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実録 福田和子 (フジテレビ系2002.08.02)
金曜エンタテイメント
制作/フジテレビ、共同テレビ
企画/長部聡介
プロデューサー/中山和記
キャスティングプロデュース/木村元子
原作/『涙の谷』福田和子
脚本/神山由美子
演出/福本義人
ナレーション/近藤サト
出演/福田和子…大竹しのぶ、福田隆志…段田安則、赤木広一…山田孝之、石野時雄…羽場裕一、橋本さとし、青木伸輔、新谷真弓、高橋美穂、梅宮万紗子、今井里子…藤田弓子、梅沢昌代、林和義、赤木由紀子…赤座美代子、藤井栄一郎…佐野史郎
ほか



☆☆☆★
 出来ばえは期待通り。変則的な内容を見事に裁いてみせたな脚本の妙。そして、何と言ってもやはり大竹しのぶの熱演につきる。
 驚くべきは、その事実以外のことを一切描かない、物語自体の突き放し方。とりわけ殺人事件そのものに関しては、そのシーンはおろか、動機すらも語られておらず、ここだけをとっても“実録”とうたう理由があったというもの。
 その点が主人公に対して同情を抱いてしまう原因になりかねない部分でもあるが、エピソードの選択は非常に巧妙で、そこのところのせめぎ合い、ギリギリのバランス感覚がまたスリリングでもある。
 主人公の言動は、計算ずくの部分とギャンブル的な部分とが渾然としていて、それでいて常に最善の選択肢を見つけていくあたりに、奇跡的なラッキー・チャームを感じるが、そのミラクルにリアリティを与えているのは、もちろん大竹しのぶの力よるところ大である。とりわけ、サンダルに自転車で逃走する和子の姿には、鬼気迫るものがあった。
 演出のスタイルは混在気味。スタイリッシュにきめてみたり、いろいろやっているのだが、もう少しハードなタッチで統一した方が迫力は出たのでは。ナレーションも少し力み気味。
 焦点の一つ、整形による変貌ぶりは、やり過ぎない程度に抑えられていたが、それが逆に効果を生んだのか、エンドロールの本人の変容ぶりになおさらの衝撃を受ける。よくぞ15年もの間、逃げ失せたものだという事実への感嘆が、いつしか逃げ失せてくれというドラマ的な願いへと変容していくのはどうしたことか。コップを隠し、警察に通報する行きつけの店のママこそが悪人に見えてきてしまう逆転。久々に、ドラマの怖さを思い知らされる。(結)




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