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2001年夏ドラマ一覧
ウソコイ (フジテレビ系火曜22:00〜22:54)
制作/関西テレビ、大映株式会社
企画/植村泰之 企画協力/鴻上尚史
プロデューサー/安藤和久、佐藤直樹、有重陽一
脚本/高橋ナツコ 脚本協力/田嶋久子
演出/水谷俊之(1、2)、片岡K(3、4、8、9)、横塚慎一(5、6、11)、池添博(7、10)
主題歌/『セパレイト・ウェイズ』フェイ・ウォン
挿入歌/『原色の灯』siren
出演/鈴懸彰…中井貴一、フェイ・リン…フェイ・ウォン、杉野恵美…仲間由紀恵、本郷剛…中村俊介、杉野栄之助…布施明、木野花、大木戸…鴻上尚史、森村ミチオ…大杉漣、角田良一…生瀬勝久
ほか



第11回の再放送(関東地区:9/17放送)
☆☆★
 幻のシーンがとうとう白日の下に!! まぁ、通しで見ても、印象は初見とほとんど変わらなかっかけど。カットされていたのは2箇所で、角田が婚姻届を出していなかったことを恵美に告白する前後の1分半弱(おかしみに溢れた恵美と角田のツー・ショットは、ラスト以上に必要不可欠なシーン!)と、後日談&エピローグのラスト6分。提供の後にチラッと垣間見えた(完全なマナー違反!)、夕日をバックに抱き合っていた二人が、順当の組み合わせで収まっていたことにかなりホッとする。本が本だっただけに、もしかしたらもしかするかも、と思ってたんですが。
 脚本の初期設定からすでに間違いだらけだったことを考えると、1話分短くなったり、最終回のラストがなくなったりといった多難な紆余曲折はあったにせよ、よくぞここまで居心地のよいドラマに仕上がったものだと、ある意味感心させられる。エンドロールを見てて、このドラマって実はフェイ・ウォンのコスプレ・ショーだったんだということに気が付くと、すべての謎は解けるんですけど。これは愚な本を演者が救うこともあるという、類稀なサンプルです。


第11回「満月の夜」(9/11放送)
☆☆★?
 最終回のラスト約5分が幻と化す、というかつてなき事態に。「彰さんが迷子になってるの。早く見つけてあげて。」をうけての顛末も、結局わからず終い。チラッと垣間見えた夕日をバックに抱き合っていた二人が、彰とフェイであると考えるのが順当なところなんですけど、何せこのドラマはそのデタラメさ加減が売りだっただけに(?)、その確証はありません。
 一つ興味深かったのは、大城戸はデウス・エクス・マキナではなく、「ウソのあなたとホントのあなた」の、少なくともどちらか側の彰の分身だったということ。彰役の中井貴一とは似ても似つかぬ寸胴の人がこの役をやっていたので、このトリックにはまったく気がつきませんでした(そう言えば、仲間由紀恵が主演していた『トリック』にも鴻上尚史、出てたなぁ)。今にして思えば、物語中でつじつまがあっていた唯一のキャラクターだったかな。


第10回「月を追いかけて」(9/4放送)
☆☆★
 鶴の恩返しならぬ、フェイの恩返し。一夜にして花篭一人で全部、作りましたとさ。それにしても彼女、異常なほどに改心しましたねぇ。
 公園の滑り台に「ウソコイ」の文字が。大城戸はデウス・エクス・マキナか。密かに見逃せないのが、本郷剛を演じる中村俊介の炸裂する腹芸。CMは伊達じゃないか。いつの間に恵美とフェイ間にそんな深い友情が。まぁ、こんな矛盾はこのドラマの場合は朝飯前ということで、考えないことにしましょう。
 『ウソコイ』にはちょっと甘いのではというご感想をいただいております。まさにその通り。キャラクターのおかしみが、ドラマのおかしさを払拭させることだってあるということを認識させてくれたという意味では、このドラマは画期的でしょう。視聴率5パーセント台ってのも、ゴールデンのドラマとしては画期的だと思うけど。深夜ドラマじゃないんだから。
 まぁ、アジア展開が目的のドラマだから、外国で回収すればいいんじゃないですか。もしかしたら、このつじつまを合わせない手法は、アジアをターゲットにした念密なマーケッティング戦略なのか?!


第9回「月はどっちに出ている」(8/28放送)
☆☆☆
 よかった。初期設定の不備を棚上げした上で、ドラマとして盛り返してます。“しゅしゅっとくん”が出てきたときには、どうなるかと思ったけど。冒頭に猫田直の小さい見せ場が。恵美(仲間由紀恵)と角田(生瀬勝久)のテーマ曲(?)が聞こえてくると、ほとんどパブロフの犬的な状態で、たおやかな幸福感に満ちた気持ちになれます。
 恵美とフェイって、第7話ですでに自己紹介済みじゃなかったっけ?ここまでくると、ドラマとしての整合性を目指してないドラマとして、認知するべきかもしれません。キャラクターのおかしみは絶品なので、可能な限りにおいて不都合なことはとりあえず忘れて見ましょうか。もちろん、限度ってものはありますけど。


第8回「ムーンライトセレナーデ」(8/21放送)
☆☆★
 とりあえず、ドラマ部分に触れるのはやめておきましょう(崩壊寸前!)中井貴一の演説シーンは、ちょっとした演劇でも見に行ったかのようなノリ。周りを取り巻く群衆がまた、恐ろしく小劇場風だったし。初期設定の曖昧さが、今になって弊害とし出てきてるかな。メイン・ストーリーの焦点、定まらず。
 でも、大丈夫です。恵美(仲間由紀恵)と角田(生瀬勝久)によるサイド・ストーリーはまだまだ面白いぞ。とりわけ、生瀬勝久のうまさが光ります。今回はちょっと分量が少な目だったけど。
 仲間由紀恵が出てるJA共済のCM、いいですねぇ。とぼけた感じが、ドラマとの連なりを感じさせます。


第7回「月とカメラ」(8/14放送)
☆☆★
 もうかばいきれないぐらい、話がイカサマ臭くなってきております。風水合戦って、そんなバカなねぇ。でもそんなデタラメも、何となく楽しい。
 オープニングのタイトルバック、フェイ・ウォン自らが歌う主題歌ともに最高に涼しげで、気持ちいいです。


第6回「おぼろ月夜」(8/7放送)
☆☆☆
 出演者たち同士の戯れを見てるだけで、うれしくなれます。特にサイド・ストーリーの、クール・ビューティなコメディエンヌぶりがさえてる仲間由紀恵と腹芸炸裂の生瀬勝久のコンビがおいしい。
 今回は、定番の悪夢が仲間由紀恵扮する恵美の現実的狂言にチェンジ。フェイ・ウォンは素が見え隠れする演技のスレスレ感がいい。彼女だったら、ラブホで星を見てても全然不自然じゃない。ただ、話には随所に不自然なところが。デザイン画忘れるくだりも、もっとうまくやらないとね。撲滅したかと思われたキックボードはここにあったか。


第5回「ムーンウォーカー」(7/31放送)
☆☆☆
 フェイ・リン(フェイ・ウォン)率いる外人部隊によるこの世の不条理を一身に受けて、中井貴一扮する鈴懸彰がこんなにもがんばっているというのに、何と言う視聴率の悪さよ。これそこが不条理でしょう。たまらず、冒頭に1分30秒も費やしててこ入れ復習やったけど、効果は薄そうだなぁ。
 時間軸がいい加減、話に説得力がない、設定がデタラメ、何ていう悪評にも一理あるとは思うけど、このメルヘンのディテールにこそ喜びあれと願わずにはいられない。全キャラクターの全キャラ立ちぶりが美しいだけじゃ、ダメですか?! マンマと鴻上にだまされてるって?一回きりという限定つきで、だまされる覚悟は整っております。
 彰の妻、恵美を演じる仲間由紀恵は、『ちゅらさん』の国仲涼子とはまた別種(陰と陽。もちろん仲間は陰。)の天然ぶりが幸福感に溢れていて、フェイ・ウォンと双璧の浮遊感を醸し出しています。毎度毎度「毎度!」とか、「鈴懸デリバリーです!」も、その唐突さが奇妙に笑える。いやみなく、スッとしてるところがいいですねぇ。そう言えば、『アメリカン・ビューティ』ばりの幻想シーンは、『非婚家族』だけじゃなく、ここにもあったか。


第4回「月の出を待って」(7/24放送)
☆☆☆
 フェイ(フェイ・ウォン)の面接会場と恵美(仲間由紀恵)のマタニティクラスが同じ建物でやってて、というお決まりのドタバタでさえもその品格が落ちないのは、偏に格調の高い出演者たちのおかげ、という当たり前のようでなかなかない、負けない連ドラの正しい姿がここにはある。
 ストーリー自体よりも、それぞれのキャラクター設定のうまさに惹かれます。彰(中井貴一)のアシスタント、本郷剛(中村俊介)のナルシストぶりもはまってるし、恵美の天然純粋培養な言動にもうれしくなっちゃう。ちょっと『ちゅらさん』のえりぃとかぶってるか、仲間由紀恵の沖縄つながり。


第3回「月下美人」(7/17放送)
☆☆☆
 フェイ・ウォンの圧倒的な存在感。絶世の美女ってわけじゃないけど、その居住まいからしてスターの香りがします。朝日新聞夕刊(7月12日)のインタヴューを読むと、一筋縄ではいかない人みたいですけど、そんな彼女自身の複雑さこそが、このキャラクターを生き生きとさせている理由なのかもしれません。
 そんな彼女を受けてたつ中井貴一もまたスターですから、大物共演のドラマを見てるありがたみがありますねぇ。そのわりには、視聴率は振わないみたいだけど。
 フェイ・ウォン扮するフェイ・リンと同じアパートに住むモデル男のアフレコは、素人耳にもおかしかった。それともわざと?! 単に英語が出来ない役者の吹き替えだったって気がするんですけど。彰(中井貴一)の悪夢は定番化しそうですねぇ。恵美(仲間由紀恵)のなりきりシリーズが楽しい。居酒屋に仕出屋ときて、次は何? 密かに楽しみにしてます。また大杉漣が悪そうなんだなぁ、これが。


第2回「ムーントラップ」(7/10放送)
☆☆☆
 やや演劇畑よりのキャスティングには部分的に引っかかるところもあるけど、配役の当て方はなかなか上手い。注目のフェイ・ウォンはこの役柄にぴったりの浮遊感。そういえば、中井貴一は映画でも似たようなシチュエーションをやってましたよね。最近の彼の仕事の多さはどうしたことでしょう。
 『ちゅらさん』第79回(7/2放送分)の誠と琉美子に引き続き、新婚旅行はまたカナダかい。その回のレビューをご覧になってない方のためにもう一度。ここ2週間ほどのお休みの間、私はカナダに行っておりまして、レビューの更新が出来ませんでした。偶然とはいえ、これも何かの縁でしょうから、この場を借りて再度お詫び申し上げます。今、カナダ新婚旅行って、流行ってるの?!




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