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2000年秋ドラマ一覧
ラブコンプレックス (フジテレビ系木曜22:00〜22:54)
制作著作/フジテレビ プロデュース/和田行
脚本/君塚良一 演出/澤田鎌作、田島大輔、水田成英
主題歌/『Free』反町隆史
出演/唐沢寿明、反町隆史、木村佳乃、りょう、小雪、西田尚美、伊東美咲、一戸奈未、高橋ひとみ、中川家礼二、段田安則、江波杏子
ほか



第1回
☆☆★
 才気走り過ぎな以外は、ストーリー、構成ともに凝りに凝ってておもしろい。登場人物の過剰さは、『アリー』の影響か(絶対、そうでしょう)。タイトルの由来もそこにあるんでしょうねぇ。まぁ、面白けりゃいいんだけど。実は反町の脇(クレジットは一番)なんだけど、唐沢のエクセントリックな役作りが特に上手い(リチャード・フィッシュとジョン・ケージを足して2で割った感じ)。作家のしてやったりという顔が浮かぶドラマ。この調子で飛ばせれば、いいんですけど。
 このドラマ、「最終回」というテロップではじまりました。確かに、結末を最初にみせてしまうというやり方は時には有効です。映画『サンセット大通り』なんか、その形が見事に決まってました。ドラマで陳腐なラストばかり見せられたりすると、むしろそれもいいかなとも思えてくる。


第2回
☆☆☆
 目がなれてきたせいか、第1回ほどには驚きませんでした。逆にいえば、第1回目が非常によくできていたということ。この点数は第1回目とあわせての星三つと考えていただきたい。驚愕度は薄れましたが、面白さが衰えたわけではありません。確かに面白いことは面白いんだけど、時間がやたらと長く感じてしまったのはなぜでしょう。もう終わりかと思って時計を見ると、まだ30分しかたってなかった。話がブロックの積み重ねだけに、面白くても流れが出ないきらいがあるのは確か。前世を追い求めながら、まったく別の境地に到達してしまう『深く潜れ』のような面白さが出るかどうかが、このドラマの是非を分けるとろこだと思います。が、私の予想では、こちらはトラウマの袋小路に入って行っちゃうだけのような気がするなぁ。となると回をおうごとに『アリー』の亜流みたいになってしまう恐れありです。そうなるとあとは、演出のスタイリッシュさで押すしかなくなってくるでしょうけど。ただ、パクリの域を出ないCG幻想シーンの連発ならやらないほうがいいような気がするんだけど。


第3回
☆☆☆
 面白い。バカバカしければバカバカしいほど面白い。台詞も冴えてますけど、演出も細部までがんばってますね。ただ全編ハイパーな仕上がりなのに、主題歌だけがこてこてロックってどういうこと?


第5回
☆☆☆
 もはや悪ノリか?ここまで面白ければいいんです。空振りする台詞がほぼ皆無。演出の念の入れようも尋常じゃありませんね。上手すぎる。一応、回毎にコンセプトはあるみたいですね。今回はフジテレビの黄金パロディ集か。


第6回
☆☆☆
 子供のけんか並の展開をここまでおもしろおかしく見せてくれるんですから、まったくもって感服です。女優陣も軒並み好調で、柄に合ったキャスティングが決まってます。最近、ここまで女性を意地悪く描いてる作品も珍しいですよねぇ。気分いいーっ!!


第7回
☆☆☆★
 連続で放送されるって辛いことですねぇ。一目瞭然、こっちの方が『スタイル』の3倍はオシャレ。人間関係の解明が急ピッチで進み、台詞をいかす演出のスタイリッシュさにも更に磨きがかかってきて、これまでの総決算的印象。唐沢寿明も凄いけど、りょうもかなりきてますね。そのホラーな瞬発力には度肝を抜かれます。意外に力ありますねぇ。


第8回
☆☆☆★
 第7回が総決算なら、今回はテレビドラマ越えの試みか。あからさまな寺山風や間接的なブレヒト風(死亡通知を野球場で突きつけるとは!!)など、一筋縄ではいかない作りにスタッフの創意工夫を感じます。ナンセンスとシリアスの配分も絶妙。『深く潜れ』同様、回を追うごとのチャレンジが視聴率に響いているようですが、テレビドラマの将来に微かながらも希望の灯を放ってくれていることも確か。それにしても今回の唐沢寿明は奇跡的だ。再来年の大河主役に今更ながら賛成します。


第9回
☆☆☆☆
 今回がベストという意味ではなく、見せ方の上手さの積み重ねが極まった感じがしたので、満点をつけました。毎度おなじみとなった変則作法のオープニングといい(パソコンにMSNのアイコン、残ってたでしょ)、紙人形の使い方といい、冷めた視線を逆手に取ったドラマの煽り方が実に上手い。りょうも怖いけど、同系の先輩、江波杏子はもっと怖くなってきた。唐沢のパーフェクト・パフォーマンスは続く。ダメなのは主題歌だけか(今クールの主題歌の中で、一番売れなかったのはこれでは)。

第10回
☆☆☆
 いいんですか、こんな悪魔的で。唐沢のスパークぶりの質が変わってきて、尚凄くなってきた。展開のみならず、みどころまでもが二転三転するドラマって、なかなかないですよね。否が応でも、最終回への期待が高まります。


第11回
☆☆☆
 今回でこのドラマのテレビ越えの試みが見納めだなんて、寂しいですねぇ。確かにこの強烈な最終回は、その試みの終着点としてはふさわしいものでしたが。パロディも多彩。『ブレア・ウィッチ〜』から、タツノコプロアニメ、終わらない殴り合いは『白昼の決闘』はたまた『大いなる西部』か。ただ、ここはちょっと冗長すぎ。やりたかったことをやりとおした点は評価できるけど。

 もやもやとしていたこのドラマの結びが何となくわかってきました。というか、深読みすることなく、愛の救済物語として考えれば、まったく問題ないわけです。
 閉塞状況にあった秘書室の女たちを覚醒させるのが愛の裏側を演じた唐沢。愛の表側である反町は文字通り、東奔西走してみんなを救う。強権発動した唐沢(何しろ裏側だから)との対決で、最後は両者の自己犠牲によって、全員が愛の呪縛から解き放たれる。
 ギリシア悲劇の化身、江波杏子が出てるだけあって、段々ギリシア悲劇を見てるような気分になったのは、私だけでしょうか。
 救済という意味では、『深く潜れ』と相通じるものがあります。より正統的だった『深く潜れ』に対して、『ラブ コンプレックス』は古臭いまでにアヴァンギャルドに固執。その点からやはり私は、『深く潜れ』のほうを上位に置きます。ただその非テレビ性に置いては、両者ともすごかった。それでも今年のベストワンは『玩具の神様』なんだけどね。




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