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2001年夏ドラマ一覧
生きるための情熱としての殺人 (テレビ朝日系金曜23:09〜0:04)
制作/テレビ朝日、SWEET BASIL
チーフプロデューサー/梅澤道彦
プロデューサー/大久保なみ、吉田由二
原作/『生きるための情熱としての殺人』林秀彦
脚本/林誠人(1、2、3、5、7、8、10、11)、田中江里夏(4、6、9)
演出/六車俊治(1、2、5、6、9、11)、加門幾生(3、4、7、8、10)
音楽/池田大介
テーマソング/『PERFECT CRIME』倉木麻衣
挿入歌/『Can't forget your love』倉木麻衣
出演/四条舞衣…釈由美子、三崎京子…高岡早紀、大塚由佳里…横山めぐみ、三崎俊郎…布川敏和、デヴィ・スカルノ、小沢和義、森山マコト…宇野智史、小久保アミ…佐藤康恵、椿王子梨沙…立川宜子、穂積隆信、尚美…大竹一重、高田純次、朝倉君章…石黒賢、階堂佑介…鈴木一真、杉山隆生…伊原剛志、上原美津子…とよた真帆
ほか



第11回(9/21放送)
☆☆☆
 驚愕と苦笑の狭間で軽やかに連続するどんでんどんでん、またどんでんの返し技。とにかく視聴者をだます、という鉄則にひたすら精進する様が実に美しい。
 『アスファルト・ジャングル』か『ユージュアル・サスペクツ』かと見間違う、やり過ぎスレスレの裏切りの構図が、あまりにも楽しすぎる。警察の面会で本音トークのネタばらしってどういうわけ?、美津子と京子はどうして警察を従えているの?(金の受け渡しはきっちり定番の波止場の倉庫!)、しかもここでもネタばれトーク炸裂!!!、などなど数えればきりがない多くの不都合も、右から左へと忘れさせてしまうほどに、ケレンの緩急が要所要所で絶妙に決まっている。
 そのサプライズは最後の最後まで止まらない。『非婚家族』以上のビックリなオチが、今作のタイトルバックには込められていた!! そして『太陽がいっぱい』&『明日に向って撃て』(もしくは『テルマ&ルイーズ』)の借用的連打!不適な笑みをたたえつつ、
“Never Give Up.Never lose.So,Life is Exciting - Thanks A Lot!”
って、そんなバカな。混迷の最中に深い洞察力を獲得した舞衣の言葉一つ一つが、諦観した人生の達人のそれに聞こえる。何をやっても面白いという無敵の構造は、最後の最後まで限りなく強固でした。


第10回(9/14放送)
☆☆☆
 加速するだまし絵! そんなまさかという展開の連続は、ジェットコースター的な楽しさに満ちています。火事場のバカ力なリハビリ大成功から、手が滑っちゃった状態のホリフィックな幻想に、大々的な一石二鳥作戦の大失敗に至るまで、その全てがケレン味たっぷりに決まってる。
 そんな中でも最高に傑作なのが、佑介の魔の手から逃げ惑うかしまし4人娘の奔走ぶり。どこに逃げるのかと思いきや、毎回家に帰ってくるとは何たる灯台下暗しか!しかもそこに、佑介と杉山が代わる代わる訪ねてくるという、そんなバカなの転がり様も、何はともあれまずは入浴とか、のびちゃった佑介、はたまた掃除機の柄は外れたけど誰も来ない、なんていう驚愕の肩透かしとコミコミで、ちょっぴり怖くて、とってもおかしい。
 「いっちゃってるアイツ」=佑介の言動は、とうとう舞衣と同化するにまでに壊れていく。益々人相が悪くなっていくミラクルな釈由美子に負けず劣らず、全開で怪演し倒す佑介役の鈴木一真もスゴイ。
 それにしてもオープニング・タイトルバックの口上は、何回聞いても笑えます。


第9回(9/7放送)
☆☆☆★
 コワ面白いというアンビヴァレントな面白さが、Bテイスト満載で激しく展開されております。釈由美子の想像を絶する力演に驚かされるとともに、とよた真帆、横山めぐみ、高岡早紀のかしまし3人組の期待通りの脱力演にもビックリというダブル驚愕が見事にはまり、階堂“狐は自分の臭いには気付かないって言いますから”佑介を演じる鈴木一真のパラノイア・ポジティヴを下支えしています。
 随所に冴え渡るトリック・プレー。そこで起こっている事、全てが面白いという奇跡的な転びに思わず頬も緩む。何と言う奇想天外な脅威のリハビリ力!!!、に★一つ追加。


第8回(8/31放送)
☆☆☆
 形勢逆転に次ぐ逆転!! ここまでのんびりとスリリングなドラマが、かつてあったでしょうか(誉めてるんですよ)。釈由美子、予想外の体当たり大熱演に思わず拍手です。彼女のキャリアから考えると、一層に鬼気迫るものあり。
 騙すつもりが愛のキューピットになってたり、まだまだ先があるのに、敵に手の内全部明かしちゃったりと、かしまし三人娘の無軌道ぶりはもう誰も止められないノン・ストップ状態。擬似的なロマンティックなんかも盛り込んで、やることなすことにニヤニヤ出来るという、全勝街道まっしぐらの展開が益々冴え渡っております。


第7回(8/24放送)
☆☆☆
 ダークホースの快走。冒頭の、あまりにもフェティッシュなサービス精神旺盛な展開から、チープさを恐れない大胆なラストまで、飛ばしたり緩めたり、もう大変なことになっております。一つ言えるのは、やっぱり無敵の構造のもとに、何をやっても成功してるってこと。会長の告別式のスケール感のなさなんてデタラメも、ほのかなおかしみをたたえてますからね。
 大ボケぶりで楽しませている大塚由佳里役の横山めぐみに負けじと、三崎京子を演じる高岡早紀も、いい感じで緩まってきてる。「気持ちわるいじゃない、近親相姦みたいで。」の能天気ぶりが最高です。
 釈由美子のスパークはそれを越えるか?! その模倣が、一般的な意味での模倣を越えているという驚愕。鈴木一真、布川敏和あたりの猟奇性を軽がると乗り越えてしまうその超イミテーションぶりは、特筆に値するでしょう。
 だましだまされのおっかけっこは、どこまでヒートアップしていくのか。「今は不謹慎なこと、考えない方がいいわ」って、こんな不謹慎な人たちもいないだろうにという出演者陣のスパークは、まだまだ衰えそうにありません。


第6回(8/17放送)
☆☆☆
 美津子と彼女の昔の恋人・浅倉君章に同じジェラルミン・ケース持たせといて、そこに何のトリックもなしとは、さすが並みのディテクティヴ・ドラマじゃないですねぇ。デヴィ夫人出しちゃうサービスぶりは、『ビューティ7』並なんだけど。
 “かしまし娘の大冒険”は今話でもとどまるところを知りません。乾杯→解散→逆上がり、ってそんな超跳躍的な展開は思いもつかなかったぞ。鈴木一真、伊原剛志、布川敏和あたりの男性陣も、マニアックにがんばってます。最後までこのノリを持続して欲しいなぁ。


第5回(8/10放送)
☆☆☆
 何をやっても面白いという無敵の構造を獲得したこのドラマ。偽者×偽者という計算式が、想像を越えてスリリングに化学反応し続けております。×られた釈由美子の醸し出すおかしみ(?)たるや、なかなかお目にかかれる代物じゃありませんよ。
 高岡早紀の口から出た「ストーカー」の台詞には、妙に懐かしい気持ちがしました。


第4回(8/3放送)
☆☆☆
 テレ朝のドラマらしい、マニアックな面白さが出てきました。興味深いのは、釈由美子演じる舞衣が本物である佑介(鈴木一真)の今は亡き妹、安奈をビデオを見ながらコピーするという大前提。何しろ、本物も釈由美子が演じてるわけだから、その偽者度は保証済み。ビデオの中での本物の動き一つ一つがうそ臭い。だから、舞衣のコピーがよく出来てれば出来てるほど、益々インチキ臭くなってきくという逆効果が奇妙なおかしみになってて、この軽量な話に違った意味での幅を持たせてます。もちろん、その功労者はイミテーションぶりを見事に使い分ける釈由美子。この多重構造の読み解きは相当楽しいぞ。
 キャラクターとして面白いのは、横山めぐみ扮する由佳里。かき回し役として、かなりおいしい役どころ。職場のパソコンの壁紙に自分の写真を使ってるあたりからもおバカな危なっかしさ臭をはなってて、また横山めぐみがそんな役をそれっぽくやってくれています。この作品が、今クール中でもっともカルト度の高いドラマであることは間違いないでしょう。


第3回(7/27放送)
☆☆★
 タイトルを“かしまし娘の大冒険”に変えたほうがいいのでは、と思わせるほどに、素っ頓狂な雰囲気がどこか普通のドラマとは違う匂いを漂わせております。大体、白々明けのあんな明るい時に、死体捨てちゃダメでしょ。そんなやけっぱちさ加減が奇妙に楽しいんだけど。
 高岡早紀はようやく『たのしい幼稚園』臭が抜けてきたかな。見てるほうの問題かもしれませんが。


第2回(7/13放送)
☆☆★
 密かに釈由美子、演技うまいねぇ。前口上入れてバカ丁寧に説明しちゃうあたりは、いかにもディテクティヴのテレ朝風。女三人寄ればかしましいって、とよた真帆、高岡早紀、横山めぐみのコンビは抜群に魅力的です。社長室に忍び込む3人は、ほとんど“キャッツ・アイ”ってノリでしたね。




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