レビュー：少年たち３

少年たち３

（NHK総合月曜21：15～21：58）

制作・著作/ＮＨＫ
共同制作/NHKエンタープライズ21
制作統括/阿部康彦、家喜正男
プロデューサー/小松昌代
作/矢島正雄
演出/岡崎栄（1、5）、磯智明（2、4）、田中正（3）
音楽/渡辺俊幸
出演/広川一…上川隆也、小田朋子…麻生佑未、中山章之助…金田明夫、渡部龍冶…浅野和之、田中英悟…きたろう、北川晃一…新井浩文、森本ミチ…近藤綾子、海野友紀…成宮寛貴、青木卓也…斉藤羅慈、千田敬輔…佐々木和徳、金子邦彦…遠藤雄弥、森本建太郎…大谷亮介、千田照子…秋山菜津子、旗島伸子、宮城健太郎、蛭子能収、松澤一之、新納敏正、大西多摩恵、吉宮君子、沖田弘二、佐々木敏、飯田基祐、井上夏葉、竹内晶子、堤弁護士…もたいまさこ、高見弁護士…石丸謙二郎、武藤サト…桜むつ子、森本涼子…木内みどり、沢田虎一…小林桂樹ほか

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第5回（9/9放送）
☆☆☆
　シリーズ中では、一番いい最終回だったのでは。パート２の第3回（75分×３の最終回）が丸く切りそろえておざなりに過ぎたのは、すべてに解決を求めたから。このパート３では、このシリーズらしいみんなで考えよう的な切り口はそのままも、それぞれ個の苛酷な現実は現実として、一緒くたに甘口でくるまなかったところが、逆に清々しい印象を残した。
　少年たち全員と親を同席させた審判を連続で見せる組立てがうまい。沢田（小林桂樹）の言葉が上滑りしないのは、小林桂樹さんの含蓄ゆえか。送還される北川（新井浩文）をミチ（近藤綾子）が見送るエピローグも素晴らしい余韻。
　主要三人（上川隆也、麻生祐未、小林桂樹）はもちろん、脇の脇にいたるまでみんながみんな好演。こういうドラマもなかなか珍しいのでは。近藤綾子、成宮寛貴、斎藤羅慈あたりはパート１の山下智久や吉野紗香みたいに、大いに飛躍するのかな。それにしても麻生さんは本格的に上川さんを殴ってましたね。（結）

第4回（9/2放送）
☆☆☆
　ドラマの誠実はいっそうに極まるも、ドラマ的なボルテージは横ばいか。やはりこのシリーズは事件の全容が明らかになるまでが素晴らしい。みんなで考えよう的な結末に、鼻白むことを恐れつつ、最終回に期待する。それにしてもこのドラマって、小劇場系の人がいっぱい出てますよね。（結）

第3回（8/26放送）
☆☆☆
　小さなエピソードの淡々とした積み重ね、語り口が心に染み入る。もともと連ドラの企画ではないにしろ、やはりその辺のドラマとは一線を画する出来ばえ。まぁ、広川（上川隆也）や沢田（小林桂樹）といったあまりにも熱いキャラたちにリアリティを与えるには、これぐらいの抑えた感じがちょうどいいのかもしれないけど。
　抑制の効いた本編と好対照なのが、大いなる感動を呼ぶ予告編。泣きのテーマ曲が一層に涙を誘う。最終回の腰砕けを大前提とすると、来週は相当によさそう。（結）

第2回（8/19放送）
☆☆☆★
　このシリーズは、中盤にこそピークがくるというジンクスが、このパート３でも早くも現実のものとなる。終盤に腰砕けになることも了解しつつ、この度を越えた良心の塊に高得点をつけたい。
　それぞれの少年たちの有り様、各調査官たちの葛藤が丁寧に描かれており、その微妙な心の動きに見る側も心を動かされる。タフガイ老人、沢田を演じる小林桂樹の妙演にホッ（しかも殴られ屋！）。お元気で何よりです。（結）

第1回スペシャル（8/17放送）
☆☆☆
　どう考えてもおかしい！何がって、旧土曜ドラマ枠で第1回だけを放送して、そのあとは「月曜ドラマシリーズ」に引き継がせるなんて、そんなバカな。ただ、そんなバカなが頻発しているのが、ここ最近のNHKドラマ枠なんだけど。
　『新宿鮫・氷舞』や『駆落ち』の放送時間といい、ドラマを多くの人に見てもらいたいというスタンスとは程遠い。そんなドラマに対する冷遇処置は、元政治記者で報道畑出身のNHKの現会長が、そのイスに座りつづける限り続くわけだが。もうしばらく（あと一年ぐらい?!）のガマンかな。
　そんな憤りとキナ臭さとはあまりにも対極にある、誠実こそが売り物の『少年たち』シリーズの第3弾。オープニングにテーマ曲が流れてくるだけで、思わずうるうるとなる。その胸の締め付けられ方は、ほとんどパブロフの犬状態か?!
　パート2のエピローグに、まるで過去の人ような形で特別出演していた麻生祐未扮する小田調査官がパート１以来に復活。久々のうれしさからか、いきなりに大爆発のオーバーアクティングを披露する麻生さん。他の出演者よりも音声レヴェル高めの設定で台詞が同録されているのでは、という疑惑が沸くほどに声がデカイ。その大いなるアクセントぶりは、喜ばしい限りです。（結）