無理な恋愛 第1回~第8回

☆☆

 「名は体を表す」とはこのことか、なかなか無理のある設定のドラマである。かえで(夏川結衣)が少なからず男としての魅力を感じはじめている立木(堺正章)に、これほどの老け演技が必要か、ちょっと疑問が残るところ。少々の強引なエピソードも善良というオブラートできれいにまとめてしまう、岡田惠和脚本ならではの力業にも引っかからなくはない。ただ、それでも何となく微笑ましく見続けていられるのも、やっぱり堺正章と夏川結衣の年の差コンビが醸し出すおかし味ゆえなのだろうが。

 もう一つの“無理な恋愛”を演じる龍彦役の徳井義実が予想以上に強力。作家として大成させるべく、かえでが内助の功を発揮するも、文学賞をとったかつてのライバルを目の辺りにして、書きためた原稿を破棄してしまう龍彦の心情は実に痛々しいも、そんな悲哀をさらりと演じてみせたのは実に見事だった。ドラマの調子は後半に差し掛かって上昇中につき、おまけの点数である。

(麻生結一) 

花衣夢衣 第1回~第45回

第1話~第10話  ☆☆
第11話~第25話 ☆☆☆
第26話~第30話 ☆★
第31話~第40話 ☆☆
第41話~第45話 ☆☆★

 東海テレビ開局50周年の記念作品という触込みに値するか否かは置いておくとして、ヒロインたちの浮き沈み同様に、ドラマのできばえも実に浮き沈みが激しい。ヒロインである双子の姉妹・真帆と澪を演じる本当の双子の姉妹・尾崎亜衣と尾崎由衣はおおよそヒロインタイプではなく、さらにはいかにもこの枠的な激烈な展開に、その先を見進めることさえ不安になる最序盤。しかし、この双子ヒロインがコンスタントに火の玉のような熱演を見せ続けるにつけ、だんだん物語世界に引き込まれていくことになる。

 妹・澪と入れ替わってデートしたアメリカ兵に暴行され、子供ができない体になってしまった真帆が、加賀友禅の作家を目指すために金沢に旅立ってから以降の展開は、“東海クラシック”と呼びたくなるほどの格調を誇って、実に見ごたえがあった。真帆と澪が別々の道を歩むことを誓い合うシーンなどはとりわけ心に残る。金沢ロケも全編最高級だった。いつもながらにこの枠のロケシーンは美しい。

 この調子でドラマが続いてくれれば本当によかったのだが、物語が13年後に飛んで、ヒロインが前任者たちとは似ても似つかぬ吉田真希子と真由子の美形姉妹に交代すると、ドラマのテンションは激変する。まるで火の玉のようだった双子ヒロイン・真帆と澪はまるで別人のようにゆるまってしまって、ドラマのトーンもそれに引きづられてゆるゆるに。

 またしてもドラマを見続けることが困難になったかと不安になったも、たとえヒロインがこれまでとは別人に見えようとも物語の前進する力はそれを上回るものがあり、また吉田姉妹のゆるゆるした感じにも免疫がついてきたせいもあって(?)、双子ゆえの性が織りなすヒロインたちの浮き沈み人生に、改めてハマり直したここ2週であった。

 双子の姉妹が一人の男を共有するという歪んだ愛の姿は、物語的な面白さに富んでおり、和楽器を多用した音楽も絶妙にドラマを盛り上げてくれる。ただ、ここから見始めた方が二人のヒロインのゆるまったあり様に違和感を覚えないかどうかは、ちょっと保障ができない。

(麻生結一)

瞳 第1週~第8週

☆★

 現在放送中の朝ドラについて書く前に、一つ前の『ちりとてちん』についても触れておかなければならないだろう。レビューがドラマの佳境前に途切れてしまったのは残念だった。ここ最近の朝ドラの常である前半での息切れと無縁どころか、ヒロイン・喜代美(貫地谷しほり)と草々(青木崇高)が結婚した折り返し以降、後半にいたってドラマのボルテージがさらに高まったのにはうれしくなった。
 この朝ドラ最大の魅力は、お話の構造そのものが落語的にも思えた藤本有紀の見事な脚本に尽きる。正直言ってここまでの軽妙洒脱ぶりは予想していなかった。草原(桂吉弥)、草々、小草若、四草(加藤虎ノ介)、喜代美によって構成される徒然亭一門のアンサンブルは魅力にあふれており、後半はヒロインの物語というよりも、むしろ群像劇としての見ごたえがあった。
 喜代美の母・糸子を演じた和久井映見は、これまでのイメージを覆す怪演を披露。そのおおらかな存在感はドラマに徹頭徹尾ペーソスを与え続けた。父・正典を演じた松重豊は、糸子の受けに回ってさらに絶妙。この両親にしてこの子(=喜代美)ありと随所に思わせて、そのエコーで笑える部分も多かった。意に反して脇役人生を歩むというヒロインの設定も含めて、ここまでキャラクターが粒ぞろいだった朝ドラも久しぶりだった。
 あまりディテールについて書いているとキリがないけれども、朝ドラとしては背負わされる宿命ともいうべき、回想の使い方にもうまみがあった。ここのところの朝ドラでは、折り返し地点や最終版にこれでもかと回想シーンを連打されて、フレッシュなドラマを見ている感覚を麻痺させられることもしばしばであったも、『ちりとてちん』は回想シーンをむしろ積極的に小出しして、回想シーンが密集する退屈さをうまい具合に回避していた。そこに正典と糸子の若かれしころの恋愛模様といった新しい場面も挟まってくるのだから、ニヤリとせずにはいられなくなる。
 ただ、米倉斉加年があまりにも素晴らしかった祖父・正太郎が新しい回想では(おそらく)2回しか登場しなかったあたりには節度もあった。存分に明るく楽しいのに決して甘ったれてはいない、この朝ドラらしいよさを象徴していたように思えるのだが。
 同姓同音異字同名のクラスメート・和田清海(佐藤めぐみ)のマドンナからの転落ぶりも鮮烈だった。夢破れて東京から帰ってきた清海の目が完全によどんでいたのにはちょっと驚く。正太郎亡き後、喜代美を常々叱咤激励する親友の順子(宮嶋麻衣)も光っていたし、五木ひろし演じる五木ひろしが複数回にわたって登場したのも楽しかった。上沼恵美子のナレーションは決して下品になることなく、終始最上級だったのがまたうれしい誤算だった?!
 驚異的な完成度を誇った『てるてる家族』とまではいかないけれど、『ちりとてちん』のちょっと緩まった感じは朝から実に居心地がよかった。トータルでは☆☆☆も、後半だけならば☆☆☆★を進呈できる朝ドラの秀作である。
 『瞳』について書き始めたら、ついつい『ちりとてりん』のことばかり書いてしまった。ヒロイン・瞳を演じる榮倉奈々の演技に変な力みがないのはさすがにこなれている。いかにも下町調のシチュエーションのわりに、瞳があまり説教臭くなっていないのも幸いだ。幸いなのだけれど、いかにも下町調の登場人物たちに意外性は皆無で、残念ながらそんな登場人物たちが織りなすドラマとしての伸び代も感じない。その調子がここまでのドラマ全体も支配してるような。
 とりわけ、瞳の祖父・勝太郎(西田敏行)が里親として育てている明(吉武怜朗)、友梨亜(森迫永依)、将太(中村咲哉)のそれぞれにさかれた1週ずつは道徳の授業で使用される教材を見せられているかのようでつらかった。「里親制度とは?」「ヒップホップとは?」と問うてくるナレーションの工夫のなさに関しては、別媒体でも触れされてもらったのでこれぐらいにしておこう。どちらにしても、『ちりとてちん』の高級さとは雲泥の差である。
 反して、瞳のダンサー修行のパートはこれまた意外性には乏しいものの、雰囲気自体は悪くない。明、友梨亜、将太はすでに懐柔され、若山(近藤正臣)を筆頭にした児童相談センターの方々もほぼ聖人君主とすると、瞳に示唆を与えられそうなキャラクターは現状KEN(眞木大輔)以外に見当たらない。こちらの話でドラマが膨らんでくれることを祈るのみである。
 
(麻生結一)

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