え隠れする。そんな何気ないファミリー物の味に涙してしまうのだ。
 その家族の歴史を、2泊3日のロードムービー形式の中に詰め込んでみせた脚本にはただただ感嘆。情緒的なところから遠く、淡々とし続ける演出もいい。キャストも無欠。原作が素晴らしい脚本と演出、そしてキャストにめぐり合えた幸運な例だ。
 『ミュージック・カクテル』のNRあたりから、和久井映見のNHKドラマがくるかと思ってたけど、それがこれだったか。名演!道朗役の加瀬亮がまたすごい。そして散りばめられた意表をつくユーモア。
 素晴らしいシーンは数え切れないが、とりわけ車が溝にはまってしまう一連のエピソードには、目頭が熱くなった。ラスト、静かな大海原にまた込み上げてくるものが。オールロケの効果は抜群。2002年に放送された単発ドラマの中では、これをベストに押したい。(結)




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