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愛なんていらねえよ、夏 (TBS系金曜22:00〜22:54)
製作著作/TBS
制作/TBS ENTERTAINMENT
制作協力/オフィスクレッシェンド
プロデューサー/植田博樹
脚本/龍居由佳里
演出/堤幸彦(1、2、6、9、10)、今井夏木(3、7、8)、松原浩(4、5)
音楽/見岳章、武内亨
主題歌/『Life』池田綾子
出演/白鳥レイジ…渡部篤郎、鷹園亜子…広末涼子、芥川奈留…藤原竜也、五十嵐彰…鈴木一真、一条晴男…ゴルゴ松本、真壁恭一…半海一晃、名波希理子…西山繭子、伊藤楓…松尾玲央、永岡ミエ…黒川智花、森山周一郎、伊佐山ひろ子、野波麻帆、大高洋夫、青田典子、有吉弘行、荒川良々、深沢敦、川俣しのぶ、菅田俊、皆川猿時、赤池公市、青木忠宏、岡安泰樹、佐野ひとみ、小笠原大晃、安達涼子、川浪葉子、古宮基成、森井未知央、松岡史朗、甲本将行、星野光代、松沢有紗、高田恵夢、二聖いず美、本多真弓、香取広美、須藤智彦、吉田朝、岩尾万太郎、永岡明良…野沢‘毛ガニ’秀行、須之内あさみ…石田えり、ウエダタクロー…森本レオ、中田咲子…坂口良子
ほか

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第10回(9/13放送)
☆☆☆
 ピカレスクロマンの巧みな置き換えと、それを見せきるディテールの演出によって高められた必要以上の濃厚な世界観に魅了されてきたこれまでだったが、この最終回にはややのテイスト違いに違和感を感じる。ただ、最終回なんてそんなものだし、そこに減点するほどの問題はない。
 自殺未遂からはじまって、病気の完治、さらには海辺で結ばれるにいたるまで、ドラマは完全にファンタジーと化す。意地悪咲子(坂口良子)も小悪魔楓ちゃん(松尾玲央)も、みんな輪をかけていい人に。からくも悪の牙城を守ったのは、希理子(西山繭子)の人相ぐらいか?!
 微妙なのが奈留(藤原竜也)のあり方。歌舞伎町のカジノでレイジになった奈留(藤原竜也)。でも、白い円から1ミリでも出たら負けの取り決めに効力はあった?ルーレットは期待通りにらしく回ってたんですけどねぇ。
 亜子のもとに駆けつけるレイジを襲う災難に次ぐ災難には、お決まりレヴェル以上はなし。最難関と思われたタクロー(森本レオ)の高い壁をクリアすると、自動的にタクローと晴男(ゴルゴ松本)の関係性も美しくジ・エンド。感情がこれっぽっちも入ってない石田えりの演技が楽しい須之内先生の神様ぶりに晴れ晴れとなり、奈留がレイジを刺しにくる最後の見せ場に。
 歌舞伎町のレイジを消しに来たっていう理由は、まぁ、いいでしょう。白い円から1ミリといわず出ちゃった人情的な落し前も含んでた?! 瀕死のレイジを救ったのは、やっぱり神様・須之内先生だったのか?! わざわざ西新宿病院まで刺すのを引っ張った奈留には、刺したあとの名医の存在という計算まであった?目の前が真っ暗となるレイジ、という落としどころもはずしてない。
 ただ、海外逃亡にレイジ&奈留の弥次さん喜多さんばりの珍トークってのは、いかがなものでしょう。奈留がいないとレイジの心情告白を引き出せないと思ったのかもしれないけど、ここまでくればもうそんな言葉の説明はいらないでしょう。歌舞伎町のレイジになった奈留(藤原竜也)を見せたほうが、浮世の円環が見えてドラマの深みも増したはずだし。無音の成田空港が4分間続いてたら、

「嘘をつく声でその嘘がばれる」byレイジ

という待ってましたの決め台詞に、腰を抜かして感動しただろうなぁ。残念。(結)


第9回(9/6放送)
☆☆☆
 やはり、オープングの愛憎のからまりにとどめを刺すか。タイトル曲までの見せ方上手はここに極まる。
 これだけ悪人キャラをずらりと揃えても、龍居さんの手にかかるとそのキャラクターたちには性善説が息づきはじめるから不思議。醜女のさらしぶりこそが善に思えてくる咲子(坂口良子)を筆頭に、小悪魔、楓ちゃん(松尾玲央)にも点字シールで善がやどる。が、希理子(西山繭子)だけは、必要以上の人相の悪さを維持。

「闇はすべてを隠してくれます」

とは、このドラマを端的に言い現した絶妙言。そう言えば、タイトルバックのレイジ(渡部篤郎)がまたもやまったく見えなくなっちゃった。ドラマ展開との連動がなかなかに泣かせます。7千万円の命つながり、亜子(広末涼子)とレイジ(渡部篤郎)の命の洗濯がさらに凄みを増して、いよいよ来週最終回か。とりあえずは、『北の国から』とバッティングしなくてよかったね。(結)


第8回(8/30放送)
☆☆☆
 プロローグから尋常ならざる凄まじいほどのすごみ。そのシーンがドラマ中のピークとなる構成の良し悪しは別としても、そのテンションを落とすことなく、最後まで見せきった手腕は大したもの。ようやく真実が出揃って、さてここからが勝負か。と思ったら、視聴率低迷ですでに周りの誰も見てなかった?! 裏で『北の国から』とは、また最悪のシチュエーションが揃ったね。少なくとも、今クールでは最高に見ごたえのあるドラマなのに。
 晴男(ゴルゴ松本)とタクロー(森本レオ)の怪しげな関係性を疑ってる間に、奈留(藤原竜也)にも同性愛の臭いが。レイジ(渡部篤郎)という存在の不可思議がここに。ここまで多くから愛されてるキャラクターも、なかなかいないのでは。それにしても、西新宿病院(ありそ〜っ)の院長役、石田えりの髪型は何だ!(結)


第7回(8/23放送)
☆☆☆
 それぞれの思惑が明らかになった後こそがこのドラマの正念場と危惧するも、そんな心配はまったく必要なかったか。ディテールを粗探しすればキリがないが、随所に見え隠れするそんなほころびも気にならないほどに、外堀から事実関係が埋められていく過程と、歪なのり越え方をしていくゆがんだ愛の形に凄みがある。
 悟りの境地の亜子(広末涼子)は、自問自答度100%!お兄ちゃんからの手紙を指でさするあたりにはゾクっ。随所に語られる神様という呼び名の危うい関係性にも怪しげな臭い。晴男(ゴルゴ松本)とタクロー(森本レオ)って、ホモ?! 奈留(藤原竜也)のナルはナルシスのナル?藤原竜也はお得意の裸を存分に披露。『太陽の季節』の竜哉(滝沢秀明)に負けてない?!
 タイトルバックの闇のレイジ(渡部篤郎)は、亜子(広末涼子)の目線のレイジで、飛び交う光はホタルなんだ。で、数回前から、レイジの顔の見通しが随分よくなってる気がるんですけど、気のせいでしょうか。(結)


第6回(8/16放送)
☆☆☆★
 ドラマの濃密はいっそうに極まり、出演者全員の猿芝居が見え隠れする中、誠実と不誠実の線引きがいっそう曖昧になっていくスリリングに、ぐいぐいとハラハラさせられる。
 真実をだまし通すこと以上に、真実を伝えることが難しいというアイロニーを切なく描き出すホタルのエピソードは、道理が反転してしまう展開の妙を鮮やかに紡ぐ。大体、ホタルの話が出てくるエピソードに、ろくな代物はないんだけど、ここに大いなる例外を発見する。演出先行の印象を与える今作に、言葉の力を認識させられた瞬間。これは龍居さんの代表作になりそうな予感です。(結)


第5回(8/9放送)
☆☆☆
 ようやくレイジ(渡部篤郎)が、どう見ても25歳には見えないことが判明、って遅いよ!まぁ、とりあえず、そんな厳しい設定が無視されていなかったことを喜ぶべきか。何せ、今クールの数少ないちゃんとしたドラマの一本なのですから。
 レイジ(渡部篤郎)への疑惑が、身内から外部から同時発生するあたりの展開は見事。そんな胡散臭いレイジこそが、もっとも誠実に振る舞うという逆転の作り方も、今後に含みを残して、このドラマは最後まで見逃せないと思わせる。(結)


第4回(8/2放送)
☆☆☆
 善悪のギリギリのせめぎ合いが極まって、ドラマはさらにスリリングさを増していく。とりわけ、亜子(広末涼子)が倒れたシーンなどは、なかなかに手の込んだ演出で見ごたえ充分。
 レイジ(渡部篤郎)は、アイスコーヒーを飲む姿さえも超濃厚!

「演技に溺れたがる俳優と、愛に溺れたがる純愛気取りは最低!」
byウエダタクロー(森本レオ)

「同感!」byレイジ

とは、何という恐るべき自己分析力か、渡部さん(もしくは龍居さん)。坂口良子が珍しくも影のある性格演技を披露中。(結)


第3回(7/26放送)
☆☆☆
 あまりにも誠実じゃない主人公が、誠実の限りを尽くす微妙さがいい。楽しかった後の悲しみ論と点字で遺書のダークネスには恐れ入った。祭りの雰囲気は醸成効果抜群。
 それにしてもレイジ(渡部篤郎)は、オープニングタイトルバックでは随分暗いところにいますね。確かに、そういう存在なんだけど。(結)


第2回(7/19放送)
☆☆☆
 第2回も味濃いなぁ。芝居がかりまくる渡部が今話でも完全なる全開モード!なるほど、ホストの設定には大いなる意味があったわけだ。
 随所につじつまが合わない部分が顔を出すも、その他のディテールをつめることで何とか乗り切っていく。そのへんのごり押しぶりが、またスリリングだったりして。ハラハラのラストシーンなども、演出が定石を裏切らないところがいい。この調子がいつまで続くかは、まだまだ油断できませんが。(結)


第1回(7/12放送)
☆☆☆
 ピカレスクロマンの巧みな置き換えと、それを見せきるディテールの演出によって、なかなかに味の濃い作品に仕上がっていて見ごたえ充分。ここ数クールは陳腐なほどのパターン演技の羅列で辟易させられていた渡部篤郎も、ここでの演技独演会は話のケレン味と合致して大いに威力を発揮する。やはり彼には、毒のあるクールな役柄の方が合っている。
 正直、このドラマは大いにはずすのではないかとも危惧していただけに、とりあえずはホッ。(結)




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